合同労組の団体交渉申し入れを拒否できるのか

すき家を運営するゼンショーが合同労組からの団体交渉申し入れを拒否していた件で、先日東京地裁の判決を伝えるニュースがありました。

http://www.asahi.com/national/update/0216/TKY201202160656.html

最近は労働組合の主流になっている合同労組の当事者性に関する裁判所の判断であり、今後の控訴等の動きも含めて注目すべきニュースです。

今回の事件は、団交を拒否した会社に対して労働委員会が不当行動行為を認定し救済命令を発したことに会社が納得せず、命令の取り消しを求めて提訴したものでした。

会社が団交拒否した理由は、「合同労組の組合員の大半が会社の労働者ではないことから、労働組合法上の労働組合に該当せず団交に応じる義務はない」というものです。

この主張が正しいという判断になれば、全国に存在する多くの合同労組・ユニオンの現状の活動が成り立たなくなるところですが、今回の判決によれば、合同労組からの団交申し入れであっても会社は拒否できない、誠実に対応しなければ不当労働行為になる、という今までの一般的な認識に現時点で変更はないということです。


もともと日本では労働組合といえば大半が大企業における企業内組合が中心で、通常は終身雇用を前提とした正社員が組合員であったため企業と協調路線を歩んできました。しかし非正規雇用が増加した近年は、そもそも組合が組織されにくい中小企業の労働者に加え、大企業の企業内組合に入れない非正規労働者がその不安定な雇用から組合の保護を求め、外部の地域一般労組に個人加入するという形式が一般化しています。それも大概は労働トラブルが起こった後に加入します。

うちの会社には組合はないので心配ないと思っていたら、ある日突然聞いたこともない労働組合から団体交渉申入書が届き、内容を読んだら退職した元従業員がユニオンに加入して金銭を要求してきていることがわかった、なんてことは最近ではどこの企業でも起こりうることです。


会社には団交の応諾義務はあっても、労組の要求を受諾する義務はないから合同労組を恐れる必要はないとはいいきれません。会社にとって労働基準監督署よりもよほど合同労組の方が手ごわい相手になる可能性は高いと思われます。

合同労組が会社と対立するのはお互いの目的上やむを得ないことですが、礼をつくして対応し、内容については粘り強く交渉を続ける姿勢が重要だと思います。

今回の事件の団交拒否および訴訟は4年程度の年月を費やしたようですが、その間交渉は全く進まなかったわけで、これが今後の交渉にどのように影響するのかも含めて興味深い事件であると思います。