いわゆる「共謀罪」、犯罪を計画段階で処罰する「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法が、15日参院本会議で可決、成立した。
この法案の問題は、犯罪の事実がなくても「犯罪の計画」だけで逮捕できることだ。日本の司法は有罪率99.9%である。「犯罪の事実」を裁判で争っても99.9%警察のなすがままということである。これからは「犯罪の事実」だけでなく「犯罪の計画」も警察のさじ加減ひとつになる。
しかし、そもそも「犯罪の計画」と「犯罪の妄想」に線引きなどできない。先日も、
強制わいせつ容疑などで埼玉県警に再逮捕された男が「漫画の手口を真似た」と供述していることをうけて、埼玉県警がこの漫画の作者に申し入れをした。模倣した犯罪が起きないように配慮してほしいという内容だった。
と、ハフィントンポストが伝えていた。早くも「犯罪の妄想」にまで警察が踏み込んできている。つまり、来年の今頃ならこの漫画家を「共謀罪」で逮捕することも「可能」であり、それができれば、この国では、あとは自動的に99.9%有罪である。
だから最も問題なのは、「共謀罪」あるいは「テロ等準備罪（「等」の万能感がすごい）」の細かな内容がどうあれ、それを現に運用する警察に厳格な公正さを求め、さらにそれを監視し、ジャッジし、是正するシステムが必要なのだが、その議論がすっぽり抜け落ちているということだ。
重大な冤罪事件が続発し、大阪地検特捜部からは逮捕者も出したというのに、捜査の可視化すら実現されないまま「共謀罪」が成立している事態には、本来、権力の横暴を監視しなければならないマスコミが警察と癒着し警察の広報機関に成り下がっている状況が大きく関わっている。ちなみに捜査の可視化が進んでいるような報道がなされているが、実態は捜査全般の3%が可視化されるだけである。いうまでもなく、完全可視化でなければ可視化ではない。なぜなら、1%でも不可視であれば残りの99%は改ざん可能であるからだ。
繰り返しになるが、「共謀罪」の問題とはなんなのかと言えば、警察の権力に歯止めがかけられないということなのである。
にも関わらず、この間マスコミが盛んに報じてきたのは、「加計問題」と「森友問題」だ。何度も書いてきたが、立花隆が「奇怪な話」と揶揄した「森友問題」はもちろん、「加計問題」にしても、政権にとって大した打撃にならない。もしこれが「総理の意向」だったとしてどうなる？。「だから？」というだけじゃないか？。田中角栄がロッキードから3億円受け取ったって話とは深刻さがまるで違う。
むしろ、この問題のポイントは、古賀茂明が指摘しているように、「アベノミクス」の三本目の矢であったはずの規制改革が、実のところは、まやかしにすぎなかったという点であり、国会で政策を議論するつもりがあるなら、そこを追求すべきだった。
が、万人の知る通り、民主党の脱官僚もまやかしだったので、これを指摘する国会議員のひとりもいない。結局、このふたつの問題は、政治家と官僚のコップの中の争い、国民不在のマウントの取り合いにすぎない。だから、この問題で政権の支持率は動かない。
最近、政権の支持率が落ち始めているのは、山口敬之のレイプ事件のせいだろう。TBSの元ワシントン支局長がレイプ事件を起こし、逮捕状まで出ていたのに、逮捕寸前で圧力がかかったとなれば、これは、マスコミと警察と政権の3者が癒着している証拠であり、どんな言い逃れもできない。
さっき書いたように、「共謀罪」の問題は警察の問題なのである。それを実際に行使する警察が、逮捕状まで出ているレイプ事件をもみ消しさえする状況で、警察にフリーハンドを許していいのかと国民に訴えれば、その答えは明らかだったはずである。
ところが、新聞テレビ各社はこの問題を黙殺している。レイプ犯がマスコミの身内だからだ。
慰安婦問題がかまびすしかったころ、新聞やテレビは何と言ってた？。思い出すと笑ってしまう。70年以上前の、しかも、虚々実々でのレイプ事件については、あれほど大々的にキャンペーンを張っておいて、今、目前で起こっているレイプ事件には示し合わせて口を噤んでいる。同じレイプ事件であっても、身内と警察が絡むと黙殺かよ？。それであの時よく人権がどうのこうの言えたな？。
もし、マスコミが本気であったら、山口敬之のレイプ事件は、警察と政権の両方を追い詰めることができただろう。しかし、この事件を黙殺することで、マスコミは自分自身も追い詰めてしまったようである。
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