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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2012-10-24

インターンシップの違法性と注意点


近年、インターンシップに参加する学生は本当に増えています。

インターンシップの活用は、企業ニーズと学生の抱くイメージのミスマッチの回避につながりますし、企業側は選考過程に組み込んで優秀な学生を採用するチャンスを得られるなど様々なメリットがあります。


しかし、インターンシップを使うのであれば、その法的な問題点にはぜひとも注意しておかなければなりません。


勘違いされている方もいますが、インターンシップとはあくまで「就業体験」であって労働ではありません。「試用期間」だとか「OJT」などとは根本的に異なるものです。

もしインターン実習生の就業実態が労働基準法上の労働者に該当するということになれば、労働関連諸法令適用され、最低賃金の支払い義務が発生するほか、実習中に起きた事故や災害・ケガ等について労災保険適用させなければならなくなります。

なかにはインターンシップを「低賃金 or 無償でこき使えるアルバイト」のような感覚で利用する悪質な「名ばかりインターン」も現実にあって問題視されています。


では、どういう場合にインターンシップは違法となるのか、企業はどんな点を注意すればよいのかについては、行政通達インターンシップ労働者性について、ある程度明確にされています。


1.実習生が企業から指揮命令を受けているなど、使用従属関係が認められる場合
2.実習生が本格的に業務を遂行するなど、生産活動に従事している場合(作業による利益・効果が会社に帰属する場合)



これらに該当すれば、労基法上の労働者とみなされる可能性が高いといえます。

さらに、以下の事項は労働者性が肯定される判断材料となります。

3.実習生に支給される手当が、一般従業員の賃金とあまり変わらない水準の金額である場合
4.会社の規則に違反した実習生に制裁が課されている場合
5.一般従業員の就業場所と区別されず同じ場所で現場実習が行われている場合




ここまで読んでお分かり頂けると思いますが、インターンシップを適法に運用することは実際、企業にとって相当にハードルが高く、事実上ほとんど実習生に「仕事」をさせることはできません。

常に実習生の横で指導・教育を行える担当者を配置するなど、十分な人的余裕が企業になければそもそもインターンシップは成立しないのです。

内容についても見学や説明をメインとし、現場・生産ラインに入らせる場合は本当に軽度の補助的な作業にとどめなければなりません。

例えば、営業などは会社の利益に直結しますから、せいぜい担当者の横で見学する程度にすべきですし、電話応対や接客についても指導者が横について監督している状態で体験的に試してみる程度にとどめ、実習生が独立して行う事のないようにすべきです。製品の製造やPCを使った製作は当然ながら生産活動に該当しますし、資料を作成する程度であっても、その資料が業務で使われるのであれば生産活動とみなされます。


「そんな実習は物理的に無理だ」
「そんな薄い体験では意味がない」

ということであれば、悪いことは言いませんがインターンシップという形式はとらずに、短期のアルバイトとして雇用し、最低賃金以上を支払い、労災等を含めた使用者としての責任を全て負うかたちの方がよいと思います。


ちなみにインターンシップが認められた場合(つまり労働者性が否定された場合)、労災保険適用は不要となりますが、そのこととは別に企業には安全配慮義務が求められることになるので、実習生のケガや病気、死亡事故、その他セクハラパワハラ等に関して企業側の過失が認められた場合には損害賠償責任が発生する可能性があります。この点は注意です。

逆に学生側も、企業の保有する機器・施設等に対する損害、機密保持等に関し賠償責任が生じ得るということを忘れてはいけません。




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2012-10-18

週刊新潮 定年再雇用記事でコメントしました


本日発売の週刊新潮
f:id:kmayama:20121018160609p:image

サントリーが制度化でも「65歳定年制」の短所・難点・デメリット」の記事でコメントしました。



今回の記事の発端はサントリーHDが来年からの高齢法改正に先立ち、いち早く定年を65歳に引き上げる旨を発表したことです。

※詳しくは以下のニュース参照
ページが見つかりません - SankeiBiz(サンケイビズ):総合経済情報サイト


サントリーが定年を引き上げたのはいうまでもなく企業イメージをアップさせるとともにESを向上させ、人材戦略を優位に進める為だと考えられます。

今回の人事制度改定にあたっては、60歳未満の昇給の抑制、新規採用の抑制などは一切行わないということであり、称賛に値するものだと思います。さすが人を大切にする経営のサントリーです。

このほか、最近のニュースでは定年再雇用後の賃金を引き上げるという動きが大企業を中心に広まっているという話もあります。

ここで注意すべきは、これらのニュースに見られるような動きはあくまでほんの一握りの企業の事例であり、圧倒的大多数の企業においては65歳までの継続雇用義務付けは大きな足かせとなって今後の経営に影響を及ぼし、結果的には若い世代昇給抑制、新規採用の抑制につながり、場合によっては再雇用者が自主的に退職する方向に向けて企業が強引な退職勧奨を行うケースが増加していくことが予想されます。

さらに、今回の記事では触れられていませんが、継続雇用義務について果たしてどれだけの企業が法令に従うのか疑問が残りますし、法令に従わない企業に対して監督行政はきちんとした対応をとれるのか、これまでのような無法地帯にはならないのか、課題は山積みです。

現在、国会で指針案が提示されている継続雇用の例外規定についても、「本当にこんなんで大丈夫なのか?」と思えるような内容ですが、これは後日また書きます。実務家の立場から言うと、定年再雇用がらみの労働トラブルは今後確実に増えていくと思います。

2012-10-16

給与計算は税理士、社労士、アウトソーシング会社、どこに委託すべきなのか


自社の給与計算業務を外部にアウトソーシングしようと考えた場合、委託する相手の選択肢は税理士社会保険労務士給与専門のアウトソーシング会社など色々考えられますが、一体どこに頼むべきなのかいまいち判断しかねるものと思われます。

率直にいって従業員数が数名程度の小規模な会社で、かつ社会保険料などの細かい点にはそこまでこだわらないが安い方がよいということであれば税理士に委託するのがよいと思います(源泉税はプロなので最も正確です)。

小規模な会社は必ず顧問の税理士をつけているものであり、顧問税理士であればほとんどサービスで(無料 or 顧問料プラス5千円〜1万円程度)で給与計算もやってくれる場合があります。

ただし、税理士によっては給与計算を全くやらない、またはあまり積極的には対応しないというケースもあるかもしれません。給与に対応しない税理士はどちらかというと事務手続的な業務よりもコンサル業務に重点を置いている可能性があります。

また、労働保険・社会保険などの手続きについても対応する税理士はいます。これは厳密にいえば社労士法違反になりますが、現実にはあまり問題になることはありません。ただし、専門外であることから手続きの正確さにおいては保障できませんので、やはり正確性にはこだわらる場合は社会保険労務士に頼んだ方がよいと思います。



会社の規模が十数人〜数百人になっていった場合、また、数名であっても保険料残業代の正確さを求めたいという場合には社労士に委託した方がよいと思います。

なぜなら給与計算業務において最も間違いが散見される箇所が、社会保険料の計算、および労働時間等の計算であり、これらを専門領域としているのが社会保険労務士だからです。

社会保険料の計算については、毎月の月額変更が本当に法令通り正しく行われている会社は意外と少ないですし、他に以下のような点について間違いが多いと思われます。

社会保険料の控除のタイミング(入社・退職時、育休開始・終了時、64歳・70歳・75歳到達時など)
介護保険料の控除のタイミング(海外出向時、40歳・65歳到達時など)
退職月の賞与の社会保険料
退職後の賞与の雇用保険料
定年到達時の同日得喪


勤怠集計面においても、残業時間(法定内・法定外)のカウント方法、変形労働時間制の残業集計、残業代単価と月平均所定労働時間数の計算方法、所定休日と法定休日の取扱い、振休と代休の取扱いなど、社労士でなければなかなか正確に計算できない点が多々あります。

また、労働保険・社会保険の手続き面についても、数名の会社であれば入社・退社時の手続きくらいしか発生しませんので税理士でも十分対応できますが、規模が大きくなれば様々な手続きが発生しますので、給与計算と併せて社労士に委託する方が効率的だといえます。



さて、企業規模がさらに拡大し、千人を超えるような規模になってきたら、はっきり言って社労士の手に負えなくなってくると思われます。

社労士は通常、パッケージの給与計算ソフト(or 特有の社労士システム)によって業務を行うのが一般的ですが、千人規模の会社になれば、パッケージよりも独自の給与システムを構築するのが適切と考えられますから、システム開発から給与計算実務までトータルで手掛ける給与計算アウトソーシング業者に委託するのがベターだと思われます。

このようなシステムに強い給与計算会社であれば、勤怠システムからウェブ給与明細まで連携したシステムでサポートしていますし、システムに問題が発生しても迅速に対応してくれます。また、これらの業者は一般的に税理士社労士よりも大規模組織化されている為、人員面においても安定しています。

ただし、このようなアウトソーサーは、素人同然のような経験の浅いスタッフをマニュアル教育によって大量動員する手法をとることが多々あり、実務能力面においては疑問を禁じえない業者も実在します。

その意味では、委託の前にシステム・組織面だけではなく、スタッフの実務能力、品質面を十分に精査することをお勧めします。もちろんアウトソーシング会社が労働保険・社会保険の手続きを代行すれば違法となることはいうまでもありません。




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2012-10-12

業績改善プログラム(PIP)を使った解雇は日本では通用しない模様


外資系企業がリストラのためによく使うと言われる「業績改善プログラム(「Performance Improvement Program」通称:PIP)」という手法があります。

退職勧奨に応じないリストラ対象の社員に対して目標を与え、面談を繰り返して達成状況を確認しながら指導を行い、業績改善を図っていくという建て前で、実態は合法的な退職勧奨の域を越える圧力労働者に与え続け、強引に自主退職の方向にもっていくというものです。

通常、与えられる目標は達成不可能と思われるハードルの極めて高いものであり、達成できなければ強く責任を追及されますし、仮に目標を達成できたとしても次々と困難な目標が提示されます。業績改善プログラム(PIP)はいったん始まったら、おそらくターゲットの労働者が会社を辞めるまで終わりはありません。

意地でも退職勧奨に応じない労働者に対しては、一連の指導・教育の過程を解雇の要件である「解雇回避努力」の事実として利用することにより、会社が一方的な解雇に踏み切ることもあり得ます。



先日、次のようなニュースがありました。
ページが見つかりません - SankeiBiz(サンケイビズ):総合経済情報サイト

判決によると、男性は(中略)週1本の独自記事や、月1本の編集局長賞級の記事などを要求する「業績改善プラン」に取り組むよう命じられた。

 同社は22年8月、記事本数の少なさや質の低さを理由に解雇したが、光岡裁判官は「労働契約の継続を期待できないほど重大だったとはいえず、会社側が記者と問題意識を共有した上で改善を図ったとも認められない」と指摘。「解雇理由に客観的な合理性はない」と判断した。


記事によれば、「月1本の編集局長賞級の記事」を業績改善の目標として与えられたようです。その過程で指導が繰り返し行われたのか、あるいは退職強要行為はあったのか等は記事からは一切不明ですが、最終的に目標が達成されなかったと判断され、能力不足を理由に解雇されたようです。


日本においては、能力不足や勤務成績不良を理由とする解雇はほとんど認められません。能力不足などが重大なものであり、実際に業務に支障がでていて、指導・教育を繰り返し行ったにもかかわらず改善しなかったことが前提になります。解雇は最後の手段として行使されなければならないからです。

会社は指導・教育の事実を立証するだけでなく、能力が平均より著しく劣っていること、どんなに指導・教育をしても向上の余地がないことを証明しなければなりません。

上記の記事でいえば、「月1本の編集局長賞級の記事」を書けなかったことをもって能力が平均より著しく劣っているとは到底いえませんし、それが雇用を継続しがたい重大な事由になるはずもありません。

いくら指導・教育を繰り返したと言ってみても、目標があまりにも高すぎて、能力向上の余地が本当にないのか判断つきませんし、それで「解雇回避努力が尽くされた」と主張したところで無理があり過ぎです。



勤務成績下位者を毎年一定数リストラすることによって新陳代謝をはかり続ける外資系企業にとって業績改善プログラム(PIP)は必要不可欠なんでしょうが、日本で解雇要件を満たす目的で使ったとしても期待する効果は実際得られないことがよくわかるニュースだと思います。




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2012-10-08

健康保険組合の編入の実際


健康保険と言えば、一般的に中小企業全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」に加入しますが、グループ企業や同業種の企業が集まって運営する健康保険組合協会けんぽよりも保険料が安いなどのメリットがあり、編入したいというお問い合わせをいただくことがあります。

健保組合のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。


メリット
1.保険料が安い(会社と従業員双方にとってプラス)
2.法定給付以外に独自の付加給付がある(療養、出産、死亡時などの上乗せ)
3.検診施設、保養所などの福利厚生が充実
4.人材獲得面で優位性をもち、従業員の満足度も向上


デメリット
1.編入する為の条件が厳しい
2.協会けんぽに比べ添付書類が多いなど、日常の手続きが煩雑
3.財政悪化している健保組合が多く、財務状態や将来性にも留意しなければならない
4.倒産や業種変更等がなければ脱退できない




健康保険組合に編入するにあたっては審査を受ける必要があります。審査ではそれぞれの健保組合の加入要件をチェックされます。

一般的に加入の際の判断基準となるのは以下のような項目です。

・業種、地域
給与、賞与の水準(高い方がよい)
・被保険者の平均年齢(若い方がよい) 
・被保険者数(多い方がよい)
・被扶養者数(少ない方がよい)
設立からの年数、または協会けんぽの加入年数
・過去に税金社会保険料の滞納があるかどうか
・経営状況


これらのチェックを受ける為に、大量の添付書類を提出することになるわけです。

審査期間は短くて数ヵ月、長いと一年程度かかります。編入を考えている企業担当者は早めに動いた方がよいと思います。審査に通った後は説明会等に出席し、資格取得手続きを行っていくことになります。



さて、メリットが大きいと考えられる健康保険組合といえば、「東京電子健保組合」「人材派遣健保組合(はけんぽ)」などが言われますが、近年特に人気が高いのが

「関東ITソフトウェア健康保険組合(通称:ITS健保)」

です。この健保組合保険料が安い点などは他と同様ですが、福利厚生の充実度に圧倒されます。

最近の健保組合では人間ドックメンタルヘルスカウンセリング補助なども普通にありますが、ITS健保ではさらに、高級レストラン、リゾート施設、スポーツジム、旅行パック、ゴルフ場など様々な施設が安く利用できるのです。

IT業界であれば知らない人はあまりいないと思われるほど有名なITS健保ですが、それだけに審査の厳しさでも有名です。

加入基準として、被保険者の人数や平均年齢、扶養率、標準報酬月額などの細かい項目設定がありますが、全部クリアする方がよいですし、できれば基準を大きく上回る状態だと安心して申請を行うことができます。

内容の充実した健保であれば加入のメリットはデメリットを凌駕しますので、条件に合いそうならば審査は厳しいですが編入を考えてみる価値はあると思います。




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2012-10-04

請負・業務委託と直接雇用(労働者)の判断基準


企業は雇用リスクを回避する手段として、雇用契約ではなく請負(業務委託)という法形式を使うことがよくあります。

雇用リスクとは

社会保険などの加入義務
労働基準法等に定められた義務(残業代有給休暇最低賃金、安全衛生など)
解雇した場合の訴訟リスク


などのことです。請負の外注扱いにしてしまえばこれらの雇用リスクは生じません(※安全衛生や労災の義務は一部発生しますが)。


加えて最近は、派遣法の改正(30日以内の日雇い派遣禁止)、労働契約法の改正(有期雇用の上限5年規制)など企業の人件費の柔軟な調整を妨げるような法改正が相次いでいます。

派遣法改正によって、事業の軸を人材派遣から請負にシフトしている人材会社も少なくないと思われますし、また、有期雇用の5年超え無期転換ルールについては6ヵ月以上のクーリング期間が設定されている為、その期間を一時的に請負・業務委託にしてしまう会社も今後現れるかもしれません(このやり方は脱法手段であり認められない旨が通達されています。)



しかし、たとえ請負契約という名称の契約を締結していたとしても、結局は実態が全てです。労働基準法上の労働者に該当すると判断されれば、いくら請負だ、業務委託だと主張したところで偽装請負とみなされ、労働者としての取扱いを求められます。とりわけ個人事業主への外注に関しては十分に留意する必要があると思います。

これは請負業者、個人事業主などの労働者性」の判断といえる問題ですが、請負と労働者の線引きはなかなか難しい問題です。

日本では、労働者派遣派遣法、職業紹介や労働者供給は職業安定法といったようにそれぞれ規制する労働関係法令がありますが、請負を直接規制する労働法はありません。個々の通達判例などを参考に個別に判断する必要があります。



労働者性の判断基準については様々ありますが、特に重要なことは「使用従属性」があるかどうか(※つまり指揮監督下の労働なのか、そして報酬が賃金として支払われているかどうかの2つ)ということになります。

特に重要と思われる項目を以下に挙げます。


労働者に該当すると判断されるポイント
1.業務の内容・遂行方法について具体的に指示・命令を受け管理されている。
2.勤務時間、勤務場所を指定され管理されている。
3.報酬が時間をベースに計算されている。



労働者ではないと判断されるポイント
1.仕事の依頼や業務指示に対して諾否の自由がある。
2.他者との代替性が認められている。



これらが機械的にあてはめられるのではなく総合的に考慮されることになります。

過労死精神疾患、業務上の事故などが発生すれば、労働者なのか請負なのかによって企業の責任、本人や遺族の負担は全く異なってくる大問題です。当然ですが、偽装請負リスクは決して小さくありません。




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