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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-03-05

AIJからみえてくる厚生年金基金の崩壊と加入企業の倒産危機


AIJが年金積立金を2000億円ふっとばしたものだから、全国の厚生年金基金に加入している企業はみな凍り付いたようで脱退を急ぐところもあるようですが、そうなってくると今度は別の深刻な問題が発生してきます。

厚生年金基金は3階建ての公的年金制度の3階部分であり、国民年金厚生年金とは別に基金が加入企業に対して独自に年金を支給する制度ですが、実は基金は本来政府が行う厚生年金(報酬比例部分)についても、政府に代わって保険料を集めて運用し給付するという代行業務をやっています。

全国に約600弱ある厚生年金基金はご想像のとおりどこも財政難でギブアップ寸前のところも多々あるわけですが、基金を解散したければ前述の代行部分の積立金を国に返さなければなりません。そして積立金が政令で定める一定の額を下回っている場合(これを「代行割れ」といいます)、なんと加入企業から追加で一括 or 分割で集めて支払うことになるのです。企業は長年基金に掛け金をきちんと納めてきたというのにです。

この代行割れの際に企業が支払う金額はおそらく一企業あたり億単位にもなるでしょう。現実に代行割れ部分の補てんが原因で資金不足に陥り倒産した会社が過去に何社もあります。本業で黒字を出して堅実に経営してきた会社が、厚生年金基金の運用失敗のあおりを受けて倒産なんて冗談のような話です。もうじきこんな会社が続出するかもしれませんが。

しかしまあ、冷静に考えてみると、国は国民年金厚生年金の現在あるべき積立金のうちあわせて約800兆円を消失させてしまっているわけで、さらに2006年に150兆円あった積立金の残高は、2011年には110兆円まで、たった5年で約40兆円減らしてしまっている。AIJの2000億がかわいいものだと錯覚してしまうほどです。

つまり基金に加入していない企業の厚生年金政府が運用しているから元本割れしようが積立金をどんなに失くそうが経営に影響なし、一方基金に加入している企業は基金が解散となれば自らの経営危機のリスクを負って身を削って積立金を補てんしなければならないという構図です。基金は担当者の8割が運用経験なしというユルユルの経営だったのにです。

分かりきっていることですが、年金の運用って他の金融投資に比べて何でこんなにゆるいのか。まかせる相手が人間である限り年金積立金の適正な管理なんて夢物語なのか。年金制度を現行の賦課方式から積立方式に変えていくべきという議論がありますが、賦課方式でさえこの状況なのに、積立方式の場合の比較にならないくらいの莫大な積立金を官僚なんぞにまかせるのかと思うとゾッとするのは私だけでしょうか。



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2011-09-17

迫りくる年金支給開始年齢の引き上げ


年金支給開始年齢の60歳から65歳への引き上げに伴う2013年問題は思った以上に世間の関心を集めているようです。


※以前書いた「2013年問題」に関する記事はこちらです。
若者の雇用を直撃する「2013年問題」 - 人事労務コンサルタントmayamaの視点


定年から65歳までの間の生活のことを考えると、特に50代の方などは気が気でないことと思われます。


ところが世間の心配をよそに厚生労働省年金部会では、既に67〜68歳までのさらなる引き上げを検討し始めているとのことです。

しかも65歳への引き上げは25年間のじっくり時間をかけたスケジュールで進めていたのですが、次はゆっくりしていては間に合わないらしく、短期間で一気に進める必要があるという話も聞きます。


リーマンショック以降の経済の冷え込みや、加速する少子高齢化を考えれば、支給開始年齢の引き上げは現実問題として避けて通れないと思います。

そして67〜68歳への引き上げは、さらなる70歳への引き上げの布石に思えて仕方ありません。

※実際に6月30日政府が決定した社会保障・税一体改革成案」において、「68〜70歳へのさらなる引上げを視野に検討」と記載されています。


というわけで年金70歳支給開始時代は確実に来ます。

さらに年金の支給額も減額されていくと思われます。数十年後には現在の数割程度は給付水準が下がっている可能性も考えられます。

長いスパンで考えると、2013年問題に直撃する世代も若い世代から見れば、まだまだ逃げ切り世代といえるのかもしれません。



年金政策は高齢者雇用と表裏一体にあるのですが、平成18年から企業に義務付けられている高齢者雇用確保措置(つまり雇用制度)がほとんど機能していないように感じます。次回はこの辺を中心に書きたいと思います。




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2011-07-24

若者の雇用を直撃する「2013年問題」


最近、「2013年問題」の話をよく聞きます。


サラリーマンの年金の受給開始年齢が生まれた年によって60歳から65歳へ段階的に引き上げられているのは、ご存知の方も多いと思います。

60歳から支給される年金定額部分報酬比例部分に分かれており、定額部分については既に65歳まで引き上げられているのですが、残る報酬比例部分についても今後引き上げられ、最終的に年金を受け取れるのは65歳からになります。

そして、60歳で年金を受け取ることができない最初の世代(※生年月日が昭和28年4月2日以降の人)が初めて60歳を迎えるのが2013年というわけです。



ご存知のように国の年金財政は相当に厳しい状況にあり、その為厚労省は年金の受給開始年齢を60歳から65歳へ引き上げる対策を進めてきました。

それに対応するにように企業が義務付けられたのが、65歳までの「高年齢者雇用確保措置」です。

それまでほとんどの企業では60歳定年が運用されてきましたが、

  1. 定年年齢の引き上げ
  2. 継続雇用制度の導入
  3. 定年の定めの廃止

のいずれかの対応が求められました。

早い話、国は「65歳になるまでは面倒見れないから企業のほうで面倒みてやってくれ。」と言ってきたわけです。

多くの企業は65歳を最高年齢とする雇用制度を導入することで対応しました。



ところが、2013年問題を見据えた厚労省の企業に対する要求はさらに大きくなります。

現在、定年後再雇用制度は労使の合意によって対象者の選定基準を設け、対象者を実質絞っていますが、厚労省は今後希望者全員を継続雇用させることを検討しているようです。

将来的に年金の受給開始年齢は67〜68歳を経て70歳になるとも言われています。そうなれば「高年齢者雇用確保措置」も70歳まで引き上げられるのでしょうか。あるいは定年年齢が65歳まで引き上げられる可能性も考えられます。いずれにしても企業の人件費の負担は増える一方です。


そしてこれらは何をもたらすのか。

これまで退職していた人たちが継続雇用されたときに企業がとる行動は何か。

解雇や給与引下げは当然簡単にはできません。最も簡単なのは、新たに人を採用しないことです。1番影響を受けるのは新卒採用ではないでしょうか。

ただでさえ就職氷河期と言われている若者の雇用機会がさらに圧迫されることは容易に想像できます。
(※厚労省は高年齢者雇用確保措置と若年者雇用に相関関係はないと言っているようですが。)




なお、最後に再雇用制度に関連して1点注意ですが、今年4月より、継続雇用対象者の選定基準について労使協定を締結していない場合、高年齢者が退職する際の離職票の離職理由は「会社都合」による退職の扱いになります(※本人の継続雇用の希望の有無にかかわらずです)。くれぐれもご注意下さい。



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2011-05-27

厚生年金の加入要件緩和の是非


厚生労働省が非正規労働者の厚生年金の加入要件緩和を検討しているようです。


以下参照
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現在のところ、1日または1週間の労働時間と1ヵ月の労働日数が正社員の概ね4分の3以上である場合、パートタイマー等であっても社会保険(健康保険+厚生年金)に加入させることは会社の義務です。



しかしながら、現実はそうはなっていません。
加入義務があるにもかかわらず社会保険に加入していない事業所の割合は3割にのぼるとも言われています。

社会保険料は会社にとってかなり重い経費です。
「法律通りに社会保険に加入すれば経営が立ち行かない」
そう考え、違法と知りながら社会保険に加入しない経営者もいます。



社会保険未加入の会社には、会社自体が社会保険に加入しないパターンと、会社は加入しているが一部の労働者を加入させないパターンがあると思われます。
前者の場合は行政が実態を把握するのがなかなか困難ですが、後者の場合は調査が入って未加入を指摘される可能性も高いでしょう。



それにしても、なぜ社会保険に加入しない会社がそんなにも多いのか。
健康保険法および厚生年金保険法には、加入手続きを怠った場合の罰則が一応定められています(6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金)。

ところがこの罰則、適用されることはあまりありません。

会社自体が社会保険に加入しなければ、保険料の負担はない、罰則も適用されない、
であれば経営の厳しい零細企業が加入しないのもうなずける話ではあります。




今回の厚生年金の加入要件緩和の検討内容は具体的には

  • 労働時間が週20時間以上
  • 雇用期間が31日以上

となっており、
実現すれば100万人以上の非正規労働者が新たに社会保険の対象となるわけですが、それらは一体何をもたらすのか。

今まできちんと加入していた会社が社会保険を維持できなくなるかもしれません。
未加入の会社にとってはますます加入のハードルが高くなりそうな気もします。
加入要件が拡大されようがお構いなしに加入させない会社もあるでしょう。
一方で苦しい経営のなか苦労して従業員を社会保険に加入させる会社もあるのかと。

労働者側においても、少ない給料からさらに多額の社会保険料をとられたくないという理由で加入を希望しないパートタイマーもいると聞きます。


いずれにしても制度の公平な運用を担保できない状況下で、加入要件の緩和だけを検討することに一体何の意味があるのか、私にはわかりません。




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