本日の1枚 青葉市子

 青葉市子 / うたびこ (CD)

うたびこ

うたびこ

 
 穏やかな海に1人取り残される、そんな気分に浸ってしまいました。孤独や諦念と同時に、何か優しいものに包まれるような安心感も覚えます。
 
 青葉市子のサード・アルバムは、やはりクラシック・ギターの弾き語りな1枚。シンプルなその楽曲はどれも、過去の作品よりもさらに研ぎ澄まされた感があります。
 特に、音と音の間で強く印象づけられる無音、その間の取り方があまりに素晴らしく、聴いている自分の耳も研ぎ澄まされてくるように思えます。
 
 とりあえずオープニングの『IMPERIAL SMOKE TOWN』。静寂な音に見え隠れする儚げでキュートな歌声が、ギターのアルペジオとともに力強く解き放たれる。
 心の赴くままにうねる歌声とギターの音色は、その卓越したテクニックとは裏腹に、制御不能なダイナミズムを感じます。その印象は情念的というよりも狂気に近く、聴くほどにゾクゾクとしてしまうのです。
 
 消えゆく薄いメランコリックさがたまらない『かなしいゆめをみたら』、穏やかな優しさの『あなたのかざり』など、どれも震えるような名曲ばかり。トータルで30分ちょっとしかなく、昨今のアルバムではかなり短いほうですが、しかし聴いた後はどーんと重い何かにのしかかられたような気分。たった30分とは思えない重さです。
 
 あと、カヴァーが1曲、大貫妙子の『3びきのくま』。これ結構キュートであります。
 
 
 IMPERIAL SMOKE TOWN