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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-10-09

定年制復活は何を意味するのか


マクドナルドの定年制復活の記事は目を奪われた方も多かったのではないでしょうか。

マクドナルドが当初定年制を廃止したのは、実力主義の意識を高めることが目的でした。

年功序列を廃止し、その一環として定年制を廃止することによって、会社が実力本位であることを社員に明確に示すことになり、若手のモチベーションを高めることができると考えたようですが、実際は思惑通りにはいかず、ベテラン社員が自身の成果を優先してしまい、結局は若手をうまく育成できなくなってしまったとのことです。



ここから先は一般論として話をしたいと思います。

高齢者雇用安定法の改正にともなって定年制を廃止した企業は2.8%といわれていますが、日本で定年制を廃止して業績を向上させていくことは絶望的に難しいと思います。



定年制をなくすということは年齢差別をなくすことにほかなりません。賃金の決定や採用・退職に関して年齢的要素を一切排除するということです。年功序列は当然に廃止です。

そして前提となるのが、定年制が廃止されれば何歳になっても働ける反面、定年までの雇用が保証されないということです。

何歳になっても働けるというのは、年齢に関係なく実力があれば60代・70代になっても退職する必要がないということであり、裏を返せば実力のない者は20代でも30代でも退場を余儀なくされるということです。

これらの事項が担保されなければ、会社が実力本位であることを社員に示し、実力主義の意識を高めるという結果にはつながらないと考えられます。


しかしながら、日本においては判例の積み重ねで確立された解雇権濫用法理によって解雇が厳しく制限されており、労働者の能力や成果を理由とする解雇のハードルは相当に高いというのが実情です。一方で日本の雇用慣行は現在でもまだまだ新卒一括採用、終身雇用年功序列を基本としている部分が多く、労働市場流動性は極めて乏しいといえます。

前述の実力主義の意識を高めるための定年制の廃止という考え方は、日本の雇用システムにおいては相容れないものであり、結果的には全社員の雇用契約がエンドレスで続いていくことになり、採用活動を通常通り行えば毎年恐るべき額の人件費が加算されていくのは火を見るより明らかです。定年制廃止のハードルは極めて高いものといえます。



なお、いったん廃止した定年制を復活させることは労働条件の不利益変更にあたると考えられますので、定年制の廃止を検討する場合はこの点についても注意が必要です。



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2011-08-01

退職金制度を考える


退職金制度改定ラッシュは落ち着いてきたようです。

来年3月末で適格退職年金税制上の優遇措置がなくなるため、多くの企業はここ数年の間に他制度への移行を終わらせたものと思われます。

また、多くの企業において退職金そのものへの考え方は大きく変わりつつあります。金額を大幅に減額したり、制度自体を廃止したり、あるいは算定方式を大きく見直す企業もあります。



私も現在、関与先の退職金制度の見直しにあたり、新制度の設計をようやく終わらせて移行手続きを進めているところであります。



退職金制度を考える際に最も重要なことは、制度が会社の人材戦略にマッチしているのかどうかということです。

「そもそも退職金は必要なのか」
「何の為に退職金を支給するのか」

ということをゼロベースで考えてみるのがよいと思います。

一般的に退職金は従業員のモチベーション向上よりも長期勤続の奨励、定着率の向上に対する効果の方が大きいものと考えられます。

あまり長期勤続を推奨せずに適度に新陳代謝を求めている会社の退職金支給額が定年までの累進的カーブを描いていたり、あるいは入社から熟練・貢献までの時間がかかる職種であるにもかかわらず受給可能な最低勤続年数が短かったりするのは、人件費の配分としては有効とはいえません。



退職金の支給水準については大幅に減額したい企業が当然多いのですが、その場合には自己都合退職の場合の減額率を引き上げることによって、比較的従業員の反発を受けずに改定を行うことが可能と思われます。(※大企業など中途退職者の少ない企業は効果が薄いですが)



算定方式の傾向は、基本給連動方式(最終給与比例方式)を廃止するところがほとんどではないかと思われます。この方式だと会社が支払い義務の発生している退職金の総額を管理するのが難しく、また、賃金をベースにすると賃金制度そのものに悪影響を与える可能性がある為です。

近年は、年齢や資格などに応じたポイントを毎年積み上げるポイント制退職金制度を導入する企業が主流と思われますが、最近では成果主義の流れから、確定拠出年金をベースとした業績連動型退職金制度も増えていると聞きます。(※これらの制度の場合、一方的な不利益変更ではないという説明もしやすいです。)

貢献を退職金に反映させるのかという点は退職金制度を考えるうえで非常に重要なポイントですが、賞与制度や賃金制度との整合性やバランス、そして人事制度全体のコンセプトを考慮し、トータルで考えることが必要です。



これらの基本的事項が固まってくれば、次は現実的に導入が可能なのかという資金準備の話になってきます。退職金に関しては外部積み立ての様々な準備制度がありますが、また次の機会に詳しく書きたいと思います。




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2011-05-20

人事制度に手をつけないリストラは失敗に終わる


景気低迷が続く昨今、経営者がリストラの判断を迫られる場面は珍しくありません。


以前の記事でも触れましたが、解雇は日本ではかなり厳しく規制されています。
JALが昨年末に行った整理解雇についても不当解雇で提訴されていますが、あれだけ追い込まれた状況下で綿密に手順を踏んで行ったと予想される整理解雇であっても、訴訟リスクをゼロにすることはできません。


整理解雇を正当化する要素の1つとして、解雇回避努力の程度があげられますが、実際には希望退職の募集が重要視されることが多いといえます。


希望退職とは、退職を希望する社員を募って会社都合の合意退職にもっていくことです。通常、割増退職金や有休買上げ、再就職支援などの条件をパッケージ化して一定期間募集をかけます。



ところがこの希望退職、本当にうまくいった会社があるのだろうかと疑うほどいい話は聞きません。


会社はほぼ確実に、ターゲットとなる辞めさせたい社員と、何としても会社に残したい社員をあらかじめ決めています。希望退職の募集と平行して全社員と個人面談を行い、辞めさせたい社員の退職勧奨、残したい社員の慰留を全力で行うのです。


お分かりかもしれませんが、結果的には全く逆、辞めさせたい社員は1人も辞めず、何としても残したかった社員がゾロゾロ辞めていくパターンが多いといわれます。

会社が残したいと思う社員は通常、有能で市場価値が高く、再就職への不安もありません。加えて、賃金制度・人事考課制度に対して実力主義的要素を強く求めます。もしも有能で市場価値の高い社員が会社の既存の人事制度について不満を抱いていた場合、有利なパッケージで希望退職の募集があれば、転職の背中を押されたようなものです。

会社は一時的に人件費が減って窮地を脱したかと思いきや、予想以上に生産性が下がり、根本的な問題は解決されないまま、またいずれリストラの判断を迫られる日がやってくるのかもしれません。



希望退職の募集は単なるコストカット・人員削減ではなく、人材戦略の一環と考えるべきです。


賃金退職金制度、キャリアパスは会社の人材戦略にマッチしているのか

会社の求める人材像は評価制度に反映されているのか


会社の求める人材を会社に残すためには人事制度改革は必須といえるでしょう。




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2011-04-27

年功序列という1つの時代の終焉


ご存知のとおり年功序列は崩壊したと言われています。



1990年代後半まで当たり前のように運用されてきた年功型の人事制度(厳密には職能資格制)。
様々な問題を抱えていましたが、決定的だったのは給料(基本給)を下げられなかったということでしょうか。

職能資格制において評価の対象となる「職務遂行能力」は本人の保有能力であるため、そもそも下がるという考え方がありません。



さらに法的な観点からも、給料の引き下げは容易ではありませんでした。
多くの企業において、給与規程に以下のような文言が記載されていたはずです。

「第○条(昇給) 昇給は毎年4月に、基本給について行うものとする。」

この条文には「降給」の文字がありません。
まさかと思われるかもしれませんが、この規定では会社は一方的に給料を下げることはできません。




そして、バブル崩壊後、経済は停滞し、組織の成長はストップ。
若年層が少なくなる一方で、高齢者層が急増し、全体の労働量が落ちているのに、企業が支払う人件費総額は増加するという頭の痛い状況。

企業は膨れ上がる人件費を何とか抑制したい、何かいい案はないかと考え、
「業績に応じて給料を上げ下げできる成果主義という制度がアメリカにあるらしい。早速導入してみよう。」
となりました。


結果はうまくいかない企業が多数でした。
理由も様々言われています。



しかしながら、年功序列からの脱却は時代の要請です。
成果主義がうまくいかなかったから、やはり元のやり方に戻そうというわけにはいきません。




はっきりしていることは、

  • 大規模企業において、日本的システムである職能資格制を維持することは困難だった
  • 成果主義シフトの潮流は今後もなお変わらない
  • 中小企業については、必ずしも上記の前提があてはまるとは限らない。より柔軟な対応が必要である

ということであり、
これからの時代に勝ち残るための人事制度の模索は続いていくでしょう。




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