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2012-01-26

滅多に来ないが来たらただでは済まない労働基準監督署の調査


一般的に経営者税金の計算には熱心ですが、労務管理にはあまり関心がありません。従って税務署対策を普段から意識している会社は多いと思われますが、労働基準監督書の調査を意識している会社は逆に稀だと思います。

例えば直近10年で税務調査が入っていない会社というのは少数派かもしれませんが、労基署の調査となると、入った記憶がないと言われても別に珍しいとは感じません。それほどに労基署の調査の頻度は低いと思います。

この理由は単純に会社の数に対して調査を行う労働基準監督官の人数が少ないということもありますし、日本において労働行政は税務行政に比べそれほど重要視されていないとも考えられます。



しかしながら、滅多に来ないというだけに、いざ労基署の調査が入ると混乱したり、予想外の膨大な出費でダメージを受けるケースも少なくないのが実情です。それだけならまだいいのですが、経営者や担当者の労働基準法に対する理解不足が原因で監督官とケンカになり、監督官の心証を悪くして取り返しのつかないことになることもあります。



労基署は「労働基準法違反」について取り締まる行政機関です。具体的には賃金残業代をきちんと払っているか、労働時間や休憩・休日は適法か、などを見ます。(労働基準法に規定のない事項、例えば解雇の有効性の判断パワハラの指導等は一切行いません。)

これは重要なことですが、労働基準法は労働行政の手続き等を定めているのと同時に刑罰も定めています。

サービス残業とか、給与一律カットとか、36協定(時間外・休日労働協定)を超える長時間労働とか、たいしたことじゃないように感じるかもしれませんが、労働基準法に違反するということは犯罪行為が既遂で成立しているということです。

「最悪でも営業停止などの行政処分だろう」と考えている方もいるかもしれませんが、労基法違反は刑事告訴がありうるわけです。

我々の業界では常識ですが、労働基準監督官は臨検監督や行政指導を行う行政官であるのと同時に特別司法警察職員としての身分をもっています。したがって監督官は会社の行為が悪質だと判断した場合、自身の判断経営者などを送検することができます。


実際送検されると何が起こりうるのか。

翌日の新聞やニュースで「労働基準法違反により書類送検」と報道されることがあるかもしれません。(送検時点で労働局より発表があるためです。)

もちろん起訴された後、有罪が確定すれば前科という扱いです。(たいていは懲役刑ではなく罰金刑ですが)

労基法違反で新聞に載ったり前科者になるとは予想だにしなかったことでしょう。



企業は労基署の調査に対してどういう姿勢をとっていくべきなのか。

現実として労働基準法を完璧に遵守していくことは不可能に近いといえます。労基法を忠実に守っている会社がほとんどないことは労基署だって百も承知です。

しかしながら、「この会社は法令に基づいて労務管理をきちんと行っていく意思がある」という姿勢を見せることがまず重要です。

監督官に対して
「そんな法律知らない」
「そんなこといちいち守ってたら経営は成り立たない」
「何で会社が従業員に対してそこまでしてやらなければならないのか」
というような口をきけば状況は悪くなる一方です。監督官は基本的に紳士的な方が多いと思いますが、敵に回せばおそらくただでは済みません。頭にきても絶対にケンカをしてはいけません。労基法に違反している時点でケンカに勝つことはできないのですから、勝てないケンカはするべきではありません。


そして会社が普段から気をつけるべきことは以下です。

労働基準法はもともと憲法生存権理念に基づいて定められた法律ですから、労働者の生活とか生命に係る事項は特に重視されます。

実際に行政指導や送検の多い事例は、賃金不払いであったり、労働安全衛生法違反であったり、生命や身体に直接影響の及ぶ案件です。近年は過労死過労自殺の増加を背景にその温床となっているサービス残業の摘発が重視されているのが現状です。(ちなみに毎年11月はサービス残業取り締まり強化月間です。)

ですから会社としてはまず労働時間・休憩・休日・休暇などを適当にせずに制度化して就業規則雇用契約書に明記し労働者に周知して規定通りに運用することです。また、タイムカードを打刻するとともに労働時間管理をきちんと行い、毎月賃金台帳を法定通り作成し、36協定を締結して労基署に提出し、残業を許可制や届出制にして残業管理をしっかり行い、残業代を抑える賃金制度や労働時間制度の導入による残業代対策についても適法に行うことです。

これらは経営状況が厳しい会社でもやる気があればできることです。そしてこれらの帳簿等を備えておけば労務管理をきちんと行っているというイメージを与えることができます。

次回は労基署調査についてさらに詳しく書きたいと思います。




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