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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2012-07-30

「外資系は簡単にクビ」を安易にマネすべきでない


最近、興味深いブログの記事を読みました。「外資が簡単にクビにできる理由」についてです。

「どうして外資系企業は日本の企業と同じく労働基準法適用されているのにクビにできるのか」という多くの方の疑問に対し、外資系給与は担当する仕事内容によって決定する職務給が採用されており、「職務内容を限定して採用し、その職務を担えないことが明らかな場合の解雇解雇権濫用とはならない」と裁判所において判断される為、外資系企業が日本国内でクビを切っても違法とはならないのだと説明されています。


この説明は一部当たっていると思います。ただしこれだけを鵜呑みにして職務給制を採用し、求める能力に達していないと判断した従業員を遠慮なしに解雇していくのは危険です。ポイントは2つあります。



第一に、そもそも外資系企業は法律上の解雇に該当する行為をそんなに頻繁に行っているわけではありません。

かつて日本の労働法制をきちんと理解していない外資系企業が日本で解雇を乱発し紛争に発展するということがよくあったようですが、現在では日本の解雇規制の厳しさを外資系もよく理解しており、余程のことがない限りリスクの高い解雇は行わないと思われます。

外資系がすぐクビにするというのは、非常に強力な退職勧奨を行うということであり、労働契約の終了を一方的な意思によって通告する解雇という形式ではなく、何が何でも相手の退職の合意を取り付ける「合意退職」にもっていくのです。(※違法な退職勧奨を行っている外資系企業は少なからずあると思われますが。)

該当の労働者を呼び出し、戦力外通告を行い、おとなしく退職合意書(あるいは退職願)にサインすれば割増退職金再就職支援を約束、合意しないなら退職金は1円も支給されずに解雇、と迫ります。もちろんこの場合の解雇は根拠のある正当なものだと主張するでしょう。

この場合の退職勧奨は、相手の人格を傷つけるような言葉を口にしたり、根拠のない解雇の可能性をほのめかしたり、あるいは威圧的に脅すなどの悪質な行為がなければ、多少しつこく勧奨を繰り返したとしても即違法ということにはならないと考えられます。



第二に、担当職務を明確に限定して採用したとしても、その後の能力不足による解雇が必ずしも認められるというわけではありません。

確かに過去の判例から、特定の地位や職種を前提に高い能力を期待されて入社したキャリア採用・管理職採用などであれば、通常の年功制(職能給制を含む)の新卒採用等の労働者に比べ、会社側に求められる解雇回避努力の程度は緩やかであるとされています。

この点日本型の職能給より職務給を運用した場合の方が能力不足による解雇が認められやすいといえなくもありません。ただしこれは、解雇を行う前にまず他の職種や下位の職位へ配置換えをするほどの義務までは負わないということであり、指導・教育を含めた解雇回避措置自体が全く必要とされないということではありません。

さらに会社側は、労働者が担当職務を担うほどの能力を有していない点について主張・立証責任を負いますし、採用にあたってはかなり細かく条件面を書面化したうえで内容について十分に合意しておく必要があります。

日本の解雇に対する規制は本来それほどまでに強いのだということを、特に労務管理面がまだまだ未整備だという企業は誤解のないよう正しく認識すべきであると思います。



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2012-07-24

事業主があっせんに応じることにより労働審判を回避するメリット


労働トラブルが起こった際に最も重要なことは冷静さを失わないことです。

オーナー企業の場合は特に顕著だと思いますが、労働者が会社に対し何らかの具体的な措置を講じてきたときに事業主側が「雇ってやったのに恩を仇で返された」とばかりに感情的になり、徹底抗戦の構えをみせることが少なからずあります。

しかし、労働事件において、徹底抗戦して会社にとってプラスになることはまずありません。できることなら多少妥協してでも早急にカタをつけてしまう方がはるかにいいといえます。


労働者が講じる手段の1つに、労働局の行う「あっせん」という話し合いの手続き(裁判外紛争解決手続き)がありますが、労働者があっせんを申請した場合の会社側の参加率はかなり低いといわれています(大体6割くらい)。両者の参加によってあっせんが開始されたとしても、和解に至る確率もまた低いのが現状です。これは、あっせんへの参加が原則自由であること、そしてあっせんを取り仕切る「あっせん委員」に裁判官のような判定を行う権限が与えられていないことに起因します。


「どうせあっせんに強制力はないのだから積極的に話し合う必要も、譲歩する必要もない。」

と会社が考えるのも理解はできます。

ただし、ぜひとも注意したい点があります。


あっせんを申請する労働者の多くは、その先の労働審判を見すえた上で行動しています。そして、労働審判申立書には、それまで当事者間においてされた交渉その他の経緯を記載することになっています。労働者は当然そこに、事業主があっせんに応じなかった事実を記載し主張してくるでしょう。

つまり、労働者は紛争を解決すべく和解に向けて努力をしたが、会社側が誠意をもって対応しなかったために労働審判の申し立てに至ったという判断材料をもとに労働審判委員会が心証を形成してくる可能性も十分に考えられますし、さらにその後の本訴に影響を及ぼす可能性も否定はできないのです。


また、現状ではあっせんにおいて合意に至った場合の解決金の金額は低水準となっていますが、労働審判に進めば法的争点が明確にされ判例を踏まえたうえで審理が行われることになります。これはつまり、あっせんのときよりも会社にとって不利な結論になる可能性が高くなることを意味します。あっせんの段階で和解に応じていれば30万円の解決金で済んだところ、労働審判に進んだ為に100万円を支払うはめになったというような話は決して珍しくないのです。



もちろん会社側が「とにかく譲歩をして和解するつもりはない、費用がかかってもいいからどうしても白黒はっきりつけたい。」という考えをもっているのであれば、無理にあっせんに参加する必要はないかもしれません。むしろ全く譲歩をする意思がないのにあっせんに参加することはかえって不誠実な行為とも考えられます。

一刻も早く紛争を収束させ本業に専念したい、和解金額を抑えたいという場合には会社側も譲歩の姿勢をみせて話し合いに応じることこそ実はメリットがあるということがまだまだ理解されていないように感じます。

2012-07-13

「40歳定年」構想の本質を考えてみる


昨日、当ブログに数時間のうちに凄まじい数のアクセスがあり、リンク元をたどったところ、ヤフートピックスの「40歳定年」の記事からのアクセスであることが判明。


※繁栄のフロンティア部会報告書
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20120706/shiryo3.pdf:title


野田佳彦首相を議長とする国家戦略会議の分科会が、将来の構想を報告書にまとめたようで、かなり話題になっているようです。

皆が生き生きと新しい分野にチャレンジでき、人材が最大限活用され、安心して子育てもできる環境も整い、家族を含めたコミュニティーの互助精神による心の豊かさと、高くはなくとも緩やかに成長する経済の豊かさが両立している社会

このような社会を形成するために、40歳定年が必要なんだそうです。
この件についてちょっと書いてみたいと思います。



定年を40歳にするとはどういうことか

定年とは、ある一定の年齢に達した時に自動的に労働契約が終了する(退職)という労使の合意によって決められる制度です。

定年を定めるか定めないかの判断は企業の自由であり、また、定年を何歳にするのかも法律で決まっている最低年齢(現行60歳)をクリアすれば任意に決められます。

「定年を何歳にするかなんて国が決めることじゃない。」という意見がありますが、国は定年年齢を決めているのではなく、定年を企業に好き勝手に決めさせると雇用政策上まずいという判断から最低年齢という規制をかけているわけであり、国が一切口出ししないということであれば、企業は25歳であろうが30歳であろうが自由に定年を設定できることになります。



なぜ定年を下げた方がよいという話がでてくるのか

建て前の話は置いときまして。

日本では、成果主義が浸透したといわれる近年でも年功序列型の賃金体系が依然として残っており、若年層に比べて圧倒的に高い中高年労働者賃金は企業にとって大きな負担となっていますが、一方、能力面で見ると、40歳以降の能力・スキルの伸びは40歳以前に比べ鈍化するのが一般的であり、賃金とパフォーマンスが比例しないものと考えられます。(※中高齢者雇用が若年層の採用抑制、昇給の抑制に影響していることは否定できません。)

はっきり言えば、企業は40歳以上の労働者のうち有能なパフォーマンスの高い人だけを都合のよい時まで残し、それ以外は辞めてもらいたいと考えていますが、現在の日本の解雇規制の中ではそれは容易ではありません。

年功賃金解雇規制を前提とする日本の雇用システムにおいて、有無をいわさず自動的に高齢労働者雇用関係から外すことのできる定年という制度は、企業にとって今までもこれからも必須のものといえますが、現行の定年年齢を引き下げることで企業側にとってより効率のいい人材戦略をとっていきたい(つまり安くていい人材だけを確保し、それ以外は放出)という財界からの要請があるのではと勝手に推測する次第です。



40歳定年にすれば、本当に全ての国民が75歳まで生き生きと安心して働ける社会を形成できるのか

そうなるとは思えません。

この議論の中で、将来的に雇用は有期契約を基本とすべきといわれているようです。40歳定年後はみんな有期労働契約を更新することによって75歳まで働くことを想定しているようです。これは有期労働契約というものを大きく履き違えています。

有期労働契約とは本来、臨時的に発生する業務の為に、あるいは一時的に必要なスタッフ数を確保する為に雇入れることを前提としている雇用形態であり、企業がこれに反する目的(つまり恒常的な業務に使用し、都合のよいときに更新を打ち切る目的)で有期契約労働者を利用している現状があるからこそ雇止めの問題が絶えず発生しているのです。

定年年齢を40歳とし、雇用を有期契約中心にしていくことこそ、まさに企業にとって都合のよい人材を都合のよい期間だけ使用できるという企業側の要請に即した雇用システムであり、今回掲げられている構想とは全く逆の不安定な方向へ進むものと考えられます。



40歳定年になったら中高年はみな職を失うのか

「40歳を過ぎてからの職探しがどれほど厳しいと思っているのか」という悲痛な意見もみられますが、全ての企業が一斉に定年を引き下げることになれば、パフォーマンスの悪い高給取りの社員が大勢退職となり、企業はその分の人件費を別の雇用に充てることができますので、定年再雇用になる社員も少なくはないと思われます。一方、定年再雇用されなかった社員についても別の何らかの職に就くことはある程度可能なのではないかと思われます。

定年再雇用者の中の一定数の優秀な社員は高い賃金で厚遇されることになり(イメージとしては年俸制エグゼクティブ)、そして大多数はこれまでよりはだいぶ賃金水準は落ちることが予想されます。もちろん有期契約である以上、安定性はありません。これは優秀な社員についても同様です。この意味においては確かに労働市場は今より流動化するのでしょう。



今回の報告書の構想を目指すためには本来どうするべきなのか

定年とは雇用における年齢差別です。年齢のみを理由に雇用関係を終了させるのです。それがいいか悪いかはともかく、新卒一括採用、年功賃金解雇規制という雇用システムの中で、定年という制度が果たしてきた役割は大きいといえます。

今後、年齢に関わりなく能力・技能によって広く高齢者まで活躍できる社会を目指すのであれば、これは年齢差別をなくすということであり、定年規制を廃止するのが本来の正しい方向性ではないかと思います。定年を40歳にするということは、むしろ年齢差別を強化することとも受け取れますし、それと有期雇用契約を中心にしていくという考えとの間にはもはや整合性は見られません。

また、定年を廃止することと併せて採用や退職、賃金の決定等についても年齢的要素を排除する必要があり(ある意味においてはアメリカの職務給的運用)、何よりも現行の解雇規制に手を加えることが必須であると思われます。

年齢差別を廃止し、20歳でも80歳でも能力があれば正当な評価を受けて活躍できる、それは反面、定年までの雇用保証というものはもはやなく、本人のパフォーマンス次第では退場を余儀なくされることも当然あり、しかし不当な解雇・雇止めはもちろん許されず、そして流動性のある労働市場が存在する、そのような社会にするために果たして「40歳定年」が必要なのでしょうか。



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2012-07-11

算定基礎届の呼び出し調査


社会保険の算定基礎届提出の季節ですが、昨年くらいから調査形式による提出が増えてきていると聞きます。今年度は私の関与先にも年金事務所からの呼び出し通知がきました。

5年前の「宙に浮いた年金記録」「消えた年金記録」の年金記録問題の処理がある程度片付いてきたので、厚労省は以前行っていた算定基礎届の調査を復活させたと聞きます。

毎月の月額変更等が正しく行われているか、報酬月額が正しく届け出されているかということはもちろん大事ですが、この調査の一番の目的は加入漏れのチェック、つまり加入義務のある労働者を未加入にしていないかというところです。

届け出の際は賃金台帳や出勤簿の他に、源泉所得税納付書の領収証書を持参します。領収証書には人数が載っていますから、賃金台帳から未加入のフルタイム労働者を外してごまかそうとしても数字を突き合わせればバレる可能性大です。もちろん未加入が発覚すれば本来の取得日まで遡って加入手続きをさせられるのが原則です。


以前の記事でも触れましたが、

厚生年金の未加入が今後厳しくなる件 <厚労省が告発・企業名公表を検討> - 人事労務コンサルタントmayamaの視点

社会保険の未加入問題については今後厳しくなる一方と考えられます。通常の社保調査についても4年に1度は実施していくことを政府は目標に掲げています。


算定基礎届の呼び出し調査に関しては、今後4年間で全事業所を行う予定との話も聞いていますが、大企業についてはなかなか現実的には難しいのではないかと思います。中小零細は近い将来間違いなくくるものと思って普段から加入判断や届出について注意すべきであると思います。



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2012-07-03

派遣法改正の余波と人材派遣企業の動き


今年の3月28日に可決、成立した改正労働者派遣法の施行日が10月1日に決まりました。

47NEWS(よんななニュース):47都道府県52参加新聞社と共同通信のニュース・情報・速報を束ねた総合サイト


当初法案にあった「登録型派遣の原則禁止」と「製造業派遣の原則禁止」はどちらも削除され、骨抜きの改正と批判されていますが、今回の改正法30日以内の期間を定めて雇用する日雇い派遣を原則禁止しています。これは派遣元と派遣先双方とって実質かなり厳しい規制となります。

さらには「グループ企業内派遣の8割規制」、「離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止」、違法な派遣が行われていた場合に派遣先に適用される「直接雇用申込みのみなし規定」(※改正法施行日の3年後に施行が延期されました)など、企業にとって相当に影響のある事項を多く定めた法改正であり、決して軽く考えられるものではありません。


違法派遣の場合の「みなし雇用」制度については、「雇用契約申し込み」義務を定めたに過ぎない現行法下においても多くのトラブル、訴訟が起こっている状況を考えると、3年後の制度施行後はみなし雇用の有効性をめぐってさらなるトラブルの増加が予想されます。

この辺りは、2年前に実施された専門26業務適正化プランもかかわってくるところでしょう。26業務に該当しないものと判断されれば、派遣期間3年オーバーであれば即違法、みなし雇用となる可能性もあるわけです。派遣先企業にとってこのインパクトは大きいです。



法案成立後、派遣先となっていた企業の多くは今後の直接雇用を見据えた行動を進めているものと思われます。

派遣社員を直接雇用に切り替えた場合には、労働保険や社会保険の加入、給与計算や源泉徴収、その他労働基準法等の労働関連諸法令に係る様々な労務管理雇用管理が必要となり、事業主としての大きな責任が発生することになります。

他方、人材派遣会社にとっても派遣機会の減少と業績の低下が考えられるわけですが、同時に直接雇用の増加に伴って労務管理業務の需要が増えると見込み、労務管理代行サービスに転換する動きがあるようです。

シスプロ、労務管理代行を強化 派遣法改正にらむ  :日本経済新聞

記事によれば、人材紹介企業のシスプロは、顧客企業が求める人材の紹介と、労働条件通知書の発行や年末調整など直接雇用に伴う煩雑な事務手続きの代行を合わせて提供できるサービスを扱っており、顧客企業が負担するコストは従来の人材派遣のケースとほぼ変わらないとのことです。


この記事を読んで思ったことは2つ。

1つは、労働者を直接雇用する事業主の法的な責任と、派遣先企業としての法的な責任の重さは比較になりません。例え発注主が従来と同水準のコストで人材を確保できたとしても、事務手続きを代行してもらえたとしても、事業主としての法的責任が軽減されるわけではありません。ともすればこの点において「派遣=(紹介+事務代行)」と誤解される可能性が否定できないことには懸念を抱きます。


2つ目は、社会保険労務士としての立場からいえば、労務管理代行というサービスは社労士と業務が少なからず重複するということです。気を引き締めなければなりません。

しかしながら、前述の人材紹介企業の公式サイトによると、「雇用業務代行」と称して以下の記述が確認できます。

労務管理業務

入退社、転勤、転属などの管理、各種保険対応、法的申請等労務全般の業務を代行します。

入退社、転勤転属管理   社会保険対応

入退社時諸手続き     労務上法的申請対応


入社時各種手続き業務

雇用保険資格取得/社会保険資格取得/通勤手当給与振込口座


これらは社労士法第2条に定められた業務が含まれており、仮にこれらを会社が業として受託すれば明らかに社労士法違反ということになり、社労士会が目を光らせなければいけない点だと思います。




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