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人事労務コンサルタントmayamaの視点 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2016-02-25

<シャープ買収>40歳以上が拒否される雇用システムを支持してきたのは誰か


シャープが台湾企業ホンハイの傘下に入ることが決まり、ホンハイは買収の条件として「40歳以下の従業員の雇用の維持を約束」していると言われています。

つまり、40歳を超える従業員の雇用は一切保証されないことになりますが、これはホンハイが血も涙もないからではなく、極めて合理的な決断であり、もっと言えば、シャープの40代・50代の従業員を含め、おそらく日本の多くのサラリーマンが望んだ結果であるものと考えられます。

日本の多くの企業ではいまだ、給与が毎年少しずつ昇給する年功序列型の賃金制度が使われており、成果主義を採用しているという企業であっても、業績等によってある程度の差はつくものの、結局は属人的な給与体系であって、年齢や勤続年数が給与に大きく関係するのが実情です。

そして、こうした年功型の人事制度がずっと運用され続けてきたのは、会社側だけでなく従業員側もまた強く望んできた結果だといえます。近年、安定した企業へ就職したいというサラリーマンの安定志向は若者まで浸透していますが、安定した企業とはつまり、仕事によって給与が決まったり成果によって年収が大きく上下しない会社、つまり年功型賃金の企業のことです。

多くのサラリーマンの望む安定した会社、つまり給与が年齢・勤続に応じて少しずつ上がっていくような会社は、20代・30代の若い頃はパフォーマンスに比べて給与が安く、40代・50代になってから昇給カーブに乗ってパフォーマンスを超える割高な給与がもらえるものです。

言い換えれば、若いうちは将来の出世と引き換えに一生懸命働いて会社に一杯貯金をつくり、年配になったら動きは落ちてきちゃったけどその代わり会社にたくさん貯金があるから高い給料をもらって定年まで安泰という感じです。

ところが、この安定には大きな大前提があって、それは企業が変わらずに「存続」しているという点です。

今回のシャープのように、若いうちに割安な給料で残業こなして異動にも応じて会社の為に精一杯尽くしてきたのに、さあこれから年功制のリターン部分を享受するぞ、というまさにその段階で、今回のような買収があれば、若い頃の貯金が全部貸し倒れで消滅してしまうこともあり得るという訳です。みんなが入社したがる安定企業が民間企業である限り、このリスクを内包しているのは当然です。

「40歳以下の雇用が維持され、40歳を超える雇用が保証されない」ことは、紛れもなく安定志向を望む多くのサラリーマンたちが自ら望んだ結果であることは間違いありません。

いずれにしても経営再建の為にリストラが必要不可欠だという状況の中で、いままで年功制の中で割高な給与支給されてきた40歳超の従業員を「要らない」と考えたホンハイの判断は合理的としか言いようがありません。年齢だけを理由に高い給与支給される従業員を雇用し続ける方が余ほど不合理といえます。

シャープがもし仕事と業績によって給与が決まる完全実力主義の会社であったなら、「40歳以下は〜」といったような年齢で一刀両断されることはなかったかもしれません。今回のような取扱いは年齢による差別といえます。しかし、多くのサラリーマンは、この年齢による差別を望んでいる現状があります。競争よりも安定を望んでいるからです。そして、いま見えている安定とは、年齢に応じて給与が上がっていくという年齢による差別ともいえる、いつ消滅するか一切保証のない、まやかしの安定だと思います。

2016-02-18

「定年制の廃止」できる会社とできない会社


ジョイフルが定年制を廃止するというニュースがありました。

ジョイフル:正社員60歳定年制廃止 パートも雇用継続 - 毎日新聞


以前から定年制を廃止する企業のニュースはたまに見かけますが、定年廃止は企業にとって非常に勇気のいる決断です。

定年廃止は、何のトラブルもなく自動的に従業員を退職させるための唯一のシステムがなくなることを意味します。正社員は基本的にみな無期雇用なので、自分から辞めたいと言わない限り何歳まででも企業は雇い続けなければならないということになります。高齢でパフォーマンスが落ちてきたというくらいでは、解雇なんかまずできません。


そんなリスクを負ってまでなぜ定年廃止に踏み切るのか。このままではもう立ち行かないくらい人材が不足しているからです。定年廃止をアピールすることでより優秀な、より多くの人材を獲得したいのです。


とはいえ企業が定年を廃止する為には、どうしても越えなければならない壁があります。「年功序列」の壁です。定年廃止には実力主義が不可欠なのです。

日本の企業の多くは年齢によって給与や昇進が決まります。「最近は成果主義が増えているじゃないか」というかもしれませんが、そんなことはありません。能力主義とか成果主義とうたっているような企業でも、中身を見てみると「年功的な成果主義」だったりします。人事評価によって差はついても、全体的にみると結局年齢や入社年次が大きく影響しているという感じです。

したがって、日本企業給与は上がることはあっても下がることはあまりないのが現実です。下手に給与を下げられないのに加え、上には管理職がいっぱい詰まっているので、最近は特に大企業は30代くらいで早くも頭打ちだったりします。

このような制度のまま定年を廃止したらどうなるでしょうか。あっという間に人件費が肥大化して経営危機に陥ります。会社で最も高給かつパフォーマンスの落ちている層がそのまま退職せずに残るわけですから当然です。

これまでだったら60歳あたりで一回仕切り直して、まず給与を思いっきり下げて、最終的には動きのいい人だけ再雇用で残すというやり方でやって来れたわけです。定年を廃止すればそうした人件費圧縮も選別も一切できなくなります。

ですから定年廃止する企業は給与も昇進も全て実力主義で決定する必要があります。決して60歳間際の社員の給与が高いとは決まっていません。年齢で給与が決まらないのだから、年齢で退職も決まらないということです。年齢による差別を一切やめることこそ定年廃止です。一方、年功序列は年齢による差別の代表格といえます。

また、労働者が何歳まででも会社に残る代わりに、パフォーマンスに応じて給与が柔軟に決定され、場合によっては給与を引き下げることのできる人事・賃金制度が必要になります。透明かつ客観的な基準による制度を適切に運用しなければ、給与の引き下げは法律的なトラブルを引き起こしかねません。年功序列の企業ではまず無理だということです。

今後、労働人口の減少にともなって定年制を廃止する企業は次々と出てくるでしょうが、はたしてこの年功序列の壁を乗り越えることができるのか、そこが大きなポイントだと思います。

2013-01-09

「有能な幹部には年俸制」という勘違い


佐賀県の武雄市が有能な職員を幹部に抜擢し、「年俸制」を導入することによって幹部の育成と活性化を図るというニュースがあります。

「佐賀・武雄市が年俸制導入へ 幹部候補を育成」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASJC06001_W3A100C1ACY000/


このような報道をみると、一般的に年俸制という制度への正しい理解がされていないことを改めて感じます。



年俸制とは、賃金の額を年単位で決定する制度です。それ以上でもそれ以下でもありません。

賃金を一日単位で決めれば日給制、時間単位で決めれば時給制、そして年単位で決めれば年俸制という訳です。


記事によれば

年齢に応じて金額が決まる年功序列型の給与と違い、年俸は権限の大きさに応じて支払うため、1人当たり約200万円の昇給になるという。


とあり、まるで年俸制が年功序列型の賃金を脱却するための成果主義賃金制度そのもののような記述がされていますが、ハッキリいってこれは間違いです。

まず年俸制は「権限や責任の大きさに応じて支払う制度」ではなく、前述したように賃金を年単位で決める制度です。

賃金を年齢で決めるのか仕事内容で決めるのか業績で決めるのかという話と、賃金を月単位で決めるのか年単位で決めるのかという話は、全く別の問題です。

「年俸制=実力主義成果主義」ではありませんし、極端な話、年功序列型の年俸制という賃金制度だってあり得るわけです。(ただしそんな制度を現実につくる会社はないと思いますが。)


つまり何が言いたいかといえば、企業は年功賃金制から成果主義へと舵を切る際に

「よし。では年俸制の導入だ。」

と安易に考えるべきではなく、なぜ年俸制でなければ駄目なのか、賃金を年単位で決める必要性を明確にするとともに、月給制のまま成果主義へ移行する選択肢を十分に検討することです。


事実、年俸制は総額人件費の管理に優れているという点を除けば、企業にとってあまりメリットのある制度とはいえません。

むしろ年俸制を導入することによって、年途中で賃金を引き下げたり賞与の支給を取り止めることが難しくなり、企業の業績が急に悪化しても柔軟に対応ができなくなるという致命的なデメリットがあり、資本力の弱い企業には特に注意が必要です。

また、年俸制を導入すれば残業代を支給しなくてもよいと考えている方が少なくありませんが、これも大きな間違いであり、年俸制の社員であっても別途残業代を計算した上で支払う必要があります。

さらに、年俸を16で割って各月に12分の1を、夏冬に12分の2ずつを賞与として支給するようなケースでは、賞与額が確定しているため賞与も残業代の計算基礎に含まれることになり、人件費が高くなるというデメリットもあります。


私は個人的には年俸制の導入は積極的にはお勧めしませんし、導入する場合であっても、最低でも残業代の要らない管理職以上、できれば役員に近い上級管理職に限定し、上記に挙げたデメリットを最小限にできるよう柔軟性をもたせた制度設計を行う必要があると考えます。




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2011-10-09

定年制復活は何を意味するのか


マクドナルドの定年制復活の記事は目を奪われた方も多かったのではないでしょうか。

マクドナルドが当初定年制を廃止したのは、実力主義の意識を高めることが目的でした。

年功序列を廃止し、その一環として定年制を廃止することによって、会社が実力本位であることを社員に明確に示すことになり、若手のモチベーションを高めることができると考えたようですが、実際は思惑通りにはいかず、ベテラン社員が自身の成果を優先してしまい、結局は若手をうまく育成できなくなってしまったとのことです。



ここから先は一般論として話をしたいと思います。

高齢者雇用安定法の改正にともなって定年制を廃止した企業は2.8%といわれていますが、日本で定年制を廃止して業績を向上させていくことは絶望的に難しいと思います。



定年制をなくすということは年齢差別をなくすことにほかなりません。賃金の決定や採用・退職に関して年齢的要素を一切排除するということです。年功序列は当然に廃止です。

そして前提となるのが、定年制が廃止されれば何歳になっても働ける反面、定年までの雇用が保証されないということです。

何歳になっても働けるというのは、年齢に関係なく実力があれば60代・70代になっても退職する必要がないということであり、裏を返せば実力のない者は20代でも30代でも退場を余儀なくされるということです。

これらの事項が担保されなければ、会社が実力本位であることを社員に示し、実力主義の意識を高めるという結果にはつながらないと考えられます。


しかしながら、日本においては判例の積み重ねで確立された解雇権濫用法理によって解雇が厳しく制限されており、労働者の能力や成果を理由とする解雇のハードルは相当に高いというのが実情です。一方で日本の雇用慣行は現在でもまだまだ新卒一括採用、終身雇用年功序列を基本としている部分が多く、労働市場の流動性は極めて乏しいといえます。

前述の実力主義の意識を高めるための定年制の廃止という考え方は、日本の雇用システムにおいては相容れないものであり、結果的には全社員の雇用契約がエンドレスで続いていくことになり、採用活動を通常通り行えば毎年恐るべき額の人件費が加算されていくのは火を見るより明らかです。定年制廃止のハードルは極めて高いものといえます。



なお、いったん廃止した定年制を復活させることは労働条件の不利益変更にあたると考えられますので、定年制の廃止を検討する場合はこの点についても注意が必要です。



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2011-05-20

人事制度に手をつけないリストラは失敗に終わる


景気低迷が続く昨今、経営者がリストラの判断を迫られる場面は珍しくありません。


以前の記事でも触れましたが、解雇は日本ではかなり厳しく規制されています。
JALが昨年末に行った整理解雇についても不当解雇で提訴されていますが、あれだけ追い込まれた状況下で綿密に手順を踏んで行ったと予想される整理解雇であっても、訴訟リスクをゼロにすることはできません。


整理解雇を正当化する要素の1つとして、解雇回避努力の程度があげられますが、実際には希望退職の募集が重要視されることが多いといえます。


希望退職とは、退職を希望する社員を募って会社都合の合意退職にもっていくことです。通常、割増退職金や有休買上げ、再就職支援などの条件をパッケージ化して一定期間募集をかけます。



ところがこの希望退職、本当にうまくいった会社があるのだろうかと疑うほどいい話は聞きません。


会社はほぼ確実に、ターゲットとなる辞めさせたい社員と、何としても会社に残したい社員をあらかじめ決めています。希望退職の募集と平行して全社員と個人面談を行い、辞めさせたい社員の退職勧奨、残したい社員の慰留を全力で行うのです。


お分かりかもしれませんが、結果的には全く逆、辞めさせたい社員は1人も辞めず、何としても残したかった社員がゾロゾロ辞めていくパターンが多いといわれます。

会社が残したいと思う社員は通常、有能で市場価値が高く、再就職への不安もありません。加えて、賃金制度・人事考課制度に対して実力主義的要素を強く求めます。もしも有能で市場価値の高い社員が会社の既存の人事制度について不満を抱いていた場合、有利なパッケージで希望退職の募集があれば、転職の背中を押されたようなものです。

会社は一時的に人件費が減って窮地を脱したかと思いきや、予想以上に生産性が下がり、根本的な問題は解決されないまま、またいずれリストラの判断を迫られる日がやってくるのかもしれません。



希望退職の募集は単なるコストカット・人員削減ではなく、人材戦略の一環と考えるべきです。


賃金・退職金制度、キャリアパスは会社の人材戦略にマッチしているのか

会社の求める人材像は評価制度に反映されているのか


会社の求める人材を会社に残すためには人事制度改革は必須といえるでしょう。




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