ソリティ馬とか

前回は「基本無料」の『艦隊これくしょん』について書きましたが
今回も安価。合計900円なり。



ひとつめ『CookieClicker』。
http://orteil.dashnet.org/cookieclicker/
無料。『艦これ』と同じブラウザゲーム、というよりも
さらにより簡易なもの。ゲームなのかもそもそもあやしい。


画面左側に表示されているクッキー、らしい、を
マウス左クリックとかで押すことにより増やすのが目的。
一回たたくと一個増える。
ポケットを叩くとビスケットがふたつ。
クッキークリッカーはクッキーふたつ。


けれど連打するだけでは面白くもなんともないので
増やしたビスケットを消費し
自動でクッキーをクリックしてくれるアイテムだとか
クッキーを焼いてくれるおばあさんを雇うだとかの選択ができる。
そうすると短時間で効率良く大量のクッキーの数を
言い換えて、数値を増やしていくことができ
ただみている間にも毎秒膨大な数字が生成される。
それを起動し駆動させ、より活性化するよう調整する。


だからなんだ。
なんなんだ何が面白いんだ、というものではあるけれど
いってみれば、RPGと呼ばれる分野におけるマス目を埋める楽しさ、
時間をかけた分が着実な成果として蓄積されていく喜び、
それと同じものが、数字が増えていくだけのことにも、ある。


ただ、これはゲームなのだろうか、とはやはり思うのです。
でもそうすると、ならばゲームとはなんなのか、
RPGならなんのためにゲームをクリアする必要があるのだろう、
マップ踏破やアイテム取得やイベント消化100%と
エンディングをみることの達成感とは
どちらが上なのか、とか思うのです。


時間が経過すると数字が増える。
すこし操作するとさらに効率よく増やしたりできる。
これにお話とかエンディングとか対人対戦とか
操作の上手い下手による有利不利とかを付けたものが
ゲームと呼ばれているものなのか。どれが抜けるとどうか。
あるいはかけた時間、それに接した時間を
数値という比較換算可能な価値に変換できることが
ゲームまたはゲームのようなものの喜びのひとつなのか。




ふたつめ『魔女と勇者』

http://flyhighworks.heteml.jp/games/majyo_to_yuusya3ds/
400円。3DS用ダウンロード専用。
内容は体験版や紹介動画を見れば一目瞭然、
いわゆる「タワーディフェンス」と呼ばれる種類のもの。
画面中央にメデューサの呪いで石化してしまった魔女がいて
敵が四方から魔女を破壊すべく襲ってくる。
魔女が攻撃され壊されてしまわないよう勇者を操作し敵を倒す。


勇者は攻撃ボタンとかでなく、相手に重なると自動で戦うのですが
懐かし『イース』2までにあった「半キャラずらし」のように
敵の後方からぶつかると有利に戦える。
また敵を倒すとお金や経験値や
体力回復アイテムが入った宝箱を落としたりするけれど
宝箱は何度かぶつからないと開かない。ぶつかると大きく弾かれる。


魔女の側で敵が来るのを待っていれば良いのでなく
後方に回り込むため、守る存在から離れて動き回らねばならず
魔女が襲われる際や体力が尽きそうな危機にはすばやく対処するため
歩くより早い宝箱の弾きで移動する、というように
これらの要素がちゃんと、多数の敵を動き回って倒す意義に
成長するためのアイテムを拾うためだけにでなく、結びついている。


そういうように工夫があり
何よりヒロインの魔女を守るという設定動機付けが簡潔良く出来ていて
感心するところもある作品ではあるのですが
しょせんタワーディフェンス。単調である。
敵は勇者に目もくれず、魔女すなわち画面中央に向かって一直線。
レベルが上がって攻撃防御移動速度や魔女の防衛攻撃が強くなっても
すること同じ。敵の出現数も順序も同じ。
操作の上手さでなく、かけた時間で解けるかどうか決まるのも
この種の様式にあっては正義かもしれないが
ゲームとしては減点。


ひとつめの『CookieClicker』と比べれば
よりゲームらしいゲームです。
まだ少しだけ長いこと、新しい要素が展開していく過程を楽しめる。
かけた時間だけ着実に強くなり、
操作の工夫で効率の改善を図れるところは共通しているし
ヒロイン魔女を助けて敵を倒すというお話があるのもましと言える。


一般ふつうの、何千円かで売っているゲームと比べて
この『魔女と勇者』はどうだろう。
何が欠けていて何が足りないだろうか。
きれいなみため。飽きるまでの時間。感動のお話。
400円だったら妥当相応なのだろうか。




みっつめ『ソリティ馬http://www.gamefreak.co.jp/solitiba/
500円。同じく3DSダウンロード専用。
競走馬育成SLGではなく
ファミリージョッキー』のように騎手となってレースをするもの。
道中の位置取りと最後の直線で鞭を入れる、のではなく
レース中にソリティアをする。
その得点が高いほど馬がより良く走ってくれるゲーム。
どうしてそうなったという驚きの発想。
わけがわからないがとにかくそうなのだ。


ソリティアというのは「solitaire」と書いて
辞書の意味は「ひとりで遊ぶこと」。
超人ロック』にそういう話がありました。
もとい、つまりWindowsについているカードゲームの名前でなく
1人用ゲームはみなソリティアなのである。
より細かいことをいうと
Windowsで遊べるのは「クロンダイク」と言い
この『ソリティ馬』で使用するのは
よりその簡易なルールといえる「ゴルフ」と呼ばれているらしいもの。
らしい。


レースが始まると、ソリティアが始まってカードが配られる。
ソリティアで高得点を出すとポイントが多く得られ
そのポイントを使って脚質やレース展開に応じ位置取りを変えたり
競馬用語で言えば「足をため」たりする。
距離に応じて何度かソリティアをし
迎えた最後の直線では、「足をためた」分だけ馬が実力を発揮、
充分に道中ポイントをためていれば
能力が他馬に劣っていても勝ち負けになる。つまり勝てたりする。


ゲームフリークの作品に相応しく
みためや登場人物のキャラクタもよく出来ていて
「あざーす」「さーせん」などの主人公口調も秀逸。
引退した馬は牧場で繁殖にまわし、その子達に乗ることもできて
ソリティアをするだけではありながら、それなりに長く楽しめる。
『魔女と勇者』より100円しか違わないのがおかしく思えるほど
遊び応えに大差がある。


もっとも500円という規模の限界はあります。
騎手を操作するという立場の難しさはあるとはいえ
他の競馬を題材にした作品に比べれば、深く広く長く遊ぶのは難しい。
関わった競走馬たちへの思い入れも込めがたいし
レースプログラムにも不満は多い。


500円だから仕方ないと言うべきか。
では、このゲームが5000円で普通のゲームのように
多彩の調子であったらどうなのだろうか。




かのように、総計900円で3種類のゲームや
ゲームらしきものを遊んでみたわけですが
前回の『艦これ』も含めて
現在の最新ゲームとの対比が面白いところです。
払ったお金にふさわしいだけのみため。遊べる時間。楽しさの総量。
それぞれ作品が持つ面白さの違い。


既存の普通の作品、これら無料や低価格のものをあわせ
値段がすべて同じだったらどれが売れるだろう。
全て無料で、何時間か遊ぶごと、レベルが一定に達するごとに
お金を払う形式だったらどうだろうか。
みためが同じ程度でお話の分量や要素の種類が同じだったらどうか。
逆に『魔女と勇者』が絢爛豪華なみためと中身容量で
GTA』や『FF』シリーズが
『魔女と勇者』のようなみためであるならば。


そのゲームに即した相応の規模だとか形式だとかは当然ある。
画面がスクロールして歩いていける範囲と広がっていく世界、
登場人物とレースの種類と実在競走馬の名前。
写真と見分け付かないみためと、跳ね返り計算できる宝箱の大きさ。
クッキーが生産した数に忠実な写真のようなみためで
表現されることは重要ではないが
RPGではときにいまだにこの期に及んでも
見せ場で原画相応の一枚絵と声優の演技が求められたりする。


重厚長大に対する軽薄短小という様相の違いだけでなく
遊ばれかたも大きく違う。
テレビの前に腰を据え舞台世界に没入してじっくり遊ぶものと、
携帯機で空いた時間の隙間を埋めるようにして遊ぶもの。
ひとくぎりが短くても楽しめるものと
ある程度の単位で大きな起伏を味わえる壮大さに価値あるもの。


ソリティ馬』は、数分で1レース決着がつく。
それはさらに短いトランプカードを揃えるゲームと
競走馬を操作する部分で構成されている。
何十人もがひとつの舞台で数時間かけて作り上げる戦いの物語も
数分のソリティア
いずれも同じくゲームであるが異なって見える形式で作られている。
けれど一定のルール下で勝敗を争う競技であり
工夫が勝利を呼び運が波乱を招く。


一方で同じひとりで遊ぶゲームでも
争うことなく競うのでなく
かけた時間が評価されることの心地良いだけのものも
またゲームと呼ばれる形式の娯楽が生み出すものでもある。


そのどちらもが混然一体ゲームを形成している。
ごく小規模低価格の分野にもそれはあり
質とか好みとかでなく違いが存在して
ゲームの多様性、今までにない新しさが
まだいくらもあることを証明して
楽しませてくれるわけであるわけであります。