2ペンスの希望

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胚胎‥‥母胎(三代の盃 余話)

先日半年ぶりに京都の旧作VHS専門のレンタル店「ふや町映画タウン」に行ってきた。O店主さんの話では、経営状態 相変わらず墜落寸前の超低空飛行とのことだったが、懲りずにVHSの掘り出し物(未収集もの)を見つけてはせっせと手に入れてるみたい。
1942年大映京都『三代の盃』(原作・脚本:八尋不二 監督:森一生 主演:片岡千恵蔵)の話が面白かった。
「(テープ傷のチェックも兼ねて)何気なく見始めたら、戦中に作られた映画だけれど、まるで60年代東映任侠やくざ映画そっくりだった。山場には、単身殴り込む着流しの主人公、見送るヒロイン、手にする長ドス、降りしきる雨、差し出される番傘、‥後年のやくざ映画のアイコン満載だった。これってまんま東映やくざ映画じゃん。もっとも こっちの方が20年以上も先行、しかも戦中の制作。
森一生監督、気に入った題材だったのか、それとも企画に窮したのか、戦後1962年に勝新主演でリメイクしている、 という話も聞いた。
帰宅後、気になってググってみた。出てきた
大半は、1962年勝新版、1942年千恵蔵版は1,2件しか見当たらない。ただ、この八尋不二の原作「三代の盃」、小國英雄の「男の花道」同様、大衆演劇の人気演目みたい。座長さんそれぞれに脚色・工夫し、膨らませて今も演じ続けられている。
あらゆる「名作」には、胚胎・前史・先駆け・礎石・ルーツ・源流・ふるさと・母胎があり、時代に練られながら熟成・受容されていく
集合的・共同的産物である
ことを再認識した。
面白そう、自分の目で確かめて見ようと思われる方は、ふや町映画タウンに急ぐべし!
何故かって?
1942年千恵蔵版『三代の盃』はDVD化されていない。VHS版しかないので、手っ取り早くは、ふや町に足を運ぶしか手がないからだ。
それにしても、
新聞広告の見出しコピー「ゆるむ心を敵機が狙ふ!」 とは いかにも 時代、
「寛壽郎に天狗映画あるごとく、千恵蔵に任侠映画あり!」 も 懐かしい。