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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-02-25

<シャープ買収>40歳以上が拒否される雇用システムを支持してきたのは誰か


シャープが台湾企業ホンハイの傘下に入ることが決まり、ホンハイは買収の条件として「40歳以下の従業員の雇用の維持を約束」していると言われています。

つまり、40歳を超える従業員の雇用は一切保証されないことになりますが、これはホンハイが血も涙もないからではなく、極めて合理的な決断であり、もっと言えば、シャープの40代・50代の従業員を含め、おそらく日本の多くのサラリーマンが望んだ結果であるものと考えられます。

日本の多くの企業ではいまだ、給与が毎年少しずつ昇給する年功序列型の賃金制度が使われており、成果主義を採用しているという企業であっても、業績等によってある程度の差はつくものの、結局は属人的な給与体系であって、年齢や勤続年数が給与に大きく関係するのが実情です。

そして、こうした年功型の人事制度がずっと運用され続けてきたのは、会社側だけでなく従業員側もまた強く望んできた結果だといえます。近年、安定した企業へ就職したいというサラリーマンの安定志向は若者まで浸透していますが、安定した企業とはつまり、仕事によって給与が決まったり成果によって年収が大きく上下しない会社、つまり年功型賃金の企業のことです。

多くのサラリーマンの望む安定した会社、つまり給与が年齢・勤続に応じて少しずつ上がっていくような会社は、20代・30代の若い頃はパフォーマンスに比べて給与が安く、40代・50代になってから昇給カーブに乗ってパフォーマンスを超える割高な給与がもらえるものです。

言い換えれば、若いうちは将来の出世と引き換えに一生懸命働いて会社に一杯貯金をつくり、年配になったら動きは落ちてきちゃったけどその代わり会社にたくさん貯金があるから高い給料をもらって定年まで安泰という感じです。

ところが、この安定には大きな大前提があって、それは企業が変わらずに「存続」しているという点です。

今回のシャープのように、若いうちに割安な給料で残業こなして異動にも応じて会社の為に精一杯尽くしてきたのに、さあこれから年功制のリターン部分を享受するぞ、というまさにその段階で、今回のような買収があれば、若い頃の貯金が全部貸し倒れで消滅してしまうこともあり得るという訳です。みんなが入社したがる安定企業が民間企業である限り、このリスクを内包しているのは当然です。

「40歳以下の雇用が維持され、40歳を超える雇用が保証されない」ことは、紛れもなく安定志向を望む多くのサラリーマンたちが自ら望んだ結果であることは間違いありません。

いずれにしても経営再建の為にリストラが必要不可欠だという状況の中で、いままで年功制の中で割高な給与支給されてきた40歳超の従業員を「要らない」と考えたホンハイの判断は合理的としか言いようがありません。年齢だけを理由に高い給与支給される従業員を雇用し続ける方が余ほど不合理といえます。

シャープがもし仕事と業績によって給与が決まる完全実力主義の会社であったなら、「40歳以下は〜」といったような年齢で一刀両断されることはなかったかもしれません。今回のような取扱いは年齢による差別といえます。しかし、多くのサラリーマンは、この年齢による差別を望んでいる現状があります。競争よりも安定を望んでいるからです。そして、いま見えている安定とは、年齢に応じて給与が上がっていくという年齢による差別ともいえる、いつ消滅するか一切保証のない、まやかしの安定だと思います。

2016-02-18

「定年制の廃止」できる会社とできない会社


ジョイフルが定年制を廃止するというニュースがありました。

ジョイフル:正社員60歳定年制廃止 パートも雇用継続 - 毎日新聞


以前から定年制を廃止する企業のニュースはたまに見かけますが、定年廃止は企業にとって非常に勇気のいる決断です。

定年廃止は、何のトラブルもなく自動的に従業員を退職させるための唯一のシステムがなくなることを意味します。正社員は基本的にみな無期雇用なので、自分から辞めたいと言わない限り何歳まででも企業は雇い続けなければならないということになります。高齢でパフォーマンスが落ちてきたというくらいでは、解雇なんかまずできません。


そんなリスクを負ってまでなぜ定年廃止に踏み切るのか。このままではもう立ち行かないくらい人材が不足しているからです。定年廃止をアピールすることでより優秀な、より多くの人材を獲得したいのです。


とはいえ企業が定年を廃止する為には、どうしても越えなければならない壁があります。「年功序列」の壁です。定年廃止には実力主義が不可欠なのです。

日本の企業の多くは年齢によって給与や昇進が決まります。「最近は成果主義が増えているじゃないか」というかもしれませんが、そんなことはありません。能力主義とか成果主義とうたっているような企業でも、中身を見てみると「年功的な成果主義」だったりします。人事評価によって差はついても、全体的にみると結局年齢や入社年次が大きく影響しているという感じです。

したがって、日本企業給与は上がることはあっても下がることはあまりないのが現実です。下手に給与を下げられないのに加え、上には管理職がいっぱい詰まっているので、最近は特に大企業は30代くらいで早くも頭打ちだったりします。

このような制度のまま定年を廃止したらどうなるでしょうか。あっという間に人件費が肥大化して経営危機に陥ります。会社で最も高給かつパフォーマンスの落ちている層がそのまま退職せずに残るわけですから当然です。

これまでだったら60歳あたりで一回仕切り直して、まず給与を思いっきり下げて、最終的には動きのいい人だけ再雇用で残すというやり方でやって来れたわけです。定年を廃止すればそうした人件費圧縮も選別も一切できなくなります。

ですから定年廃止する企業は給与も昇進も全て実力主義で決定する必要があります。決して60歳間際の社員の給与が高いとは決まっていません。年齢で給与が決まらないのだから、年齢で退職も決まらないということです。年齢による差別を一切やめることこそ定年廃止です。一方、年功序列は年齢による差別の代表格といえます。

また、労働者が何歳まででも会社に残る代わりに、パフォーマンスに応じて給与が柔軟に決定され、場合によっては給与を引き下げることのできる人事・賃金制度が必要になります。透明かつ客観的な基準による制度を適切に運用しなければ、給与の引き下げは法律的なトラブルを引き起こしかねません。年功序列の企業ではまず無理だということです。

今後、労働人口の減少にともなって定年制を廃止する企業は次々と出てくるでしょうが、はたしてこの年功序列の壁を乗り越えることができるのか、そこが大きなポイントだと思います。

2013-08-08

「ブラックバイト横行」アルバイト基幹化に思うこと


随分久しぶりの更新となります。私の業界では6月・7月が繁忙期なのですが、あまりの繁忙ぶりに全くブログの更新ができず、繁忙期の余韻を引きずって今日にまで至りました。今年の後半に向け巻き返しをはかっていきたいと思います。



さて、本題に入りますが、ブラック企業ならぬ「ブラックバイト」が問題化しているようです。

<ブラックバイト>横行 「契約無視」「試験前も休めず」(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130808-00000050-mai-soci

アルバイトをする大学生の間で、「契約や希望を無視してシフトを組まれる」「試験前も休ませてくれない」などの悩みが広がっている。学生たちの声を集めた大内裕和・中京大教授(教育学)は、違法な長時間労働などをさせる「ブラック企業」になぞらえ、「ブラックバイト」と呼び、問題視している。企業が非正規雇用の志向を強める中、正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせる「基幹化」が進んでいるようだ。



企業の経営環境はますます厳しくなり、人員削減して社員一人当たりの負担は増える一方。結果としてうつ病休職者は激増。そして企業は人件費の安い非正規雇用の比率を増やし、ついには学生アルバイトにまで正社員並の働きを求めて圧力をかける時代がやってきたというわけですか。

記事の中で聞き捨てならないのが、「正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせる「基幹化」が進んでいる」ということ。

まあ、学生アルバイトだしいずれどこか別の企業に就職するのだからどう使ってもいいという考えなのでしょうが、ただし、「アルバイトを非正規の待遇のまま基幹化を進める」という考え方そのものは法律的に問題大アリです。

パートタイム労働法では、正社員と同じ仕事をしている場合(職務内容が同じ場合)など一定の要件を満たす短時間労働者について、賃金などの待遇を正社員差別してはならないとされています。

さらにアルバイトが有期契約労働者である場合には雇い止めの問題が発生するかもしれませんが、雇い止めの有効性の判断基準として、

・地位の基幹性 or 臨時性
・業務内容の恒常性 or 臨時性

という要素があります。正社員の業務をアルバイトに肩代わりさせて基幹化を進めれば、雇い止めをした際にどういう影響があり得るのか、という問題が浮上します。


それこそ正社員同様に業務命令権を広く行使したあげく、期間満了による労働契約の終了のみを主張するなんて、会社は虫が良すぎるでしょ、と判断されるかもしれません。

非正規労働者雇用する際は、雇用形態に即した内容の雇用契約を締結し、それを遵守するということが重要なのであり、正社員との業務内容、権限、責任に合理的な差を設けなければなりません。契約社員は臨時的業務、パートタイマーやアルバイトは補助的業務、だからこそ正社員とは待遇が違うわけです。それが無理だというのなら、そもそも自社にとって正社員とは一体何なのかをよく考えるべき状況にあるのだと思います。

2013-05-05

喫煙者を採用しない企業に入社した後、喫煙が発覚した場合の解雇は認められるのか


以前、星野リゾートの「喫煙者を採用しない」という方針がニュースで話題になりました。ウェブサイト上の採用ページで応募者の喫煙の有無を確認し、元々喫煙をしない場合か、もしくは禁煙を誓約することを選択しなければ採用選考に進むことができないというルールです。

そして最近は同社と同じように、「喫煙しないこと」を採用の条件にするという企業が増えているようです。



これに関して、まず「喫煙を理由に不採用とすることは法的に許されるのか」という問題がありますが、企業には広く採用の自由が認められており、喫煙の有無は年齢や性別のように特に法律によって差別が禁止されているわけではありません。

また、喫煙行為は業務と全く関係がないとはいえず、採用条件とすることにも一定程度の合理的な理由が認められますから(作業効率・施設効率・職場環境など)、禁煙を採用の条件にしたとしても違法ではないと考えられます。



さて、この話題に関しては、もっと難しい問題があります。

禁煙を心に誓って入社したものの、結局我慢できずにタバコを吸ってしまう可能性がありますし、そもそも最初から嘘をついて入社する労働者もいるかもしれません。タバコを吸わないことを条件に入社したのに、実は入社後に隠れて喫煙していた事実が発覚した時に、はたして会社はこの社員を解雇できるのか、という問題です。

仕事中に会社内で喫煙をしていればこれは業務および企業の秩序維持・施設管理等に直結する問題であり、会社は懲戒処分を下して場合によっては解雇することも当然認められるものと考えられます。

しかしながら、例えば労働者が業務中あるいは勤務時間外であっても会社内では一切喫煙をせず、プライベートな時間帯にのみ喫煙行為を行っていた場合にはどうでしょうか。

集中力の低下も起きず、タバコ休憩でちょくちょく席を立つこともなく、周りの同僚にタバコ臭で迷惑をかけることもなく、そして会社では喫煙しないので分煙の為の喫煙所という無駄なスペースが生じることもない状況です。

禁煙が採用条件だったわけですから当該労働者に対して喫煙行為を注意指導し、応じなければ懲戒処分を科すことは可能かもしれません。しかし、現実に喫煙行為が業務に一切支障をきたしていない状況では解雇まで行うことに合理性は認められないのではないかと考えられます。裁判になれば不当解雇と判断される可能性も十分にあり得るというのが個人的な考えです。

以上の点を踏まえて、禁煙を採用の条件とする制度の運用については十分に注意が必要だと思います。

2012-07-13

「40歳定年」構想の本質を考えてみる


昨日、当ブログに数時間のうちに凄まじい数のアクセスがあり、リンク元をたどったところ、ヤフートピックスの「40歳定年」の記事からのアクセスであることが判明。


※繁栄のフロンティア部会報告書
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20120706/shiryo3.pdf:title


野田佳彦首相を議長とする国家戦略会議の分科会が、将来の構想を報告書にまとめたようで、かなり話題になっているようです。

皆が生き生きと新しい分野にチャレンジでき、人材が最大限活用され、安心して子育てもできる環境も整い、家族を含めたコミュニティーの互助精神による心の豊かさと、高くはなくとも緩やかに成長する経済の豊かさが両立している社会

このような社会を形成するために、40歳定年が必要なんだそうです。
この件についてちょっと書いてみたいと思います。



定年を40歳にするとはどういうことか

定年とは、ある一定の年齢に達した時に自動的に労働契約が終了する(退職)という労使の合意によって決められる制度です。

定年を定めるか定めないかの判断は企業の自由であり、また、定年を何歳にするのかも法律で決まっている最低年齢(現行60歳)をクリアすれば任意に決められます。

「定年を何歳にするかなんて国が決めることじゃない。」という意見がありますが、国は定年年齢を決めているのではなく、定年を企業に好き勝手に決めさせると雇用政策上まずいという判断から最低年齢という規制をかけているわけであり、国が一切口出ししないということであれば、企業は25歳であろうが30歳であろうが自由に定年を設定できることになります。



なぜ定年を下げた方がよいという話がでてくるのか

建て前の話は置いときまして。

日本では、成果主義が浸透したといわれる近年でも年功序列型の賃金体系が依然として残っており、若年層に比べて圧倒的に高い中高年労働者賃金は企業にとって大きな負担となっていますが、一方、能力面で見ると、40歳以降の能力・スキルの伸びは40歳以前に比べ鈍化するのが一般的であり、賃金とパフォーマンスが比例しないものと考えられます。(※中高齢者雇用が若年層の採用抑制、昇給の抑制に影響していることは否定できません。)

はっきり言えば、企業は40歳以上の労働者のうち有能なパフォーマンスの高い人だけを都合のよい時まで残し、それ以外は辞めてもらいたいと考えていますが、現在の日本の解雇規制の中ではそれは容易ではありません。

年功賃金解雇規制を前提とする日本の雇用システムにおいて、有無をいわさず自動的に高齢労働者雇用関係から外すことのできる定年という制度は、企業にとって今までもこれからも必須のものといえますが、現行の定年年齢を引き下げることで企業側にとってより効率のいい人材戦略をとっていきたい(つまり安くていい人材だけを確保し、それ以外は放出)という財界からの要請があるのではと勝手に推測する次第です。



40歳定年にすれば、本当に全ての国民が75歳まで生き生きと安心して働ける社会を形成できるのか

そうなるとは思えません。

この議論の中で、将来的に雇用は有期契約を基本とすべきといわれているようです。40歳定年後はみんな有期労働契約を更新することによって75歳まで働くことを想定しているようです。これは有期労働契約というものを大きく履き違えています。

有期労働契約とは本来、臨時的に発生する業務の為に、あるいは一時的に必要なスタッフ数を確保する為に雇入れることを前提としている雇用形態であり、企業がこれに反する目的(つまり恒常的な業務に使用し、都合のよいときに更新を打ち切る目的)で有期契約労働者を利用している現状があるからこそ雇止めの問題が絶えず発生しているのです。

定年年齢を40歳とし、雇用を有期契約中心にしていくことこそ、まさに企業にとって都合のよい人材を都合のよい期間だけ使用できるという企業側の要請に即した雇用システムであり、今回掲げられている構想とは全く逆の不安定な方向へ進むものと考えられます。



40歳定年になったら中高年はみな職を失うのか

「40歳を過ぎてからの職探しがどれほど厳しいと思っているのか」という悲痛な意見もみられますが、全ての企業が一斉に定年を引き下げることになれば、パフォーマンスの悪い高給取りの社員が大勢退職となり、企業はその分の人件費を別の雇用に充てることができますので、定年再雇用になる社員も少なくはないと思われます。一方、定年再雇用されなかった社員についても別の何らかの職に就くことはある程度可能なのではないかと思われます。

定年再雇用者の中の一定数の優秀な社員は高い賃金で厚遇されることになり(イメージとしては年俸制のエグゼクティブ)、そして大多数はこれまでよりはだいぶ賃金水準は落ちることが予想されます。もちろん有期契約である以上、安定性はありません。これは優秀な社員についても同様です。この意味においては確かに労働市場は今より流動化するのでしょう。



今回の報告書の構想を目指すためには本来どうするべきなのか

定年とは雇用における年齢差別です。年齢のみを理由に雇用関係を終了させるのです。それがいいか悪いかはともかく、新卒一括採用、年功賃金解雇規制という雇用システムの中で、定年という制度が果たしてきた役割は大きいといえます。

今後、年齢に関わりなく能力・技能によって広く高齢者まで活躍できる社会を目指すのであれば、これは年齢差別をなくすということであり、定年規制を廃止するのが本来の正しい方向性ではないかと思います。定年を40歳にするということは、むしろ年齢差別を強化することとも受け取れますし、それと有期雇用契約を中心にしていくという考えとの間にはもはや整合性は見られません。

また、定年を廃止することと併せて採用や退職、賃金の決定等についても年齢的要素を排除する必要があり(ある意味においてはアメリカの職務給的運用)、何よりも現行の解雇規制に手を加えることが必須であると思われます。

年齢差別を廃止し、20歳でも80歳でも能力があれば正当な評価を受けて活躍できる、それは反面、定年までの雇用保証というものはもはやなく、本人のパフォーマンス次第では退場を余儀なくされることも当然あり、しかし不当な解雇・雇止めはもちろん許されず、そして流動性のある労働市場が存在する、そのような社会にするために果たして「40歳定年」が必要なのでしょうか。



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2012-06-23

有期パートタイマーの待遇を正社員並みに法改正


厚生労働省は有期雇用契約のパートタイマーの待遇(賃金・退職金など)を今後正社員並みに改善する方針を決めたようです。

以下参照
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ここで前提として次のことを確認しておく必要があります。

平成20年4月の改正パートタイム労働法の施行により、パートタイマー(短時間労働者)は次の条件を全て満たした場合に、賃金等の待遇面において通常の労働者(つまり正社員)との差別的取扱いが禁止されています(パート労働法第8条)。

1.職務内容(仕事の内容・責任)が正社員と同じ
2.人材活用の仕組み・運用(人事異動の有無・範囲など)が正社員と同じ
3.実質的に契約期間がない


これらの条件を満たしたパートタイマーは、「正社員並みパート」といわれたりしますが、正確には「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」といわれます。


パートタイマーはたとえ仕事内容等が正社員と同じであったとしても、正社員に比べて賃金は安く賞与がないなど待遇面で劣るというのが一般的であり、企業は人件費を安くする為にパート労働者雇用していると言っても過言ではありません。

パートタイマーと正社員差別的取扱いを禁止するという規制は事実企業にとっては大きな負担であり、パートタイマーを多く雇用せざるを得ない営業形態の企業の中には、パート労働法第8条の規制を回避するべく様々な対策をとっている企業も少なくないと思われます。


そして昨年、厚労省は「正社員並みパート」の適用範囲を拡大するという方針を発表していました。

具体的には先ほど挙げた3つの条件を廃止したうえ、代わりに「合理的な理由なく不利益な取り扱いをしてはならない」と定めることによって運用に柔軟性をもたせ、「正社員並みパート」の対象者を増やしていくという方法でした。

この件の詳細は過去記事を参照
「正社員並みパート」拡大の是非 - 人事労務コンサルタントmayamaの視点



ところが冒頭に書いた通り、先日の厚労省の発表では、3要件を全て廃止するのではなく、「契約期間がない」という基準を削ることによってパートタイム労働者のうち「有期雇用契約」の労働者の待遇を改善していくことに方針を転換したように思われます。

雇用契約期間の有無のみによって正社員とパートタイマーの取扱いを分けていたという企業は法改正がなされれば当然パート労働法に抵触し、差別的取扱いが禁止されることになります。今のうちに有期パートタイマーの雇用形態や労働条件、待遇面について見直しを行い、法改正の動向に合わせて就業規則、雇用契約書をスムーズに整備できるよう準備をすべきであるといえます。



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2011-10-09

定年制復活は何を意味するのか


マクドナルドの定年制復活の記事は目を奪われた方も多かったのではないでしょうか。

マクドナルドが当初定年制を廃止したのは、実力主義の意識を高めることが目的でした。

年功序列を廃止し、その一環として定年制を廃止することによって、会社が実力本位であることを社員に明確に示すことになり、若手のモチベーションを高めることができると考えたようですが、実際は思惑通りにはいかず、ベテラン社員が自身の成果を優先してしまい、結局は若手をうまく育成できなくなってしまったとのことです。



ここから先は一般論として話をしたいと思います。

高齢者雇用安定法の改正にともなって定年制を廃止した企業は2.8%といわれていますが、日本で定年制を廃止して業績を向上させていくことは絶望的に難しいと思います。



定年制をなくすということは年齢差別をなくすことにほかなりません。賃金の決定や採用・退職に関して年齢的要素を一切排除するということです。年功序列は当然に廃止です。

そして前提となるのが、定年制が廃止されれば何歳になっても働ける反面、定年までの雇用が保証されないということです。

何歳になっても働けるというのは、年齢に関係なく実力があれば60代・70代になっても退職する必要がないということであり、裏を返せば実力のない者は20代でも30代でも退場を余儀なくされるということです。

これらの事項が担保されなければ、会社が実力本位であることを社員に示し、実力主義の意識を高めるという結果にはつながらないと考えられます。


しかしながら、日本においては判例の積み重ねで確立された解雇権濫用法理によって解雇が厳しく制限されており、労働者の能力や成果を理由とする解雇のハードルは相当に高いというのが実情です。一方で日本の雇用慣行は現在でもまだまだ新卒一括採用、終身雇用年功序列を基本としている部分が多く、労働市場の流動性は極めて乏しいといえます。

前述の実力主義の意識を高めるための定年制の廃止という考え方は、日本の雇用システムにおいては相容れないものであり、結果的には全社員の雇用契約がエンドレスで続いていくことになり、採用活動を通常通り行えば毎年恐るべき額の人件費が加算されていくのは火を見るより明らかです。定年制廃止のハードルは極めて高いものといえます。



なお、いったん廃止した定年制を復活させることは労働条件の不利益変更にあたると考えられますので、定年制の廃止を検討する場合はこの点についても注意が必要です。



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2011-09-30

「正社員並みパート」拡大の是非


厚生労働省で「正社員並みパート」の適用範囲の拡大が検討されているようです。パートタイマーの処遇改善を進めるのが目的で、来年の法改正を目指しているとのことです。

正社員並みパート」といわれているのは、平成20年に施行された改正パートタイム労働法で賃金や待遇等について正社員との差別が禁止されているパートタイマー(短時間労働者)のことで、正確には「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」といわれます。

(※フルタイムパート・疑似パートは上記に含まれません。つまりパートタイム労働法第8条は適用されません。)


通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者を判断する基準は以下の3つです。

  1. 職務の内容が同一か
  2. 人材活用の仕組みや運用(転勤、配転など)が全雇用期間を通じて同じか
  3. 契約期間の定めがないか(反復更新で実質無期となっていないか)


日本の非正規雇用労働者全体の4割といわれており、この法律を額面通りに厳密に運用すれば経営がたちゆかなくなる企業も少なくないと思われます。

企業側の実務的な対応としては(つまり正社員並みの処遇をしなくて済む方法)、時間外労働やクレーム処理を正社員のみとして職務内容(業務に伴う責任の程度)に差をつけたり、パートタイマーは転勤・配転なしとすればよいでしょう。また、パートタイマーはすべて有期契約にして更新していくのも有効と考えられます。

※契約更新を繰り返せば実質期間の定めのない雇用とみなされるとも考えられますが、厳格な更新手続きを行っていればそのような問題は生じません。




現在、この「正社員並みパート」に該当するパートタイマーは0.1%にとどまるといわれているようですが、今後の法改正によって上述の3要件を廃止し「合理的な理由なく不利益な取り扱いをしてはならない」とだけ定め、「合理的な理由」についてのガイドラインを示す方法に変更し、「正社員並みパート」の対象者を増やしていく方針とのことです。

通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の範囲は格段に広がり、これまで企業がとってきた方法では対応できなくなるかもしれません。

しかしながら、それでもこの法改正が政府の目的とするパートタイマーの処遇改善につながるとは到底思えません。

現在パートタイマーがやっている仕事に対して正社員並みの賃金を支払えるような余力は大半の企業にはありません。

そして、再雇用制度の場合もそうでしたが、パートタイム労働法についても御多聞に漏れず行政法であるため違反しても罰則がなく、企業名公表の制裁もありません。都道府県労働局長の助言・指導・勧告までとなっています。

はたして法律を遵守する企業がどのくらいあるでしょうか。


本当に同一労働・同一賃金を実現するには、職務(仕事)に対して賃金を決定し、仕事の結果である業績・成果のみを評価することが必要になります。これまで日本が大切にしてきた生活給の考え方や、熟練・習熟度・期待度に対する賃金、長期雇用の視点にたった人材育成が排除されることが予想されます。会社と従業員の関係は今よりも希薄化するかもしれません。労働市場の流動化も必要でしょう。雇用形態がこれだけ多様化した時代に、小手先の法改正は通用しません。


最近の政府の検討している施策をみていると、厚生年金の加入要件緩和にしても、高齢者雇用義務の拡大にしても、適用範囲を拡げて会社の法的義務を拡大するばかりで本当に労働者保護になるのか疑問を禁じ得ません。




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2011-08-28

面接時の質問に注意


先日、こんなニュースを見つけました。

朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?


採用面接で血液型を聞かれることがあるようです。企業側はあくまでも参考程度と説明しています。

(※人事労務とは関係ありませんが、医学的にはABOの血液型と人間の性格には関連性は全くないといわれています。)

職務に関連のない血液型を面接で聞くことは不合理であり、いわれのない差別につながりかねないということです。

確かに

「参考までに」
「採否には関係ない」
「答えられなければ答えなくてもよい」


と言われたりしても、応募者からすればきちんと答えない訳にはいかないですし、本当にそれで合否を決めていないのか確認する術はありません。



ちなみに法律によって面接で求職者に質問することが禁止されている事項があります(職業安定法第5条の4、平成11年労働省告示第141号)。意外に知られていないものもあるので注意が必要です。代表的なものは以下です。

  • 本籍に関する質問
  • 住所に関する質問
  • 住宅環境に関する質問
  • 家族構成、家庭環境に関する質問
  • 家族の職業、地位、学歴、収入、資産に関する質問
  • 思想、信条、宗教、尊敬する人物、購読新聞、愛読書に関する質問
  • 支持政党、労働組合の加入状況に関する質問
  • 男女雇用機会均等法に抵触する質問


ポイントは、能力・適格性・職務と関係がないもの、本人の努力では解決できないもの、差別につながる恐れがあるもの、憲法で保障されている基本的人権(自由権)に関するものなどが考えられます。


「愛読書」や「尊敬する人物」、「信条としている言葉」などは、意識なく質問してしまいそうな気がしますし、また、「家族構成」「家族の職業」などは、私自身、過去に実際に採用面接を受けた際に聞かれたことがあります。

「将来どんな人になりたいか」というのも禁止事項ですが、「将来当社でどのようにキャリアアップしていきたいと考えているか」と聞き方を変えれば違法な質問とはいえないでしょう。



不況の影響により厳選採用の傾向が続く昨今、会社にとって必要かつ優秀な人材を確実に見極めるために採用担当者は様々な質問を応募者に投げかけるわけですが、一方で質問の内容についてもより慎重な対応が求められていることに十分留意する必要があります。



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