年内めどに自民党改憲原案 推進本部、幹部会で一致 - 朝日新聞(2017年6月6日)

http://www.asahi.com/articles/ASK66339NK66UTFK001.html
http://archive.is/2017.06.06-074620/http://www.asahi.com/articles/ASK66339NK66UTFK001.html

自民党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)は6日午前、党本部で体制拡充後初めてとなる幹部会を開き、年内をめどに党改憲原案をまとめることで一致した。保岡氏は、安倍晋三首相が提案している9条への自衛隊明記や教育無償化など4項目を中心に議論する方針を示した。
首相の改憲提案を受け、推進本部は議論を加速化させるため、幹部会メンバーを9人から21人に拡充。首相に近い下村博文幹事長代行のほか、首相官邸公明党との調整役にと期待する高村正彦副総裁も加わった。一方、首相の提案に批判的な石破茂・前地方創生相も入った。
保岡氏はあいさつで、「遅くとも年内をめどに(衆参の)憲法審査会に提案できる具体的な党の案をまとめたい」と明言。首相は先月21日のラジオ番組の収録で「年内」との目標を示しており、首相の意向に沿った形だ。推進本部は今後、9条への自衛隊明記▽教育無償化▽緊急事態条項▽参院選の「合区」解消を含めた選挙制度――の4項目について、どう原案をまとめていくか議論を進めていく見通しだ。
検討対象となる改憲項目については、首相が5月3日のビデオメッセージで提案した9条への自衛隊明記や高等教育を含む教育無償化を挙げた。国会の憲法審査会でも議論されている大規模災害などに対応する緊急事態条項や、県境をまたいで選挙区を合併する「合区」解消を含めた選挙制度の問題を、改憲項目として列挙した。
幹部会では石破氏が、「仮に9条を議論するなら、あくまでベースは(2012年の改憲)草案でなければならない」と指摘。安倍首相は9条1項、2項を残すと提案しており、いずれも変更する草案との整合性を問うた形だ。

自民改憲案「遅くとも年内」 9条など4項目議論へ - 東京新聞(2017年6月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017060602000265.html
https://megalodon.jp/2017-0606-1641-44/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201706/CK2017060602000265.html

自民党憲法改正推進本部は六日午前、中核メンバーによる新たな幹部会の初会合を開いた。保岡興治本部長は「遅くとも年内をめどに国会の憲法審査会に提案できる党の改憲案をまとめたい」と述べ、幹部会で素案をまとめる考えを表明した。自衛隊を明記する九条改憲、高等教育を含む教育無償化など四点を中心に議論を進める方針を示し、了承された。
新たな幹部会は、安倍晋三首相(党総裁)が九条改憲や教育無償化を提案したことを受け、党内議論を加速させるために役員体制を拡充し、設置した。これまでの役員会に十二人を加え、二十一人の「執行役員会(仮称)」とした。
高村正彦副総裁、下村博文幹事長代行、古屋圭司選対委員長ら首相に近い立場の議員が新たに名を連ねた。
首相提案に批判的な石破茂元幹事長も入ったが、基本的に首相の意向に沿って議論が進む見通しだ。
保岡氏は会合で、九条改憲、教育無償化のほかに、緊急事態条項の新設、一票の格差解消と参院の合区解消のため選挙制度改革を論議の対象に挙げた。
石破氏は、憲法全体を見直すとした二〇一二年の党改憲草案と新たにまとめる改憲案の整合性について問題を提起。議論の結果、推進本部の総会や総務会を経て新たに党議決定した場合は改憲草案が上書きされる、との考えが示された。
保岡氏は首相提案について「国会の各院で三分の二以上の賛成を得て、国民投票過半数の承認を得るための現実的な案をつくりたいとの決意を示すものだ」と評価。「具体的な案を出すことで理解が深まり、正しい判断を求めることができる」と強調した。

自民党 改憲案、4項目検討…保岡氏、年内取りまとめ表明 - 毎日新聞(2017年6月6日)


https://mainichi.jp/articles/20170606/k00/00e/010/225000c
http://archive.is/2017.06.06-074004/https://mainichi.jp/articles/20170606/k00/00e/010/225000c

自民党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)は6日午前、体制を拡充して初めての役員会を党本部で開いた。保岡氏は「遅くとも年内をメドに具体的な党の提案をまとめたい」と述べ、党の改憲案の年内取りまとめを正式に表明。自衛隊明記など4項目を検討する考えを示した。
保岡氏は「抽象的に議論しても国民の理解は進まない。具体的な案を出すことにより国民の理解は深まり、正しい判断を求めることができる」と強調。
そのうえで、憲法9条への自衛隊明記▽高等教育を含む教育無償化▽大災害時などに国会議員任期を延長する緊急事態条項▽参院の「合区」解消を含めた選挙制度−−の四つを改憲項目の候補として挙げた。
旧推進本部の幹部会は保岡氏ら9人だったが、新体制の役員会は、高村正彦副総裁、下村博文幹事長代行ら党執行部が入り21人体制に拡充。安倍晋三首相が9条の1項、2項を維持したうえで自衛隊を明記するよう提案したことに批判的な姿勢を示している石破茂元幹事長も役員会入りした。党内の議論を進めながら、公明党との調整も図っていく。【小田中大】

改憲、9条・教育無償化など4項目 自民方針 - 日本経済新聞(2017年6月6日)


http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS06H19_W7A600C1EAF000/
http://archive.is/2017.06.06-074146/http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS06H19_W7A600C1EAF000/

自民党憲法改正推進本部は6日午前、党本部で幹部会合を開き、改憲項目として9条への自衛隊の明記や高等教育を含む教育無償化など4項目を中心に議論する方針を決めた。衆参両院の憲法審査会に提案する党の憲法改正原案を年内をメドに取りまとめる方針も確認した。安倍晋三首相が意欲を示す2020年の改憲に向けて、議論を加速する考えを示した。
改憲4項目は保岡興治本部長が提起した。9条や教育無償化のほか、大規模災害などの際に国会議員の任期を延長する緊急事態条項、参院選の「合区」解消を挙げた。
保岡氏は「遅くとも年内をメドに衆参両院の憲法審査会に提案できる党の具体案をつくる」と表明。「幹部会は党の提案のもとになる案を作成することが役割だ。具体的な案を出すことで国民の理解が深まり、正しい判断を求めることができる」と強調した。
6日の幹部会合は、憲法改正を進めるために体制を拡充してから初めての会合。保岡氏や高村正彦副総裁、下村博文幹事長代行、石破茂前地方創生相らが出席した。
石破氏は「12年の党憲法改正草案をどう取り扱うかが重要だ」と述べた。改憲草案では9条を改正して「国防軍」創設を明記するとしており、整合性をただした。
首相は自民党改憲案を年内にまとめ、20年の新憲法施行を目指す方針を示している。今後は党内論議と並行して公明党日本維新の会との調整も進めたい考えだ。自民党内では「来年の通常国会に改正案を提出したい」(党幹部)との声があがっている。

自民、保岡興治本部長「遅くとも年内に党の案をまとめたい」 憲法改正推進本部初の幹部会で方針 - 産経新聞(2017年6月6日)


http://www.sankei.com/politics/news/170606/plt1706060011-n1.html
http://archive.is/2017.06.06-073814/http://www.sankei.com/politics/news/170606/plt1706060011-n1.html

自民党保岡興治憲法改正推進本部長は6日午前、党本部で開いた同推進本部の幹部会合で、「改憲論議をより具体的にスピード感を持って推進し、遅くとも年内をめどに(国会の)憲法審査会に提案する具体的な党の提案をまとめたい」と述べた。
この日の幹部会合は、5月3日の安倍晋三首相(党総裁)の改憲発言を受け、推進本部の役員を増やし態勢を強化した後、初めて開かれた。幹部会合の出席者は従来の9人に、首相発言に反発している石破茂前地方創生担当相らを加え21人に増員された。
改憲項目について保岡氏は、9条1、2項を維持して自衛隊を明記、教育無償化、大災害時を念頭に衆院議員の任期を延長する緊急事態条項の創設、選挙制度における参院の「合区」解消という4つを例示した。今後は幹部会合で改憲案の原案を作り、党内議論と各党との調整を並行して行う方針だ。
会合では石破氏が、9条に「国防軍を保持」と明記した平成24年の党憲法改正草案との違いをもとに「総裁が発言したらそれで決まるのか」などと異論を述べたが、出席者からは「草案を参考にして議論すればいい」などの意見が相次ぎ、支持は広がらなかった。

<加計学園>幕引き急ぐ与党 国会延長を望まず - 毎日新聞(2017年6月5日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170605-00000110-mai-pol
http://archive.is/2017.06.06-012451/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170605-00000110-mai-pol

学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設問題を巡り、政府・与党が幕引きを急いでいる。野党の追及の場となる国会を予定通りに閉じることを最優先させ、会期延長は回避する方針だ。問題が予想以上に長引き、政権に深刻なダメージを与えることになりかねないとの危機感も高まっている。
「会期延長せずにいきたい」。首相官邸内からはこうした本音が急速に漏れ始めている。
政権が苦境に立たされるのは「官邸の最高レベル」の圧力があったとされる文書の存在をあいまいにし、文部科学省前川喜平事務次官の証人喚問にも応じない強気の姿勢が、ここにきて裏目に出ているためだ。
問題の広がりを懸念し、調査や証人喚問などを一切拒否する戦術を取ったが、文科省内で情報が共有されたとされる電子メールなど、新たな文書が次々と明るみに出た。自民党下村博文幹事長代行は5日の記者会見で「私的メールまで全部調査するということはする必要はない。判断は適切だ」と火消しを図ったが、早期閉会以外の幕引きは難しくなりつつある。
会期通りに閉会することを前提に、残る焦点は「共謀罪」の成立要件を改めて「テロ等準備罪」を創設する組織犯罪処罰法改正案と、性犯罪を厳罰化する刑法改正案に絞られてきている。
与党は「共謀罪」法案については13日に参院法務委員会で可決、14日に参院本会議で成立。刑法改正案については15日の法務委で可決、16日に成立させる日程を想定している。
だが「共謀罪」法案の成立阻止を図る野党は5日、参院法務委の秋野公造委員長(公明党)が6日の審議を職権で決めたことに反発。秋野氏の解任決議案提出の検討を始めた。加計問題でも民進党野田佳彦幹事長は記者会見で「予算委の集中審議などもっと究明するための機会をつくっていかなければいけない」と強調。徹底抗戦の構えをみせており、与党の想定通りに進むかは不透明だ。
一方、刑法改正案は野党も賛成している。世論の関心も強い。会期末の混乱で今国会成立が見送られた場合、野党側にも「野党のせいで成立しなかったと批判される」と懸念する声がある。
与党としては、刑法改正案を「人質」に野党側をけん制しつつ、「共謀罪」法案の成立を最優先したい考えだ。【田中裕之、樋口淳也】

日本獣医師会顧問が証言!「加計学園には、『天の声』が降ってきた」 - 現代ビジネス(2017年6月6日)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51892

「ここ最近、学校の幹部は連日、会議でこもりっきりです。『これは予想できなかった。ヤバいぞ』『政府内で揉めても、我々は動きようがない』『うちも森友みたいになるのか』と頭を抱えています」

こう明かすのは、加計学園本部に勤める職員だ。理事長の加計孝太郎氏は、学校に姿を見せなくなっているという。

「酒豪の理事長は酒が入ると、安倍総理のことを『安倍ちゃん』『晋ちゃん』と呼ぶんです。『晋ちゃんなら大丈夫じゃ』とかね。それをモノマネしてウケを取る同僚がいたんですが、今はとてもそんな冗談は言えません」

安倍総理と加計氏の親密さは、学園内でも周知の事実なのだ。

さて、件の文科省の内部文書に実名で登場している人物に話を聞いた。日本獣医師会顧問で、元自民党衆院議員の北村直人氏だ。文書には〈(昨年)10月19日付、北村直人元議員(石破元大臣同期)→専門教育課〇〇(担当者名)〉とある。北村元議員が、本誌の取材にこう答えた。

「書かれている内容は、私が専門教育課課長らに話した通りでほぼ間違いない。文書は本物です。

今治市が繰り返し特区申請を出していた'15年当時、国家戦略特区担当大臣は石破(茂・前地方創生相)氏でしたが、彼は『(特区認定のための)条件に照らすと、新設はちょっと認められないな』と言っていたし、私も『これでは天の声でも降って来ない限り、無理だろう』と考えていました。

それが昨年、担当大臣が安倍総理に近い山本幸三氏に替わった途端に、加計学園だけに獣医学部新設が認められる流れができた。安倍総理の強い影響力が働いているとしか考えられません」(北村氏)

すでに「状況証拠」は充分すぎるほど揃っている。安倍総理はこれでも逃げられると思っているのか。

事実解明進まぬ「加計」問題 首相の答弁姿勢を疑う - 毎日新聞(2017年6月6日)

https://mainichi.jp/articles/20170606/ddm/005/070/139000c
http://archive.is/2017.06.06-001232/https://mainichi.jp/articles/20170606/ddm/005/070/139000c

通常国会の会期末が今月18日に迫っても、学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題の解明が全く進まない。政府・与党は時間切れを狙っているのではないか。
きのう安倍晋三首相の出席する衆院決算行政監視委員会参院決算委員会で野党が追及したが、首相は事実解明に消極的な答弁に終始した。
この問題の焦点は、学園の理事長が首相の友人だということが行政判断に影響したかどうかだ。文部科学省内で作成されたとみられる文書には「総理のご意向」などと記されているが、政府は「確認できない」として再調査を拒み続けている。
文科省前川喜平事務次官は文書について、同省の担当課から示された「本物」と証言し、首相補佐官から直接、調整をせかされていたことも明かした。「官邸の最高レベルが言っている」との文書を添付したメールが省内で共有されていたことも新たに指摘されている。
それでも政府は動こうとしない。
そもそも文科省内に文書が存在したからといって、それが首相の関与を示すわけではない。調整を進めるために内閣府などの官僚が勝手に首相の名を使った可能性もある。
首相は「私の意向は入りようがない」と答弁した。そうであれば、文書の存在を確認し、官僚機構のゆがみの有無を点検すべきではないか。
首相が関与すること自体がただちに不適切とも言えない。国家戦略特区制度はもともと首相主導で進めることを前提としているからだ。
だが、首相は「問題の本質は岩盤規制にどう穴をあけるかだ」と主張するばかりで、質問されたことに直接答えず、議論をすり替える。野党が反発すれば「ヤジで答弁できない」と言って、はぐらかす。その答弁姿勢には疑問を持たざるを得ない。
前川前次官は文科省を「ヘビににらまれたカエル」に例え、首相官邸の指示で文書の存在を否定している可能性も指摘した。国会では、省内のメールに記載された人名を民進党議員が読み上げると、文科省局長が「同姓同名の職員は実際にいる」と苦しい答弁をして失笑を買った。
与党が前川前次官の証人喚問を拒否し続けているのも解せない。このままでは国会の役割を果たしたとは到底、言えないだろう。

首相らの答弁 不信が募るばかりだ - 朝日新聞(2017年6月6日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12973900.html?iref=comtop_shasetsu_01
https://megalodon.jp/2017-0606-0912-18/www.asahi.com/articles/DA3S12973900.html?iref=comtop_shasetsu_01

驚き、あきれ、不信がいっそう募る。きのうの国会で、安倍首相の友人が理事長を務める加計(かけ)学園に関する首相らの答弁を聞いた率直な感想だ。
獣医学部新設に関し、文部科学省内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」などと言われたと記録された文書について、政府は「存在を確認できない」で押し通してきた。同省の前川喜平・前事務次官が本物だと証言しているのに、だ。
きのうの国会では民進党議員が、この文書が添付されたとみられるメールの写しに記載があった文科省職員10人の名前を読み上げ、文書の内容が省内で共有されていたのではないか、とただした。
文科省幹部は「いま名前を挙げていただいた人と同姓同名の職員は実際にいる」と認めた。
民進党議員が文書の再調査を求めたのは当然だろう。だが松野文科相は「出どころ、入手経緯が明らかにされていない場合は、その存否や内容の確認の調査は行わない」などと拒んだ。
信じられない。この論法が通用するなら、あらゆる内部告発が「出どころ、入手経緯が不明だ」として、あったことがなかったことにされかねない。
国民の知る権利への重大な背信行為でもある。
政権に有利であれ、不利であれ、文書やメールの存在を示す一定の根拠があれば、まずは事実を調べる。それが責任ある行政のとるべき対応ではないか。
再調査もせず、なかったことにして葬ろうとする姿勢をみていると、政府が事実として発表することは信じられるのかという疑問さえ浮かぶ。
首相は国会で「問題の本質は岩盤規制にどのような穴を開けていくかだ」と述べた。だが問われているのは、そこに中立性や公平性、透明性が担保されていたのかどうか、いわば「穴の開け方」なのだ。
首相がかつて学園の監事を務めるなど理事長との親密な関係に加え、妻昭恵さんも含む家族ぐるみの付き合いだ。首相側近の萩生田光一内閣官房副長官も一時、学園から月10万円の報酬を受け、今も名誉客員教授だ。きのうの審議では、首相夫妻のミャンマー訪問に理事長が同行したことも明らかになった。
政権と加計学園のこんな関係が、国家戦略特区の決定過程をゆがめなかったかが問われるのは当たり前だ。「印象操作だ」という首相の批判は通らない。
国会が閉会すれば、いずれ忘れられる。首相らがそう考えて幕引きを急いでいるとしたら、国民も甘く見られたものだ。

(書評)暗い時代の人々 森まゆみ 著 - 東京新聞(2017年6月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017060402000180.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0909-12/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2017060402000180.html

◆声を上げる生き方に倣う
[評者]栗原康=アナキズム研究家
昔、あき地がたくさんあった。なんにも使われていないその土地を、子どもたちが遊び場に変える。整備された公園よりも、石ころやビンが転がっているあき地のほうがいい。エロ本をもちこんではしゃいだり、家を抜けだして花火をする。子どもたちの自由奔放さが全開になる。それがあき地だ。
本書で、著者が伝えたいのもそういうことだ。バブルのころ、やれビルを建てろ、再開発だとあおって、地価をあげてボロもうけ。それであき地がなくなって、やがてバブルもはじけて、使わない土地が増えたとおもったら、こんどはオリンピックだ。国民一丸となって、街をきれいに、おしゃれにしよう。地価をあげろ、文化的な街づくり。芸術家や建築家、研究者が動員される。その分、街をきたなくすると見られがちなホームレスや喫煙者、ゴロツキは排除されるが、しかたないの一言でおしきられる。みんなのために、仕事のために、空気をよめよ、非国民と。そうしてなんにもいえなくなる。
本書は、そんな暗い時代に少しでも光をみいだそうと、一九三〇年代、四〇年代の人びとをとりあげる。権力批判をすれば、食いぶちをうしなう、そんな時代。さらには投獄、虐殺、暗殺だ。しかしそれでも戦争協力をせず、軍部ふざけんなとか、天皇制はいらないとか声をあげたひとはいた。斎藤隆夫山川菊栄、山本宣治、竹久夢二、九津見房子、斎藤雷太郎、立野正一、古在由重、西村伊作。それこそ政治家から社会主義者、教員、画家、建築家、俳優まで、ど根性で抵抗だ。
先人たちの声がきこえてくる。戦争動員を拒否しよう。再開発はもうたくさんだ。使わなくなった土地は放っておけばいいのである。大人たちが子どもにかえっていく。暮らせる、遊べる、生きられる。精神のあき地をとりもどせ。あたり前のことをちゃんといおう。戦争はいやだ、排除もいやだ。わがまま上等。くたばれ、オリンピック。ちょっといまから仕事やめてくる。
亜紀書房・1836円)
<もり・まゆみ> 1954年生まれ。作家。著書『昭和文芸史』『千駄木漱石』など。

◆もう1冊 
ハンナ・アレント著『暗い時代の人々』(阿部齊訳、ちくま学芸文庫)。ブレヒトなど、全体主義の時代に抵抗して生きた思想家列伝。

暗い時代の人々

暗い時代の人々

暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫)

暗い時代の人々 (ちくま学芸文庫)

世界の作家も「共謀罪」NO 国際ペン「表現の自由侵害」 - 東京新聞(2017年6月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060602000132.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0909-38/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060602000132.html

共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案について、世界約2万6000人の作家らでつくる「国際ペン(PEN)」は5日、メキシコ出身の作家・ジャーナリストのジェニファー・クレメント会長名で、「日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」との反対声明を発表した。PENが日本の問題で反対声明を出すのは、2013年の特定秘密保護法案以来で戦後2例目。
声明は「日本政府の意図を厳しい目で注視している。基本的な自由を深く侵害することとなる立法に反対するよう、国会に対し強く求める」としている。
この日、東京都内で会見して声明を公表した日本ペンクラブ浅田次郎会長は「心強く思うが、恥ずかしいとも思う。この法律はどう考えても必要とは思えない。日本の歴史の退行だ」と力を込めた。
PENは1921年、第1次世界大戦の惨禍を繰り返さないよう、文学を通じた相互理解、表現の自由などを掲げ、英ロンドンで設立された。現在は100以上の国・地域
に149のセンターがある。
クレメント会長は初の女性会長で2015年選出。メキシコペン会長として記者の殺害や失踪に焦点を当てたほか、メキシコにおける少女誘拐を題材にした小説が評価された。歴代会長には「SFの父」と呼ばれるウェルズらがいる。

取手中3自殺 中学は「重大事態」と報告 市教委「該当せず」と議決 - 東京新聞(2017年6月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060602000120.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0915-26/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060602000120.html

二〇一五年十一月に「いじめられたくない」と日記に書き残して茨城県取手市立中学三年の中島菜保子(なおこ)さん=当時(15)=が自殺した問題で、学校がいじめ防止対策推進法が規定する「重大事態」として報告したにもかかわらず、市教委が重大事態に該当しないと議決していたことが五日、分かった。市教委が市議会議員全員協議会で明らかにした。
市教委によると、学校は一六年三月四日付で「重大事態発生報告書」を市教委に提出。いじめの有無や自殺との関連は判断できないとしたが、遺族から「いじめによって自殺した」と申し出があったことから、重大事態として報告した。
一方、市教委は同月十六日の臨時会で、生徒への聞き取りからいじめが確認できないとして、「重大事態」に該当しないと議決した。
同法の規定では、いじめの事実が確認できなくても、いじめにより心身に大きな被害が生じた可能性があれば重大事態と認定できる。矢作(やはぎ)進教育長は協議会で「自死につながるいじめかどうかで判断してしまった」と謝罪した。市教委は五月三十日、議決を撤回している。
菜保子さんの母淳子さん(47)は「このような学校の報告があるとは知らなかった。市教委は何の権限があって『該当しない』と判断できたのか」と憤った。

東京集中の是正 大学の規制は筋違いだ - 東京新聞(2017年6月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017060602000140.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0910-18/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017060602000140.html

東京一極集中を和らげるために、政府は大学定員を抑える方針を打ち出した。地方の疲弊の責任を、東京の大学に転嫁するのは筋違いだ。若者の学ぶ機会の制約につながりかねず、見直したい。
政府のまち・ひと・しごと創生本部は、社会政策としての大学改革の方向性をまとめた。東京二十三区では大学の定員増を原則認めず、学部・学科の新設は定員の枠内に収めるよう求めている。
政府は閣議決定する骨太の方針に盛り込む。東京への若者の集中を抑え、定員割れの目立つ地方大学の活性化、ひいては地方創生につなげるという。
全国知事会の要望に沿ったものだが、均衡の取れた国土づくりに失敗したツケを都心の大学に回す格好ではないか。効果が出なければ、規制の対象地域を広げるのではないかとの疑念も抱かせる。
学問の自由、教育を受ける権利を損ねる危うさもはらみ、きわめて短絡的な政策にみえる。
大学の立地や規模への安易な介入は、少子化で激しい競争にさらされている経営を圧迫しかねない。社会の需要動向をにらんでの教育研究環境の刷新を妨げるおそれも否めないだろう。
大学など進学先を出たら高校所在の地元に残りたいかどうかを、リクルート進学総研が昨年春の高校卒業生に尋ねている。結果、四割は「残りたい」と答え、「離れたい」は二割にとどまった。
しかも、エリア別でも「残りたい」が「離れたい」を上回った。
着目したいのは、四人に一人が「どちらでも良い」と答えている点だ。地方に魅力的な雇用機会が見当たらなければ、東京をはじめ大都市志向へと転じるだろう。
どこの大学で学ぶかよりも、卒業後の活躍の舞台がどこにあるか。それが最大の問題といえる。
後押ししたい政策はある。例えば、東京の大学が地方にサテライトキャンパスを展開したり、地方の大学とのいわば相互遊学の仕組みを導入したりすることだ。視野や人脈が広がれば、進路の選択肢も充実するだろう。
とはいえ、やはり経済界の意識を地方に向けさせる刺激策が重要だ。
とりわけ大企業の本社機能の移転に加え、地方採用枠や地域限定正社員枠の拡充を促したい。政府は思い切った優遇税制措置を検討するべきではないか。
なにより地元の産学官を束ねる首長の指導力こそが問われている。若者の就学の流れをせき止めるような発想は建設的ではない。

天安門事件 逆風にもあきらめるな - 東京新聞(2017年6月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017060602000139.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0910-55/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017060602000139.html

民主化運動が武力弾圧された天安門事件から二十八年となったが、中国では社会の統制が強まるばかりだ。記憶の風化だけではなく、民主を求める若者の熱気が失われつつあるのが気がかりだ。
香港のビクトリア公園では今年も天安門事件の起こった六月四日に合わせ、民主派が追悼集会を開いた。だが、参加者は約十一万人と三年連続で減少した。
この公園は香港民主にとって記念碑といえる場所である。二〇〇三年に香港政府が反乱や扇動を禁じる国家安全条例案を公表したが、五十万人もの市民が抗議デモで反発し、条例案を葬り去った。
習近平政権の強権的な統治があらわになるに従い、民主化運動の拠点であった香港でも政治改革を求める若者たちの運動が下火になっていることが懸念される。
中国高官は五月末の香港基本法二十周年シンポジウムで「高度な自治の名の下に中央権力に対抗することは許さない」と、香港人による民主を強くけん制した。
香港は近年、政治的に萎縮している。若者の間でも「共産党独裁に終止符を」との声がある一方、「香港人は中国民主化に責任はない」との冷めた意見もあり、民主派内での意識の分断も深刻だ。
中国政府は事件について「一九八〇年代末の政治風波に関しすでに結論を出している」と、繰り返した。過ちに正面から向き合わず、事件の記憶を薄れさせようとする無責任な姿勢に映る。
それどころか、今月初めには事実上の検閲を合法化する「ネット安全法」を施行した。VPN(仮想私設網)の規制強化や携帯電話利用の実名制導入など、民主的な政治を支える言論の自由を踏みにじる動きばかりが目立つ。
北京中心部では四日、当局の要請を受けた市民ボランティアが数十メートル置きに立ち並んだ。市民による監視の目が、事件の再評価を求めようとする子や孫ら若者に向けられる異常な事態といえよう。
胡錦濤政権時代には政権中枢にもまだ存在していた、政治改革を求める動きは全く失われたと批判されても仕方がない。
天安門事件で若者は腐敗撲滅を掲げて立ち上がった。習政権も反腐敗を訴える。だが、若者が求めたものは反腐敗を旗印にした政敵粛清ではなく、共産党独裁による弊害の除去であった。
事件を封印しようとする逆風は強いが、民主化を求める若者たちにはあきらめてほしくない。

(私説・論説室から)思いやりより人権意識を - 東京新聞(2017年6月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017060502000137.html
https://megalodon.jp/2017-0606-0911-25/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017060502000137.html

障害者差別解消法の施行から一年余り。障害者が暮らしやすい社会に近づいたか。
この春、東京に住んでいるか活動している障害者約百二十人に東京新聞が尋ねたら、社会は良くなったと答えた人は22%にとどまり、70%は変わらないと答えた。大方の人は相変わらず生きづらいと感じているらしい。
ナマケモノ」呼ばわりされた知的障害者、飲食店に入れなかった盲導犬使用者、電車に乗るのに長時間待たされた車いす利用者。差別的扱いをされた人は35%に上った。
障害者の生活を妨げるバリアーをできる限り取り除くよう健常者に求めた法律だが、なかなか効果が表れないのはなぜか。
実はちまたで多用される「心のバリアフリー」というスローガンが、かねて気にかかっている。差別の解消には施設や設備のバリアーだけではなく、障害者と向き合う健常者の心のバリアーの除去が肝心といった意味だ。
では、バリアフリーの心とは。もしかすると障害者への思いやりや優しさ、いたわりの気持ちと誤解されてはいないか。現にそういう論調で報じるメディアも目につく。
もちろん、他者を思いやる心情はとても大切だ。でも、むしろ善意や厚意に頼らないと暮らせない社会は不平等だと、障害者は訴えているのだ。弱者の立場を強いる社会は不公平だと。道徳心ではなく、人権を尊ぶ精神。それがバリアフリーの心だろう。 (大西隆

いじめ自殺 教委不信、深刻な危機 - 朝日新聞(2017年6月6日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12973901.html?ref=editorial_backnumber
https://megalodon.jp/2017-0606-0927-17/www.asahi.com/articles/DA3S12973901.html?iref=comtop_shasetsu_02

学校や教育行政への信頼が、深刻な危機に直面している。
いじめとの関連が疑われる生徒の自殺について、教育委員会や教委が設けた第三者機関の調査に遺族が不信を抱き、再調査やメンバー交代などを求める。そんな例が仙台、青森、茨城・取手などで相次いでいる。
現にあるルールへの理解を欠き、事実に向きあおうとしない教委の態度が浮かびあがる。
大津市で起きたいじめ自殺の教訓から、4年前にいじめ防止対策推進法が生まれた。
法律は、いじめの「疑い」があれば「重大事態」ととらえ、特別な組織を設けて調査をし、被害者に情報提供するよう定めている。いじめの確証がなくても、可能性を前提にまず動くことを求めているのだ。
その認識はどこまで浸透しているか。取手市教委は第三者機関を設けるのと同時に、「重大事態ではない」という不可解な議決をしている。調査の起点で遺族の不信を招いた。
残された家族が何より望むのは「何があったのか」を知ることだ。事実の解明なしには、加害者の反省も、校内や地域の動揺の収拾も、再発防止もありえない。むろん被害者側が納得できるはずもない。
一連の問題事例では、事実の追究が甘かったことも、学校や教委に都合よく事を済ませようとしているとの疑いを招いた。教委の公正・中立が疑われることなく適切な調査が行われるよう、被害者側にその手順や進み具合を説明し、理解を得ながら進めることが肝要だ。
スピードも求められる。解明が中途半端に終わる原因に、全校アンケートなどの時期が遅いことが指摘される。いじめ防止に取り組むNPOは、うわさや報道に影響されて記憶が塗り替わらないよう、「発生・発覚から3日以内」を提唱する。
この時期は学校側も当面の対応で手いっぱいだろうが、文部科学省が3月に定めたガイドラインは、重大事態の報告があれば、市教委などから職員やスクールカウンセラーを派遣できると書いている。支援の用意はある。校長ら管理職は初動対応の重要性を胸に刻んでほしい。
いじめ自殺の多くは、危険の兆候がありながら、共有されず見逃された結果起きている。
生徒や保護者が相談しやすい環境作りが必要だ。校外に相談窓口や子どもの居場所を設け、学校や教委と連携していくような仕組みを考えられないか。
悲しい事件を繰り返さないよう、生徒会や保護者の会合でも話し合いを深めてもらいたい。