「脱原発」政治運動の今後について

細川・小泉の「脱原発」の目論見は、不発に終わった。極めて残念な事態だ。これから、原発推進のみならず安部政権のファシズムの道が加速するに違いない。それへの対処を迫られることになる。Sochiオリンピックで浮かれてはいられない。

しかし、「脱原発」の政治闘争は、しぼんだわけでは決してない。2年前の「アジサイ革命」の時より、もっとハッキリした反原発の像を結ぶようになったと思う。つまり市民運動が形をとりつつあると感じるのだ。政治のことはわからないが、だれもかれもが手を取り合って「反原発」を叫ぼう、という段階ではもうない。「市民運動」という政治闘争が始まったのだ。その闘争の方向は、暫定的だが、2つある。

一つ目は、今回顕著になった「脱原発派」の分裂を一つにまとめることだ。現状のままでは、選挙結果に如実に表れているように、勝てる(別に選挙だけではない)力・勢力になれない。共産党をはじめとした旧左翼と旧大物政治家が分裂した状態を統合するには、よりカリスマ性の高い人物が登場し、本気を出さなければならない。若者では誰が出てくるのか? やはり、ここで小沢一郎が捨て身にならなければならないのではないか。小沢氏のその覚悟と登場の機会があるだろうか?

二つ目は、世代間の意識ギャップをどうにかしなければならない。20-30歳台での田母神支持層の拡大、政策よりはその右翼思考を支持する安倍政権支持層、これらはおのおの覚悟があるなしにかかわらず、無視できない大きな脅威だ。ファシズムへの憧憬が急速に拡大しつつある。したり顔の評論家のように、国際世論がそれを受け入れないだろうといっても何にもならない。枯れ草には、マッチ一本で火が付き、だれにも消し止められなくなる。そうなる前に、市民相互の説得の方法を真剣に考えなければならない。インターネットの中で満足している場合ではない。

これらの点については、今後つめて考えていきたい。

現下の敗北をどう受け止めるかについて、インターネット上の記事の中から、実態をよく突いているものを、2つ紹介する。


田中龍作ジャーナル
都知事選】 マスコミが伝えない 脱原発二候補・敗戦の弁
2014年2月9日 23:51

 東京都知事選はきょう投開票が行われ、分裂選挙となった脱原発2候補は共に敗れた。二人ともマスコミの争点そらしを厳しく批判した。

 午後8時33分、細川候補が平河町の選挙事務所に姿を現すとカメラのシャッター音が滝のように鳴り響いた。細川氏は17日間の厳しい選挙戦を闘った疲れを見せる様子もなく、よく通る声で敗戦の弁を語った。

 開口一番出てきたのはマスコミと原子力村に対する批判だった。「原発が争点に取り上げられなかった。原発を争点にさせまいとする力が働いていた」。細川氏は無念さをにじませた。

 「街頭の熱気と結果の差の大きさに努力が不足していたことを痛感する」と続けた。「努力が不足していた」とするのは謙遜だ。

 細川氏の街頭演説はどこに行っても盛況だった。聴衆の目が真剣だった。昨夏の参院選山本太郎候補(現議員)の演説に集まった聴衆と同じ目だ。山本氏同様、当選するのではないだろうかと思わせるほど迫力があった。

 この熱気が票に結びつかなかったのはマスコミの争点そらしのためだった。テレビニュースはそもそも都知事選挙を大きく取り上げなかった。とりあげても福祉やオリンピックなどを優先した。

 告示前、都庁記者クラブで行われた出馬の記者会見は、その後の展開を予想させた。記者クラブメディアは舛添候補には厳しい質問をしなかったが、細川候補に対しては徹底してネチネチ追及した。

 佐川急便からの借金問題はある程度予想できた。「原発は国政の問題だ。なぜ都知事なのか?」と質問する社があった。いささか驚いた。東京都は原発事故を起こした東電の大株主なのである。

 都知事選で原発問題が争点になるのを嫌がっていることがヒシと伝わってきた。前者の質問も後者も共に原発推進メディアの雄だ。

 テレビ局は人気のない舛添候補の演説会に、聴衆で溢れかえる細川候補の演説会の映像をつないだ

 海外メディアは「原発問題が今回の都知事選のメインイシュー」と報道している。しかし日本のメディアはそうではなかった。筆者はこれを細川氏に質問した。細川氏は「日本のメディアの半分は(原発問題を)伝えなかった」と残念そうに答えた。


 舛添氏の当選確実をNHKが8時ちょうどに速報してからおよそ10分後、宇都宮候補は共同インタビューに臨んだ。宇都宮氏も細川氏同様マスコミを強く批判した。

 「討論会が開かれる機会があったのになかった。精いっぱい政策の宣伝をやったが、メディアを通しての政策討論会が必要だった。NHKでも公開討論会をやるべきだった」。

 「1080万人の都民がいる。メディアはこれからの選挙戦の扱いを考えて欲しい。民主主義の危機を感じる。都民にきちっとした情報を届けるのがメディアの役割だ」。

 宇都宮候補がインタビュアーの質問に鋭く切り返し、マスコミの不作為を非難すると支持者達から割れんばかりの拍手が巻き起こった。


 マスコミがいくら “盛り上がらない都知事選” と書こうと、「左翼でなくても原発は要らないと言っていい」ことに市民は気付いた。脱原発をタブー視する風潮が消えていき、街頭に人が増えていった。細川氏が立候補し、小泉元首相が連日選挙カーに乗った意味は計り知れれないほど大きかった。

 宇都宮、細川両氏の上記のコメントがマスコミに載ることは決してないだろう。

 両氏は今後について次のように語った―

 細川氏「今回立ち上がってくれた人々と脱原発の活動を次の世代に伝えてゆきたい」

 宇都宮氏「選挙が終わったからと言って運動をやめない。つながりを生かして市民運動をやっていく」

 脱原発の火は消えていない。マスコミが妨害しようともそれが確認できただけでも今回の都知事選挙は意義深かった。

http://tanakaryusaku.jp/


天木直人のブログ
今度の東京都知事選の正しい評価  
2014年02月10日
                  
 今度の東京都知事選は安倍自民党政権が猪瀬知事をスキャンダルで辞任に追い込み、自らに都合のいい都知事にすげ替えて東京五輪を思うように運ぼうとしたものだった。

 野党に有力な候補がいない中で、これほど盛り上がらない都知事選挙はなかった。

 そんな中で脱原発を唱える細川・小泉元首相連合が安倍政権に異議を唱える形で登場し、がぜん東京都知事選が面白くなった。

 脱原発小泉劇場が起き、細川知事が誕生すれば、間違いなく国政を揺さぶる政局になる可能性が高まる。

 だからこそ安倍自民党政権はこれ以上ない危機感を抱いた。

 大手メディアと結託した細川・小泉潰しは誰の目にもわかるほど露骨で異例なものだった。

 初めは細川元首相の過去の政治資金疑惑を囃し立て、それが不十分と見れば今度は一転して細川・小泉隠しに走った。

 それでも、小泉元首相の、「3・11によって原発を推進した自分は間違っていた」という素直な反省と明確な脱原発宣言の連呼によって脱原発を願う有権者が動けば、小泉劇場は起きた可能性があった。

 しかし、脱原発派の一本化はかなわず、それどころか最後まで足の引っ張り合いが続いた。

 こうして細川・小泉の反乱は不発に終わったが、しかし私は日本の脱原発に向けた政治的動きはこれからが本格的になると確信している。

 その理由は極めて明白だ。

 脱原発を願う都民の多くは細川・小泉連合を支持した。

 脱原発は、いわゆる左翼が主導する限りは実現は出来ない。

 細川・小泉両元首相のようなかつての権力者の中から、脱原発を進めようとする巨大な権力に対抗する有力者が出てきてはじめて国民的運動に発展するのだ。

 細川・小泉元首相の脱原発の思いは本物である。

 そして脱原発の動きの正しさはこれからますます証明されていく。

 なぜならば放射能汚染水のコントロールが出来ないまま、福島原発事故の諸問題はこれからが深刻になっていくからである。

 そしてそれは安倍自民党政権とその官僚たちでは対応できない。

 それは東京五輪の開催さえも危うくするだろう。

 我が国の原発政策の根本的見直しが避けられなくなるのは時間の問題である。

 その時こそ、細川・小泉元両首相の脱原発を掲げた政治運動は、脱原発新党となって安倍自民党政権に政権交代を迫る一大政局に発展するに違いない。

 今度の東京都知事選の細川・小泉連合の敗北は、日本が脱原発に向かう出発点であるととらえるべきである(了)

http://www.amakiblog.com/archives/2014/02/10/#002863







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