Hatena::ブログ(Diary)

人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2011-05-27

厚生年金の加入要件緩和の是非


厚生労働省非正規労働者厚生年金の加入要件緩和を検討しているようです。


以下参照
no title



現在のところ、1日または1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が正社員の概ね4分の3以上である場合、パートタイマー等であっても社会保険健康保険厚生年金)に加入させることは会社の義務です。



しかしながら、現実はそうはなっていません。
加入義務があるにもかかわらず社会保険に加入していない事業所の割合は3割にのぼるとも言われています。

社会保険料は会社にとってかなり重い経費です。
法律通りに社会保険に加入すれば経営が立ち行かない」
そう考え、違法と知りながら社会保険に加入しない経営者もいます。



社会保険未加入の会社には、会社自体が社会保険に加入しないパターンと、会社は加入しているが一部の労働者を加入させないパターンがあると思われます。
前者の場合は行政が実態を把握するのがなかなか困難ですが、後者の場合は調査が入って未加入を指摘される可能性も高いでしょう。



それにしても、なぜ社会保険に加入しない会社がそんなにも多いのか。
健康保険法および厚生年金保険法には、加入手続きを怠った場合の罰則が一応定められています(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

ところがこの罰則、適用されることはあまりありません。

会社自体が社会保険に加入しなければ、保険料の負担はない、罰則も適用されない、
であれば経営の厳しい零細企業が加入しないのもうなずける話ではあります。




今回の厚生年金の加入要件緩和の検討内容は具体的には

となっており、
実現すれば100万人以上の非正規労働者が新たに社会保険の対象となるわけですが、それらは一体何をもたらすのか。

今まできちんと加入していた会社が社会保険を維持できなくなるかもしれません。
未加入の会社にとってはますます加入のハードルが高くなりそうな気もします。
加入要件が拡大されようがお構いなしに加入させない会社もあるでしょう。
一方で苦しい経営のなか苦労して従業員を社会保険に加入させる会社もあるのかと。

労働者側においても、少ない給料からさらに多額の社会保険料をとられたくないという理由で加入を希望しないパートタイマーもいると聞きます。


いずれにしても制度の公平な運用を担保できない状況下で、加入要件の緩和だけを検討することに一体何の意味があるのか、私にはわかりません。




関連記事

2011-05-20

人事制度に手をつけないリストラは失敗に終わる


景気低迷が続く昨今、経営者リストラの判断を迫られる場面は珍しくありません。


以前の記事でも触れましたが、解雇は日本ではかなり厳しく規制されています。
JALが昨年末に行った整理解雇についても不当解雇提訴されていますが、あれだけ追い込まれた状況下で綿密に手順を踏んで行ったと予想される整理解雇であっても、訴訟リスクをゼロにすることはできません。


整理解雇正当化する要素の1つとして、解雇回避努力の程度があげられますが、実際には希望退職の募集が重要視されることが多いといえます。


希望退職とは、退職を希望する社員を募って会社都合の合意退職にもっていくことです。通常、割増退職金や有休買上げ、再就職支援などの条件をパッケージ化して一定期間募集をかけます。



ところがこの希望退職、本当にうまくいった会社があるのだろうかと疑うほどいい話は聞きません。


会社はほぼ確実に、ターゲットとなる辞めさせたい社員と、何としても会社に残したい社員をあらかじめ決めています。希望退職の募集と平行して全社員と個人面談を行い、辞めさせたい社員の退職勧奨、残したい社員の慰留を全力で行うのです。


お分かりかもしれませんが、結果的には全く逆、辞めさせたい社員は1人も辞めず、何としても残したかった社員がゾロゾロ辞めていくパターンが多いといわれます。

会社が残したいと思う社員は通常、有能で市場価値が高く、再就職への不安もありません。加えて、賃金制度・人事考課制度に対して実力主義的要素を強く求めます。もしも有能で市場価値の高い社員が会社の既存の人事制度について不満を抱いていた場合、有利なパッケージで希望退職の募集があれば、転職の背中を押されたようなものです。

会社は一時的に人件費が減って窮地を脱したかと思いきや、予想以上に生産性が下がり、根本的な問題は解決されないまま、またいずれリストラの判断を迫られる日がやってくるのかもしれません。



希望退職の募集は単なるコストカット・人員削減ではなく、人材戦略の一環と考えるべきです。


賃金退職金制度、キャリアパスは会社の人材戦略にマッチしているのか

会社の求める人材像は評価制度に反映されているのか


会社の求める人材を会社に残すためには人事制度改革は必須といえるでしょう。




関連記事

関連エントリ

2011-05-14

話題のテレワーク(在宅勤務制度)


東日本大震災計画停電等によって多くの通勤困難者が発生したのは記憶に新しいところですが、その影響もあって、会社に出勤せずに業務を行えるテレワーク(在宅勤務制度)が注目を集めています。


震災後、在宅勤務支援サービス(※自宅のPCから会社のPCを遠隔操作)を提供するNTTコミュニケーションズには、問い合わせが通常の約5倍に急増したとのことです。

以下参照
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20110404-OYT8T00219.htm



テレワークとは、PCやインターネットを活用して会社以外の場所で業務を行う制度で、厳密には外勤型のモバイルワークと、内勤型の在宅勤務に分かれます。

もともとはワークライフバランス(仕事と家庭の両立)の取り組みの一環として導入されることの多かった制度であり、資生堂育児介護との両立社員を対象として昨年導入を発表した際などは話題になりました。



メリットとしては以下が考えられます。

<企業側>

<社員側>

  • 通勤による負担が軽減される
  • 余暇時間が増える
  • 育児介護などを理由に退職しなくて済む


そして上記に加え、交通網混乱の緩和、電力不足長期化への対策、今後の災害時への備えとして、テレワークの導入を本格的に検討する企業が増えている状況です。



注意すべきなのは、テレワークのデメリットとしてよく言われる以下の事項です。

なかでも重要なのは、在宅勤務社員の労働時間管理です。


テレワークにおいては、仕事と仕事以外の時間の区別が曖昧になりやすく、労働時間の把握が困難であることから、事業場外みなし労働時間(実際に何時間働いたかに関わらず、あらかじめ決められた時間働いたとみなす制度)を使うことが多いかと思われます。

この事業場外みなしを運用する際に気をつけたいのは、事業場外みなしの要件が、

労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき

となっていることです。

つまり、始業・終業の都度メールや電話で会社に連絡させたり、勤務時間中は常に連絡がとれる状態にすることを義務付けたり、あるいは業務について会社が在宅社員に対して随時細かく指示を行う場合には、労働時間を算定し難いとは言い切れず、事業場外みなしが認められない可能性があるわけです。


また、テレワークは、会社の管理が行き届きにくいため、長時間労働になりやすい傾向にある点についても、会社の安全配慮義務観点から対策が必要といえるでしょう。



関連記事

2011-05-09

残業代紛争は嵐の前の静けさなのか


会社が労働者から未払い残業代の請求を受ける案件がここ数年急増しており、今後さらに増加すると言われています。その要因の1つとしてあげられるのが、大量の弁護士の参入です。


いま弁護士業界は、司法制度改革によって司法試験の合格者が急増し飽和状態にあるというのを聞いたことがある方も多いのではと思います。

そして近年、そんな供給過剰な弁護士の受け皿となっていたのが、サラ金に対する過払い金返還請求です。これは利息制限法と出資法がそれぞれ定める上限利率の差額(グレーゾーン金利)にあたる利息を請求する仕事で、専門にする弁護士にとっては、はっきり言ってドル箱でした。

しかしながら、最近は過払い金も請求し尽くしてきて、そろそろ収束とも言われています。
当然、過払い金請求に代わる収入源が必要となるわけですが、そんな弁護士業界が、ポスト過払い金請求の有望株として狙っている分野の1つが未払い残業代請求であることは間違いなさそうです。最近は、残業代請求を促す法律事務所のウェブサイトや電車広告も、増えてきたように感じます。




そして先日、日弁連日本弁護士連合会が全国の弁護士を対象に行う残業代請求をテーマにした特別研修会の情報を見つけました。
(※研修会自体は、3月17日に予定されていた為、震災の影響を理由に中止となりました。)


以下、日弁連公式サイト研修会ページより引用

未払残業代請求事件は、弁護士が扱う労働事件の中で重要な一分野です。

労働時間の管理、残業代の支払いに対する意識が必ずしも高くない企業が未だ散見される一方で、労働者の権利意識は高まっており、退職などを契機とした残業代請求事件の増加が予想されます。

従来は労働問題を扱う機会の多くなかった弁護士であっても、今後は、残業代請求の基礎を理解しておく必要性が高まってきているといえるでしょう。

引用ここまで



いよいよ来そうだなという実感です。
弁護士でさえ就職難と言われる状況のなか、日弁連も未払い残業代問題を現実的なターゲットとして真剣に考え、本格的に動き始めたということでしょうか。



特に中小企業常態化するサービス残業
企業側の意識の低さは、請求側にとってはむしろチャンスといえるでしょう。
何も対策をとらずに昔の感覚でサービス残業をさせている会社は、さすがにそろそろ腰を上げた方がよさそうです。

2011-05-04

サマータイムの適切な運用


夏の電力不足に対応するため、サマータイム制度の導入を決める企業が増えているようです。



東京証券取引所ソニー森永乳業三菱ふそう伊藤園コナミ、ユニチャーム、日本製紙パナソニックが既に導入を決めていたと思います。
伊藤園はさらにクールビズの期間を前倒ししたうえ、ポロシャツ勤務を認めるそうです。)


これらの流れは従業員の節電意識を高めることにもつながるし、
一定の節電効果が見込めるのは間違いないでしょう。



一方で

  • サマータイムによる節電効果はあまり期待できない
  • 節電効果は「休日取得の分散化」による場合の10分の1以下
  • 昼休みを2時間にした方が、ピーク時の電力削減に大きな効果がある

などの意見もあります。
これらについては、効果の見込めるものから各社ができる事をやっていけばよいと思います。



しかし、最も気になるのは、

サマータイムを導入して始業時刻を繰り上げたのに、退社時刻が以前と変わらず、結局残業時間が増えただけというパターンです。

サマータイムを導入していない取引先などがあれば、自分だけ早い時間に帰れない場面もあるでしょう。従業員一人あたりの業務負荷が増えているこのご時世に、出社時刻を早めたからといって帰宅時刻も早くするなんて器用なことが簡単にできるのでしょうか。


サマータイムの名のもとに労働時間が長くなれば、従業員の不満が高まるのは当然ですが、そもそも節電どころか使用電力増加、やらない方がよかったっていう話です。

制度を導入するにあたっては、会社は始業時刻繰り上げ周知を行うだけではなく、繰り上げた時間分の残業が行われていないかを管理し、制度の適切な運用を徹底させていくことが求められます。


なお、サマータイムの導入は労働条件の変更にあたりますので、就業規則に規定がない場合は改定が必要になる事をお忘れなく。




関連記事

2011-05-02

雇用調整助成金 確かに支給要件は緩和されましたが


昨日の記事に関連しますが


震災により従業員を休業させる場合の補償については、
ハローワークによる失業給付の特例か、あるいは雇用調整助成金中小企業緊急雇用安定助成金含む)によって対応することが可能といいました。

特に雇用調整助成金は支給要件の緩和も行われており、ハローワークの窓口でも勧められるようです。


経営者が真っ先に考えること、
それは、「いくら補償してもらえるのか」

と説明を受けることが多いと思います。



従業員の生活に配慮する経営者は、助成金を選択するのではと思われますが、ここで注意してほしいのは、
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動が縮小した場合にもらえる助成金であり、
震災直接的な影響によるものは助成対象にならないということです。
つまり地震津波で事業所や工場・設備が壊れたことが事業活動縮小の直接的な理由である場合には適用されないのです。


以下、厚労省の資料参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014uzs-img/2r98520000018wbq.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014uzs-img/2r98520000018wc6.pdf



関与先の会社がハローワークの窓口で雇用調整の相談をした際に、この辺の説明がきちんとされていないケースがあったのですが、東北の役所の現場は相談者が詰めかけて通常時のようなまともな対応はできていないようです。

実際に私も失業給付の特例の件で東北のハローワークの説明に矛盾点を感じ、その件について労働局に電話で追及したところ、元ハローワークの所長という方が電話口にでて、
「実はいま現場は混乱状態で、正直よくわかってない者も窓口で対応しなければ回らない状況」
と恐縮して話していました。

そりゃあそうです。当然です。


皆様、助成金の支給要件にはご注意を。



関連記事

2011-05-01

休業中・休職中の社会保険料の取扱い


東日本大震災による影響で当面事業所を休止し、従業員を休業させている会社が多数あると思われます。

休業中の補償については、ハローワークによる「失業給付の特例」、あるいは「雇用調整助成金」を利用することで、ある程度対応することが可能ですが、意外と抜けてしまうのが次の点です。



従業員を休業させても社会保険料健康保険厚生年金介護保険)は当然発生します。
通常、社会保険料の従業員負担分は給料から天引きされますが、失業給付の特例を使った場合は、ハローワークから従業員本人へ給付金が直接振り込まれるため、会社が従業員負担分を徴収することができません。

1〜2ヵ月程度の休業であれば、休業明けの給料で未徴収分を控除することもできなくはありませんが、長期にわたる休業の後、従業員に対して溜まった多額の保険料をまとめて払ってくれという訳にもなかなかいきません。

年金事務所からの保険料の請求は毎月会社に普通にいきますから、従業員からきちんと徴収しておかないと、結局従業員の分まで会社が負担することになりかねません。
(※被災地の企業について社会保険料納期限の延長措置はありますが、減免措置はありません。)
 ⇒記事執筆後、厚生労働省より減免措置が発表されました。


対策としては、休業・休職に入る前に従業員との間であらかじめ本人負担分を毎月会社に振り込む等の取り決めをしておくことです。

従業員にとっても、退職して国民健康保険国民年金に加入するより、会社に籍を残して社会保険料の半額を会社に負担してもらう方が当然メリットがあります。このことを説明してきちんと理解してもらい、従業員が自身の保険料を負担すべきことを納得した状態で振り込んでもらうのがよいでしょう。



この社会保険料の取扱いについては、震災に限らず、平常時の私傷病休職の際に傷病手当金を受給する場合についても同様のことが言えます。あらかじめ休職中の社会保険料の取扱いについて就業規則および休業・休職願の条文に規定しておくのがベストです。


ちなみに育児休業期間中は申出により社会保険料が免除になるため、この問題は生じません。

なお、労働保険料(雇用保険料)については、賃金に応じて発生する保険料であるため、休業・休職中の賃金がゼロであれば従業員負担分の取扱いの問題は生じません。




関連記事

Connection: close