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2014-02-09

営業職の残業代リスクが上昇<事業場外みなし・阪急トラベルサポート事件最高裁判決>


営業職などの外回り・外勤社員に対して残業代支給しないという会社は少なくないと思われますが、支給しない法的根拠は何でしょうか。

営業手当が出ているから?
成果主義だから?

そんなことが法的根拠にならないことはいうまでもありません。


営業職に対して残業代支給しない根拠として多くの企業で利用されている制度が「事業場外みなし労働時間制です。この制度を運用すれば、実際に何時間働いたとしても所定労働時間働いたものとみなされる為、結果として残業代を支払う必要はなくなります。

ただし、事業場外みなし労働時間制

1.事業場外で業務に従事
2.会社の指揮監督が及ばない
3.労働時間を算定することが難しい


この3つの要件を満たして初めて認められる制度であり、要件が欠けていれば通常通り「働いた実労働時間」によって残業代を計算し支給しなければなりません。



しかしながら、今後多くの企業において、この事業場外みなし労働時間制適用させるのが難しくであろうことを示す最高裁判決が先月1月24日に下されました。

みなし労働時間制:海外旅行添乗員適用は不当 最高裁」(毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20140125k0000m040076000c.html

小法廷は▽日程や業務内容はあらかじめ具体的に確定している▽携帯電話を持たせてツアー中も報告を求め、終了後に業務日報を提出させている−−ことを重視。「労働基準法が規定した『労働時間を算定しがたいとき』には該当しない」と結論づけた。


裁判は旅行会社である阪急トラベルサポートの添乗員に関する事例ですが、制度の要件を満たすかどうかについての考え方は営業職の場合と何ら変わることはありません。

今回の判決によれば

・旅行日程(日時・目的地)が明確に定められており、業務の内容があらかじめ具体的に確定していた

携帯電話を所持させて常時電源を入れさせておき、途中で旅行日程の変更が必要となった場合には会社に報告して個別の指示を受けることとされていた

・ツアー終了後、添乗日報によって業務遂行の状況等を詳細かつ正確に報告させた


といった事項がポイントであり、これらによれば添乗員勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、前述した事業場外みなしの要件である労働時間を算定し難い」には該当しないということです。



つまり、営業職等の外勤社員に対し事業場外みなしを運用している企業にとって、不払い残業リスクが上昇することは間違いありません。これまで通りの運用を続けた場合には今後違法となる企業も少なくないでしょう。

朝礼等によって出発前に事前に細かいスケジュールを決めてスケジュール通りに行動させたり、帰社後に詳細な日報や業務報告書を提出させれば、労働時間を算定し難い状況とはいえません。

また、社員に携帯電話を持たせて常に連絡をとれる状況にさせ、スケジュール変更や訪問先ごとに随時報告をさせて指示を受けさせたり、最近ではGPSによって会社が社員の位置や行動を把握しているケースもありますが、これらの場合には会社の指揮監督が及んでいないとは到底いえないでしょう。

自社の営業職の管理体制を早急に見直し、状況次第では事業場外みなし労働時間制を取り止めて別の制度の運用等を検討すべき時期にあると思います。

2013-02-27

裁量労働制の落とし穴


裁量労働制を導入したいという依頼を企業から受けることがあります。

裁量労働制とは、端的に言えば、法律上決められた一定の手続きを踏むと、現実に何時間働いたとしても、ある決まった時間働いたものとみなすことができる労働時間制度です。

しかし、経営者の方と話をしてみると、裁量労働制について誤解をしているケースが少なくありません。

また、裁量労働制を運用しているという企業をチラホラ見かけますが、結果的に違法な運用をしている企業が圧倒的多数だといえます。制度をよく理解していないのか、それとも確信犯なのかはわかりませんが、法律上の要件を満たしていないのです。



一般的に、企業が裁量労働制の採用を検討する目的は、「残業代の抑制」です。

従業員に裁量を与えた方が柔軟性をもって業務に取り組めて効率性が増し、会社にとっても従業員にとってもプラスになる

というような建て前はともかくです。

長時間労働が慢性化する企業においては、残業代を抑制したいというのはまぎれもない本音だと思います。

(※単純に「決まった時間以上の賃金は払わない」的な意味合いだけでなく、裁量労働制を導入すれば、それまでダラダラ仕事をしていた従業員が急に効率的になって定時で帰るようになるなんていうことも、ままあることです。)

しかし、裁量労働制は誤った運用をすれば残業代を抑制するどころか、後から多額の費用を追加で支払う事態になりかねない制度であり、導入にあたっては慎重を期すべきであることを言っておきます。



前置きが長くなりましたが、具体的にどういう誤解が多いのか、どこを注意すべきなのかを以下に挙げていきます。



1.裁量労働制でも時間外、休日、深夜の割増賃金は必要だということ

裁量労働制は、労働時間をどうカウントするのかという制度であって、「時間外労働に対する賃金を支払わなくてもいい」という制度ではありません。ですから、労使で合意した一日あたりの「みなし時間」が所定時間を超える場合はその分の賃金が必要ですし、法定を超えれば25%の割増も必要です。

「みなし時間を超える分は固定残業代として毎月支給すれば問題ない」

と考える方もいるでしょうが、実はそんなに簡単な問題ではありません。

というのは、まず裁量労働制休日出勤した場合にももちろん適用されます。例えば所定休日の土曜日に出勤し、1時間だけ仕事をして帰ったという場合であっても、みなし時間が「8時間」と決められていれば8時間働いたものとみなされます。この8時間分は月額給与とは別に丸々賃金を支払わねばなりません。

さらにです。
法定休日ではない所定休日に出勤した場合、(週の法定時間40時間を超えていれば)法律上は時間外勤務という扱いになりますので25%の割増、出勤したのが法定休日であった場合は35%の割増が加算されます。

そして、勤務が深夜に及べば、いくらその日の労働時間が8時間にみなされたとはいっても、深夜割増分25%は加算しなければなりません。

ですから、休日や深夜の勤務をルーズに管理している会社は、せっかく裁量労働制を導入しても割増賃金が膨大なものとなってしまう恐れがあるのです。

対策としては、休日・深夜勤務を許可制にして厳しく制限すること、あるいは休日に関しては裁量労働制適用をしない定めとすること(※これによって少なくとも休日は原則通りの実労働時間によって時間管理を行えます。)などが考えられます。



2.裁量労働制を運用すれば、労働時間の把握・管理はしなくてよいという訳ではない

裁量労働制を使っていても、実質的には労働時間の管理は必要になります。

なぜなら、裁量労働制を運用する企業には「健康・福祉確保措置」をとる義務があり、その為に労働時間の状況(出退勤・入退室時刻等)を記録する必要があります。

そして、休日、深夜の割増賃金の支払い義務があるということからも、休日・深夜勤務時間の管理が必要になるのは当然です。



3.みなし時間は労使で合意すれば何時間にしてもよいとはいいきれない

みなし時間は労使の合意に委ねられている関係上、みなし時間が妥当とはいえないという理由で協定(or 労使委員会による決議)を労働基準監督署が受け付けないということはないでしょう。

しかし、労基署が臨検に入った際には勤務状況を細かくチェックすることもありますし、実態とみなし時間がかけ離れていれば指導の対象になる可能性は十分にあると考えられます。



4.法令で限定されている対象業務を勝手な解釈で幅広く設定するのは要注意

実態として、自社の全ての職種に裁量労働制適用させたいと考える企業も存在しますし、無理矢理な拡大解釈で本来対象業務に該当しないような職種まで適用させているケースも少なくありません。

それでも労基署に提出さえすれば運用はできてしまうわけですが、やはり臨検の場面になれば踏み込んだ調査が行われる可能性もありますし、多額の残業代が絡んで訴訟沙汰にでもなればどうなるのか一切保証はありません。



5.その他

案外知られていないことですが、裁量労働制であっても所定の始業・終業時刻を定めることは可能です。(※ただし、所定の時刻に出勤・退勤しないことを理由として不利益な取り扱いをすることは法の趣旨に反しますが。)

また、労働者裁量があるとはいえ、在社中は職務専念義務がありますし、業務遂行の手段や時間配分の決定を労働者に委ねるとしても、それ以外の事項については必要な指示を行うことは可能です。

業務の目的、目標、期限等の基本的事項について指示することや、途中経過の報告を受け、基本的事項の変更を指示することができるとされています。

以上を駆使して会社は労働者を適切に管理し、長時間労働による労働災害を予防しつつ、無駄な費用の発生を極力抑える努力が必要だと思います。



2012-09-24

「みなし残業」という訳の分からない制度


会社員の方がこう話すときがあります。

「うちの会社はみなし残業制だからいくら残業しても決まった額しか残業代が出ない。」

労働法的に考えると、筋の通らない話です。というのも、労働基準法その他の法律に「みなし残業」などという言葉はありません。まさに言葉の一人歩きです。

「いやだって最近はどこの会社もみなし残業やっているじゃないか」、と多くの方は仰るでしょう。ですから一応きちんと書いておこうと思います。



現在、法的に認められているのは以下のようなやり方です。


1.固定残業代(定額残業代

残業代を毎月一定額で支給する方法です。

本来残業代は実際に残業した時間分だけ払えばいいのですが、残業していない分も含めて多めに固定額を支給しているだけのことです。

ですから実際の残業が固定額分を超えて行われた場合、超過分の残業代を企業は当然支払わなければならず、決して「いくら残業しても決まった残業代しか出ない」ことが法律的に許されているわけではありません。




2.みなし労働時間制

労使協定の締結や就業規則の規定など、ある一定の要件を満たした場合に、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた時間働いたものとみなす制度です(※「事業場外みなし」裁量労働制があります)。

例えば、あらかじめ9時間と決められていた場合には、実際に5時間働こうが、10時間働こうが、その日の労働時間は9時間とみなされるわけです。

お分かりだと思いますが、これは労働時間をどうカウントするのかという問題であり、残業代をどう計算するかという取り扱いには一切関係はありません。みなされた労働時間が所定(あるいは法定)労働時間を超えていれば、当然企業は残業代を支払う義務があり、決して「いくら残業しても決まった残業代しか出ない」ことが認められている訳ではないのです。

「みなし時間が1日8時間なら法定内に収まるから残業代は不要じゃないか。」と言われればまさにその通りです。

しかし、みなし労働時間制厳しい法律要件を満たして初めて有効な制度です。

私が話を聞く限り、冒頭の「みなし残業」なる制度を運用しているらしい多くの企業はどう考えてもみなし労働時間制要件など満たしていないのであり、多くの企業は「みなし残業」という存在しない制度を堂々と謳いながら、法的には残業時間が発生しているにもかかわらず、それらをカウントせずに違法に残業代を払っていないというわけです。




このように、「みなし残業」という言葉は、さも制度が適法に存在するかのように企業や労働者を誤解させる言葉なのであり、法的には「いくら残業しても決まった残業代しか出ない」制度など存在しない、存在するのは残業代を実際の残業時間より多めに定額で支給する方法」と、もう1つは労働時間を一定の時間にみなす制度」だけだということをしっかり認識した方がよいと思います。

なお、労基法上の「管理監督者」は「いくら残業しても決まった残業代しか出ない」に該当するような気がするかもしれませんが、管理監督者を含めた労基法第41条該当者は、「労働時間・休憩・休日の規定が適用されない」のであり、そもそも残業という概念自体がなく、したがって「いくら残業しても」という状況には適合しないということになります。




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2012-08-09

「我が社にタイムカードは不要」はアリなのか


某婦人下着メーカーでは、社員の出退勤を管理するタイムカードがないという記事です。

no title

一部引用

『遅刻早退私用外出のすべてを社員の自由精神に委ね、これを給料とも、人事考課とも結びつけない』

 それからである。職場の雰囲気が一変し、皆一生懸命に働くようになったという。

以来、今日に至るまでタイムカードがない。約50年前にできた「相互信頼の経営」は、いまも脈々と流れている。

 新入社員の中には、タイムカードがないことに驚く社員もいるが、それだけに、かえって自ら時間管理しなければという気持ちになるそうだ。やはり、自主的な“やる気”を引き出すのは、「性悪説」より「性善説」のほうが効果が大きいようだ。

 「タイムカードがないのは、経営者と従業員、上司と部下、同僚同士が互いに信用しようとする思いを持っていることの証。こうした信頼が、従業員の仕事へのモチベーションの維持にもつながっている」(広報部)と話している。




従業員を信じてタイムカードをつけないという姿勢は素晴らしいことですが、いちおう誤解があるといけないので書いておきます。



まず大前提として、タイムカードをつけるかどうかはともかく、事業主には労働時間を必ず把握する義務があります。

これは出退勤時刻や遅刻・早退・私用外出などを労働者に委ねるかどうかにかかわらず、また、時間外・深夜割増賃金労働者の申告通り全て支払うかどうかにかかわらずです。

労働時間を把握・算定する目的は、給料を計算する為だけではないからです。



根拠となる法令は以下です。


労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」

この通達では、労働時間数が何時間かというだけでなく、始業時刻、終業時刻がそれぞれ何時なのかまで会社が把握する義務があることが明確に定められています。

また、労働時間の記録の方法については、管理者が現認して直接記録するか、タイムカード・ICカードなどの客観的な記録(勤怠管理システムを含む)によるのが原則であり、自己申告による記録は例外です。仮に前述の会社が労働者の自己申告によって記録しているのであれば、実際の労働時間と合致しているのかを必要に応じて実態調査する義務があります。

また、この通達によれば、労基法上の「管理監督者」と「みなし労働時間制」の対象者に関しては労働時間把握義務はありませんが、健康確保の目的から適正な労働時間管理を行う義務があるとされており、また、裁量労働制の対象者については、「労働省告示第149号」によって、どの時間帯に何時間くらい在社していたか出退勤時刻あるいは入退室時刻の記録によって把握すべきとされています。

ですから労働時間把握算定義務のない管理監督者・みなし労働時間制の対象者についても、結局はタイムカードなど一般の労働者と同じ方法によって記録をとることが現実的なのです。



さらに

労働基準法第108条においては、すべての労働者について賃金台帳を作成する義務が規定されており、その中の項目として労働時間数、時間外・休日・深夜労働時間数がありますから、この条文からも会社に労働時間把握義務があることは明白です。



なぜこのように会社が労働者労働時間を把握・管理する必要があるのかといえば、会社は労働者の生命、身体の安全、そして健康を確保するという公法上・私法上の義務を負っているからです。労働者の申告を信じるかどうか、時間管理を労働者に全て委ねるかどうかということは全く別の問題です。

もちろん前述の会社も、タイムカード以外の何らかの方法によって労働時間を管理しているはずだと思いますし、残業時間については残業申請書・記録簿などによって別途管理することが可能です。

仮に労働時間を把握せずに問題が生じた場合、例えば労働者が虚偽の申告をしていた場合(長時間残業をして全く申告しないなど)、発覚すれば会社の責任が問われます。未払い残業代を請求される事案や、長時間労働による過労死について会社の管理責任が争われる事案では、会社がいかに適正な労働時間管理を行っていたかが重要になります。

くれぐれも冒頭の記事を読んで、「労働者に全て任せれば労働時間を把握する必要はない」などと考えないようご注意ください。



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2012-05-28

6時間労働で午後3時に定時退社

アパレルのインターネット販売で業績を伸ばしている「ゾゾタウン」の運営会社が、従業員の労働時間を大幅に短縮する改革を行ったとのことです。

以下参照
6時間労働で午後3時に定時退社。そんな会社は、果たしてうまくいくのか?


朝9時に始業。昼休憩なしで6時間いっきに働き、何と午後3時に終業という画期的な労働時間制度です。まだ夕方にもなっていない15時に退社できるとは、特に多趣味な従業員にとっては魅力あふれる制度ではないでしょうか。長時間労働と過労死がますます問題化している昨今、時代の流れを変える素晴らしい取り組みだと思います。


当該企業では所定労働時間を現行の7時間半から6時間に減らすにあたって、業務を効率化すべく様々な取組を行っているようですが、労働法の観点から注意すべき点はいくつかあると思います。


本文では触れられていませんが、労働時間が短縮される場合にまず考えるのは、賃金の時間単価が変わるのかどうかという点です。

時間単価が変わらないまま所定労働時間が短縮されれば月例給与が当然下がりますから、労働条件の不利益変更にあたります。業績の悪化している企業のパートタイマーなどがよくシフトの日数や時間数を強制的に減らされるのを想像できると思います。

しかし、今回の施策は企業イメージのアップ、優秀な人材の確保、従業員のモチベーション向上などが目的と考えられますから、おそらく労働者の不利益となるようなことはせず、月給者に関していえば基準内賃金を変更せずに所定労働時間を短縮する、つまり結果的に時間単価が上がるものと考えられます。

他方、時給者がいる場合には、時給を1.25倍に変更しなければ、これまでの月例給与水準が確保されないことになってしまいます。

さて、本文では

何より大きいのは社員のモチベーションではないかと思います。6時間労働で午後3時に仕事が終われば、夕方の時間を有効に使えます。このメリットを失いたくないと思えば、業績を悪くしないように必死に働くはずです。


とありますが、これはなかなか難しい問題です。というのも、今回の施策のように労働条件を労働者の有利になるように引き上げる際には法的に何の制限もありませんが、例えば労働時間の減少によって生産性が下がり業績が悪化したからといって、労働時間を以前のように戻すことはそう簡単には許されません。いったん所定労働時間を6時間とした労働契約の内容を、会社の一方的な意思で7時間半に戻すことは不利益変更にあたりますので、厳しい要件の充足が求められます。仮に従業員が早く退社できるというメリットに固執せず、会社の思うように必死で働かなかったとしても、それを理由に与えたメリットを取り上げることは容易ではないのです。

つまりこの施策は、会社としては後には退けない、非常に勇気のいる画期的な制度改革なのです。



また、所定労働時間を6時間に短縮すれば、6時間を超えた労働は時間外労働(法定内残業)になります。業務の効率化がうまくいかず、結局夕方の5〜6時まで従業員が会社に残っていれば、その分の残業代がまるまる人件費増になります。

このリスクを担保するため、制度導入時にあわせて、法定内残業について賃金規定に別途賃金額を定めておくか、あるいは定額残業代を設定するべきであると思います。



ちなみに労働基準法では、労働時間が6時間以下の場合には休憩を与えなくてもよいとされているので、今回のような制度が可能ですが、15時以降残って残業をさせる場合には30分の休憩をとらせ、トータルの労働時間が8時間を超える残業の場合にはさらに15分の休憩をとらせなければならないことに注意が必要です。



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2012-04-19

サマータイム制度導入と就業規則の改定


ここ最近、朝6時台でも電車が心なしか混んできたように感じます。夏の節電を見据えて早くもサマータイム制度を実施し始めている会社が増えているからでしょうか。


大半の企業で導入されているサマータイム制度は、1日の労働時間数に変更はなく、始業・終業時刻を早い時間帯に前倒しするかたちで実施されているものと推測されます。以前にも書きましたが、これを実施するのであれば当然就業規則の改定は必須であると考えられます。(労働時間数や賃金の変更がある場合にも改定が必要なことはいうまでもありません。)

そこでよく言われるのが、どこの会社でも就業規則の労働時間規定のところに通常記載されている

「業務の都合により、始業・就業時刻、休憩時間を繰り上げ、または繰り下げることがある。」

という条文の解釈によって、就業規則を改定せずにサマータイムを運用できないかということですが、この規定の解釈によって運用できるのはせいぜいサマータイム制度導入の検討にあたって試験的に数日〜1週間程度繰り上げる場合に限られるものと考えるべきです。

始業・終業時刻は労働者にとって重要な労働条件であり、労働契約を構成する要素の1つです。たとえトータルの労働時間が変わらないとしても、出勤時間を早めることによって不利益を感じる労働者も相当数いるということを前提に考えなくてはなりません(幼児の送り迎えが必要な場合など)。

会社が少なくとも夏季の数ヵ月にわたって始業・終業時刻の変更を一定の労働者に一律適用させるということであれば、それは業務の都合による繰り上げではなく、れっきとした労働条件の変更であり、労働者によっては不利益変更に該当するものと考えられます。

不利益変更ですから、就業規則の変更にあたっては制度導入の必要性を従業員に十分に説明したうえで、一人ひとりから同意書をとっておくべきであると考えられます。

就業規則変更届、労働者過半数代表の意見書添付のうえ管轄の労働基準監督署に届け出る点については通常の就業規則改定と特に違いはありません。



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2012-03-21

特別条項付き36協定の注意点


もうすぐ4月ですが、労使協定は4月1日を起算日にしている会社が多いので、ちょうど今の時期に協定の手続きを行っている会社も多いと思われます。

労使協定といえば時間外労働・休日労働について合意をとる36(サブロク)協定が最も多く、どこの会社でも締結するのが通常ですが、法定超えの残業が月45時間を超える場合には特別条項付き36協定を締結する必要があります。

特別条項付き協定とはつまり、通常の36協定では「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」を明記したうえで延長時間を定めるのに対し、特別条項付き協定においてはそれらの事項に加え、限度時間(つまり月45時間・年360時間)を超えて残業させなければならない「特別の事情」を明記したうえで「特別延長時間」を定める協定をいいます。


この「特別延長時間」には、法律上限度はありません。

「それなら月に100時間でも200時間でもいいのか」

と聞かれれば、違法ではないという回答になります。

ただし、月80時間を超える協定を届け出れば、労働基準監督署の調査の対象となる確率が高くなるかもしれません。それ以前にあまり時間数が多いと受け付けてもらえない可能性もありますが。


「特別の事情」については臨時的なものをできる限り具体的に定める必要があり、

「業務の都合上必要なとき」
「業務上やむを得ないとき」

という文言だと、届出の際に監督署で指導される可能性があるでしょう。

特別延長時間まで延長できる回数も協定する必要がありますが(つまり1年のうち何ヵ月特別条項を適用できるのか)、この回数は1年のうち半分を超えてはいけないと指針に定められています。ですから、例えば特別延長時間を60時間、延長回数を6回とした場合、

60時間 × 6ヵ月 + 45時間 × 6ヵ月 = 630時間

が年間の時間外労働時間の限度ということになります。



注意したいのは、特別延長時間を適用させる都度行う所定の「手続」を事前に定める必要があり、この手続を何にするかは特に制約がありませんが、いったん定めた手続をとらずに延長時間を超えて労働させれば違法になります。

所定の手続を「労使で協議」などと定めたら後々面倒くさいことこの上ありませんので、「通知」などと定めておくのが現実的といえます。


なお、これは通常の36協定でもいえることですが、いったん締結した協定の内容を有効期間が終了する前に変更して新たに届け出を行いたいという場合は、有効期間をいつからいつまでに設定すべきなのか。

協定を有効期間中に変更すること自体が法の趣旨に反することだと考えられますが、どうしても必要ということであれば、いったん変更時点から1年間の協定を締結し、当初の変更前の協定における終了日がきた段階で改めてそこから1年間の協定を締結すべきであると考えられます。


36協定を届け出ずに残業をさせる行為、36協定に定めた時間を超えて残業させる行為は労働基準法違反になりますのでご注意を。




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2012-03-12

残業代抑制と事業場外みなし労働時間制


旅行会社が自社の添乗員適用している「みなし労働時間制」が不当だとして訴えられていた裁判で、みなし労働時間は認められず、残業代を支払うよう会社に命じられる高裁判決が先日ありました。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?


みなし労働時間制とは、現実に何時間働いたかに関わらずあらかじめ決められた時間を働いたとみなす制度です。例えばある会社において、この職種の1日の労働時間は大体10時間くらいだと決めたら、1時間働こうが15時間働こうが一律10時間勤務とみなして10時間分の賃金を支払います。

なぜこんな制度を導入するのかというと、ずっと外出している営業マンとか、デザイナーとか、専門職とか、労働時間を算定するのが難しい、あるいは業務の時間配分を指示するのが困難である職種の労働時間を適切に算定しようというのが法律の趣旨ですが、実際のところ導入する企業の大半は「あらかじめ決めた以上の残業代を払いたくない」というのが本音であることは間違いありません。

ただし、みなし労働時間制の導入率は全国的にみて高くはありません。全体の1割程度です。導入するためには労使協定などの面倒な手続きが必要なことと、導入が認められるための細かい要件がたくさんあるためです。

みなし労働時間制には、

・事業場外みなし労働時間制
・専門業務型裁量労働制
・企画業務型裁量労働制

の3つがあり、今回問題になっているのは「事業場外みなし労働時間制ですが、この事業場外みなしを導入するための条件として

1.事業場外(会社の外)で業務に従事
2.会社の指揮監督が及ばない
3.労働時間を算定することが難しい


が必要です。

そして厳密に言ってしまえば、事業場外みなしを使っている会社の多くが、

「2.会社の指揮監督が及ばない」 と 「3.労働時間を算定することが難しい」

の条件を実質満たしていない
というのが現状でしょう。

携帯電話やタブレットなどのモバイル端末が普及している現在、会社の指示が及んでいない状況というのは相当に少ないと考えられますし、営業日報や業務報告書で細かく報告させている場合は労働時間が算定し難いとはなかなかいえません(※ただし、携帯等を持たせているからイコール適用できない訳ではなく、あくまでも実態で判断されるものです)。


最近増えているテレワーク(在宅勤務)モバイルワークにも事業場外みなしを適用するかどうかの選択肢がありますが、

・始業・終業の都度、会社に連絡させているか
・勤務時間中は常に連絡がとれる状態にすることを義務付けているか
・業務について随時細かく指示を行っているか

という実態に基づいて適用の可否を判断されることになります。


今回の旅行会社添乗員の問題については、「旅程を記した指示書や日報」の存在によって、労働時間の算定は可能であるし、会社の指揮監督も及んでいるという判断に至ったようです。




残業代を払いたくない、抑制したい

要件を満たすか微妙だが、事業場外の業務 or 外出の多い業務だから、とりあえずみなし労働時間制適用

後で労働基準監督署 or 退職した従業員から指摘され、残業代を過去に遡って支払うはめに

こんなケースが今後増加しないとも限りません。


事業場外みなし労働時間制は結果的に残業代を抑制できる制度ではありますが、それはもともと通常の方法では労働時間を正確に計算できない業務であったというだけの話です。残業代を払いたくないからみなし労働時間制という安易な考えで制度を導入するリスクをくれぐれもお忘れなく。



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2011-05-14

話題のテレワーク(在宅勤務制度)


東日本大震災や計画停電等によって多くの通勤困難者が発生したのは記憶に新しいところですが、その影響もあって、会社に出勤せずに業務を行えるテレワーク(在宅勤務制度)が注目を集めています。


震災後、在宅勤務支援サービス(※自宅のPCから会社のPCを遠隔操作)を提供するNTTコミュニケーションズには、問い合わせが通常の約5倍に急増したとのことです。

以下参照
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20110404-OYT8T00219.htm



テレワークとは、PCやインターネットを活用して会社以外の場所で業務を行う制度で、厳密には外勤型のモバイルワークと、内勤型の在宅勤務に分かれます。

もともとはワークライフバランス(仕事と家庭の両立)の取り組みの一環として導入されることの多かった制度であり、資生堂が育児・介護との両立社員を対象として昨年導入を発表した際などは話題になりました。



メリットとしては以下が考えられます。

<企業側>

  • 育児・介護などを理由に優秀な人材が退職するのを防ぐ
  • 通勤手当等のコストを削減できる
  • 業務効率があがる
  • 企業イメージが向上する


<社員側>

  • 通勤による負担が軽減される
  • 余暇時間が増える
  • 育児・介護などを理由に退職しなくて済む


そして上記に加え、交通網混乱の緩和、電力不足長期化への対策、今後の災害時への備えとして、テレワークの導入を本格的に検討する企業が増えている状況です。



注意すべきなのは、テレワークのデメリットとしてよく言われる以下の事項です。

  • 社員間のコミュニケーションが希薄になる
  • 情報漏洩のリスクが高くなる
  • 社員の適正な評価が難しい
  • 労働時間管理が難しい

なかでも重要なのは、在宅勤務社員の労働時間管理です。


テレワークにおいては、仕事と仕事以外の時間の区別が曖昧になりやすく、労働時間の把握が困難であることから、事業場外みなし労働時間制(実際に何時間働いたかに関わらず、あらかじめ決められた時間働いたとみなす制度)を使うことが多いかと思われます。

この事業場外みなしを運用する際に気をつけたいのは、事業場外みなしの要件が、

労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき

となっていることです。

つまり、始業・終業の都度メールや電話で会社に連絡させたり、勤務時間中は常に連絡がとれる状態にすることを義務付けたり、あるいは業務について会社が在宅社員に対して随時細かく指示を行う場合には、労働時間を算定し難いとは言い切れず、事業場外みなしが認められない可能性があるわけです。


また、テレワークは、会社の管理が行き届きにくいため、長時間労働になりやすい傾向にある点についても、会社の安全配慮義務の観点から対策が必要といえるでしょう。



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2011-05-04

サマータイムの適切な運用


夏の電力不足に対応するため、サマータイム制度の導入を決める企業が増えているようです。



東京証券取引所、ソニー、森永乳業、三菱ふそう、伊藤園、コナミ、ユニチャーム、日本製紙、パナソニックが既に導入を決めていたと思います。
(伊藤園はさらにクールビズの期間を前倒ししたうえ、ポロシャツ勤務を認めるそうです。)


これらの流れは従業員の節電意識を高めることにもつながるし、
一定の節電効果が見込めるのは間違いないでしょう。



一方で

  • サマータイムによる節電効果はあまり期待できない
  • 節電効果は「休日取得の分散化」による場合の10分の1以下
  • 昼休みを2時間にした方が、ピーク時の電力削減に大きな効果がある

などの意見もあります。
これらについては、効果の見込めるものから各社ができる事をやっていけばよいと思います。



しかし、最も気になるのは、

サマータイムを導入して始業時刻を繰り上げたのに、退社時刻が以前と変わらず、結局残業時間が増えただけというパターンです。

サマータイムを導入していない取引先などがあれば、自分だけ早い時間に帰れない場面もあるでしょう。従業員一人あたりの業務負荷が増えているこのご時世に、出社時刻を早めたからといって帰宅時刻も早くするなんて器用なことが簡単にできるのでしょうか。


サマータイムの名のもとに労働時間が長くなれば、従業員の不満が高まるのは当然ですが、そもそも節電どころか使用電力増加、やらない方がよかったっていう話です。

制度を導入するにあたっては、会社は始業時刻繰り上げ周知を行うだけではなく、繰り上げた時間分の残業が行われていないかを管理し、制度の適切な運用を徹底させていくことが求められます。


なお、サマータイムの導入は労働条件の変更にあたりますので、就業規則に規定がない場合は改定が必要になる事をお忘れなく。




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