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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2013-06-08

身元保証書の注意点および身元保証人の責任の範囲


企業で人を採用する際、特に正規雇用社員の入社に際して身元保証書の提出を義務付けている会社は少なくありません。

この「身元保証」とは、従業員の行為によって会社が損害を受けた場合に、身元保証人がその損害を賠償するという内容の契約であり、会社と身元保証人との間で締結するものです。

金銭貸借の保証人とは異なり金額があらかじめ確定していないという点で損害額が予想できませんので、身元保証人を保護する目的から「身元保証に関する法律」において、その責任の範囲等が制限されているのです。


身元保証人をたてておけば会社は損害の全額を請求できるかというとそうではありません。法律において、

裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化その他一切の事情をあれこれ照らし合わせて取捨する

とされており、実際には相当程度制限がかかるものと考えておくべきだと思います。



法律によれば、身元保証の期間を定める場合には5年を上限とし、5年を超えた部分は無効となります。もし契約に期間の定めがない場合には、保証期間は3年です。ちなみに契約の更新は可能ですが、就業規則に更新の必要性について明記しておかなければ、労働者から拒否されても会社側は何も言えませんし処分もできません。(そもそもあまり長期間にわたって身元保証書を提出させること自体、望ましい運用とはいえませんが。)



特に注意が必要なのは、身元保証契約の内容に変更があった際には、身元保証人にその旨を遅滞なく通知しておかなければ賠償責任を問えなくなる可能性がある点です。

通知すべき変更内容を具体的にいうと

1.労働者に業務上不適任または不誠実な事跡があって、このために身元保証人の責任の問題を引き起こす恐れがあることを知ったとき。

2.労働者の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任を加重し、またはその監督を困難にするとき。

ということなります。さらに身元保証人はこれらの通知を受けた時は保証契約を解除することができます。

会社が上記通知義務を怠っていたとしても身元保証契約自体が失効することはありませんが、加重された保証内容を求めることができなくなりますので、実質的に契約の実効性が薄くなります。昇進したとき、職種変更したとき、遠隔地に転勤になった時などは通知すべきだと考えられます。現実に多くの企業において、この辺りの管理はできていないのが現状ではないでしょうか。



その他の注意事項としては、


短期の契約社員に対して身元保証書を求めることは、長期雇用を前提にしていると解釈されかねないことから望ましいとはいえないこと。

近年の労働者のメンタル不調によるトラブル増加を考えると、身元保証人に協力を求めるケースも想定されるので、身元保証人の要件に「親族であること」を規定すること。


などが考えられます。


なお、身元保証書の押印を実印で行い、印鑑証明の提出を求めることも企業の自由ですが、これから入社して働く労働者との信頼関係にも影響しますので、誤解のないよう説明し十分に納得を得ることが大切だと思います。

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