極悪レミー


動画の最初に映っているのは世界一のドラマー、われらがミッキー・ディー(Motörhead)様。


レミー・キルミスターという男がいる。ロックバンド「Motörhead」のベースボーカルである。
その強烈なダミ声*1、ギター寸前の硬質なベースサウンド、そして漢臭いと言う言葉を絵に書いたような風貌。
「元祖・爆走ロックンロールバンド」Motörheadがメタルからもパンクからも敬愛されるのは、
そのサウンドもさることながら、レミーの特異なカリスマ性も大きい。


如何にレミーが特別な存在であり、また多くの人に絶賛されているか、が縦糸。
レミーという存在を形作っているものは何なのか?という問いかけが横糸。
交互に折り重ねながら、「ロックンロール・スター」でありながら実に人間臭い人物であるレミー
丁寧に描き出していく。


僕は特にMotörheadが大好きと言うわけではないが、ドキュメンタリー映画にゲスト出演するレミー
あまりの存在感、発言の説得力に胸を打たれることがあり、この映画もずっとチェックしていた。


レミーは決してこの映画の中でも饒舌というわけではないし、
そもそも地声がかなりのガラガラ声だもんで、「英語版なのに英語字幕が出る」こともしばしば。
だがその発言には異常なまでの説得力が漂っている。


その説得力を生み出すのは、レミーの態度に「作り込み」の要素がまるでないことだ。
特異ないでたち、独特のサウンド、すべてがレミーにとって「ありのままの自分であった結果」に過ぎない。
もちろんその結果として失ったものもあるし、「史上最低のバンド」と後ろ指を指されることもあった。
だがレミーは今なお、そしてこれからもレミーでありつづける。


またレミーは音楽マニアでもあるし、軍ヲタでもあるし、スロッターでもあるし、刀剣マニアでもあるが、
ヲタクにありがちな小難しさをまるで感じさせず、しかも説得力にあふれている。
それは自分の思いを率直に語ることが出来るからに他ならない。


そんな姿はある意味でヲタクの究極進化形であり、「永遠の少年」を地で行く姿は、
「そんなに簡単に運ぶ話じゃない」ことを分かっていながらもほのかな憧れを抱かざるを得ない。
Motörheadに興味がなくとも、ヲタクなら一見の価値がある映画。

(何故35年もの間、走りつづけられるのですか?という質問に)
「少年時代の夢がやっと叶ったんだ。今更止まれるか。」

いつまでも、こんな台詞をさらっと言える男でありたい。

*1:地声らしい