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2013-09-03

解雇の金銭解決ルールは労働者にとってはたして損なのか


解雇金銭解決制度の議論に関するこんなニュースがあります。

解雇補償金制度が導入されると「カネさえ払えばクビ」にできる?(週プレNEWS)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130828-00000427-playboyz-soci

「制度化されれば解雇解決金の水準が示されます。現状では従業員が会社側と最高裁まで争って勝訴すれば、判決確定までの賃金の支払いと将来の賃金相当分の支払いが会社側に命じられ、少なくとも3年分の賃金は確保できる。

しかし、この制度をすでに導入しているスウェーデン(勤続5年未満→月給6ヵ月分など)がそうであるように、制度化されると解決金の水準が低めに設定され、従業員にとっては現状より少ない金額と引き換えに解雇されることになります」(労働問題に詳しいジャーナリストの金子雅臣氏)



現行法の下で労働者最高裁まで争えば少なくとも3年分の賃金を勝ち取れるというのは、全体から見ればあまりにも一握りの結果を一般化しすぎだと思います。

世の中の不当解雇といわれる解雇案件のうち、多くは行政のあっせんや労働審判によって低水準の解決金で解決されており、ごく少数だけが裁判まで進んで徹底抗戦を行い、そして圧倒的大多数の労働者は具体的行動さえ起こさずに泣き寝入りしているのが現状です。

そもそも大企業中小企業では全く状況が異なる現実があります。

大企業であれば解雇以前の退職勧奨の段階で賃金1年分〜2年分などの高い水準の金額が提示されることもよくありますし、従業員もまた金銭的に余裕がある人が比較的多く、本腰を入れて個別労働紛争に乗り出す確率も高いでしょう。労働審判民事訴訟へと進めば2年分、3年分などの解決金額になる可能性も確かにあり得る訳です。

ところが中小企業の場合、解決金が賃金2〜3ヵ月分などというのはよくある話であり、行政のあっせんのレベルでは賃金1ヵ月分の解決金が提示されることも全く珍しくないのです。それ以前にすぐ次の職を見つけないと生活が成り立たず、とても結果の見えない紛争を押っ始めるような余裕はないという労働者が大半であり、「会社側と最高裁まで争って勝訴すれば」という状況がいかに非現実的な夢物語なのかというところです。このような現状を踏まえれば、例えば解決金が賃金6ヵ月分という水準を法制度によって確実に補償されることであれば、一概に労働者にとって損だと一刀両断に言い切れるものでもありません。

結論を言えば、金銭解決ルールの法制化は、大企業労働者にとっては解決金水準が現在よりもおそらく下がることとなり、逆に中小企業労働者にとっては解決金水準が上がるうえ、さらに法制度によって最低限の解決金が担保され泣き寝入りするケースが大幅に減少する可能性が高いのでは?と考えるのであります。

では企業にとってどうなのかといえば、概ね労働者の場合と逆になるということでしょうか。もちろん各企業の方針・考え方によって異なると思いますが。

ただそれにしても、いかに解雇無効の場合は現職復帰が原則とはいえ、現行法下においてはあっせん・労働審判ではほぼ全てが、そして裁判になっても本人が現職復帰を強く望んで判決を取りにいかない限りその多くが事実上和解によって金銭解決しているのが現状であり、そもそもの金銭解決ルールの趣旨と必要性についてもう少しきちんと考えて議論すべきであると思います。

2013-06-03

なぜ始末書が必要なのか(始末書の法律実務)


労働者が不祥事を起こした時に始末書をきちんと提出させない会社が見うけられます。私は関与先の会社には必ず始末書をとるようにお願いしています。労働者始末書を書かせることは法的にみて非常に重要な意味があるのです。


始末書を提出させる目的とは何でしょうか。もちろん本人の反省を促してけじめをつけることにより再発を防止するという目的はあるでしょう。しかしそれだけではありません。

最も重要な目的は、労働者が不祥事を起こしたことについて、本人直筆の書面の証拠を確保するということです。つまり、今後この労働者解雇せざるを得なくなった場面において、労働契約法第16条・解雇権濫用法理を充足させるべく、過去の労働者の非違行為の事実、および会社が指導を行ったという記録を残すことになるわけです。これにより、会社は再三注意・指導を行ったにもかかわらず、残念ながら改善がみられなかったということが言えるわけです。さらに労働者の弁明が書かれていれば、弁明の機会を与えたという証明にもつながります。性悪説で従業員の将来を疑うようなことはしたくないかもしれませんが、リスク管理の為には非常に大事なことです。



この目的を踏まえた場合、始末書の中身というのが重要になってきます。

一般的に始末書といえば、事の顛末を記載し、本人の謝罪の意や「今後二度としません」という誓約的な文が書かれるものです。この後半の謝罪や誓約が重要だと通常は考えるでしょう。しかし、法的な意味で言えば、大切なのは前半の不祥事の顛末の部分です。

極論をいえば、謝罪や誓約の部分はなくても構いません。紛争となった際にはむしろ本人の反省がみられないとみなされ本人が不利になる可能性も考えられます。

それよりも注意すべきことは、本人の自由意思によらずに会社が強制的に謝罪文を書かせてはならないということです。その意味でいうと、始末書の提出命令に従わない労働者に対して懲戒処分を科すことにも問題があるといえます。憲法第19条が保証する思想・良心の自由に反すると解されるからです。


もしも労働者始末書の提出に従わなかったり拒否をする場合には、不祥事の事実のみについて記載するよう改めて命じ、これに従わない場合には懲戒処分も有りだと思います。

仮に労働者の提出してきた始末書の顛末の記載が事実と異なる場合には、書き直しを命じることも必要です。書き直しをさせた後、全てのバージョンの始末書を保管しておくと完璧です。



最後に1点注意ですが、始末書というものは通常、懲戒の「けん責」および他の処分において規定されるものであり、重大な不祥事の際に提出を義務付けるものです。

ですからさほど重大とはいえない軽微な問題行動についてまでいちいち始末書を提出させるわけにはいきませんが、解雇権濫用を否定する為には細かい記録の積み重ねが重要になりますから、注意書というような形式を使ったり、指導記録をつけていくことで対応していくのがよいと思います。

2013-05-09

「限定正社員」をめぐる大いなる誤解


ここ数週間、ニュースで「限定正社員」という雇用形態についての報道が多くなってきたようです。政府の規制改革会議が推し進めているようです。夏の参院選を考慮して安倍政権が「解雇規制緩和」政策を見送ったのでその代わりということでしょうか。

「限定正社員」の中身は以前ニュースで報じられた「準正社員」と同じものです。雇用契約によって職務・勤務地を限定することにより、事業所閉鎖など担当職務や事業所がなくなってしまった場合の解雇が容易になるということです。



私は以前の記事でも書きましたが、法改正を行わなくとも現行法のままでこの運用自体は可能です。職務限定・勤務地限定の雇用契約が結ばれ、その内容で適切に運用されている限り、事業所撤退等を理由にした整理解雇は客観的に合理的な理由を有する解雇として有効と認められます。

ただ、そうは言っても多くの企業は訴訟のリスクを恐れて職種・勤務地限定契約の運用に二の足を踏む状況なので、それならば統一した解雇ルールを法律で明文化することによって企業が安心して限定契約を運用できるようにしようという話であればまあ理解はできるのですが。



しかしながら、マスコミで報じられている「限定正社員」は、本来法律的にないはずの意味あいが勝手に付加されて違う方向にいっていると思われるので、それは違うだろうというところを書いておきます。



正規と非正規の中間「限定正社員」って? 普及策検討中(朝日新聞)
http://www.asahi.com/business/update/0506/TKY201305060006.html

正社員だけど、モーレツではなく、働く職種や地域が限られる。仕事がなくなれば解雇される可能性もある――。そんな「限定正社員」を広げる議論が安倍政権で進む。「働きやすさ」を高めるねらいがあるが、「解雇しやすさ」につなげる思惑ものぞく。

まず、これはタイトルからしておかしいです。法的に考えて、職種・勤務地限定の労働者がなぜ当然のように「正規と非正規の中間」になるのでしょうか。仮に中間に位置づけるとしてもそれは企業が個々に自由に決める問題であり、政府の有識者会議主導で政策として進める問題ではありません。

そもそも法的に正社員という分類はないのであって、限定正社員をあえて分類するならば、無期雇用労働者について職務・勤務地が限定されているのかされていないのか、という区分になります。どちらが上ということではなく、契約において何を許容し、何を得るのかをそれぞれの合意によって決める、ということです。

海外ではむしろ職務限定契約は一般的な契約形態であり、非正規的な取り扱いでは決してありません。もちろん仕事内容が決まっているのですからその仕事がなくなれば解雇されるのは正当であり、「解雇しやすさにつなげる思惑」も何も、整理解雇が容易なのは当然の帰結なのです。有識者会議の方々は「解雇規制緩和」のソフトバージョンくらいに考えているのかもしれませんが、これは解雇規制の緩和ではありません。契約の問題なのです。



労働契約に職務内容明記 限定正社員の雇用ルール素案(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1903L_Z10C13A4EE8000/

仕事の範囲が限られる分、賃金は従来型の正社員より安くなる。

なぜ職務が限定されると、当然のように賃金はこれまでの正社員より安くなるといえるのでしょうか。

そもそも日本では正社員の職務・勤務地が限定されず、企業の命令によって配置換え、転勤等が行われるがために賃金を仕事基準で決めることができず、結果として属人的な職能給という名の年功賃金を運用せざるを得なかった訳です。

限定正社員は仕事が限定されているのですから、賃金を仕事基準(つまり職務給)によって決めるのが本来のあり方なのです。この場合、年齢・勤続といった要素は基本的に入り込む余地はありません。

つまり、その職種を何十年やってきた専門職的な限定正社員(職務給)が、入社して2〜3年の限定のない正社員(年功給)よりも賃金が安くなるということは本来あり得ないのであって、そんなことが当然のごとく記事に書かれている時点で、しょせん限定正社員は「従来の正社員より安く解雇しやすく使えるし、パートや契約社員よりは士気があがるだろう」くらいの認識しか持たれていないのだと思われます。



限定正社員の運用の拡大は確かに多様化する働き方のニーズに対応できる可能性をひめています。しかし危惧するのは、誤解しているのが有識者会議なのかマスコミなのかは不明ですが、多くの誤解のもとに限定正社員が運用されてしまう危険性です。以下まとめます。


限定正社員の整理解雇が容易なのは解雇規制が緩和されている訳ではなく、従って経営者の恣意的な解雇は当然許されず、能力不足、非違行為などを理由とする解雇は通常通り厳格に判断されるということ

限定正社員は法的には正規・非正規の中間という位置付けはなく、あくまでこれまでの無期労働者の職務・勤務地が限定されているに過ぎず、契約内容は当事者によって決められるものであるということ

限定正社員を非正規雇用の延長として低賃金で使おうとする方向性が垣間見えるが、本来、限定なしの正社員に比べ一貫して同じ職種を続けることから高い職業能力の維持が期待できるのであり、職務給によって適正に処遇されることにより限定正社員全体のスキル向上につなげるべきであるということ



ぜひとも注意していただきたいと思います。

2013-04-12

<解雇規制緩和論>人員整理と戦力外通告が混同されているのでは


昨日の記事に引き続きですが、最近の解雇規制緩和の報道について、様々なものがごちゃ混ぜに論じられている為に感じる違和感を書きたいと思います。

解雇規制の緩和とひと口に言っても、企業の業績不振の際に雇用調整をはかるために行う整理解雇と、労働者の能力不足や成績の不振等を理由とする解雇(いわば戦力外通告的解雇)では全く性格が異なりますから、解雇規制緩和に際してもそれぞれ別個に検討しなければならない問題です。

しかしながら、政府の有識者会議の主に経営者の方の意見を聞いていると、まるでこの2つを一緒くたに論じているようで、つまり業績不振のため余剰人員の整理をはかる場面において、勤務態度や成績の悪い労働者を優先的に辞めさせられる仕組みが必要だという主張がなされているようです。


整理解雇はあくまでも業績不振という会社の経営上の都合によって行わざるを得ない解雇であり、労働者には全く落ち度はありません。ですから解雇人員の選定に際して特定の労働者個人が取り上げられ、その人の解雇の可否が検討されることなどあり得ないのです。

特定の個人の能力・成績や勤務態度等を検討した時点で、それは会社都合の整理解雇ではなく労働者都合の解雇となるのであり、解雇の要件として求めらる客観的合理性についても経営上の必要性という要素ではなく、その労働者の能力不足が解雇に値するほど合理的な理由となり得るのかという観点から考慮されなければならない訳です。もちろん解雇回避努力に関しても、この2つの解雇では別のものが求められます。


「業績不振でおまえに任せる仕事がなくなった」から解雇なのか、「おまえは使えない。払ってる給料分の働きがない」から解雇なのかは全く違う問題であって、解雇の有効性を測るものさしも違うのです。それを一緒くたにすれば整理解雇の名目で会社が気に入らない労働者を好き勝手にクビにしたというような不当解雇トラブルが頻発するでしょう。理屈抜きでとにかく解雇を容易にしたいというのが本音なのかもしれませんが、政府の有識者会議という公的な場で法政策を論じるのであれば、もう少し考えて発言をしてもらいたいと思うところです。




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2013-04-11

「解雇要件の緩和」と「金銭解決ルール」は根本的に違うはず


最近の政府が行う解雇規制緩和議論の報道をみていると、何だか色々なものが混同されていてきちんとした議論ができているのか疑問です。(実態が正しく報道されていないのかもしれませんが)

解雇をしやすくして雇用の流動性を」みたいなことが盛んに言われていますが、


1.解雇要件の緩和、あるいは解雇の自由化

2.金銭解決ルールの導入


これらは意味が異なりますが、色々な報道をみていると一体どちらのことを言っているのかよくわかりません。というより有識者会議の方々の多くはおそらく区別なく言っているのかもしれません。



解雇を有効に行う為の要件を思いっきり緩和させて、あるいは企業の自由に解雇できるようにするのであれば、そもそも金銭解雇ルールは必要ありません。解雇は有効に適法に行えるわけであり権利濫用とは認められないのですから、金銭によって解決させる問題など存在しないのです。

現行の法律では、解雇が無効と判決が下った場合、職場復帰の方法しか認められておらず、それでは会社側も労働者側も不都合があるという場合に、法律で定められた金銭を会社が給付することによって解雇は無効だけれども労働契約は終了させるというのが金銭解決ルールであって、金さえ払えば無効な解雇が有効になるというような考えは誤りだと思います。

現行法でいうところの「客観的に合理的な理由」のない解雇は認められないので「違法・無効な解雇」「不当解雇」になるわけですが、契約関係については和解によって解消されることもあれば、原職復帰して継続される場合もあり得るのです。いずれにしても、解雇の有効・無効、客観的な合理性があるかどうかということと、労働契約が継続か終了かということは別の問題であって、「金銭解雇」「解雇自由化」と連呼されると、何だかまるで「理屈はともかく金を払えば解雇OK」のような印象を強くうけるのであり危惧するところであります。




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2013-03-11

解雇規制の緩和は、企業の人事権・業務命令権の低下と引き替えである


政府の有識者会議で、「正社員を解雇しやすくすべきだ。」という意見がでて、ネットを中心に話題になっているようです。


「正社員を解雇しやすく」 安倍政権の有識者会議で議論
http://www.asahi.com/business/update/0307/TKY201303060639.html


正社員を解雇しやすくする目的はもちろん労働市場の流動化です。こういう議論になると一般的に企業はウェルカムですし、逆に正社員として働く労働者からは批判されることの方が多いかと思われます。

現状の雇用ルールのまま、ただ解雇規制だけが緩和されるという話であれば、確かにそれは企業にとってのみおいしい話であって、労働者からすれば何もいいことはない、リストラが助長されるだけだしブラック企業がますます労働者を使い捨てにするのではないか、と考えるのは当然です。



しかし、解雇規制を議論するうえで忘れてはいけないのは、日本の企業に広く認められている包括的な人事権、業務命令権は、長期雇用保障が前提になっているということです。

ちなみに人事権、業務命令権というのは、具体的には例えば異動・配転命令、あるいは上限なしの残業命令などです。基本的に労働者は、企業から出張、配置換え、転勤、職種変更などを命じられたら従わなければなりません。残業命令も当然です。従えないのなら、その会社から去らなければならない、というレベルの強力な企業の権限です。ときには長期雇用の見返りとして労働条件の引き下げ(不利益変更)さえも認められることになります。

つまり、

労働者がいったん入社したら煮るなり焼くなり企業の好きにしていい、その代わり定年まで責任をもって雇いなさい。」

というのが日本の雇用システムなのであって、裏を返せば、解雇規制を緩和するのなら、今までのように煮るなり焼くなり企業の自由にさせるのはどうなのか、今まで通り労働者に対して広範な権限を行使したあげく解雇規制緩和による解雇の正当性のみを主張するのは許されるのか、ということが問題になると思います。



上記の雇用システムはもともと法律に規定されていたわけではなく、日本の裁判所の判断によって形成されてきたシステムです。

というのも、労働基準法等の法令によれば、「正社員の解雇を容易には認めない」というような規定はなく、1ヵ月前の予告さえあればいつでも契約を自由に解除できるようになっていたのですが、いざ裁判になると、解雇権濫用法理(あるいは整理解雇法理)が適用され、法律で自由とされていたはずの解雇裁判所の判断によって厳格に規制されてしまうという流れが、世界でも稀なくらいの強力な解雇規制として一般化していったのです。(※現在は労働契約法によって解雇権濫用法理は法定化されています。)

一方、日本の企業の人事権、業務命令権といった労働契約に付随する権限もまた裁判所によって広く認められてきたものであります。

解雇規制の緩和が政府主導で法令によって実現されることになれば、引き換えに企業が現在保有する強大な人事権、業務命令権に対して司法面での(あるいは立法面での)影響は及ぶ、という視点はもっていたほうがよいと思います。




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2012-12-01

解雇予告と同時に休業命令はアリなのか


会社が労働者に対して解雇を通告する場合には、30日前に予告するか、または30日分の平均賃金解雇予告手当として支払うかのどちらかが必要なのはよく知られています。

実務上は解雇予告手当の支払いを選択する方が圧倒的に多いかと思います。

ところが、この解雇予告手当の支払いを会社が渋って、解雇予告と同時に退職日までの休業命令を通告し、平均賃金の60%のみを休業手当として支払って済ませようとするケースをたまに聞きます。

こういう運用は違法ではないのかと聞かれることがありますが、結論を先に言うと、これは違法ではありません。

もっと正確にいえば、労働基準法には違反せず、従って労基法上の刑事責任を追及されることはないという事です。



ここで気を付けなければならないのは、民事上の責任は別で考える必要があります。会社都合による休業期間の手当をいくら支払う義務があるのかは会社によって異なります。

具体的には、会社と労働者との契約関係、つまり就業規則がある会社は就業規則において、就業規則のない会社は雇用契約書において、「会社側の事情で労働者を休業させた場合には平均賃金の6割を支払う」旨が規定されていれば6割の支払いで済みますが、規定が一切なければ会社は休業期間の賃金を100%全額支払う義務が契約上あります。(※休業手当の詳細は過去の記事を参照)

ただし、この件(60%か全額かという件)については労働基準監督署が動くことはありませんので、労働者側は不服であれば会社との話し合い、あるいは裁判労働審判などの手段によって請求する必要があります。



また、会社側のメリットとして他に考えられるのが、休業を命じられた期間について労働者未消化の有給休暇が残っていたとしても取得できないという事です。

年次有給休暇とは労働義務のある日について労働を免除するものであり、そもそも労働義務のない日(休業日)に年休を取得すること自体、法的に不可能なのです。



つまり、解雇予告と同時の休業命令は会社にとって解雇予告手当を軽減させる効果、有休を取得不能にさせる効果が期待できることになります。


ただし、私はこの方法を会社に対して積極的に勧めることはしません。

労基法に抵触しないとはいえ、労働者視点からみたら上記の方法は卑怯な脱法行為ととられる可能性が高いですし、理由はどうあれ解雇される労働者は会社に対してマイナスの感情をもっているものです。

企業は組織としての秩序を維持していく為に労働者解雇するという判断が必要な時もあるのは当然ですが、上記のような方法で追い打ちをかけて労働者の負の感情を爆発させれば高い確率で労働トラブルに発展するであろうことは目にみえています。

どんなに非のあると思える労働者であったとしても、会社は解雇する労働者を完膚なきまで叩いてはならず、むしろ最後は気持ちよく送り出してこそ無用なトラブルを回避でき、最終的に会社にとってプラスとなるはずです。




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2012-10-12

業績改善プログラム(PIP)を使った解雇は日本では通用しない模様


外資系企業がリストラのためによく使うと言われる「業績改善プログラム(「Performance Improvement Program」通称:PIP)」という手法があります。

退職勧奨に応じないリストラ対象の社員に対して目標を与え、面談を繰り返して達成状況を確認しながら指導を行い、業績改善を図っていくという建て前で、実態は合法的な退職勧奨の域を越える圧力を労働者に与え続け、強引に自主退職の方向にもっていくというものです。

通常、与えられる目標は達成不可能と思われるハードルの極めて高いものであり、達成できなければ強く責任を追及されますし、仮に目標を達成できたとしても次々と困難な目標が提示されます。業績改善プログラム(PIP)はいったん始まったら、おそらくターゲットの労働者が会社を辞めるまで終わりはありません。

意地でも退職勧奨に応じない労働者に対しては、一連の指導・教育の過程を解雇の要件である「解雇回避努力」の事実として利用することにより、会社が一方的な解雇に踏み切ることもあり得ます。



先日、次のようなニュースがありました。
ページが見つかりません - SankeiBiz(サンケイビズ):総合経済情報サイト

判決によると、男性は(中略)週1本の独自記事や、月1本の編集局長賞級の記事などを要求する「業績改善プラン」に取り組むよう命じられた。

 同社は22年8月、記事本数の少なさや質の低さを理由に解雇したが、光岡裁判官は「労働契約の継続を期待できないほど重大だったとはいえず、会社側が記者と問題意識を共有した上で改善を図ったとも認められない」と指摘。「解雇理由に客観的な合理性はない」と判断した。


記事によれば、「月1本の編集局長賞級の記事」を業績改善の目標として与えられたようです。その過程で指導が繰り返し行われたのか、あるいは退職強要行為はあったのか等は記事からは一切不明ですが、最終的に目標が達成されなかったと判断され、能力不足を理由に解雇されたようです。


日本においては、能力不足や勤務成績不良を理由とする解雇はほとんど認められません。能力不足などが重大なものであり、実際に業務に支障がでていて、指導・教育を繰り返し行ったにもかかわらず改善しなかったことが前提になります。解雇は最後の手段として行使されなければならないからです。

会社は指導・教育の事実を立証するだけでなく、能力が平均より著しく劣っていること、どんなに指導・教育をしても向上の余地がないことを証明しなければなりません。

上記の記事でいえば、「月1本の編集局長賞級の記事」を書けなかったことをもって能力が平均より著しく劣っているとは到底いえませんし、それが雇用を継続しがたい重大な事由になるはずもありません。

いくら指導・教育を繰り返したと言ってみても、目標があまりにも高すぎて、能力向上の余地が本当にないのか判断つきませんし、それで「解雇回避努力が尽くされた」と主張したところで無理があり過ぎです。



勤務成績下位者を毎年一定数リストラすることによって新陳代謝をはかり続ける外資系企業にとって業績改善プログラム(PIP)は必要不可欠なんでしょうが、日本で解雇要件を満たす目的で使ったとしても期待する効果は実際得られないことがよくわかるニュースだと思います。




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2012-07-30

「外資系は簡単にクビ」を安易にマネすべきでない


最近、興味深いブログの記事を読みました。「外資が簡単にクビにできる理由」についてです。

「どうして外資系企業は日本の企業と同じく労働基準法が適用されているのにクビにできるのか」という多くの方の疑問に対し、外資系の給与は担当する仕事内容によって決定する職務給が採用されており、「職務内容を限定して採用し、その職務を担えないことが明らかな場合の解雇解雇権濫用とはならない」と裁判所において判断される為、外資系企業が日本国内でクビを切っても違法とはならないのだと説明されています。


この説明は一部当たっていると思います。ただしこれだけを鵜呑みにして職務給制を採用し、求める能力に達していないと判断した従業員を遠慮なしに解雇していくのは危険です。ポイントは2つあります。



第一に、そもそも外資系企業は法律上の解雇に該当する行為をそんなに頻繁に行っているわけではありません。

かつて日本の労働法制をきちんと理解していない外資系企業が日本で解雇を乱発し紛争に発展するということがよくあったようですが、現在では日本の解雇規制の厳しさを外資系もよく理解しており、余程のことがない限りリスクの高い解雇は行わないと思われます。

外資系がすぐクビにするというのは、非常に強力な退職勧奨を行うということであり、労働契約の終了を一方的な意思によって通告する解雇という形式ではなく、何が何でも相手の退職の合意を取り付ける「合意退職」にもっていくのです。(※違法な退職勧奨を行っている外資系企業は少なからずあると思われますが。)

該当の労働者を呼び出し、戦力外通告を行い、おとなしく退職合意書(あるいは退職願)にサインすれば割増退職金と再就職支援を約束、合意しないなら退職金は1円も支給されずに解雇、と迫ります。もちろんこの場合の解雇は根拠のある正当なものだと主張するでしょう。

この場合の退職勧奨は、相手の人格を傷つけるような言葉を口にしたり、根拠のない解雇の可能性をほのめかしたり、あるいは威圧的に脅すなどの悪質な行為がなければ、多少しつこく勧奨を繰り返したとしても即違法ということにはならないと考えられます。



第二に、担当職務を明確に限定して採用したとしても、その後の能力不足による解雇が必ずしも認められるというわけではありません。

確かに過去の判例から、特定の地位や職種を前提に高い能力を期待されて入社したキャリア採用・管理職採用などであれば、通常の年功制(職能給制を含む)の新卒採用等の労働者に比べ、会社側に求められる解雇回避努力の程度は緩やかであるとされています。

この点日本型の職能給より職務給を運用した場合の方が能力不足による解雇が認められやすいといえなくもありません。ただしこれは、解雇を行う前にまず他の職種や下位の職位へ配置換えをするほどの義務までは負わないということであり、指導・教育を含めた解雇回避措置自体が全く必要とされないということではありません。

さらに会社側は、労働者が担当職務を担うほどの能力を有していない点について主張・立証責任を負いますし、採用にあたってはかなり細かく条件面を書面化したうえで内容について十分に合意しておく必要があります。

日本の解雇に対する規制は本来それほどまでに強いのだということを、特に労務管理面がまだまだ未整備だという企業は誤解のないよう正しく認識すべきであると思います。



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2012-06-27

期待外れの中途採用者を能力不足を理由に解雇できるのか


採用面接の際に本人が自己申告していた能力・スキルが実際のものとかけ離れていて処遇に困っているというのはよく聞く話です。

企業が中途で従業員を採用する際には即戦力となる経験や能力を求めるケースがほとんどです。ときには課長、部長クラスの幹部候補を採用する場合もあります。

一般的に能力不足を理由として労働者解雇することは簡単に認められません。非常に厳しい基準の解雇回避努力が求められることになります。何度も指導・教育を繰り返し、それで駄目なら職種や部署を変えるなどして能力開発に努め、どうしても厳しい、業務に支障がでるといった場合に初めて解雇の可能性を考えるというレベルの話です。

では一定の能力があることを前提として採用された中途採用者の場合はどうでしょうか。

新卒採用や第二新卒、あるいは経験の浅い従業員の採用ならばそもそも能力もスキルも高くないことが分かったうえでのポテンシャル採用ですから、企業の方で教育を十分に行わずに解雇することは適切でないという考えも理解できますが、即戦力のキャリア採用、専門能力を要求されたスペシャリスト採用、一定の地位・ポストを特定した管理職採用であれば、そこまで企業に解雇回避措置を求められるのは正直厳しいところだと思われます。

実際にこれらの場合であれば、通常の能力不足を理由とする解雇に比べ、多少は認められやすいといわれています。


有名な判例とされるフォード自動車事件では、以下のように判断されています。

外資系会社の最上級管理職のひとつである人事本部長の地位を特定して中途採用された従業員に対し、就業規則の解雇理由である「業務の履行又は能率が極めて悪く、引続き勤務が不適当と認められる者」を適用して解雇するには、他の職種または下位の職位に配置換えをするまでもなく、人事本部長という地位に要求された業務の履行または能率がどうかという基準で検討すれば足りる

通常の解雇よりも解雇回避努力の要求される程度は低いと考えられます。



とはいえ解雇が厳しいことに違いはないと考えておいた方がよいでしょう。企業のとるべき対策としては、雇用契約書において

一定水準の能力・スキルが前提であること
地位・職種が特定された契約であること
それらに応じて一定の業務の履行、業績目標等が要求されること
適格性がないと判断された場合には退職を求めること


以上をできるだけ具体的に明記し、内容について十分に合意しておくことが必要と考えられます。

また、場合によっては最初の契約を有期雇用契約としておくことも有効といえるでしょう。

なお、解雇の通告を行う前にまず退職勧奨によって合意退職を試みた方がよいのはいうまでもありません。



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2012-04-03

JAL整理解雇「有効」判決をみて思う事


先週、会社更生手続き中の日本航空から整理解雇されたパイロット76人が解雇無効を訴えて争っていた裁判判決が、そして翌日には同じく整理解雇された客室乗務員71人が争っていた訴訟の判決がそれぞれ東京地裁でありました。いずれも解雇は有効であると判断されました。労働者側は控訴するようです。

朝日新聞デジタル:日航の整理解雇は有効 パイロットら敗訴 東京地裁判決 - 就職・転職
朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

会社更生手続き中の整理解雇をめぐる司法判断は今回が初めてでした。JALが一昨年に経営破たんするまでの経緯はニュースなどで見てきている方が多数ですから、一般的な世間の視点でみて特段驚くような判決ではなかったと思われます。

「業績が悪くなったらリストラされるのは当たり前だ。今まで散々優遇されてきて公的資金まで導入されているのに、クビ切られた途端何を言い出すんだ。」といったところでしょうか。


個人的に思ったことは、このJALの判決をみて「経営が厳しければ整理解雇も意外と認められるようだ」と安易に考えない方がよいということです。特に中小企業は。

JALは言わずと知れた大規模企業です。整理解雇の実施に踏み切るにあたっては労働法専門の著名な弁護士に依頼し、整理解雇の要件を充足できるよう徹底的に準備を重ね、リスクを極力低減させて万全の態勢で臨んだはずです。

解雇のハードルの高さについてはこのブログで何度も触れていますが、整理解雇労働者に全く非のない解雇であるため、解雇の中でも別格に要件が厳しいのです。

整理解雇の有効性の判断にあたっては

/涌削減の必要性
解雇回避努力を尽くしたか
人選基準の合理性
ぜ蠡海の妥当性(労組との協議等)

の4つが総合的に考慮されるということはご存知の方も多いと思いますが、今回のJALは、労働組合との交渉を重ねてきていますし(内容の妥当性まではわかりませんが)、整理解雇対象者は過去の病気欠勤・休職実績や年齢を基準に選定されており、また整理解雇の前段階で1500人の希望退職を募るなどして人員削減努力をしてきています(だから整理解雇は有効なんだと言えるわけでなく、それらが最低条件ではありますが)。そもそも経営破たんして会社更生法を申請した会社の整理解雇ですから、あくまで例外と考えておいた方が無難です。

間違っても経営が厳しいとか、部門縮小・撤退するという程度の理由で専門家に相談もせず安易に整理解雇を決行しないことです。トラブルになった時のことを考えると、到底割に合いませんので。



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2011-10-16

退職勧奨のリスク


サイバーエージェントが10月から導入した新しい人事制度が波紋をよんでいるようです。

「ミスマッチ制度」といわれるもので、下位5%にあたるD評価を2回受けた従業員は部署異動または退職勧奨のいずれかの選択を迫られるというものです。


※以下参照
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111014-00000005-jct-bus_all


同社は斬新な社内制度を次々に打ち出すことで以前から有名です。今回についても明確な数字を決めて退職勧奨を制度に組み込むのは珍しいケースだといえますが、もちろん制度がもたらす効果については賛否両論あると思われます。


個人的に気になったのは、「退職勧奨」の一般的な認識についてです。



法律的な言い方をすれば、退職勧奨とは、使用者が労働者に対して行う労働契約の合意解約の申込(あるいは申込の誘引)のことをいいます。分かりやすく言えば、会社が従業員に「退職しませんか?」と誘うことです。

もちろん退職勧奨に応じるかどうかは労働者が自分の意思で決めればいいことであって、法的には応じる義務は全くありません。

また会社は、いつでも、どんな理由でも、誰に対しても退職勧奨を自由に行うことができます。単なる合意退職の申込なので当然といえば当然です。

ただし、退職勧奨を明確に断った従業員に対して、その後も執拗に退職勧奨を続けるのは公序良俗に反し違法性がでてくると考えられます。

退職勧奨の方法についても、威圧感を与えたり、従業員の自由意思を阻害するようなやり方は不法行為を構成し、後で損害賠償の請求を受けたり、退職を無効とされる可能性があるため会社側は注意が必要です。

例えば、面談で退職勧奨を行う場合には、時間は短めに30分程度、回数も多くて3回までに留めるべきですし、場所は狭い密室ではなくできれば開放された所で、会社側は2名以上の複数で臨むべきでしょう。大きい声で威嚇したり、解雇を仄めかして脅すなどは論外です。



つまり退職勧奨はやり方次第では退職強要(実質解雇)とみなされ、逆に適法に行われる限りは本来従業員にとって不利益はないということです。
(退職を勧められたことによる精神的・心理的ショックは別として)

そして、勤務成績や能力不足を理由に労働者解雇する場合には、会社は明確な目標を示して再度十分な改善指導・教育を行ったり、配置転換を行うなどの解雇回避努力が求められます。

結局どのような人事制度をつくったとしても、それによって会社が従業員の退職を容易ならしめることはできません。



なお、単なる退職の誘いではなく、低評価者に対して会社を続けることが困難な雰囲気を匂わすことにより、従業員に緊張感を与えることを意図して退職勧奨を制度に組み込むという考え方も当然あり得るわけですが、法的問題やリスクをクリアするのが前提であり、安易な考えでそのような制度を導入することはお勧めしません。




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2011-05-20

人事制度に手をつけないリストラは失敗に終わる


景気低迷が続く昨今、経営者がリストラの判断を迫られる場面は珍しくありません。


以前の記事でも触れましたが、解雇は日本ではかなり厳しく規制されています。
JALが昨年末に行った整理解雇についても不当解雇で提訴されていますが、あれだけ追い込まれた状況下で綿密に手順を踏んで行ったと予想される整理解雇であっても、訴訟リスクをゼロにすることはできません。


整理解雇を正当化する要素の1つとして、解雇回避努力の程度があげられますが、実際には希望退職の募集が重要視されることが多いといえます。


希望退職とは、退職を希望する社員を募って会社都合の合意退職にもっていくことです。通常、割増退職金や有休買上げ、再就職支援などの条件をパッケージ化して一定期間募集をかけます。



ところがこの希望退職、本当にうまくいった会社があるのだろうかと疑うほどいい話は聞きません。


会社はほぼ確実に、ターゲットとなる辞めさせたい社員と、何としても会社に残したい社員をあらかじめ決めています。希望退職の募集と平行して全社員と個人面談を行い、辞めさせたい社員の退職勧奨、残したい社員の慰留を全力で行うのです。


お分かりかもしれませんが、結果的には全く逆、辞めさせたい社員は1人も辞めず、何としても残したかった社員がゾロゾロ辞めていくパターンが多いといわれます。

会社が残したいと思う社員は通常、有能で市場価値が高く、再就職への不安もありません。加えて、賃金制度・人事考課制度に対して実力主義的要素を強く求めます。もしも有能で市場価値の高い社員が会社の既存の人事制度について不満を抱いていた場合、有利なパッケージで希望退職の募集があれば、転職の背中を押されたようなものです。

会社は一時的に人件費が減って窮地を脱したかと思いきや、予想以上に生産性が下がり、根本的な問題は解決されないまま、またいずれリストラの判断を迫られる日がやってくるのかもしれません。



希望退職の募集は単なるコストカット・人員削減ではなく、人材戦略の一環と考えるべきです。


賃金・退職金制度、キャリアパスは会社の人材戦略にマッチしているのか

会社の求める人材像は評価制度に反映されているのか


会社の求める人材を会社に残すためには人事制度改革は必須といえるでしょう。




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2011-04-19

震災による整理解雇


震災の影響で解雇や雇い止めが急増しています。
地震や津波の直接的被害をうけ、事業所閉鎖あるいは無期休業に追い込まれているようなケースでは、整理解雇もやむを得ないと考えられるでしょう。
実際に私の関与先でも事業所のいくつかが壊滅し、人員調整の決断を迫られている企業があります。




一方で、震災を口実にした便乗解雇も増えていると聞きます。

そして先日、震災の影響を理由に従業員40人を解雇した宮城県の運送会社が、震災後初めて不当解雇で提訴されました。

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判断が難しいのは震災の被害を直接受けたわけでなく、取引先の業績悪化による影響だったり、
一部の事業所閉鎖、一部従業員の削減を行う場合などです。



当然ながら日本では解雇は簡単には許されず、相応の理由が求められます。
そして、整理解雇の場合はさらに厳格な要件が判例によって形成されています(そもそも従業員側に責任がない為です)。
人事に携わったことのある方なら一度は聞いたことのある「整理解雇の4要件」です。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力
  3. 人選の合理性
  4. 手続きの妥当性


会社が流されたなどの壊滅的被害をうけた会社であれば実際こんなことは言ってられないでしょう。
しかし、被災地以外の会社で、部品・原材料の不足、顧客や売上の減少、計画停電等の影響、休業や一部事業所閉鎖などにより整理解雇を行う場合であれば、上記4要件は厳格に考慮したうえで手続きを踏むべきであると考えます。
(そうしなければ不当解雇と判断される恐れが十分にあります。)





また、全国の労働局や労働基準監督署には、解雇に係る相談で人が殺到していると聞きますが、こちらにも疑問符がつきます。
会社としては解雇を行うための免罪符が欲しいところでしょうが、労働局・労基署は民事不介入が原則です。解雇について有効・無効の判断はできません。

加えて労働局・労基署は、会社に労働基準法を守らせ、労働者を保護するという本来の役割があります。解雇の相談は周りの専門家にするのが確実です。



ちなみに震災による整理解雇であっても、労基署に申請して認定を受けない限り、
30日前の解雇予告 or 30日分の解雇予告手当の支払いは必要になるのでご注意ください。



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