上海から成都へ

5 月4 日

 目が覚めると11 時だった。

 部屋の床には、チョージが寝てる。

 隣のベッドにはMくんが寝てる。

部屋は3 人分の荷物が散乱してる。

 3 人でいつもの小龍包の店に行って朝食。

ここの店は何を食ってもうまい。

だからいつも地元の人で満席に近い。

 だが、店主と思われる男は恐ろしく愛想が悪い。

こんなに通いつめているのに、ニタリともしない。

ツワモノだ。いつか笑わせてやるぜ。

 食事を終えて、七浦路を一人で歩く。
自転車、人、車・・・。

 ホテルに戻るとシゲムラくんがロビーのカフェでコーヒーを飲んでる。しばらく話をする。


 ネットカフェに行き、メールをチェックする。

 D氏からメールが入っている。

 「何かをしようとせず、何も考えず、ボケーとすること。流れに身を任せてみること。」

 そんなことが書かれていた。

 夕方、みんながまた401 号室に集まってきた。

 Kさんがお茶を入れてくれた。
とても気を配る人。

 みんなで北京ダックを食べに行こうといわれるが、今晩はそんな気分
ではないのでやめとくという。

 上海の繁華街にあるARKというライブハウスに行くことにした。

 みんなと一緒はすごく楽しい。

 だけど、ずっとみんな一緒ってのは大変だよ。

 ライブハウスの中、大音響。たくさんの人。

 その中で一人になる。こうして、一人になる。

 みんなと一緒が楽しくて、そして疲れて一人になって、また淋しく
なって・・・。

 
 ライブが終わって、部屋に戻るとまたみんながやってきた。

 北京ダックやビールを買ってきてくれて、また全員集合。

 朝、5 時まで話し込む。

旅について、恋愛について、人生について、中国拳法について、座禅について、居合について。

 旅で会う友達。

 お互いに相手がどんな背景があろうが無かろうが、職業の有無、学歴、出身地・・・そんなもん全く関係がない。

 ここで出会い、別れ。それだけ。

 分かり合えた振りの演技などいらないし、手探りで仲良くなろうとす
る必要もない。

 ただ、5 時まで起きてるのはシンドイぜ(笑)


 北京といい、上海といい、旅はこの繰り返しじゃん。

 なにをやってんですかね?この人は。


5 月5 日

 7 時30 分に目を醒ます。

 5 時過ぎまで喋ってたから、2 時間ちょいしか寝ていない。

 部屋にはチョージとMくんが寝ている。

 401 号室をチェックアウト。

荷造りしてパックパックを背負う。

 ドミのやつらには、わざわざ挨拶には行かない。みんな昼まで寝てる
よな。

 浦江も京華も面白かった。変な日本人ばかり♪

 バス2元で上海駅へ。

長い移動の始まり。

 列車の中で爆睡する。

 目が醒めると、16時。

今回のチケットは「硬臥」文字通り硬いベッドだ。

 3段の上段なので楽。誰にも話しかけられることなく、延々と寝る。

 列車に揺られている今、「どこに行くのだろう?」と心配しない。

 行き先の決まった線路の上を走っているから。

 生きている今、「どうなるのだろう?」と心配しない。

 生き先は決めているから。

 さぁーて、酒でも飲むかぁ。



 5 月6 日

 進む列車の中。

 7時に目が覚めた。

 よく眠った。

寝ていても、成都を目指している。

ありがたいこっちゃ。

 エアコンの噴出し口が目の前にあって、ちょっと寒かった。

 パン3個と水だけで24時間を過ごす。

 窓側の座席に座り、外に流れる中国の風景を眺める。

 目の外には空気があり、窓ガラスがあり、外がある。

 ガラスはあるが、見ようとしないときにはない。

 見ようとするものが見えている。

 売り子さんがパンを運ぶ。

1元(約13円)のネギ入りパンを買う。

 必要なものは、必要なときに自然に得られ、目の前にあるもの、起こ
ることこそが必要なもの。


 19 時 列車に乗って36 時間。

 物売りがカートを脇にやって、乗客と将棋をしていたりする。

 長い時間の移動で、みんな仲良くなっている。日本では見られないこ
のおおらかさ。

 上海からずっと一緒だった家族連れが降りて行った。微笑みで挨拶し
てくれた。

 なんか嬉しかった。

 21:45

 成都交通飯店のドミトリー着。オランダ人と同室。チベットのラサか
ら帰ってきたという。

 7 日間いたが高山病で惨憺たる日々だったそうだ。

 チベット・・・。

 行こう。

 ネットでメールをチェック。

 知人の交通事故死を知る。

 旅行く人、逝く人・・・。





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今日から、二日間山口七夕ちょうちん祭り。

上海 浦江飯店の日々、 時間が無限にあることってリッチだな。

寧波出て、上海駅へ着く。慣れた地下鉄で外灘へ。雨宿りしていると日本人が隣へ。

 シゲムラさんという。

 一緒に昼ごはんを食べる。

 浦江飯店に宿をとる。

 雲南省で10 年間、中国拳法を学んでいるというKさんに出会う。

 夜は3 人で食事をする。


  5 月1 日  07:01

 10 時に目が覚める。

 中国拳法のKさんはずっと寝ている。

 日中はベッドの上で過ごす。

 シゲムラさんの友人の日本人も仲間に加わる。

 彼は日本から彼女を追いかけて上海まで来たそうだ。

 どこにいるのか分からない彼女を探す旅。

 夜はその話を肴に4 人で食事。

 上海の日本料理店「和味」へ行く。

 中国人の女の子が「イラッシャイマセ」と応対してくれる。

 なんだか申し訳ない気分なのはなぜだろう。
 
海の日本料理店の中国人店員さん、複雑だ。


何もしない5 月2 日


 上海に彼女を追いかけてやってきたRくんと部屋をシェアすることに
なった。

 浦江飯店は、ドミトリーは安いが一般の部屋は日本並に高い。

 Rくんの彼女、どこにいるんだろうね?

 追いかけてきて、見つけてどうにかなるのかなぁ?

どうにもならないことを自分で確認するためにここまで来たんだろうな。

 みんな同じことを思ってたが、Rくんには口に出してまで言わなかっ
た。

 だって、本人も言われなくても分かってるから。

 この部屋は王様待遇で、フルーツが置かれている。

 なんのことはないバナナなのだが、貧乏旅行者には助かる。

 寝っころがって、Rくんとバナナを食べながら、どうでもいい話をす
る。

こういうなんでもない会話をする時間があることが旅先の良さ。

時間が無限にあることってリッチだな。


 部屋の掃除、リネン交換まである。

試しに「バナナのおかわりをもらえますか?」と尋ねると持ってきてくれた。言ってみるもんだね。


 夕方、Rくんが彼女さがしに出たので、見送った。

 夕方はシゲムラくんと小龍包を食べる。こりゃウマイ。

 レセプションでまたまた蘇州へ行っていたMくんと再会。

部屋がないらしくシェアすることになった。

なんでもない、どうでもいい話を延々として過ごす。




 5 月3 日

 ネットやメールで連絡が取れるって、実に便利だ。

 北京で出会ったチョージは、上海在住。

北京の駅のホームまで見送ってくれたやつ。

 メールが着てて、上海に帰ってくるとのこと。会おうと連絡をとる。

 浦江のレセプションで待ち合わせ。

 夜は浦江の日本人ダメダメ旅行者が我が部屋に大集合。

 自分探しの学生、旅の果てにフリーライター、仕事辞めて即旅、中国
拳法やってる変わり者、中国拳法の達人・・・、朝までずっと話し込む。

 部屋のベッドでは足りないので、床にも毛布を敷いて寝る。

 ここは、高杉晋作アインシュタインチャップリンも宿泊したこと
のある由緒ある宿らしい。