2ペンスの希望

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セルフビルダー

東京都港区三田聖坂。大型マンションに挟まれた12坪の敷地に、地下1階、地上3階、全体で4階層のコンクリートビルが建設中だ。
着工は2005年11月、11年を超えた今も建築作業は続いている。
作っているのは、岡啓輔さん(1965年福岡生)。新聞やテレビにも出てるようで、その道(日本建築界?変人界?大人の部活界?)では知られた方のようだ。DIYでログハウスを作る人はたまに見かけるが、鉄筋コンクリートビルを自分で作る人は初めて知った。一級建築士でもあるご当人は「自力建設」と呼んでいるそうだ。
「「建築という仕事のハードルを低くし、誰もが自分の住居を作る楽しみを手にすることができるという可能性を、身をもって知らしめたいという意志からである。「だれもが芸術家になれるわけじゃないけれど、自分の衣食住の延長線上でその喜びに触れることはできると思うんです」と岡さんは言う。「洋服がないから洋服を作りだす。おなかが空いたからご飯を作る。野菜を育てる。家が壊れたから壁を直してみる。縁側を作ってみる。ちょっと気合が入ってきたら小屋を造ってみる。そんなふうに建築をもっと気楽に楽しめる状況を作りたいんです。コンクリぐらいこうやってこねればイケるぜ、こうやって木を伐ると楽しいぜ、森に行ってみようぜ。そういうことを伝えていくことで建築に興味を持つ人たちが増えてくれば、建築のレベルが上がっていくと思うんですよね」」(引用は、雑誌『熱風』2016年6月号「大工の棟梁中村武司の木造建築造りの仲間たち 8」から。)
岡さんの主張はそれなりに分かる。
ご自身に腕も骨もあることも、「誰もが芸術家になれるわけじゃない」ことに十分自覚的であることも、その上でのもがきもどかしさ身もだえ‥‥についても理解する。
他人事ではない。
かつて映画は専門家だけが作るプロフェッショナルなワークだった。今はセルフビルドが増えている。ただ、出来損ないの半端仕事、半ちく野郎も増えている。映画もどきばかりが目立つ。だいぶ前からだが、拙管理人は、自主映画という言葉の「どこか誇らしげでそれでいて言い訳めいた自己弁護・甘えが滲むニュアンス」が嫌で、「自前映画」とか「自力映画」と称してきた。だから基本 岡さんの意見には賛同だ。
ただ、セルフビルドが映画のレベルを上げているとは到底思えない。
むしろ映画のレベルを下げ、何十年もその道でやってきた人たちを疲弊させ、手抜きに走らせていないかを憂う。 ‥‥この話 少し続けてみたい。