本日の1枚

 The Beach Boys / Smiley Smile (CD)

SMILEY SMILE/WILD HONEY

SMILEY SMILE/WILD HONEY

 ご存知、未完のアルバム。(あ、完成されちゃってますね。)
 つい最近も知り合いの皆さんの方の批判的な意見を目にしましたが、悲しいかな、僕がビーチ・ボーイズで一番好きなアルバムはコレなんです。もちろん『ペット・サウンズ』や『フレンズ』のほうが名盤なのは分かってるんですけど、好きなのはコレ。
 物心ついたころからパンク音楽などメインストリームからズレたを聴いて育ち、音楽的素養の全く無い僕が最初に聴いたビーチ・ボーイズのアルバムがこの「Smiley Smile」なんです。
 
 きっかけは、Psychic TV という英国のノイズ/インダストリアル・バンドによる『Good Vibrations』のカヴァーを聴いたことから。割と原曲に忠実なカヴァーでしたが、その重厚なコーラスが発するポップさ、サイケさ、そして恐ろしさに参りました。原曲を聴いてさらにビックリ。テルミンの音色の効果的な使い方にもうクラクラきましたよ。
 
 ヴァン・ダイク・パークスとの初めての合作『英雄と悪漢』も完成度は高い。グルグルと飛び交っていくカラフルな音の断片と高度なハーモニーにこれまたクラクラきましたよ。
 
 とはいうものの、その2曲以外は正直しょぼいモノばかり。しかしながら、僕はそのしょぼい小品にもまた大いに魅力を感じます。
 例えば、ヘボヘボなギター・ポップとか、tomlabのヘンテコ・エレクトロニカとか、ダニエル・ジョンストンとか、そういう音楽に対する気持ちと同じような愛おしさをおぼえるのです。
 凝っているんだけど、なんかこうロー・ファイな感覚が全体に溢れてるんですねぇ。
 
 野菜をかじる音(ポール・マッカートニーが担当したらしい)などを効果音に使った実験的手法もキュートな『Vegetables』、不気味さのみが際立つインスト『Fall Breaks And Back To Winter』、中途半端なコラージュ作品『She's Goin' Bald』、笑い声コーラスからラリラリに展開していく『Little Pad』、ダウナーな美しさが光るコーラスの『Wind Chimes』、いかれ具合が美しく映像的に流れていく『Wonderful』とか、僅かな煌きが愛おしい作品ばかりじゃないですか!