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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2011-07-24

若者の雇用を直撃する「2013年問題」


最近、「2013年問題」の話をよく聞きます。


サラリーマン年金の受給開始年齢が生まれた年によって60歳から65歳へ段階的に引き上げられているのは、ご存知の方も多いと思います。

60歳から支給される年金定額部分報酬比例部分に分かれており、定額部分については既に65歳まで引き上げられているのですが、残る報酬比例部分についても今後引き上げられ、最終的に年金を受け取れるのは65歳からになります。

そして、60歳で年金を受け取ることができない最初の世代(※生年月日が昭和28年4月2日以降の人)が初めて60歳を迎えるのが2013年というわけです。



ご存知のように国の年金財政は相当に厳しい状況にあり、その為厚労省年金の受給開始年齢を60歳から65歳へ引き上げる対策を進めてきました。

それに対応するにように企業が義務付けられたのが、65歳までの「高年齢者雇用確保措置」です。

それまでほとんどの企業では60歳定年が運用されてきましたが、

  1. 定年年齢の引き上げ
  2. 継続雇用制度の導入
  3. 定年の定めの廃止

のいずれかの対応が求められました。

早い話、国は「65歳になるまでは面倒見れないから企業のほうで面倒みてやってくれ。」と言ってきたわけです。

多くの企業は65歳を最高年齢とする雇用制度を導入することで対応しました。



ところが、2013年問題を見据えた厚労省の企業に対する要求はさらに大きくなります。

現在、定年後再雇用制度は労使の合意によって対象者の選定基準を設け、対象者を実質絞っていますが、厚労省は今後希望者全員を継続雇用させることを検討しているようです。

将来的に年金の受給開始年齢は67〜68歳を経て70歳になるとも言われています。そうなれば「高年齢者雇用確保措置」も70歳まで引き上げられるのでしょうか。あるいは定年年齢が65歳まで引き上げられる可能性も考えられます。いずれにしても企業の人件費の負担は増える一方です。


そしてこれらは何をもたらすのか。

これまで退職していた人たちが継続雇用されたときに企業がとる行動は何か。

解雇給与引下げは当然簡単にはできません。最も簡単なのは、新たに人を採用しないことです。1番影響を受けるのは新卒採用ではないでしょうか。

ただでさえ就職氷河期と言われている若者の雇用機会がさらに圧迫されることは容易に想像できます。
(※厚労省は高年齢者雇用確保措置と若年者雇用相関関係はないと言っているようですが。)




なお、最後に再雇用制度に関連して1点注意ですが、今年4月より、継続雇用対象者の選定基準について労使協定を締結していない場合、高年齢者が退職する際の離職票の離職理由は「会社都合」による退職の扱いになります(※本人の継続雇用の希望の有無にかかわらずです)。くれぐれもご注意下さい。



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2011-07-17

更新料「有効」 最高裁判決がもたらすもの


15日、重要な最高裁判決がでました。

気になっていた方も多かったのではないでしょうか。賃貸住宅に係る更新料の有効・無効を争う裁判です。

既に地裁で10件、高裁で4件が更新料を無効と判断しており、首都圏と関西を中心に多くの訴訟が継続中でした。該当物件は100万件と言われ、無効の判決最高裁で確定すれば、過去の更新料を利子付きで借主に返さなければならなくなると考えられ、賃貸住宅業界は気が気ではなかったことでしょう。


※以下参照
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110716-00000118-san-soci


今回、最高裁が更新料が有効であるとする判断を初めて下したことによって、貸主側はほっと胸をなでおろし、借主側は大きく落胆したところですが、この判断にショックを受けた業界がもう1つあると思われます。



以前の記事で、弁護士の急増消費者金融に対する過払い金返還請求ビジネスについて触れました。

※その時の記事です。
残業代紛争は嵐の前の静けさなのか - 人事労務コンサルタントmayamaの視点


多くの法律事務所は、いずれ終焉を迎える過払い金返還請求に代わるビジネスを模索し、そしていくつかの分野に目をつけていました。

その1つが未払い残業代問題であることは以前書いたとおりですが、それと同等か、あるいはそれ以上の有望株として更新料返還請求ビジネスに目をつけ、今回の訴訟の動きを注視していたものと思われます。

ポスト過払い金として重要なポイントは、マニュアル化して多くの事務員を動員し、大量処理をかけられるかという点が挙げられます。そしてその為には、更新料を無効とする最高裁判決が最も重要だったわけです。


その目論見は今回見事に打ち砕かれたわけですが、
はっきりしていることは、

  • 多くの弁護士司法書士を潤わせていたサラ金過払い金返還請求ビジネスは近々終息し、代わりのビジネスが必ず必要になる
  • そして、有望なビジネスと見込んでいた更新料問題は当該「代わりのビジネス」となり得ない
  • 他方、多くの中小企業においていまだ未払い残業代問題は根本的に解決されておらず、ポスト過払い金ビジネスとして依然有望な分野である

ということです。


労働トラブルは勃発した時点でおおかた勝負は決まっているものです。予防が何よりも重要であるということを何度も言っておきます。



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2011-07-10

長時間労働の代償1億円の現実

先日、某居酒屋チェーンの従業員の過労死をめぐる裁判で、地裁に続き高裁でも会社側の損害賠償責任を認める判決が下されました。


以下参照
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/d3524eb7d66dcf0e61e5292143ff76ef/


心不全で死亡した従業員は、入社後4ヶ月で平均112時間の残業をしていました。会社側は長時間労働と死亡との因果関係を否定する主張を行いましたが、結果的に裁判所は会社の主張を退けました。

賠償額は約7,860万円。会社の責任は安全配慮義務違反が根拠になりますが、注目すべきは役員4名が会社と連帯して賠償を命じられたということです。かなり厳しい判決です。

役員の連帯責任は1審においては会社法第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)を根拠に、そして今回の2審では民法第709条の不法行為責任も認められる結果になりました。これに対して会社役員「現場の労働時間役員が把握するのは難しい」とコメントしています。

また、この会社では、基本給に80時間分残業手当が組み込まれ、時間外労働として80時間勤務しないと不足分が控除される仕組みになっていたとのことです。

この裁判は今後最高裁まで争われることになっています。



ではポイントをいくつか



行政の発表する過労死認定基準(※正確には「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」)では、発症前1ヶ月間に月100時間、または発症前2〜6ヶ月間を平均して月80時間を超える時間外労働がある場合は業務と疾患発症の関連性が非常に高いとされています。現実には月80時間のラインを超える残業をさせた場合、「死亡は長時間労働のせいではない」という会社の主張はなかなか通用しないのです。


また、労働基準法第108条において、使用者の賃金台帳の調製義務が定められており、賃金台帳には労働時間数や残業時間数の記入が義務付けられています。そしてこの「使用者」とは、労基法第10条で「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定められています。要するに、法律役員に「労働者労働時間を把握しろ」とはっきり言っているのです。労働時間を把握するのが難しいという役員の前述の主張は、やはりなかなか通るものではないでしょう。


次に、80時間分の残業代を組み込んだ給与体系は驚くべきことです。「その会社では毎月80時間の残業が予定されている」ととられかねないルールです。
行政が示す時間外労働の限度に関する基準」によって1ヵ月の残業の限度は45時間と定められており、限度時間を超える残業は特別条項付き36協定の締結が必要になりますが、これはあくまでも臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に限られます。そもそも限度時間を超える80時間分の残業代を基本給に組み込むこと自体が法の趣旨に反しているとも考えられます。
(※個人的には、この状況について指導や是正を行わない行政についても、遺族から監督責任を問う訴訟を起こされてもおかしくないように思えます。)

そして、上記80時間分の定額残業代について、80時間勤務しない場合は不足分が控除されるという運用は、過去の判例に照らして明らかに違法な運用になるので注意です。


さて、
長時間労働サービス残業過労死過労自殺の温床となるものであり、監督行政は近年取り締まりに躍起になっている問題です。過労死過労自殺労災認定された場合、国から遺族に対して財産的損害の補償は行われますが、それ以外の精神的損害の補償(つまり慰謝料)として、会社は遺族から多額の損害賠償請求を受けることになると考えられます。賠償額の相場は近年の裁判では3千万〜1億円にものぼります。中小企業であれば会社存亡の危機といえる金額です。法的リスクを無視した長時間労働の代償は決して軽くはないのです。




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2011-07-04

労働条件通知書


労務関連で会社が従業員とトラブルになって相談を受ける際に、まずは雇用契約の内容がどうなっているかを確認することがよくあります。


労働基準法では、従業員を雇い入れる際に労働時間賃金など一定の労働条件を書面で明示することが義務付けられており、具体的には労働条件通知書を交付することが必要です。
(※雇用契約書を交わす方法でもOKです)

これに違反すれば当然罰則があるわけですが、それよりも困るのは労働条件を明示しない場合労使トラブルになりやすいということです。

従業員が1日何時間・週何日勤務して何日休み、それに対して会社がいくらの給料を支払うのか等ハッキリ確定させずにあいまいな口約束で雇い入れるなんてことは、自ら労働トラブルの爆弾を抱えていくようなものです。



最近でもまだ労働条件通知書を交付しない会社はあります。


入社した従業員は書面ではっきりしたものがもらえないと気になるところでしょうが、入社後いきなり 「労働条件通知書をください。」 なんてなかなか言いづらいものです。

そういう時は
「家族に見せて安心させたいのでいただけないでしょうか?」
と言えば自然にお願いできるのではないかと思われます。それでももらえない場合、その会社には明らかに何かあると考えたほうがいいでしょう。



一方で、実際のところ労働条件を隠すことによる会社のメリットはほとんどありません。

会社によっては、年次有給休暇に係る事項を従業員に見せたくないといったような「労働条件を明示すると従業員が権利を主張しだす」という考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、はっきり言ってあまり気にする必要はありません。

基本的に労働関係の法律については、経営者より労働者のほうがはるかに詳しいものです。労働条件通知書で有休の規定を明示するしないにかかわらず、労働者は有休の法定付与要件をよく知っています。労働条件を明示しても、それが原因で問題などまず起こりませんから、正々堂々と明示することをお勧めします。
(※これは就業規則でも同じことが言えますが)



なお、有期契約を更新する場合は、期間満了前に雇用契約書を使って更新手続きを行わなければ、「黙示の更新」として、期間の定めのない契約に変わったものとみなされますので十分ご注意ください。



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