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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2014-01-30

本社以外の離れている場所では応じないという団交拒否は不当労働行為


不当労働行為に関する今日のニュース。

「ゲオが不当労働行為、府労委認定 労組との団交拒否」
http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014013001001029.html

 命令書によると、組合は昨年1〜2月、大阪市内の店舗で働くアルバイトの勤務時間に関し、大阪市内で団交に応じるよう計3回申し入れたが、会社側が「人事管理を担当する部署が本社にある」として拒んだ。

 府労委は「組合員が過重な負担を伴わないよう、団交に応じるべき」と指摘した。


労働組合法上、会社は「正当な理由」がなければ団体交渉を拒んではならないとされており、これに違反すれば不当労働行為になります。

本件では、「本社が東京にあるのだから、地理的に遠く離れた大阪では交渉はできない」と会社が団体交渉を突っぱねたわけですが、そもそも労働者たちは大阪の店舗で働き大阪に住んでいて労働組合大阪にあるので、大阪で交渉を行いたい組合側は困ってしまうわけです。

この本社のみで対応という団交拒否理由が正当な理由といえるのかが問題になりますが、今回の救済命令でも分かる通り、正当な理由にはならないということです。



冷静に考えれば、会社側は経済的にも人員的にも遠隔地で対応することが不可能とはいえませんし、会社規模によっては大した負担にもなりませんが、労働者にとってみれば(退職せず働いている労働者ならなおさら)仕事のない時間に遠隔地である本社に出向いて交渉するということは金銭、労力、時間の面で非常に大きな負担です。

このような事情から、「会社と組合側は対等ではないよね」「不公平だよね」という観点から、「本社でしか団交に応じない」という会社の言い分は正当な理由として認められないという結論になります。団交の場所というのは本来、労使双方の話し合いによって決めるべき事項ではありますが、基本的にはいま述べた公平性観点からすると、労働者の勤務している地域において行われるものだと考えておいた方がよいでしょう。

2012-12-27

不当労働行為の救済命令を無視


企業が不当労働行為の救済命令に違反した場合には、法律で罰則が定められていますが、今回はそんな形式的な話ではありません。


牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーが、団体交渉拒否について謝罪し、解決金を支払うことで労働組合と和解したというニュースです。

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ゼンショーが団体交渉拒否を謝罪し和解 : J-CASTニュース

さかのぼるとこの事件はすき家解雇された女性アルバイト従業員が一般労組である「首都圏青年ユニオン」に個人加入し、未払い残業代を求めて団体交渉を求めたところ、ゼンショー側が「一般労組労働組合と認めない」という理屈で団交を拒否したことが発端です。

その後、労働組合は「東京都労働委員会」に救済の申立てを行い、争いの場を「中央労働委員会」、「東京地裁」と移していき、会社側は団交を拒否し続けますが、ことごとく会社側が敗北していきます。

※この辺は以前の記事も参照
合同労組の団体交渉申し入れを拒否できるのか - 人事労務コンサルタントmayamaの視点

結局、東京高裁でも敗北し会社側は4連敗中で、最高裁に上告していたところだったようです。おそらく争い続けても会社側に勝ち目はなかったのだと思います。

元従業員と労働組合は会社に対し損害賠償300万円を求める訴訟を別途提起し、その訴訟において今回和解が成立したため、団交拒否の正当性について争っていた訴訟についても上告を取り下げたということです。



それにしても、団交を拒否してから今回の和解まで、約5年弱という年月です。

いくら和解が成立したといっても、交渉を始めるまでに5年弱かかるというのは長すぎます。

ここで一番感じることは、労働委員会が行う不当労働行為の審査って、時間かかりすぎなんじゃないのか、それで本当に意味あるのか、ということです。

通常、労働委員会は救済の申し立てを受けてから審査を行い、救済命令を発するまで1年半かかるといわれており、2年くらいかかることも珍しくありません。審査に不服で中央労働委員会に再審査を求めれば、さらに時間がかかります。

そうして長い時間をかけてやっと出た救済命令が、今回の事件のように簡単に無視されてしまっては、不当労働行為審査制度の存在意義自体が疑われるところです。

現状、労働者側は、企業が救済命令を無視してくる可能性もあり得ることを前提に、その場合は訴訟で争うことも選択肢に入れて不当労働行為の救済申立てをしなければいけないということになります。


ただし、「では逆に、企業側は訴訟の覚悟があれば救済命令を恐れなくてもよいのか」と聞かれれば、全くそんなことはありません。

今回の事件で会社側はおそらく膨大な弁護士費用を使い、結果的に解決金も支払って謝罪し、そして何より団体交渉に応じないという態度によって企業イメージを落としたことは明らかです。

そして5年弱労力を費やしたうえに、これからまた団交に応じるわけです。

「個人加入の一般労組・合同労組からの団体交渉申し入れは拒否できない」

企業側は肝に銘じるべきです。




関連記事

2012-02-20

合同労組の団体交渉申し入れを拒否できるのか


すき家を運営するゼンショーが合同労組からの団体交渉申し入れを拒否していた件で、先日東京地裁の判決を伝えるニュースがありました。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?

最近は労働組合の主流になっている合同労組の当事者性に関する裁判所の判断であり、今後の控訴等の動きも含めて注目すべきニュースです。

今回の事件は、団交を拒否した会社に対して労働委員会が不当行動行為を認定し救済命令を発したことに会社が納得せず、命令の取り消しを求めて提訴したものでした。

会社が団交拒否した理由は、「合同労組の組合員の大半が会社の労働者ではないことから、労働組合法上の労働組合に該当せず団交に応じる義務はない」というものです。

この主張が正しいという判断になれば、全国に存在する多くの合同労組・ユニオンの現状の活動が成り立たなくなるところですが、今回の判決によれば、合同労組からの団交申し入れであっても会社は拒否できない、誠実に対応しなければ不当労働行為になる、という今までの一般的な認識に現時点で変更はないということです。


もともと日本では労働組合といえば大半が大企業における企業内組合が中心で、通常は終身雇用を前提とした正社員が組合員であったため企業と協調路線を歩んできました。しかし非正規雇用が増加した近年は、そもそも組合が組織されにくい中小企業の労働者に加え、大企業の企業内組合に入れない非正規労働者がその不安定な雇用から組合の保護を求め、外部の地域一般労組に個人加入するという形式が一般化しています。それも大概は労働トラブルが起こった後に加入します。

うちの会社には組合はないので心配ないと思っていたら、ある日突然聞いたこともない労働組合から団体交渉申入書が届き、内容を読んだら退職した元従業員がユニオンに加入して金銭を要求してきていることがわかった、なんてことは最近ではどこの企業でも起こりうることです。


会社には団交の応諾義務はあっても、労組の要求を受諾する義務はないから合同労組を恐れる必要はないとはいいきれません。会社にとって労働基準監督署よりもよほど合同労組の方が手ごわい相手になる可能性は高いと思われます。

合同労組が会社と対立するのはお互いの目的上やむを得ないことですが、礼をつくして対応し、内容については粘り強く交渉を続ける姿勢が重要だと思います。

今回の事件の団交拒否および訴訟は4年程度の年月を費やしたようですが、その間交渉は全く進まなかったわけで、これが今後の交渉にどのように影響するのかも含めて興味深い事件であると思います。