戦場のヴァルキュリア

戦場のヴァルキュリア(通常版) - PS3 戦場のヴァルキュリア PlayStation3 the Best
公式サイト http://valkyria.jp/


セガ製。
サクラ大戦』や『エターナルアルカディア』を作った方々製。らしい。
というわけもあって失礼ながらそれほど期待していなかった、
いやさセガ自体全体まぐれ以外あまり期待できないと思っていますが、
もっともこれセガに限らないかもしれませんが、
期待に反して意外に面白かった。かなり感心。



内容はSRPG風でもある戦争シミュレーションゲーム
銃を構えて戦場を進むキャラクタを後方視点で見るアクションゲーム風。
敵を見つけたら銃撃ちまくるFPSとかTPSとか風ではありますが、SLG
どの兵士でどこを攻めるかが重要な戦場素材のパズルゲーム。
似た画面の『突撃ファミコンウォーズ』よりずっとアクション分はなく
パワードール』とか『アーモダイン』とかああいう系統。
対人対戦に適さない様式の1人専用SLG
どれだけ少ない手数で敵陣落とせるかを競う詰め将棋。


舞台設定は二次大戦中くらいのヨーロッパ風などこか。
義勇軍の主に青年たちが祖国を帝国の侵略から守るため抗戦する。
小隊の隊長となって部下を率い、市街、荒野、城砦などを転戦。
戦場では戦車が戦闘の中心だけれど、航空機は発達が遅れ実用段階でなく、
けれど対戦車砲とか狙撃銃は実戦配備。
現代物戦争SLGのいろいろ簡略化。


細かいところは軍事ごと大好きな方々向けではないつくり。
兵士の被ダメージや残弾数はターン経過で自動回復。
そういうところもあって、お話の展開はどうしても無理がある、というか
現代風戦争ものを全年齢向けゲームにすることに無理がある、というか
ヒロインが敵兵の背後からヘッドショット決めて
にっこり微笑むゲームなのだから仕方がない。
そこで詰まっても仕方がない。


銃弾がんがん撃ち込んでもばらばらになったり赤い飛沫散ったりしないので
安心のCERO B 12歳以上対象。
もっとも主人公達小隊のメンバーは戦陣最中にあっても前向きで
ぐじぐじ嫌に悩まない。
難しい題材ではありますが、変に暗くならない姿勢の雰囲気は良い感じ。
仲間キャラクタたちにはみな良い印象もてる振り分け方は
良いつくりのところです。



この兵器兵種簡略化程度の、ゲームとしてみての効果ですが
特に良いのが戦車の強さ。
行動するのに歩兵の2倍コストが必要なのですが
対戦車ロケット弾と敵戦車一撃の2つを除く攻撃に対して無敵の盾。
戦場に置かれたその図体は歩兵に対して実際大きく
かげに隠れていれば敵は回りこんでこないとこちらの歩兵へ攻撃できない。
例えていうなら将棋盤上で縦横2マスあり
香車か後方からの攻撃以外には無敵、のような存在。
SRPGで言う重装歩兵をさらに硬くかばう範囲を広くしたかわり
使用コストや移動コストが重い、というようなもの。


この、戦車を最強の矛でなく
無敵の盾として戦線を押し上げる、そういう戦い方ができるというのは
これまでのSRPGとかSLGで、私の記憶の中ではですが、未見の面白い要素。
敵ももちろん戦車を持っているので、これをどういなすかの楽しみもある。
敵味方の前に在る硬い壁な戦車強いゲーとして、とても印象的。
剣と魔法の舞台でない意味がしっかりあります。





ここで余談。
3年前のゲームながら、既に続編の『2』『3』がPSPで出ているのですが
今回遊んだのはPS3でのみ出ている『1』。
テレビを持っていない私は知らなかったですがアニメ化もされたらしい。
それでもってなんでまた今更ここへ手を出したかというと、
三国志大戦』に本作のキャラクタが登場しているのであります。
 元キャラクタ http://www.famitsu.com/game/news/1218406_1124.html
 出張先のようす http://yuyu-tei.jp/game_san/carddetail/cardpreview.php?MODE=sell&VER=3.59&CID=10036
同じセガ製ゲームゆえの販促。


この敵帝国軍指揮官セルベリアさん、元ゲームでもそのアニメ化時も
人気あるキャラクタだったようですが
『大戦』の方でもカード市場価格は最上位な人気の一枚。
絵だけでなく強さも印象深く優秀で、使用率も高位維持。
カード表記通り、コーエー『三国無双』でもおなじみ孫尚香「役」ですが
大戦を遊んでいるひとみな「セルベリア」としか呼んでいなかったりする。
デッキ名にも、例えば「神弓セルベリア」などとして常用されています。


『大戦』を遊んでいるひとにはとても知名度高いセルベリアさんなのですが
といってそのうち多くのひとは、元のゲームを遊んでいるわけでもない。
私もその例にもれなかったわけですが、
当たり前のことではあるけれど、そういうところ、
互いに知らないのに良く知っている、そこの齟齬というものも
面白いものであると思う次第。
実際『戦場のヴァルキリア』遊んでみて
なぜ唯一セルベリアさんが販促素材に選ばれたのか、
いろいろ趣き深いものでございます。




もとい、もとのゲーム内容に戻ります。
先の通り、SRPGSLGでありながら
3D銃を撃つアクションゲームのようなみため画面なのですが
これは『ファミコンウォーズ』が、
その発展方向の一様式として『突撃ファミコンウォーズ』になったように
ファイアーエムブレム』に対して
タクティクスオウガ』にWTと高さの表現が差別化の一例としてあるように
大戦略』のような戦争SLGも、表現できることが増えたいま、
戦場の何をどう表現していくか、というとき、当然あり得る様式のひとつ。
 『突撃ファミコンウォーズVS』の例 http://www.nintendo.co.jp/wii/rbwj/index.html
例えば弓と銃の違い。ミサイルと狙撃銃の違い。
片手剣と両手剣の違いがSRPGで重要なように
高さと距離をひとつの尺度において初めて、
銃系統の種類の違いに表現できる面もある。


本作では、細かい仕様説明は省きますが
アクション要素を極力ゼロにして、操作の上手い下手でなく、
どのコマをどの順でどの敵に当てるか、その指す順番が
敷かれた敵陣の配図に対してどれだけ有効かを
崩すに掛かる手数で判定する様式の、戦争仮想ゲーム。
アクションゲームでなくパズルゲーム。


また、キャラクタは多数用意されていて、幕間のお話進行劇もSRPG風ですが
中身はRPG的ではない。
経験値配分は兵種ごと一律。
兵種としてのレベルを経験値割り振って上げると
その兵種の全キャラクタが同じだけ強化される仕組み。
キャラクタに戦場で発揮される個性は個々にいくつか用意されていますが
育成長要素はその個性に記されない。
「遊撃戦」という練習マップで経験値稼ぎはいくらでもできるかわり
ストーリーモードのマップは、一度クリアしたら再挑戦できず
育てたことで強くなったことを感じさせるのでなく
一般にSRPGにおけるRPG部分、兵種レベルや兵器開発は
登場キャラクタたちそれぞれの物語と同じく、お話進行上だけのもの。
なくてもゲーム部分がクリアできなくなるものではない。


そこがSRPG風なSLG、であるところです。
ただ戦争SLGというだけでは商品として弱いという思いもわかる。
キャラクタを載せてこそのものであり物語であり戦争であり
ゲームだけでは携帯に載せるのにも力不足役不足の役者不足。
ファミコンウォーズ』より『ファイアーエムブレム』の方が
商品として上である。
けれどもこのゲームで、意図はともかく結果が添えたかは
いや、好みの問題かもしれません。



戦闘評価、獲得経験値量は、基本的に経過ターン数が短いほど高い、
という評価点のつけかたも
このゲームの性格を表すものと思います。
対人対戦をまったく想定していない仕組の1人用戦争SLG
敵の初期配置には必ず隙があり、最善の行動も取らない。
こちらはその「構え」を、いかに少ない手数、最短の過程で崩せるかを
自身と競う詰め将棋。
そういうのが苦手なひとには、普通のSRPGのように、
戦車を盾にじりじり進んで敵1人をみんなで囲んでぼこるを繰り返す、
という進行で、より安定確実にクリアできるようになっている。


いや、そういうゲームだけれど
最短手数でクリアすることにこだわると個性が出てくる仕組み、
というほうがより正確なのかもしれません。
個人的には『トラキア』のように、戦車で「かつぐ」もできると
なお面白かったかも、とか思うのですが
それができると、対応してマップ構造を変えることが
多くの遊び手にとっては複雑になることであり
いたずらに複雑であることは悪いことであるゲームなのではなかろうか。


詰め将棋なら命中や回避の確率判定はリセット要素にしかならないし
ターンごとどころか一行動ごとにセーブができるのに
初期配置へリセットは敗北時しかできないのは
開発がうかつだからではなく、そういうゲームだからなのに違いない。
マップを切り分けロード時間、一回の遊ぶ時間の短縮を図らなかったのは
つきつめる遊び方が、結局行き詰るところであることの
戒めであったかもしれない。



ボーダーダウン、でなく『ボーダーブレイク』にも採用されていますが
占領した「拠点」から「出撃」できる、
例えば
移動力が低い狙撃兵のような兵種は最初から出撃するのでなく
移動力高い偵察兵が敵陣奥の拠点を奪った時点でそこから出撃することで
多大な戦果を上げることができる、
というような使い方をするこの仕組みも
詰め将棋的には発展的で、
占領が生産となる『大戦略』から『ファミコンウォーズ』系と違った
戦略侵攻上の意味を持たせていて、大変面白素晴らしいけれども
SLGでなくSRPGな部分にとっては不要かもしれない。




もうひとつ、この『戦場のヴァルキリア』で
ゲーム表現としてとても面白いと評価するのが「索敵ライン」。
敵兵を発見すると自動で自軍兵と敵兵の間にラインが引かれます。


似た見た目である『FF12』の「ターゲットライン」は
攻撃か、回復か、敵からの攻撃か、の3種を色分けし
それがどの敵か味方を選択しているか、を示すものでした。
RPGにおいて戦場の様子を表現するみための量が増え
敵味方ごちゃまぜになっている有様を整理するものですが
本作の「索敵ライン」は、それに加え
「敵に発見されているか」「攻撃範囲に入っているか」も
このラインで数値でなく視覚で判る。


こちらが発見した敵に対し、移動中の自兵へ移動に併せて
常にラインは更新されて引かれ、
どのくらい近づくと敵の攻撃範囲かが、昔のマス目でなく、視覚的に判り
また3Dマップなので遮蔽物に隠れてラインが消えることで
狙撃される位置ではなくなったこと、
逆にこちらも武器を構えて探さずとも攻撃可能範囲から敵が外れたことが、
やはり全体マップで敵状態を確認せずとも判るわけです。
また単に、カメラも移動できる戦場において、
方向がはっきり指定されるという効果も高い。


またまた自分が知っている範囲、いや思い出せる範囲でか、で恐縮ですが
この「索敵ライン」という仕組みは、ある種の3Dアクションゲームにおいて
いまや「ターゲットロック」として当たり前である機能の
元祖たる「Z注目」並に
他の作品も取り入れるべき、優れた仕組みと思います。


コブシやカタナで戦う近接戦闘ものであれば
それこそ『FF12』と同じような意味しかないでしょうけれど
銃を用いてある程度敵から離れて複数の敵と戦うゲームでは是非欲しい。
ロボ系などの高速機動が売りの様式では見づらくなるし
『バイオ』みたいな無双系で、敵が多数わらわらなでは意味がないけれど
本作のようにSLG的な対コンピュータでも、
オンラインの対人対戦でも、
遮蔽に隠れながら複数の敵と戦っていく種の銃撃つゲーでは
とても有効な仕組みでないかと思います。




まとめです。
戦争SLGとして戦車の存在感、占領拠点からの出撃、索敵ラインの存在と
詰め将棋的な意味でも3D銃撃ちゲームな点からも見るべき点、
要所に光るものある素晴らしい作品。
けれども、それを全年齢向け現代風戦争物語にしたのは
個人的には残念に思いました。
好みの問題はあるでしょう。
『エンブレム』より『オウガ』の方が好きという意味や
スパーロボットは受け付けないけどパワードールガングリフォンなら可、のような。


この1作目はアニメ化もして、セガとしては独自新規の大成功作品。
けれどアニメをみないゲーマーとしては
戦車を活かした戦争風パズルゲームとして
『ポータル』(http://www.japan.ea.com/portal2/)と並ぶほどに
素晴らしいと思うのに、それを活かせていないのでないかとうらむのです。