中2が自殺、「教師の指導や叱責でストレス」 福井 - 朝日新聞(2017年10月15日)

http://www.asahi.com/articles/ASKBH73FFKBHPTIL010.html
https://megalodon.jp/2017-1018-1416-22/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/249467

福井県池田町教委は15日、町立池田中学校で2年の男子生徒(当時14)が今年3月に自殺したと発表した。担任と副担任から厳しい指導や叱責(しっせき)を繰り返され、精神的なストレスが高まったことが大きな要因だと結論づけた。内藤徳博教育長は「大変深く反省している。学校の対応に問題があった」と謝罪した。
町教委によると、生徒は3月14日午前8時ごろに登校後、姿が見えなくなった。校舎脇に倒れているのが見つかり、病院で死亡が確認された。遺書とみられるノートがあったという。生徒は校舎3階の窓から転落したとみられ、町教委は4月、有識者らによる調査委員会を設置。ほかの生徒や遺族らから聞き取るなどして、生徒が死に至った背景などを調べてきた。
調査委員会の報告書によると、生徒は昨年10月以降、宿題提出の遅れや生徒会活動の準備の遅れなどを理由に、担任や副担任から繰り返し叱責を受けた。今年に入っても、役員を務めていた生徒会を辞めるよう担任から叱責され、副担任の執拗(しつよう)な指導も続いた。
報告書は「大きな精神的負担となるものであった」と指摘。指導に対し、生徒が土下座しようとしたり過呼吸を訴えたりしたことが「追い詰められた気持ちを示すものだ」とした。いじめが疑われる点もあったが、いじめによる自殺ではないと判断したという。
生徒はこうした指導などについての不満を家族に相談。家族から事情を訴えられた担任は、対応を約束したが、適切な対応を取らず、副担任と叱責を繰り返したという。
生徒の自殺について、町教委は15日夕、保護者への説明会を開いた。その後、記者会見した調査委員会の松木健一・福井大大学院教授は「叱責を繰り返したことは指導の範囲を超えていた」と述べた。

中2転落死「教員指導要因で自殺」調査報告書公表、池田中校長ら謝罪 - 福井新聞(2017年10月16日)

http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/249467
https://megalodon.jp/2017-1018-1416-22/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/249467

福井県池田町教委は15日、池田中で3月にあった2年男子生徒=当時(14)=の転落死について、担任らから厳しい指導を受けた精神的ストレスが要因の自殺だったとの調査委の報告書を公表した。同日夜、同町能楽の里文化交流会館であった保護者会で説明。その後の会見で、同校の堀口修一校長らは、状況などから自死だったことは明らかで、学校の対応に問題があったとの認識を初めて示し、謝罪した。
町教委が4月に設置した調査委は弁護士や医療、福祉関係者で構成。保護者会は非公開で行われ、現在の同校1年生から高校1年生まで計4学年の親ら50人ほどが出席した。調査委員長の松木健一・福井大大学院教授、内藤徳博教育長や堀口校長ら9人が説明した。
調査報告によると、男子生徒は、昨年10月以降に担任や副担任から課題提出や生徒会活動の準備の遅れなどで厳しい叱責を受けるようになった。「学校に行きたくない」などと訴えることもあったとし、自殺直前にも立て続けに強い叱責を受けていたという。
発達障害の可能性が想定される」とも指摘。専門機関での診察を受けていないため断定できないとしながらも「状況をよく観察すれば厳しい叱責が不適切と気付くことはできた。学校の対応に問題があったと言わざるを得ない」と結論付けた。
保護者会後の会見で、堀口校長らは「担任、副担任の彼への不適切な対応により、また、管理職として指導監督が十分にできず、彼を苦しめ、傷付け、追い詰めてしまった」と述べ、深く頭を下げた。
再発防止策として同校などは、生徒の心に寄り添う取り組みなど6項目を挙げ、教育相談体制の充実や教職員間での情報共有、管理の徹底を誓った。
生徒は3月14日、同校3階の窓から転落して亡くなった。調査委は会議や生徒への聞き取りなどを通して、亡くなった背景や再発防止策を検討し、9月26日に報告書を提出していた。

福井・中2自殺 「怒声、身震いするほど」目撃生徒証言 - 毎日新聞(2017年10月16日)

https://mainichi.jp/articles/20171017/k00/00m/040/030000c
http://archive.is/2017.10.16-214614/https://mainichi.jp/articles/20171017/k00/00m/040/030000c

福井県池田町の町立池田中学校で今年3月、2年の男子生徒(当時14歳)が飛び降り自殺した問題で、担任が男子生徒を叱責するのを目撃した生徒らが「(聞いていて)身震いするくらい怒鳴っていた」などと話していることが分かった。有識者による調査委の松木健一・福井大大学院教授(教育心理学)は15日の記者会見で「他の子がいる中で大声で叱るのは指導の範囲を超えている」と批判した。【立野将弘】
調査委「指導範囲超える」
目撃した生徒らが調査委に対し証言した。報告書などによると、担任は30代男性で、副担任は30代女性。男子生徒は2人からしばしば叱責されていた。2年生後期から生徒会役員になったが、昨年10月、マラソン大会の準備が遅れたことを理由に校門前で担任に大声で叱責された。目撃した生徒は調査委に「身震いするくらい、すごい怒鳴っていた。かわいそうに感じた」と証言した。
更に担任が今年1〜2月ごろ、職員室前で叱責した際「お前(生徒会を)やめてもいいよ」と発言。同2月上旬には生徒会主催の行事で忘れ物をしたことを大声で叱責した。目撃した複数の生徒は「言い方がひどかった」「(男子生徒は)下を向いて暗い感じだった」などと証言した。
ほかにも男子生徒が追い込まれる場面があった。昨年11月、別室で副担任から宿題を出していない理由を問われ、生徒会や部活動のためだと話した。副担任が「できないならやらなくてよい」と言うと、「やらせてください」と土下座しようとした。その後、校内のトイレに一時閉じこもった。自殺前日にも副担任から宿題のことを聞かれ、過呼吸を訴えた。
報告書は、こうした執拗(しつよう)な叱責による精神的ストレスや孤独感が自殺の原因と認定した。他の生徒からのいじめを認定する具体的な事実はなく、家族との関係も良好だったという。
調査では担任らが生徒をめぐる出来事についてほとんど管理職に報告しなかったことも判明した。担任が校長に副担任は男子生徒の気持ちを酌めていない面があると報告したこともあったが、特に指示は受けなかった。町教委によると、担任が叱責する声は校舎の上階にまで聞こえたという。こうしたことから報告書は、管理職や他の教員も問題を知っていたのに「適切に対応しなかった」と結論づけた。その上で「問題があった場合は上司に報告し、教員同士で協議する勇気を持たねばならない」と指摘。スクールカウンセラーなど専門の異なるスタッフが参画する「チーム学校」の取り組みを求めた。
町教委によると、担任は現在、町外の中学校に勤務し、副担任は池田中の別の学年を受け持っている。

中2自殺、母親の手記明らかに 「どうして…」悲痛な思いつづる - 福井新聞(2017年10月18日)

(1/3)http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296
(2/3)http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296?page=2
(3/3)http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296?page=3

(魚拓1/3)https://megalodon.jp/2017-1018-1413-08/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296
(魚拓2/3)https://megalodon.jp/2017-1018-1412-20/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296?page=2
(魚拓3/3)https://megalodon.jp/2017-1018-1411-30/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/250296?page=3

前川喜平さんインタビュー「衆院選は加計森友隠しの安倍政権に審判下すチャンス」 - BLOGOS(2017年10月13日)

http://blogos.com/outline/252253/

安倍晋三首相と昭恵氏の「お友達」なら、国有地が特別に値引きされ、獣医学部の新設も特別扱いされる国は法治国家とは言えません。加計学園疑惑を告発した前川喜平さんにインタビューしました。(収録日=10月4日。3時間に渡ったインタビューの中から衆院選に関わる一部を紹介します。インタビューの全体は月刊誌『KOKKO』12月号に掲載します。聞き手=国公労連教宣担当部長・井上伸。「国公労新聞」2017年10月10・25日合併号より)


http://blogos.com/article/252253/?p=2

――今回の選挙では、自民党希望の党日本維新の会が公約として憲法改正を掲げています。

私は憲法改正に反対です。とりわけ憲法9条は改正すべきでないと考えています。集団的自衛権憲法9条のもとで認められるとするのは暴挙です。立憲主義に反しています。
立憲主義というのは国民がつくる規範があって、その国民がつくる規範で政府や権力を縛る必要があり、その規範が憲法だということです。縛られている側の権力が、縛っている憲法を解いてはいけない。縛られている側がいくらでも解いていいなら縛っている意味がなくなってしまいます。
憲法憲法でなくなってしまいナチスの全権委任法のような状態に陥り、どこまでも際限がなくなってしまう。立憲主義を守るというのは権力の暴走を防ぐ最低限の条件だと思います。
2年前に安保法制が強行成立させられて立憲主義が崩れたわけですが、このままだと際限なく崩れていく危険性があります。

憲法9条は人類史の成果 私は安保法制は憲法違反だと思っているし、それを追認するような憲法改正はすべきではないと考えています。憲法9条が国外に行って戦争をしないということの歯止めになっていると思うので、憲法9条を守るべきだと思っています。
改憲を主張する人は、今の憲法は自主憲法でないとか、日本民族憲法じゃないなどと言いますが、民族性ではなくて人類史の多年にわたる努力と成果の中で形づくられたものが今の憲法と見るべきです。
たとえば、憲法9条は1928年のパリ不戦条約にある戦争の違法化など人類の知恵の積み重ねの中で生まれたもので、人類史の中で燦然と輝いているわけです。
こうした人類の憲法と言える9条をいかに大事にしていくかが問われています。第2次世界大戦後に世界でいちばん戦争している国はアメリカですよ。世界でいちばん戦争をしているアメリカと一緒に海外で戦争をする法案は絶対に作るべきではありません。今のままの9条改憲集団的自衛権を認めることになるわけで、絶対に許してはいけないと考えています。
私は現役の文科省職員だった2年前、安保法制反対の国会正門前デモに参加してシールズと一緒にラップコールも行いました。安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合のみなさんと同じ思いを持っています。
他の国では平気で消防士がストライキを打ってたたかっていますが、日本の公務員は労働基本権が厳しく制限されています。そして、日本ほど国家公務員の基本的人権が過度に制限されている国はありません。表現の自由、つまり政治的行為が強く制限されていて、とても民主的な先進国とは言えないぐらい制限がきつい。そして労働基準法が適用されないのも酷い。政府は「働き方改革」と言うなら国家公務員の働き方をきちんと改善して欲しい。どんどん定員削減はされるし、仕事は増えるし、政治家はいくらでも公務員バッシングしてもいいと思っている。でも、少なくとも団結権と部分的には団体交渉権があるわけですから、国家公務員の労働条件を改善するとともに、国民本位の行財政・司法のために労働組合には頑張って欲しいと思っています。

自公2/3維持の勢い 希望、立民 野党第1党争い 終盤情勢 - 東京新聞(2017年10月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017101802000136.html
https://megalodon.jp/2017-1018-0916-25/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017101802000136.html


二十二日投開票の衆院選について、本紙は十七日、独自取材に、本紙や共同通信社が行った電話世論調査を加味し、終盤情勢を分析した。与党の自民、公明両党で、定数四六五の三分の二(三百十議席)以上を維持する情勢だ。希望の党立憲民主党はそれぞれ四十議席超を確保する見通しで、野党第一党の座を争っている。
自民は今回から定数が六減された二百八十九の小選挙区のうち、二百超で優位に戦いを進めている。定数四減となった比例代表も全国各ブロックで堅調で、安倍晋三首相(自民党総裁)が勝敗ラインに掲げた与党過半数の目標に加え、国会運営の主導権を握る絶対安定多数(二百六十一議席)も単独で得る見通しだ。
公明は、自民とすみ分けて擁立した九つの小選挙区の一部で劣勢で、比例と合わせても公示前勢力を割り込む可能性がある。
小池百合子東京都知事が代表を務める希望は、多くの小選挙区で野党間の競合を招き苦戦している。小池氏が七月の東京都議選で旋風を起こした東京都でも、小選挙区での議席の確保に手が届いていない。与党と激しく争う小選挙区もあるが、比例が伸び悩んでおり、公示前勢力を割り込む可能性がある。
枝野幸男官房長官が代表の立憲民主は、公示前勢力を三倍に増す勢いで自民に次ぐ第二党もうかがう。
共産党は、米軍新基地建設反対で一致する野党が支援する沖縄1区で優位に立つが、比例では他の野党の勢いに埋没し、前回衆院選の躍進で得た二十一議席の維持は難しい情勢。日本維新の会は地盤の大阪で存在感を示すものの、全国的な支持は勢いに欠け、公示前勢力を維持できるかが焦点だ。
社民党小選挙区比例九州ブロックで計二議席を獲得する見通し。比例で候補を出した日本のこころ議席獲得は見通せない。新党大地比例北海道ブロック議席が視野に入った。
無所属は、二十人以上が議席を獲得しそうだ。この中では、民進党出身のベテラン議員が目立つ。

議席予測の方法】 衆院選終盤情勢は、本紙が独自に行った二百八十九小選挙区ごとの情勢分析と、比例代表各ブロックの各党の獲得予測議席数に、共同通信社の電話世論調査の結果を加味した上で、十七日に本紙が総合判断してまとめた。
共同通信社の調査は、十五〜十七日の三日間、全国の有権者を対象に、コンピューターで無作為に電話番号を発生させて電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。
今回、無作為に発生させた番号のうち、実際に有権者がいる世帯にかかったのは十四万七千六十三件で、このうち十二万一千四百八十四人から回答を得た。

◆4割 投票先未定 情勢変動も
共同通信社衆院選について十五〜十七日に、全国の有権者を対象に行った電話世論調査では、投票態度を明らかにしていない人が小選挙区で40・3%、比例代表で40・0%に上った。
十、十一両日に同社が行った前回調査では、投票先未定は小選挙区で54・4%と半数を超えていた。今回調査でも投票態度を明らかにしていない人は、なお四割程度いた。
今回の調査で、衆院選に「関心がある」と回答したのは77・6%。前回調査の74・2%から3・4ポイント増えた。終盤情勢では自民、公明両党で定数の三分の二以上の議席獲得をうかがうが、二十二日の投開票日までに情勢が変わることもあり得る。

◆希望「お膝元」 東京全区で苦戦
衆院選の終盤情勢について本紙が実施した世論調査で、東京都の小池百合子知事が代表を務める希望の党が、「お膝元」の東京で苦戦を強いられていることが分かった。都内二十五の小選挙区のうち、公認候補を擁立した二十三の選挙区は、いずれも当選圏に届いていない。比例代表でも伸び悩んでいる。
多くの候補が、希望を支持する有権者以外への支持の広がりを欠き、新人は一部を除くと次点も厳しい。前職の松原仁氏(3区)、若狭勝氏(10区)、柿沢未途氏(15区)は、当選圏に入った自民を追う展開。民進を離党し、希望の結党メンバーとなった前職長島昭久氏(21区)が唯一、当落線上で自民と競り合っている。
小池知事の衆院議員時代の選挙区を引き継いだ若狭氏は、立憲民主の候補にも差を詰められている。
定数一七の比例東京ブロックでは、希望は三〜四議席にとどまる。自民が五〜六議席を確保する勢いで、これに続く立憲民主も四議席を得る可能性がある。ただ、選挙区、比例代表とも三割以上が投票先未定と答えており、情勢が変わる可能性はある。

<衆院選>9条改憲論 平和の未来がかかる - 東京新聞(2017年10月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017101802000142.html
https://megalodon.jp/2017-1018-0917-22/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017101802000142.html

憲法施行七十年。その年の衆院選改憲が争点となった。自民党の公約が九条への「自衛隊の明記」だ。九条改憲に真っ向から反対する政党もある。何が問題なのか、有権者はじっくり判断したい。
改憲自民党安倍晋三総裁(首相)の宿願である。それでも同党の公約で六つの重点項目に「憲法改正」と堂々と掲げたのは、今回が初めてである。
あえて民意を問い、改憲手続きに進みたいのだろう。改憲項目は緊急事態対応など四つあるが、「自衛隊の明記」は総裁自ら五月に語ったことでもある。
だが、公明党は「意図は理解できないわけではないが、多くの国民は自衛隊の活動を支持しており、違憲の存在とは考えていない」と距離を置いている。希望の党も九条を含め改憲を進める考えだが、小池百合子代表は「自衛隊だけ取り出し、このような形で進めるのは大いに疑問」と語った。
維新の改憲案はむしろ統治機構改革などが主だ。ただ九条も改憲のテーマに挙げる。日本のこころ自衛隊明記に賛成する。つまり改憲政党でも、九条へのスタンスには濃淡がある。
これに対し、立憲民主党社民党共産党は「九条改憲反対」の立場だ。立憲民主の枝野幸男代表は「違憲の安全保障法制を追認する憲法改正には賛成できない」と語る。社民は「九条を死文化しようとしている」と護憲を訴える。共産党も「変えるべきは憲法ではなく、憲法をないがしろにした政治だ」という。
自衛隊には従来、強固な政府見解がある。不意の侵入者への正当防衛、そのための戦力には至らない「自衛力」に基づく実力組織であり、合憲と説明されてきた。
だが、今や集団的自衛権を行使できる存在だ。米軍などと一体となって行動できる。米軍はまぎれもない軍隊であり戦力である。一緒に行動する自衛隊が戦力でないといえるのか。そんな疑問が出てくる。つまり九条二項の戦力不保持と矛盾するのではないか。
自衛権の範囲をめぐる論争が再燃するのは必至であろう。いずれ二項の削除の方向に議論が進む心配も出てくる。
反対する野党にも注文がある。教条的にならず、国民に向けて、もっとわかりやすい言葉で、なぜ自衛隊の明記が許されないか語るべきであろう。平和国家の行く末のために有権者が判断しやすい論争をしてほしい。

<比べてみよう公約点検>番外編  記者が疑問に迫る - 東京新聞(2017年10月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017101702000129.html
https://megalodon.jp/2017-1018-0914-50/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017101702000129.html

衆院選は二十二日の投開票に向け、終盤戦に入った。本紙は主要八党の公約を重要政策ごとに点検し、紹介してきた。憲法、安全保障・外交、消費税、原発、「働き方改革」や社会保障など。公約を分析することで、各党がどのような日本にしようとしているのか見えてくる。ただ、公約だけでは明確でない重要な事柄も多い。有権者の関心はそこにあるかもしれない。担当記者が、政策ごとに各党公約の疑問点に迫った。

◆何を目的に変えるのか
改憲
改憲衆院選の争点だ。安倍晋三首相は五月、憲法自衛隊を明記し違憲論を払拭(ふっしょく)したいと訴えたが、選挙戦の街頭演説では触れようとしない。自民党公約にも教育無償化などを含め四項目が並ぶだけ。これでは何を目的にどう変えたいのか、現行憲法のどこに問題があると考えているのかといった、根本的な疑問に答えているとは言い難い。
改憲を訴える他党も公約に「憲法改正」の言葉はあるが、説明が十分とはいえない。最後は国民投票で決めるとはいえ、それに先立つ国会発議の中身を白紙委任できるわけではない。改憲という大きな政治テーマで国民の理解を得たいなら、活発な論戦は欠かせないはずだ。 (生島章弘)

◆圧力だけの解決厳しい
■対北朝鮮
自民党は公約冒頭に「北朝鮮への圧力を最大限まで高める」という安倍晋三首相(党総裁)の巻頭言を掲載し、北朝鮮に厳しい制裁を科す姿勢を強調した。北朝鮮有事を想定した在外邦人の救出態勢の強化や、避難訓練の実施も明記した。
公明、共産、立憲民主の各党は圧力と同時に、対話による平和的解決を目指す姿勢も示した。共産は、米朝両国の緊張が激化し「偶発や誤算から軍事衝突」が起こる事態を懸念。圧力重視の首相を「対話否定論」だと批判した。
圧力一辺倒では、有事の際、日本が衝突に巻き込まれる懸念は消えない。首相は圧力だけで解決できると考えているのだろうか。 (新開浩)

◆各党最終処分場示さず
■核のごみ
各党は原発政策を語る一方で「核のごみ(放射性廃棄物)」をどうするのか具体的に言及していない。
核のごみは、使用済み核燃料に関する高レベルのものから、廃炉になる原発から出るコンクリート廃材など放射性レベルの低いものまでさまざま。高レベルのごみを扱う最終処分場は建設場所さえ決まっていない。一九六〇年代から、ごみの行き場を決めないまま、原発稼働を認めてきたツケがたまり続けている。
原発維持路線の自民、公明の与党はもちろん、原発ゼロを掲げる希望や共産、立憲民主各党なども、核のごみをどうするのか明かさなければ、原発政策全体を有権者に示したことにならない。 (吉田通夫)

◆どの品目対象説明必要
■軽減税率
自民、公明の与党は公約で、二〇一九年十月の消費税率10%への引き上げを主張する。増税時には、食料品などの税率を低くする軽減税率を導入する予定。自民は公約で「事業者への対応を含め、万全の準備を進める」、公明は「対象品目の線引きや経理方法について分かりやすい情報提供」を行うとしている。
軽減税率は、どの品目を対象にするのか線引きが難しい。消費者の負担感を和らげるために、増税と軽減税率をセットで訴えるなら、具体的な説明が必要だ。
財政再建については、消費税増税の増収分の使途変更を主張する与党、凍結・反対を訴える野党とも、明確な目標を示していない。 (桐山純平)

◆無償化での遅れが心配
■待機児童
衆院選の争点に浮上した幼児教育無償化。これにより、政府の待機児童対策が遅れるのでは、と働く母親らは心配している。子どもを保育園に預けられるかどうかは、切実な問題だからだ。
自民、公明の与党は、幼児教育無償化を前面に掲げる。両党は二〇二〇年度までに待機児童をゼロにする「子育て安心プラン」実現も公約している。
政府は今年六月に待機児童ゼロの目標を三年間先送りした。教育無償化の範囲拡大に財源が優先的に使われ、再び目標が先送りされることはないのか。
野党をみると、三党が待機児童ゼロを掲げるが、優先順位が明確でない党もある。 (坂田奈央)

(安倍政治)国会の監視機能高めよ - 沖縄タイムズ(2017年10月18日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/157610
https://megalodon.jp/2017-1018-0918-10/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/157610

衆院選は後半戦に入った。
報道各社の情勢調査で共通しているのは、自民党が堅調に議席を伸ばしながら、安倍内閣の支持率で厳しい数字が出ていることだ。
この乖(かい)離(り)をどうみたらいいのだろうか。
小選挙区制では当選者は1人しか出ない。与党の自公が推す候補に対し、野党の候補が乱立しては票が分散し、勝利することは難しい。
衆院解散前後に、民進党が分裂し、希望の党立憲民主党が誕生した。合従連衡の末、「野党共闘」は一部にとどまり、政権の批判の受け皿が分散しているのである。
自民党議席予測と内閣支持率の齟齬(そご)は、「安倍1強政治」に対する批判である。
それは今回の衆院解散の在り方が象徴している。野党が憲法に基づき要求した臨時国会召集を3カ月間もたなざらしした揚げ句の冒頭解散である。所信表明演説も代表質問もなかった。
共謀罪」法の審議では参院法務委員会の採決をすっ飛ばす「中間報告」という禁じ手を使って本会議で採決を強行した。
国有地が格安で払い下げられた森友学園問題、獣医学部新設が事実上1校だけに認められた加計(かけ)学園問題は、いずれも安倍晋三首相や昭恵夫人に近い人が関わっており、行政の公平性や公正性がゆがめられた疑いが消えていない。
加計学園の理事長は国会で一度も説明したことがない。国会招致も、関係省庁の情報公開も、安倍首相が指示すれば済むことだ。
国会軽視というほかない。
■    ■
小選挙区制が抱える根本的な弊害もある。民意を正確に反映しないことである。
前回2014年12月の総選挙で、自民党小選挙区における得票率は約48%だったにもかかわらず、議席占有率は約76%に上った。
選挙時にはアベノミクスなど経済問題に重点を置き、選挙が終わるや、数を頼みに国論を二分するような法案を強引に通すのが安倍首相のやり方だ。
特定秘密保護法、安全保障関連法、「共謀罪」法しかりである。今度は憲法改正に向けた議論を加速するだろう。
安倍首相は今回の不意打ちのような解散総選挙を消費増税の使い道の変更と、北朝鮮情勢への対応を挙げ、「国難突破解散」と位置付けた。
消費税の使途や北朝鮮情勢が「国難」というのであれば、国会で熟議を尽くすのが筋である。取って付けたような理由と言わざるを得ない。
■    ■
安倍政権で行政府が肥大化し、国会は三権分立によるチェック・アンド・バランスの機能を失いつつある。
行政府の「暴走」を止めるには、与野党を問わず監視機能の強化が必要だ。だが、小選挙区制の下、首相(総裁)の権限が強まっている。異論は排除され、自民党内でも活発な議論が失われている。
国会が行政府を監視する機能を回復させることが何よりも重要だ。私たち有権者も試されていることを忘れてはならない。

木村草太の憲法の新手(66)衆院選の注目点 改憲提案ぼかさず明確に - 沖縄タイムズ(2017年10月15日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/156267
https://megalodon.jp/2017-1018-0919-10/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/156267

衆議院解散により、総選挙・最高裁判事国民審査の日が近づいている。解散の不当性を今論じても詮無いので、投票の参考にしていただくべく、2点だけ指摘したい。
第一に、選挙の争点の一つである自衛隊を明記する改憲について。自民党は、「政権公約2017」にて、「党内外の十分な議論を踏まえ」「自衛隊の明記」の憲法改正を目指すとしている。自民党は、2015年安保法制を維持する立場であるから、当然、集団的自衛権行使容認を前提とした改憲となるだろう。
しかし、それならば、「自衛隊の任務として集団的自衛権を根拠とする武力行使が含まれることを明記」と、公約にも記載すべきではないだろうか。単に「自衛隊の明記」とするのは、集団的自衛権行使の是非に再び注目が集まるのを避けるため、あえて、ぼやかした表現を用いているように見える。
この点、立憲民主党の「国民との約束」は、自衛隊明記の提案は「専守防衛を逸脱」するもので、「15年に強行採決された違憲の安保法制の問題をうやむやに」するものだと批判する。改憲提案の内容をぼやかしたままでは、仮に選挙に勝っても、提案に支持を得たと胸を張ることはできないだろう。
また、「自衛隊の明記」には、武力行使の範囲が不明確だという問題もある。15年安保法制で定められた、自衛隊武力行使できる「存立危機事態」とは、どのような事態なのか。法案審議時は、ホルムズ海峡の機雷掃海がこれにあたるかどうかが延々と検討された。近時は、北朝鮮によるグアム攻撃がこれにあたるかといった議論がなされている。人によって理解があまりに分かれる条文は、乱用や野放図な武力行使の拡大の危険がある。
この点、日本維新の会は、「維新八策2017」にて、「存立危機事態」に代えて「米軍等防護事態」(日本周辺で、現に日本を防衛中の同盟国軍に武力攻撃が発生したため、我が国への武力攻撃の明白な危険がある事態)を規定し、武力行使の要件を厳しく限定すべきだと提案する。この文言であれば、武力行使の要件は明確になるし、武力行使の範囲も、従来の専守防衛の範囲に限定する解釈も十分可能だろう。
自民党が、日本の防衛政策を真剣に考え、その信を国民に問おうと思うのならば、立憲民主党や維新の会のこうした提案に耳を傾け、自らの立場を明確にすると共に、行使要件の明確化、厳格化に取り組むべきだ。
第二に、最高裁判事の国民審査について。今回は、7人の最高裁判事が審査対象になっている。沖縄との関係で私が注目しているのは菅野博之判事だ。菅野氏は、最高裁調査官、大阪高裁長官などを歴任した裁判官エリートで、昨年末の辺野古訴訟で国側全面勝訴の第二小法廷判決に加わっている。
この連載でも指摘した通り、判決は、沖縄県自治権侵害の主張を全て無視した。判決に疑問を持つ市民は、菅野氏に「×」をつけて意思を表示すべきだろう。沖縄県で菅野氏の罷免を求める投票が多数となれば、最高裁も沖縄基地問題に、少しは真剣に取り組むようになるかもしれない。

首都大学東京教授、憲法学者)=第1、第3日曜日に掲載します。

関連サイト)
憲法の番人、過去の判断は? 「一票の格差」など 最高裁裁判官7人、国民審査 - 朝日新聞(2017年10月17日)
http://d.hatena.ne.jp/kodomo-hou21/20171017#p1

俳句掲載拒否 事なかれの先にある闇 - 朝日新聞(2017年10月18日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13184967.html
http://archive.is/2017.10.18-001620/http://www.asahi.com/articles/DA3S13184967.html

自治体にひろがる事なかれ主義と、見当違いの「中立」墨守に警鐘を鳴らす判決だ。
「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。さいたま市がこの俳句を地元の公民館だよりに載せるのを拒んだ問題で、さいたま地裁は、作者の女性に慰謝料を支払うよう、市に命じた。
公民館は、女性が参加するサークルで秀作に選ばれた句をずっと掲載してきた。だが「梅雨空に」については、秀句とされたにもかかわらず、「公民館は公平中立であるべきだ」などの理由で採用しなかった。
判決は、それまでのいきさつから、女性が掲載を期待したのは当然だと判断。思想・表現の自由の重みに照らすと、この期待は守られなければならないのに、公民館の職員は十分な検討をせず、正当な理由がないまま拒否したと結論づけた。
「公平中立」をめぐっても、作者名が明示されるのだから、行政の中立性が害されることはなく、むしろ掲載しないことが行政の信頼を傷つけると、常識に沿う指摘をしている。
注目すべきは、公民館側がこうした異例の措置をとった原因として、判決が「一種の『憲法アレルギー』のような状態に陥っていたのではないかと推認される」と述べたことだ。
掲載を拒んだ職員らは教育関係者で、学校現場で日の丸・君が代をめぐる対立などに直面してきた。その経験から、いざこざを嫌ったとの見立てだ。
苦情や抗議を招きそうな面倒な話はやめてほしい。とりわけ憲法がからむ政治的な問題とはかかわりを持たず、事前に抑えこむほうが得策だ――。そんな空気が、自治体をはじめ、公の施設や空間を管理する側をおおっているのは間違いない。
体制に批判的な言動をあげつらうメディアやネット世論もあり、対応に追われる労苦は理解できる。だからといって、市民から発表や参加の場を奪った先にあるのはどんな世の中か、想像力を働かせる必要がある。
波風の立たない平穏な光景かもしれない。だがそれは、闊達(かったつ)さとは無縁の息苦しい社会だ。
判例や学説は、基本的人権の中でも表現の自由をひときわ重く見てきた。民主主義を深めるには、自由に学び、ものを考え、成果を公表し、意見を交わすことが不可欠だからだ。
憲法が保障する権利は、失ったときにその尊さを思い知らされる。そしていったん失ってしまうと、回復するのは容易ではない。自由な社会を維持し、次代につなぐために、どう行動すべきか。一人一人が問われる。

職場のストレスと精神疾患 心の健康管理が不十分だ - 毎日新聞(2017年10月18日)

https://mainichi.jp/articles/20171018/ddm/005/070/049000c
http://archive.is/2017.10.18-000934/https://mainichi.jp/articles/20171018/ddm/005/070/049000c

働く人の過労死・過労自殺を防ぐには、長時間労働の規制のみならず、心の健康を保つ方策が企業に求められる。
厚生労働省は働く人の過労死や精神疾患の現状をまとめた白書を発表した。それによると、2016年度に過労死や過労自殺(未遂を含む)で労災認定された人は前年度より2人増えて191人に上った。
精神疾患による労災認定も増加傾向にあり、16年度は過去最多の498件だった。こうした中、働く人の心のケアに取り組んでいる企業は次第に増えて約6割に上る。
従業員50人以上の企業に対し、仕事に関して社員がどの程度ストレスを抱えているかを質問する「ストレスチェック」が2年前から義務づけられた。これが取り組みに影響していると考えられる。
厚労省が専門家に委託した調査では昨年、ストレスチェックの制度がある企業での受検率は高く、約9割に上った。高いストレスがあると認められたのは全体の約14%だった。
しかしこの調査で、職場環境が改善されたと回答した人は約6%にとどまっている。ストレスチェックの制度は導入したものの、その結果を有効に活用している企業が少ないとみられる。
実際、高いストレスがあるとされた社員と医師との面接を実施し、診断に基づいて職場環境の改善につなげた場合、社員のストレスが軽減されているケースが多い。
ストレスを生む事情は職場の種類によっても異なる。
厚労省の白書によると、バスの運転手が感じるストレスや悩みは「長時間労働の多さ」が最も多く、5割近かった。一方、トラック運転手の場合は荷主の都合で仕事時間が左右されることなどによる「精神的な緊張・ストレス」が4割を超えた。職場ごとの対策が必要だろう。
ストレスチェックの制度を生かすには、本人のプライバシーを守り、不当な配置転換などの不利益が生じないようにするのは大前提だ。
心の健康を保つには「仕事に誇りややりがいを感じる」ことが重要とする研究結果もある。
企業が働く人の立場になって、健康を本気で守ろうとしているかどうか。その姿勢が問われている。