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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2012-12-27

不当労働行為の救済命令を無視


企業が不当労働行為の救済命令に違反した場合には、法律で罰則が定められていますが、今回はそんな形式的な話ではありません。


牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーが、団体交渉拒否について謝罪し、解決金を支払うことで労働組合と和解したというニュースです。

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ゼンショーが団体交渉拒否を謝罪し和解 : J-CASTニュース

さかのぼるとこの事件はすき家解雇された女性アルバイト従業員が一般労組である「首都圏青年ユニオン」に個人加入し、未払い残業代を求めて団体交渉を求めたところ、ゼンショー側が「一般労組労働組合と認めない」という理屈で団交を拒否したことが発端です。

その後、労働組合は「東京都労働委員会」に救済の申立てを行い、争いの場を「中央労働委員会」、「東京地裁」と移していき、会社側は団交を拒否し続けますが、ことごとく会社側が敗北していきます。

※この辺は以前の記事も参照
合同労組の団体交渉申し入れを拒否できるのか - 人事労務コンサルタントmayamaの視点

結局、東京高裁でも敗北し会社側は4連敗中で、最高裁に上告していたところだったようです。おそらく争い続けても会社側に勝ち目はなかったのだと思います。

元従業員と労働組合は会社に対し損害賠償300万円を求める訴訟を別途提起し、その訴訟において今回和解が成立したため、団交拒否の正当性について争っていた訴訟についても上告を取り下げたということです。



それにしても、団交を拒否してから今回の和解まで、約5年弱という年月です。

いくら和解が成立したといっても、交渉を始めるまでに5年弱かかるというのは長すぎます。

ここで一番感じることは、労働委員会が行う不当労働行為の審査って、時間かかりすぎなんじゃないのか、それで本当に意味あるのか、ということです。

通常、労働委員会は救済の申し立てを受けてから審査を行い、救済命令を発するまで1年半かかるといわれており、2年くらいかかることも珍しくありません。審査に不服で中央労働委員会に再審査を求めれば、さらに時間がかかります。

そうして長い時間をかけてやっと出た救済命令が、今回の事件のように簡単に無視されてしまっては、不当労働行為審査制度の存在意義自体が疑われるところです。

現状、労働者側は、企業が救済命令を無視してくる可能性もあり得ることを前提に、その場合は訴訟で争うことも選択肢に入れて不当労働行為の救済申立てをしなければいけないということになります。


ただし、「では逆に、企業側は訴訟の覚悟があれば救済命令を恐れなくてもよいのか」と聞かれれば、全くそんなことはありません。

今回の事件で会社側はおそらく膨大な弁護士費用を使い、結果的に解決金も支払って謝罪し、そして何より団体交渉に応じないという態度によって企業イメージを落としたことは明らかです。

そして5年弱労力を費やしたうえに、これからまた団交に応じるわけです。

「個人加入の一般労組・合同労組からの団体交渉申し入れは拒否できない」

企業側は肝に銘じるべきです。




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2012-12-07

最低賃金の廃止が受け入れられない理由


先日、日本維新の会選挙公約として掲げネットを中心に物議を醸した「最低賃金の廃止」ですが、あまりの批判にさらされてか早くも最低賃金廃止が撤回され、

市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」

という訳の分からない文言へ修正された模様です。

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最低賃金規制が経営の厳しい中小零細企業にとって大きな負担となっている側面があるのは事実です。

また、非正規労働者を数百人規模で常時雇用しているような企業においては、「最低賃金が今より100円安くなればあと数十人多く雇える」というような状況もあるはずです。

これまで通り最低賃金を毎年引き上げていけば、体力がない企業は倒産、あるいは安い労働力を求めて海外に行ってしまう企業も増えるでしょう。

最低賃金規制が企業を締め付けることによって、結果的に日本の雇用を減らし、最終的には労働者生活に跳ね返ってくるという理屈自体はおそらくほとんどの方が理解しているはずです。

にもかかわらず最低賃金の廃止という公約について全く理解が得られずに批判が集中するのは、重要な問題点について手つかずのままだからです。



簡潔にいうと、正社員非正規社員賃金雇用の2層構造(同一労働同一賃金の問題が根底にあります。

そもそも最低賃金の廃止によってモロに影響を受けるのは主に時給制の非正規雇用であり、正社員にはあまり関係のない話です。

非正規雇用が例えば主婦のパートタイム、学生のアルバイトのみであれば、生活への影響は少ないため、最賃廃止についてそこまで批判が高まることはないと思われます。

しかしながら、雇用形態の多様化した近年における非正規社員の多くは、正社員になりたくてもなれず、フルタイム正社員なみの業務水準を求められ、そして実際に正社員と同じように生活費を稼いでいかなければならない人々であり、正社員雇用と給料を守ることを第一としてきた日本型雇用システムが生んだワーキングプアともいえる人達なのです。

正社員雇用解雇規制によって強く守られ、そして最低賃金とは無縁の世界で年功型賃金制度(職能給)によって右肩上がりに上昇し、正社員雇用を守るためにフルタイム非正規社員が大量に動員されていざという時の雇用調整に利用されてきました。

正社員と同じ職務内容であっても非正規は賃金は半分かそれ以下、福利厚生はなし、いつ切られてもおかしくない状況で働かなくてはなりません。

おまけに来年からは、正社員を希望者全員65歳まで雇わなくてはならない法律までできました(改正高年齢者雇用安定法)。非正規(有期契約社員)はこの恩恵さえも受けることができません。

そして、そんな散々な目にあってきた非正規社員最後の砦最低賃金を撤廃しろ、というのが今回の話なわけです。



どう考えても、先に同一労働同一賃金の問題をクリアするべきだと思いますし、その為にはおそらく解雇規制(整理解雇)の緩和や、雇用システムの大きな変革が必要になるものと思われます。(※この点については維新の会の公約に賛成です。)

正社員の身分・賃金は65歳まで保障したまま、非正規社員に対して「お前らの給料は日本経済の足かせになっているから最賃は廃止だ」と言ってみても、土台それは無理筋な話ではないでしょうか。

2012-12-01

解雇予告と同時に休業命令はアリなのか


会社が労働者に対して解雇を通告する場合には、30日前に予告するか、または30日分の平均賃金解雇予告手当として支払うかのどちらかが必要なのはよく知られています。

実務上は解雇予告手当の支払いを選択する方が圧倒的に多いかと思います。

ところが、この解雇予告手当の支払いを会社が渋って、解雇予告と同時に退職日までの休業命令を通告し、平均賃金の60%のみを休業手当として支払って済ませようとするケースをたまに聞きます。

こういう運用は違法ではないのかと聞かれることがありますが、結論を先に言うと、これは違法ではありません。

もっと正確にいえば、労働基準法には違反せず、従って労基法上の刑事責任を追及されることはないという事です。



ここで気を付けなければならないのは、民事上の責任は別で考える必要があります。会社都合による休業期間の手当をいくら支払う義務があるのかは会社によって異なります。

具体的には、会社と労働者との契約関係、つまり就業規則がある会社は就業規則において、就業規則のない会社は雇用契約書において、「会社側の事情で労働者を休業させた場合には平均賃金の6割を支払う」旨が規定されていれば6割の支払いで済みますが、規定が一切なければ会社は休業期間の賃金を100%全額支払う義務が契約上あります。(※休業手当の詳細は過去の記事を参照)

ただし、この件(60%か全額かという件)については労働基準監督署が動くことはありませんので、労働者側は不服であれば会社との話し合い、あるいは裁判労働審判などの手段によって請求する必要があります。



また、会社側のメリットとして他に考えられるのが、休業を命じられた期間について労働者未消化の有給休暇が残っていたとしても取得できないという事です。

年次有給休暇とは労働義務のある日について労働を免除するものであり、そもそも労働義務のない日(休業日)に年休を取得すること自体、法的に不可能なのです。



つまり、解雇予告と同時の休業命令は会社にとって解雇予告手当を軽減させる効果、有休を取得不能にさせる効果が期待できることになります。


ただし、私はこの方法を会社に対して積極的に勧めることはしません。

労基法に抵触しないとはいえ、労働者視点からみたら上記の方法は卑怯な脱法行為ととられる可能性が高いですし、理由はどうあれ解雇される労働者は会社に対してマイナスの感情をもっているものです。

企業は組織としての秩序を維持していく為に労働者解雇するという判断が必要な時もあるのは当然ですが、上記のような方法で追い打ちをかけて労働者の負の感情を爆発させれば高い確率で労働トラブルに発展するであろうことは目にみえています。

どんなに非のあると思える労働者であったとしても、会社は解雇する労働者を完膚なきまで叩いてはならず、むしろ最後は気持ちよく送り出してこそ無用なトラブルを回避でき、最終的に会社にとってプラスとなるはずです。




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