イギリスの学部学生から電話がかかってきた。みしらぬ人間である。データ解析の実習課題が先生からだされたので手伝ってくれという内容。マジですか。”降りる自由”行使しちゃおうか、などととおもいつつもメールで送られてきた内容をちらっとみた。課題の出し方が間違っている。定量性のある考察を行うためにはこれではデータがたりない。それを指摘したら声だけだが学生がすごくうれしそうにしていた。いまどき先生なんてなるもんじゃない、と思った。

西向け、西! 多民族国家の神話形成過程 

チベット動乱へのマクロな視点、という点から一連のワタクシ・スレッドとしてクリップ。いずれちゃんと書き直すかも。

反復された西部開拓、という視点。
Just like America, China is building a multi-ethnic empire in the west
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/mar/25/china.tibet

Tibet and Xinjiang today set the stage for the birth of a multi-ethnic empire in ways that resemble nothing so much as America's frontier expansion nearly two centuries ago. Chinese think about their mission civilatrice much as American settlers did: they are bringing development and modernity. Asiatic, Buddhist Tibetans and Turkic, Muslim Uighurs are being lifted out of the third world - whether they like it or not.

チベット関連のあちらこちらのコメント欄でも漢民族らしき投稿者による”おまえらだってやっただろ”という投稿をみかける(だから正当化されるなどという屁理屈を論理と呼ぶ中日韓のネトウヨはそろってオツムが弱い)。

片や”多民族国家”は在外アジア人という形でゆるいネットワークがある。

アジアでの戦争体験を携えた新移民たちが続々とアメリカへ流入してきたことで<アジア問題のアメリカ化>が進んでいることは確かだ。そのために、アジア系の抗議運動も誰の差別に誰が抗議するか、様相はさらに複雑化しつつある。
収容所体験を持つ日系人も、日系二世の元兵士も、韓国独立運動の闘士の子孫も、旧日本軍に親を惨殺された中国系やフィリピン系も、あるいはかって鬼畜米英を叫びながら竹槍を手にした戦争花嫁も、今はアメリカに住む広島と長崎の被爆者も、かっての戦争体験を語り継ぐべき「アジア系アメリカ人」の一員としてある。アメリカのマルチ・エスニック社会とは、かように多様な声が立体交差する社会のことでもあるのだ。

村上由美子アジア系アメリカ人アメリカの新しい顔』
hizzzさんのところからの孫引き(id:hizzz:20080315#p3)

そしてその反日感情の淵源を探った著者は、江沢民政権が中国共産党の「抗日戦争」を「反ファシズム戦争」の一環として取り上げ、アメリカや台湾の国民党の融和を打ち出したことと(その裏には台湾との平和統一を目指す意図もあります)、それに呼応したアメリカ国内の華僑華人社会の動きを指摘しています。
この在米華僑華人社会は必ずしも親共産党ではなく、中には共産党の迫害を逃れた人やその子孫も多いのですが、大陸と台湾との平和統一という一点で共産党と結びつきました。そしてその過程で「抗日戦争」や日本の中国侵略について学んだ結果、「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」の問題について積極的な運動をするようになったようです。

baatarismさんの『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』 遠藤誉著のレビューから抜粋。
id:Baatarism:20080323:1206251384

かくなる連鎖を見ていると、200年前からの西部開拓運動は実はシェラネバダから太平洋を飛び越え、日本の満州侵略を経て中国を西に横断したのであろうか、などと思い始める。チベット人虐待・虐殺はネイティブアメリカンの虐殺や満州侵略と軌を一にして西進しているということになる。cf. 20世紀初頭の日本による大陸侵略は大陸に文明開化をもたらした、などといった言説は今でも大声でいう人間が日本にいる。あるいはアメリカだってそうだ。そして目下の中沿岸部の小金持ち漢民族がそのようなことをいったりしている。なお、中国共産党によるチベットへの侵略が日本による満州の侵略に似ているという点は内藤朝雄さんや、nomore21さん、ガーディアンに掲載されたPankaj Mishraによる秀逸な論評が指摘している。

チベットに関する内藤朝雄さんのメッセージ@−いじめと現代社会BLOG−
id:izime:20080321:p1

チベット問題と人権問題@ノーモアのコメント録
id:nomore21:20080322:1206147728

At war with the utopia of modernity
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/mar/22/tibet.china1

かくなる状況でくりかえし私の意識にのぼるのはその東端フィラデルフィアで行われた先日のオバマの演説なのだった。id:kmiura:20080319#p1