「春と修羅」 mental sketch modified 宮澤賢治 

心象のはいいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の濕地
いちめんのいちめんの諂曲〔てんごく〕模様
(正午の管楽〔くわんがく〕よりもしげく
 琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾〔つばき〕し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
碎ける雲の眼路〔めじ〕をかぎり
 れいらうの天の海には
  聖玻璃〔せいはり〕の風が行き交ひ
   ZYPRESSEN春のいちれつ
    くろぐろと光素〔エーテル〕を吸ひ
     その暗い脚並からは
      天山の雪の稜さへひかるのに
      (かげらふの波と白い偏光)
      まことのことばはうしなはれ
     雲はちぎれてそらをとぶ
    ああかがやきの四月の底を
   はぎしり燃えてゆききする
  おれはひとりの修羅なのだ
  (玉髄の雲がながれて
   どこで啼くその春の鳥)
  日輪青くかげろへば
   修羅は樹林に交響し
    陥りくらむ天の椀から
    黒い木の群落が延び
      その枝はかなしくしげり
     すべて二重の風景を
    喪神の森の梢から
   ひらめいてとびたつからす
   (気層いよいよすみわたり
    ひのきもしんと天に立つころ)
草地の黄金をすぎてくるもの
ことなくひとのかたちのもの
けらをまとひおれを見るその農夫
ほんたうにおれが見えるのか
まばゆい気圏の海のそこに
(かなしみは青々ふかく)
ZYPRESSENしづかにゆすれ
鳥はまた青ぞらを截る
(まことのことばはここになく
 修羅のなみだはつちにふる)
 
あたらしくそらに息つけば
ほの白く肺はちぢまり
(このからだそらのみぢんにちらばれ)
いてふのこずえまたひかり
ZYPRESSENいよいよ黒く
雲の火ばなは降りそそぐ

http://why.kenji.ne.jp/haruto/109harut.html

デモーニッシュな存在を嘆くのではなく抱え込む!

合掌・中島らも

梅田で酔っ払って階段を二階分転げ落ちた。そのまま気絶して、はっと気がつくと私はアスファルトにうつぶせになり、すでに朝だった。道路の反対側で、犬の散歩中のおばちゃんが私をじいっとみていた。起き上がろうとする私と目があうと、あわてて去っていった。
尻のポケットの財布を確かめるとなくなっていた。およよ、と思いながら探すと、5メートルほど先に落ちていた。財布には紙が挟まれていた。そこには「いやん!まいっちんぐマチコ先生」と大書されていた。金は当然なくなっていた。