Hatena::ブログ(Diary)

人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2013-08-08

「ブラックバイト横行」アルバイト基幹化に思うこと


随分久しぶりの更新となります。私の業界では6月・7月が繁忙期なのですが、あまりの繁忙ぶりに全くブログの更新ができず、繁忙期の余韻を引きずって今日にまで至りました。今年の後半に向け巻き返しをはかっていきたいと思います。



さて、本題に入りますが、ブラック企業ならぬ「ブラックバイト」が問題化しているようです。

<ブラックバイト>横行 「契約無視」「試験前も休めず」(毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130808-00000050-mai-soci

アルバイトをする大学生の間で、「契約や希望を無視してシフトを組まれる」「試験前も休ませてくれない」などの悩みが広がっている。学生たちの声を集めた大内裕和・中京大教授(教育学)は、違法な長時間労働などをさせる「ブラック企業」になぞらえ、「ブラックバイト」と呼び、問題視している。企業が非正規雇用の志向を強める中、正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせる「基幹化」が進んでいるようだ。



企業の経営環境はますます厳しくなり、人員削減して社員一人当たりの負担は増える一方。結果としてうつ病休職者は激増。そして企業は人件費の安い非正規雇用比率を増やし、ついには学生アルバイトにまで正社員並の働きを求めて圧力をかける時代がやってきたというわけですか。

記事の中で聞き捨てならないのが、「正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせる「基幹化」が進んでいる」ということ。

まあ、学生アルバイトだしいずれどこか別の企業に就職するのだからどう使ってもいいという考えなのでしょうが、ただし、「アルバイトを非正規の待遇のまま基幹化を進める」という考え方そのものは法律的に問題大アリです。

パートタイム労働法では、正社員と同じ仕事をしている場合(職務内容が同じ場合)など一定の要件を満たす短時間労働者について、賃金などの待遇を正社員差別してはならないとされています。

さらにアルバイトが有期契約労働者である場合には雇い止めの問題が発生するかもしれませんが、雇い止めの有効性の判断基準として、

・地位の基幹性 or 臨時性
・業務内容の恒常性 or 臨時性

という要素があります。正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせて基幹化を進めれば、雇い止めをした際にどういう影響があり得るのか、という問題が浮上します。


それこそ正社員同様に業務命令権を広く行使したあげく、期間満了による労働契約の終了のみを主張するなんて、会社は虫が良すぎるでしょ、と判断されるかもしれません。

非正規労働者雇用する際は、雇用形態に即した内容の雇用契約を締結し、それを遵守するということが重要なのであり、正社員との業務内容、権限、責任に合理的な差を設けなければなりません。契約社員は臨時的業務、パートタイマーやアルバイトは補助的業務、だからこそ正社員とは待遇が違うわけです。それが無理だというのなら、そもそも自社にとって正社員とは一体何なのかをよく考えるべき状況にあるのだと思います。

2013-04-10

早くも表面化。労働契約法「改悪」の余波


4月1日から改正労契法が施行されています。これでいよいよ有期契約労働者は、更新によって通算期間が5年を超えた時点で無期転換申込権を獲得できるようになったわけです。当然ですが、この法改正をうけて多くの企業は契約社員の更新年数に上限を設けるであろうことが予想されます。


で、以下のニュースです。

労基法違反:首都圏大学非常勤講師組合、早大刑事告発へ(毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20130407k0000e040126000c.html

一見すると「労働基準法」違反ということですが、発端は今回の労契法改正です。

記事によれば、早稲田大学は今回の労働契約法改正をうけ、これまで更新上限のなかった非常勤講師などの更新年数に5年の上限を設ける内容で就業規則を改定したようですが、手続きの過程で労働基準法によって義務付けられている労働者過半数代表からの意見聴取を適法に実施しなかったようで、労働組合は近く労働基準法違反容疑で刑事告発をするといっています。

こういう事件があると、労働基準法は刑罰法規だったのだということが改めて認識されるのかもしれませんが。

違反容疑を具体的にいうと、過半数代表者を投票で選ぶ際に、今回の改定で不利益を被ると考えられる非常勤講師客員教授に対して手続き書類を見せず、投票結果も公表せず、つまりは手続きの過程を一切公開せずにこっそりと進めて規則改定・届出を終わらせたということです。

実際のところ過半数代表者の選出や意見聴取をきちんと行っていない会社なんぞ世の中にいくらでもありますし、法第90条違反であれば30万円以下の罰金で済むといえば済むわけです。

しかし、記事によれば現在4,300人いるという非常勤職員のうちの少なくない数の職員について、おそらく今後も有期契約は更新されるであろうという合理的な期待が発生していたと考えられるわけであり、一方的に5年の上限規制を設ける改定はかなり重要な労働条件の不利益変更だといえます。

確かに改定に際しては相当な反発が予想されるのですが、だからといってコソコソばれないように進めたうえ結果的に刑事告発されてしまったのでは、後々に不利益変更の有効性を争うことになればコソコソ行為自体が不利な材料になるのだと思います。

更新最長5年制限を検討していた他の大学も労働組合の反発によって撤回・凍結しているということですが、多くの職員にとって重要な不利益変更である以上、ある程度時間と労力をかけた説明・協議のプロセスは避けて通れません。無理・強硬に進めれば不利益変更法理(労働契約法第10条)によって無効とされかねません。



就業規則による更新上限の定めは、新たに雇い入れる有期契約労働者に対しては、契約自由の原則により全く問題はありません。また、定めをする時点で既に雇用している場合であっても、まだ更新を繰り返していないような労働者については合理的な更新期待が発生していないと考えられますから不利益変更にはあたらないといえます。

ただし更新を繰り返している労働者については合理的な期待が発生している可能性が考えられるため、少なくとも全員と協議を行ったうえで一人ひとりの合意を得るのが望ましく、雇用契約書においても上限の条項を入れることによりリスクをなくしていきます。合意を得られないのであればそれ以上更新を重ねるのはさらにリスクが高まりますので現在の契約期間までで満了とし、雇止めの有効性の問題に移っていくものと考えられます。


今後、有期労働者を雇っている多くの企業でこのようなトラブルが発生する恐れがあります。今回の法改正がなければ何事もなく更新され満足していた方も相当数いたはずですが、法改正を推し進めた方々はこの状況を見て一体何を思うのでしょうか。




関連記事

2013-03-16

「準正社員」「賃金を抑え解雇しやすく」中途半端な政策でお茶を濁すのか


安倍内閣に代わってからというもの、「解雇規制緩和」への流れが加速しているように感じます。それ自体に異論はないのですが、気になるのは何とも中途半端なというか、意味不明というか、またしてもグダグダな政策が進行中のこの状況です。

まずは具体的なニュースから。

「準正社員」採用しやすく 政府がルール(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS13038_T10C13A3MM8000/

政府は職種や勤務地を限定した「準正社員」の雇用ルールをつくる。(中略)職種転換や転勤を伴わない分、企業は賃金を抑え、事業所の閉鎖時に解雇しやすい面がある。


この記事がいうところの、「準正社員」なるものを設ける企業側のメリットは「賃金を抑えられる」ということと、「事業所を撤退・閉鎖したときに解雇しやすい」ということのようです。この「準正社員」の設置によって企業は採用を増やすだろうということです。

はっきり言いますが、まず正社員であろうが契約社員であろうがパートであろうが、賃金を抑えるか抑えないかは完全に企業の自由です。どんな賃金制度を運用するのか、どんな契約で雇入れるのか、最低賃金法に違反しない限り企業の裁量で好きにやればいいのであって、決して「準正社員」というカテゴリーを法令でつくらなければ賃金を抑えられないなどということでは断じてありません。

次に、事業所撤退・閉鎖時の解雇についてですが、現行法であっても、入社の際に「職種限定」「勤務地限定」という内容で雇用契約を結んだ場合、実際にそのような制度が企業内で適切に運用されている限り、撤退・閉鎖時に雇用を継続できないという理由で解雇を行っても不当な解雇とは判断されません。企業は契約によって限定された職種・勤務地の範囲内において解雇回避努力を尽くせばよいのです。

つまり、「賃金を抑え」「事業所閉鎖時に解雇しやすくする」ために、わざわざ「準正社員」という位置付けをつくる必要は全くないということです。

(※職種・勤務地限定契約の場合の解雇は、現状ではその都度裁判所の判断によるため、統一した解雇ルールを法律で明確化しておくということであれば話は分かるのですが。)



さらに同記事

企業が正社員とパートの中間的な位置づけで地域や職種を限定した準正社員を雇いやすくなるよう政府が雇用ルールをつくる。

正社員賃金水準は正社員の8〜9割だが、期間の定めのない無期雇用で、社会保険にも加入できる。パートや派遣などの非正規社員より生活が安定する。


繰り返しますが、労働者賃金水準をどうするかは企業の自由ですし、正社員の定義なんて企業によってバラバラです。賃金を「正社員の○割」とすることに意味なんかありません。

そもそも労働法上、「正社員」という概念自体ありません。労働基準法では「労働者」とのみ定めがあり、それが無期と有期に分かれるだけですし、パート労働法において労働時間の短い労働者を「短時間労働者」と定義しているくらいの分類しかありません。

要するに、「正社員とパートの中間的な位置づけ」と言われても、そんな形式は法律上ありえないのです。

「期間の定めのない職種限定・勤務地限定の労働者」を雇いたいのなら現行の法律でできますし、賃金も企業の好きに決めることができるのです。わざわざ「準正社員」をつくったからといって企業が今までより雇用しやすくなるということは考えられません。

さらにいうと、社会保険はパートや有期労働者であっても一定の要件を満たしたら必ず加入させなければならない決まりです。企業が法令を無視して加入させていないのであれば、それは法律ではなく監督行政のあり方の問題です。「準正社員」だから社会保険に加入できるという理屈は全くをもって意味不明です。



今回の報道にあるような「準正社員」なる極めて意味の薄い中途半端な雇用形態を創出したところで、かえって企業の労務管理が複雑化するだけで企業にもメリットはありませんし、当然労働市場の流動化にもつながらず、労働者側にもメリットはないものと思われます。

現状の正社員の解雇規制には一切手をつけず、同一労働同一賃金の問題も放置したままで、実質的には非正規雇用ともとれるような雇用形態をもう1つ増やすしたところで、そんな小手先の政策にたいして意味はありません。






関連記事

2012-11-05

突然言い出すから問題になる契約社員の更新拒否(雇止め)


一般的に契約社員雇用の調整弁と考えられており、必要な時に必要な人員だけ更新をして、業務が減り必要がなくなったら契約を即打ち切るという使い方をされているパターンが大多数だと思われます。

しかしこの運用は、そもそも有期契約が臨時的・一時的な業務を前提とするという法の趣旨に反するものであり、今年の8月から既に施行されている改正労働契約法における「雇止め法理の法定化」を考慮すると、今後企業の都合によって好き勝手に更新したり打ち切ったりすることはますますリスクが高くなっていく(つまり雇止めが無効と判断されるケースが増加する)ことでしょう。



ここで1つ、基本的なことを忘れてはいけないのですが、雇止めは

「更新するかもしれない」

と言って期待させておきながら、契約期間の満了時になって急に

「ごめん、やっぱり無理」

と期待を裏切るから不当な雇止めとして問題になる訳であって、あらかじめ直近の更新の時点で「次は更新しない」という意思表示を行い、雇用契約書に不更新条項を入れたうえで更新手続きを行えば、不当な雇止めにはなり得ないのです。

ここで重要なのは、次回更新をしないという点に関して労使双方が合意をしているということであり、通常これによって労働者更新の期待を抱かない、あるいは期待を抱いたとしても合理性があるものとはいえない、となるのです。

この流れを経ていれば、雇止め後、労働者より「雇止め理由証明書」を求められたとしても(※これは厚労省指針によって交付が義務付けられています)、

「前回更新時に、本契約を更新しないことに関して合意されていたため」

という理由の記載によって対応が可能となります。


契約社員を常時多数雇用している比較的大規模な企業などはもちろん上記の運用をしていることかと思われますが、労務管理の甘い中小企業ではまだまだこのような雇止めリスクを回避する為の運用は不十分であると感じます。



ただし、前回の更新時にきちんと次回不更新を伝えるケースであっても、必ずしも労働者がそれに合意をするとは限りません。

もちろん現実には会社と労働者の関係は対等ではありませんから、労働者合意したくなくても、「とにかく今回だけでも更新してもらいたい」という気持ちから、不更新条項入りの契約書に渋々サインしてしまうこともあるでしょう。

しかし、会社は決して高圧的に合意を強要してはいけませんし、「合意しないなら更新しない」ことを仄めかしてもいけません。

いうまでもありませんが、「次回の不更新について合意しないなら、今回の契約は更新しない」という会社の行為は法的に認められません。そんな理由で更新拒否しても、雇止めの正当な理由が見つかりません。

会社は労働者に対し「契約社員の位置付け」について説明し、納得を得られるよう努力しなければなりません。その為には、日頃から有期雇用について適正な労務管理(雇入れ時の説明、業務内容、更新手続き等)を行う必要があります。


労働者があくまで合意を拒否する場合、次の2通りの行動が考えられます。

まず、何が何でも契約書に署名・押印をしないという姿勢です。このままでは契約は成立しませんから(少なくとも形式上は)、更新手続きがされないまま満了日を迎えることになります。

その場合には、満了日以降も労働者が実態として勤務し続ければ黙示の更新として無期契約に転換する恐れも否定できませんから、会社としては契約満了を主張し、次の契約の合意ができるまでは勤務を拒否すべきです。


2つ目は、労働者は場合によっては雇用契約書に「次回不更新に関しては合意しない」という文言を追加記入した上で署名・捺印をしてくるかもしれません。

その場合、会社は労働者の「合意しない」旨を容認した上で契約を更新しワンクッション入れて次回雇止めを行うか、あるいは合意がとれない以上は仕方ないのでワンクッション入れずにこの時点で雇止めを行うか選択することになります。(※雇止め自体を止めるという選択肢はないものとして。)

いずれにしても有期雇用を臨時的・一時的業務を前提として適切に運用してさえいれば、不当な雇止めという労働者からの訴えを恐れることはありません。


このたびの労働契約法の改正を機会に有期雇用の運用を見直し、さらに雇止めの際には契約期間をワンクッション入れることによって、ほとんどのトラブルは防止できるのですから、企業は迅速に行動に移すべきです。




関連記事

2012-09-18

契約社員はもはや「いつでも切れる」労働者ではない<雇止め法理の法定化>


労働契約法改正について、ニュースなどで話題になっているのは、5年超えた場合の無期転換の話ばかりのように感じますが、実際のところ無期転換ルールは企業の意識に影響を及ぼしません。実は無期転換ルールは重要ではありません。

企業にとって必要な人材であれば5年経過後も無期雇用として会社に残す(or 5年経過を待たずに無期雇用に転換させる)、必要でないと判断されれば5年経過前に契約を打ち切る、そうやって企業は人件費増加のリスクを回避しますから、現実には雇止めの数が増えるだけだと思います。(もちろん長期勤続の契約社員にとっては大問題ですが、あくまで企業側視点で。)


今回の労働契約法改正でとにかく重要なことは、「雇止め法理」が条文に明文化され、制定法化されたということです。(※この改正点は、8月10日に既に施行されています。)

これによって、今後有期雇用契約の更新が打ち切られた場合には、

1.契約更新の繰り返しによって無期雇用と実質同じ状態にあるとき

あるいは

2.状況的に更新されるという合理的な期待が認められるとき

のどちらかに該当するケースであれば、実質解雇とみなされ、解雇の場合と同様に合理的な理由のない雇止めは無効と判断されて、それまでの有期契約が更新されたものとみなされます。

この法理は法改正以前も判例法理によって運用されてきたものではありますが、今回の制定法化によって不当な雇止めの法的根拠が明確化されましたので、今後多くの雇止めに係る労働紛争が予想されますし、現実的に企業に与える影響(労働者に与える影響はともかく)は無期転換ルールの比ではありません。

にもかかわらず、この事をきちんと理解していない企業関係者が何と多いことか、という実感です。


改正労働契約法(雇止め法理)が施行されたいま、契約社員を常用的に使用し都合のよいときに契約を打ち切るという雇用の調整弁的な使い方には限界があるということを認識しなければなりません。


・各企業にとって有期雇用とはどのような位置付け、雇用区分なのか。
・有期雇用を使う目的は何か(無期でなく有期を使う必要性)。
・有期契約労働者としての職務(無期労働者との違い)


今こそこれらをハッキリと決めるべきです。もちろん有期雇用はどうあがいても正社員の代わりとはなり得ません。




関連記事

2012-09-04

労働契約法改正まとめ 無期転換ルール7つのポイント


8月10日に公布された改正労働契約法ですが、一部は公布と同時に既に施行されている状況です。以下ポイントをまとめます。


1.無期労働契約への転換

2.「雇止め法理」の法定化

3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止



このうち「2」の「雇止め法理の法定化」は8月10日に既に施行されています。「1」と「3」については公布日から1年以内に施行される予定です。

今回は「1.無期労働契約の転換」について行政通達に基づいてポイントをまとめます。



1.無期労働契約への転換
有期雇用契約が通算5年間を超えて反復更新された場合には、有期契約労働者が使用者に対し申込を行うことによって期間の定めのない契約(無期労働契約)へと転換することになります(「無期転換ルール」といいます)。


◆ポイント
通算5年超えの有期労働者が申し込んだときは使用者は承諾したものとみなされ、有期契約満了日の翌日から労務が提供される無期契約が成立することになります。

つまり、労働者が申込権を行使した後、使用者が現に締結している有期労働契約の満了日をもって労働者との契約関係を終了させようとする場合、すでに無期契約は成立していますから、無期雇用の解雇に該当することになり、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には権利を濫用したものとして無効となります。

また、満了日よりもさらに前に契約関係を終わらせようとする場合は、契約期間中の解雇ということになり、通常の解雇よりも厳しい要件が求められるため(労働契約法第17条第1項)十分に注意が必要です。


◆ポイント
無期転換の申込権の発生を回避するために一時的に直接雇用からはずし、請負や派遣の形態を偽装した場合は脱法手段とみなされ、同一の使用者との労働契約が継続しているものとみなされます。


◆ポイント
労働者が申込権を行使できるタイミングは、通算契約期間が5年を超えることとなる有期労働契約の契約期間の初日から満了日までです。仮にその期間に申込権が行使されなかったときは、再度契約が更新されれば新たにまた申込権が発生し、更新後の満了日まで行使が可能となります。


◆ポイント
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、権利発生前にあらかじめ有期契約労働者に同意をとって申込権を放棄させることは公序良俗に違反し無効となる可能性があります。


◆ポイント
通算契約期間のカウントを始めるのは、法施行日以後に契約期間の初日が来る有期労働契約からです。そのため、施行日前の日が初日である有期労働契約は通算期間に参入しないことになります。


◆ポイント
無期転換後の労働条件は、労働協約、就業規則、個々の労働契約によって別段の定めがない限り、従前と同一の労働条件となります。別段の定めをする場合、職務内容が変わらないのに労働条件を従前より低下させることは望ましくないと通達されています。


◆ポイント
通算契約期間のカウントにあたって、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、同一の使用者の下で働いていない空白期間(クーリング期間)が6ヵ月以上あるときは、その空白期間より前の有期契約期間は5年のカウントに通算せずリセットされます(つまりクーリングされます)。
(※通算対象の契約期間が1年未満の場合は、その2分の1以上の空白期間がクーリング期間になります。この辺りの詳細は厚生労働省令で定められます。)




体制の整備が重要なのはポイントΔ量鬼転換後の労働条件についてだと個人的には思います。その企業の契約社員の位置づけ、無期転換後の位置づけをはっきりさせた上で労働条件を就業規則、規程、雇用契約書に明記し、社内の転換ルールをはっきりさせなければ後々トラブルの火種となります。雇止めの有効性の判断もますますシビアになってきますし、今回改正点の「不合理な労働条件の禁止」とも関係してくるところです。この辺りはまた詳しく書きたいと思います。




関連記事

2012-08-06

5年を超える前に雇止めすれば問題ないという勘違い<改正労働契約法>


先週、改正労働契約法がとうとう可決、成立しました。有期雇用契約労働者契約社員)が同じ会社で5年を超えて反復更新された場合には、本人の希望により無期雇用(つまり正社員)への転換を企業に義務付けるという例の話題の法改正です。施行は来年の4月です。

この法改正による世間の反応はというと

「そんな規制したら、会社は5年経つ前に更新打ち切るに決まっているでしょ。」

「これまで長年更新されてきた人がみな5年以内で契約打ち切られて失業者が増える。」

という声が大多数のようです。今回の法改正が「5年以内の雇止めの促進」につながるというわけです。確かに企業は概ねそのように動くと思います。ただし、本当のところはそんなに単純な話ではありません。



今回の労働契約法の改正は、多くの企業や労働者大きな誤解を与えかねない法改正だと思っています。

というのも、現実として今まで企業は有期雇用契約を何年も実質上限なく更新してきました。そして今回の改正で、上限の5年を超えた場合には無期雇用に転換しろといわれています。裏を返せば、「通算5年経過時点までに更新を止めさえすれば、有期雇用を何回更新してどう取り扱おうが基本的に企業の自由だ」という間違った認識を企業と労働者に与えかねないのであり、少なくとも多くの労働者はそう考えている状況です。

しかしながら、有期労働契約は本来、臨時的・一時的な業務を行わせるための雇用形態であり、そもそも常用的な労働者を雇い入れることを前提としていません。にもかかわらず現実には多くの企業が恒常的業務のために有期労働者を雇って反復更新を重ね、そして都合のいいときに契約を打ち切るという法の趣旨に反した運用を続けているのであり、裁判では実質「期間の定めのない雇用」と同じだと判断され解雇法理が適用されて雇止め無効とされるケースが少なくありません。例え上限5年に達していなくとも、「無期雇用と判断される可能性」も「雇止めを無効とされる可能性」も十分にあるのであり、5年を超えたら「可能性」どころでなく問答無用で無期転換を強制されるということなのです。

しかも今回の改正では、合理的な理由がなければ雇い止めはできないとする「雇止め法理」が明文化されています。これまで裁判で示されていた雇止め法理が法律に明文化されることによって、これまで以上に雇止め時の正当な理由が重要になると考えられます。

したがって、有期雇用契約が5年を超える前に雇止めをすれば何も問題ないなどという考えは大きな間違いであり、むしろこれを機会に自社の有期雇用の運用の適正化について真剣に検討すべきであることがお分かりいただけると思います。

当然ですが、無期転換を回避するための5年雇止めは合理的な理由とはいえません。厚生労働省告示に基づき労働者が雇止め理由証明書の交付を会社に請求した場合には、まさか雇止めの理由を「無期転換回避の為」とは書けませんので、きちんと合理的な理由を明示することが求められます。



さらに注意したい点は、今回の改正は通算期間の長さを基準にして無期転換の義務を課しており、ともすれば通算期間が長いほど(更新回数が多いほど)無期雇用に近づき、逆に通算期間が短ければ(更新回数が少なければ)有期雇用として認められやすいとの誤解が生じかねないということです。

過去の判例では、まだ1度も更新していない有期契約を1年終了時点で最初に更新拒否した場合であっても、継続雇用への合理的な期待があったとして雇止めが無効とされたケースがあります。必ずしも通算期間や更新回数だけで雇止めの有効性が判断されるわけではなく、雇用の実態を総合的に考慮して判断されるという事を忘れてはいけません。



関連記事

2012-06-23

有期パートタイマーの待遇を正社員並みに法改正


厚生労働省は有期雇用契約パートタイマーの待遇(賃金・退職金など)を今後正社員並みに改善する方針を決めたようです。

以下参照
no title


ここで前提として次のことを確認しておく必要があります。

平成20年4月の改正パートタイム労働法の施行により、パートタイマー(短時間労働者)は次の条件を全て満たした場合に、賃金等の待遇面において通常の労働者(つまり正社員)との差別的取扱いが禁止されています(パート労働法第8条)。

1.職務内容(仕事の内容・責任)が正社員と同じ
2.人材活用の仕組み・運用(人事異動の有無・範囲など)が正社員と同じ
3.実質的に契約期間がない


これらの条件を満たしたパートタイマーは、「正社員並みパート」といわれたりしますが、正確には「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」といわれます。


パートタイマーはたとえ仕事内容等が正社員と同じであったとしても、正社員に比べて賃金は安く賞与がないなど待遇面で劣るというのが一般的であり、企業は人件費を安くする為にパート労働者雇用していると言っても過言ではありません。

パートタイマー正社員差別的取扱いを禁止するという規制は事実企業にとっては大きな負担であり、パートタイマーを多く雇用せざるを得ない営業形態の企業の中には、パート労働法第8条の規制を回避するべく様々な対策をとっている企業も少なくないと思われます。


そして昨年、厚労省は「正社員並みパート」の適用範囲を拡大するという方針を発表していました。

具体的には先ほど挙げた3つの条件を廃止したうえ、代わりに「合理的な理由なく不利益な取り扱いをしてはならない」と定めることによって運用に柔軟性をもたせ、「正社員並みパート」の対象者を増やしていくという方法でした。

この件の詳細は過去記事を参照
「正社員並みパート」拡大の是非 - 人事労務コンサルタントmayamaの視点



ところが冒頭に書いた通り、先日の厚労省の発表では、3要件を全て廃止するのではなく、「契約期間がない」という基準を削ることによってパートタイム労働者のうち「有期雇用契約」の労働者の待遇を改善していくことに方針を転換したように思われます。

雇用契約期間の有無のみによって正社員パートタイマーの取扱いを分けていたという企業は法改正がなされれば当然パート労働法に抵触し、差別的取扱いが禁止されることになります。今のうちに有期パートタイマー雇用形態や労働条件、待遇面について見直しを行い、法改正の動向に合わせて就業規則雇用契約書をスムーズに整備できるよう準備をすべきであるといえます。



関連記事

2012-03-07

有期雇用 上限5年の法改正を批判する


いま法改正が議論されている有期雇用5年の上限規制。具体的には有期労働契約の通算期間が更新によって5年を超えた労働者から申し出があった場合、無期雇用(つまり正社員)に転換しなければならないというもの。

早ければ来年の施行を目指すようですが、この件は気になるので書きます。


はっきり言いますが実際のところこの法改正によって

「そうか。契約社員は5年更新したら正社員にしなければならないという法律ができたのか。仕方ない。うちの会社も契約が5年過ぎたら正社員にするか。」

とはなりません。企業では使える人件費総額というものが大枠決まってますから。法律変わったら使える人件費枠が自動的に増えるとでも?

法律作る皆さん、もうちょっと頭使ってください。


おそらくこうなります。

1.正社員にこだわらず、これまで同様に契約社員として働いていきたいと思っている人
例え本人が正社員(無期雇用)にこだわっていなくても、とりあえず通算5年になったらいったん終了。本人が本当にどう考えているかは会社にはわからないし、最初は有期雇用のままでよくても後で気が変わるかもしれません。本人が申し出た時点で契約形態が変わるリスクを抱えるのでは人件費管理がうまくいきません。

2.仕方なく契約社員で働いているが、チャンスがあれば正社員になりたいと思っている人
5年以内に正社員(無期雇用)登用がなければ5年経った時点で終了。会社に認められなければ正社員になれないのは今まで通りだが、それに5年という実質的な期限がつくことになるでしょう。


結局この法改正がもたらすのは、「有期雇用は通算5年を超える前にきちんと雇止めしなければ」と企業に意識させて、今までなら生じなかった意味のない雇止めを増加させ、現状よりもさらに非正規労働者雇用を不安定にさせるものだと考えられます。



「いや、企業が必要と思う人材であれば、5年経って本人から申し出があれば正社員に転換するのでは?」

いえいえ、本当にずっと働いて欲しい、よそに行って欲しくない人材ならそんな規制なくても正社員にしてますから。企業は必要と判断した優秀な人材は多少無理してでも確保するものです。



そもそも近年の雇い止めトラブルに係る裁判例は、有期契約の通算期間だけで判断されることはなく、

・業務内容の恒常性・臨時性
・更新手続きの厳格性
・更新を期待させる言動
・他の労働者の更新状況

などの様々な要素を総合的にみて、実質期間の定めがない契約といえるか、あるいは労働者に継続雇用を期待させるような状況になっていなかったかを判断して、最終的に解雇権濫用法理を適用するかどうかを決めていたわけです。契約の通算期間だけをみて期間の定めのない契約に転換させるのは明らかに矛盾した考えです。

本当に雇用の安定化を図るのであれば、現在使われている雇止めの法理を法令として明確化、具体化することの方が重要ではないんですかね。


派遣法の「上限3年に抵触したら3ヵ月のクーリング期間だけ非正規の直雇用にして再度派遣に戻せ」みたいな抜け穴使う企業がでてくるんでしょう。実際有期雇用の上限規制でもクーリング期間は設定されると思います。

ただし、労働者派遣法は公法であるため、派遣年数の上限に違反しても行政の指導や制裁を受けるにとどまり、労働者が派遣先企業に対して直接雇用を請求する権利は生じない(みなし雇用は認められない)ですが、今回の法改正は私法上の権利義務を定める労働契約法の改正になるので、上限をオーバーすれば労働者は直接権利の実現を訴えでることができると考えられる点に注意すべきです。




関連記事

2011-12-12

非正規社員の定年制


期間雇用非正規社員たちが、65歳定年制により契約更新を拒否されたのは違法だとして会社を提訴したニュースがありました。


ニュースは以下
no title

以下抜粋

訴状によると、郵便事業会社は民営化された2007年10月に就業規則を制定し、6カ月契約の期間雇用社員について、65歳に達した後は契約を更新しないとする定年制を導入。約1万4000人について、今年10月以降の更新を一斉に拒否した。
 原告側は「定年制は、年功による賃金上昇や厚生年金による退職後の生活保障などがあって初めて合理性が肯定される」と主張。非正規社員への導入は合理的根拠がなく、就業規則は無効としている。

引用ここまで



この訴訟が今後どうなるのかは注目すべきところですが、率直に言って、非正規雇用に定年を適用するのはお勧めしません。

私はこれまでに有期契約の社員に定年制を導入したいという会社の相談を何度か受けてきましたが、その度に導入すべきでない旨を伝えています。理由は長期雇用を前提としていると解釈されたら困るからです。



有期労働契約は契約期間において臨時的に必要な雇用です。雇用契約書に更新規定をつけることにより、状況に応じて契約を更新していくことは当然可能ではありますが、これはあくまでも「期間満了の都度必要と判断したから更新する」ということであり、「更新を繰り返すことにより長期に渡って雇用する」ことを最初から予定するものではありません。

派遣切りなどの契約社員の雇い止めでよく問題となるところですが、契約更新がただの形式的なものだと判断されれば、実質は期間の定めのない雇用だったとみなされ、ヘタをすれば正社員と同様に継続して雇用しなければならなくなるリスクが考えられます。


今回のケースで言えば、一定の期間だけ雇用する予定の労働者に対して定年制を適用するという考え方はそもそも矛盾しており、長期雇用を前提としていると指摘されても反論の余地はないように思われます。



ついでに言うと、長期雇用を前提とした正社員であればこそ、その見返りとして広い範囲の会社の業務命令権、人事権、労働条件の不利益変更なども認められるものと考えられます。それらについて正社員と同様に取り扱った挙句、期間満了による契約の終了のみを会社が主張することはなかなか容易には認められないものと思われます。


また、定年制だけでなく、試用期間休職制度についても、制度の趣旨を考えれば長期雇用を前提としていることは明らかであり、有期契約労働者を対象に運用するのであれば、そのリスクについても当然検討すべきといえるでしょう。



関連記事

2011-09-30

「正社員並みパート」拡大の是非


厚生労働省で「正社員並みパート」の適用範囲の拡大が検討されているようです。パートタイマーの処遇改善を進めるのが目的で、来年の法改正を目指しているとのことです。

正社員並みパート」といわれているのは、平成20年に施行された改正パートタイム労働法賃金や待遇等について正社員との差別が禁止されているパートタイマー(短時間労働者)のことで、正確には「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」といわれます。

(※フルタイムパート・疑似パートは上記に含まれません。つまりパートタイム労働法第8条は適用されません。)


通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者を判断する基準は以下の3つです。

  1. 職務の内容が同一か
  2. 人材活用の仕組みや運用(転勤、配転など)が全雇用期間を通じて同じか
  3. 契約期間の定めがないか(反復更新で実質無期となっていないか)


日本の非正規雇用労働者全体の4割といわれており、この法律を額面通りに厳密に運用すれば経営がたちゆかなくなる企業も少なくないと思われます。

企業側の実務的な対応としては(つまり正社員並みの処遇をしなくて済む方法)、時間外労働やクレーム処理を正社員のみとして職務内容(業務に伴う責任の程度)に差をつけたり、パートタイマーは転勤・配転なしとすればよいでしょう。また、パートタイマーはすべて有期契約にして更新していくのも有効と考えられます。

※契約更新を繰り返せば実質期間の定めのない雇用とみなされるとも考えられますが、厳格な更新手続きを行っていればそのような問題は生じません。




現在、この「正社員並みパート」に該当するパートタイマーは0.1%にとどまるといわれているようですが、今後の法改正によって上述の3要件を廃止し「合理的な理由なく不利益な取り扱いをしてはならない」とだけ定め、「合理的な理由」についてのガイドラインを示す方法に変更し、「正社員並みパート」の対象者を増やしていく方針とのことです。

通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の範囲は格段に広がり、これまで企業がとってきた方法では対応できなくなるかもしれません。

しかしながら、それでもこの法改正が政府の目的とするパートタイマーの処遇改善につながるとは到底思えません。

現在パートタイマーがやっている仕事に対して正社員並みの賃金を支払えるような余力は大半の企業にはありません。

そして、再雇用制度の場合もそうでしたが、パートタイム労働法についても御多聞に漏れず行政法であるため違反しても罰則がなく、企業名公表の制裁もありません。都道府県労働局長の助言・指導・勧告までとなっています。

はたして法律を遵守する企業がどのくらいあるでしょうか。


本当に同一労働・同一賃金を実現するには、職務(仕事)に対して賃金を決定し、仕事の結果である業績・成果のみを評価することが必要になります。これまで日本が大切にしてきた生活給の考え方や、熟練・習熟度・期待度に対する賃金、長期雇用の視点にたった人材育成が排除されることが予想されます。会社と従業員の関係は今よりも希薄化するかもしれません。労働市場の流動化も必要でしょう。雇用形態がこれだけ多様化した時代に、小手先の法改正は通用しません。


最近の政府の検討している施策をみていると、厚生年金の加入要件緩和にしても、高齢者雇用義務の拡大にしても、適用範囲を拡げて会社の法的義務を拡大するばかりで本当に労働者保護になるのか疑問を禁じ得ません。




関連記事