障害者雇用 許せぬ、でたらめ横行 - 朝日新聞(2018年8月29日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13654890.html
http://archive.today/2018.08.29-013854/https://www.asahi.com/articles/DA3S13654890.html

障害者雇用の旗振り役であるはずの、行政機関のあまりのでたらめぶりにあぜんとする。
障害者の雇用義務がある国の33行政機関のうち27機関で、国の指針に反して計3460人を障害者数に算入していたことが、厚生労働省の調査でわかった。国の行政機関で働く障害者は昨年6月1日時点で約6900人とされていた。実にその半数以上にあたる。
厚労省は、中央省庁などの障害者の雇用割合は2・49%で、当時の法定雇用率2・3%を達成しているとしていた。実際は大きく下回る1・19%だったことになる。
外務省では報告された障害者数の8割以上、国税庁では7割以上が不適切な算定とされた。
各省庁は、障害者手帳や医師の診断書による確認を怠っていた。国の指針に対する理解不足や解釈の誤りが原因で、雇用率を高く見せる意図はなかったと説明している。本当にそう言い切れるのか。
政府は今後、第三者委員会を設けて経緯や原因を調べ、10月中に再発防止策をまとめる。同様の問題が発覚している全国の地方自治体についても調べる。徹底的に解明すべきだ。
不適切とされた3460人分がすべて、全く障害者に該当しないわけではないと、厚労省は説明する。一方で、省庁によっては本人に無断で、障害者数に算入していた事例もあるようだ。実態はどうだったのか。詳しい内訳、全体像を早急に示す必要がある。
省庁側には、厚労省の通知や指針のわかりにくさを指摘する声もあるようだ。だが、民間は同じルールできちんとやっている。言い訳にならない。
民間企業は法定雇用率に達しないと、納付金を課せられる。正しく算定しているか検査も受ける。こうしたチェック体制が省庁や地方自治体にはないことも問題だ。実効性を担保する仕組みの整備を急ぐべきだ。
不適切な算定を続けていた省庁は、障害者雇用の意義を考えていたのだろうか。数字の上で法定雇用率さえ達成すればいい。そんなおざなりな意識が、問題の根っこにあったのではないか。
障害のある人も能力を発揮し、働きやすい職場作りを進める。その意識があったら今回のようなことは起きないだろう。
法定雇用率を遅くとも来年末までに達成するよう、各省庁は計画をつくるという。「量」だけでなく「質」の面からも、障害者雇用への向き合い方を見直さねばならない。

障害者「水増し」 解明なくして信頼なし - 東京新聞(2018年8月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082902000175.html
https://megalodon.jp/2018-0829-1035-16/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082902000175.html

政府が公表した中央省庁の障害者雇用の実態には、あらためてあきれる。障害者の働く場を奪う暴挙と言わざるを得ない。共生社会の実現へ向け、実態の解明と再発防止を徹底すべきだ。
最初に指摘しておきたい。
中央省庁の障害者雇用の数字水増しは単なる算定ルールの認識不足ではない。障害者を働く仲間と見ていないということだ。差別ではないか。
調査結果によると中央省庁の八割で、計三千四百六十人が不正に算入されていた。昨年雇用していたとした障害者の半数に上る。障害者雇用促進法で求められる雇用率を大幅に下回った。雇用をリードする厚生労働省もわずかながらあった。省庁ぐるみと受け取られかねない不正である。
民間には法定雇用率に達しないと納付金を求めるのに、行政機関が報告だけで済むのは雇用の旗振り役として責任を果たしているとの前提があったからだろう。それだけに不正を放置した責任は重い。猛省すべきだ。
なぜ不正が行われたのか。厚労省ガイドラインでは、身体障害者手帳などを持つ人などが対象だが、多くがそれに従っていなかった。ガイドラインの理解不足などという理由は通用しない。そもそも障害者を働く仲間と見ていれば、ガイドラインを確認し適材適所の雇用を考えたのではないか。
不正が故意かどうか加藤勝信厚労相は「今、把握することは困難だ」と述べた。水増しの経緯や詳しい実態は依然、不明だ。政府には地方自治体も含め真相を究明する責任がある。
野党各党は国会の閉会中審査を求めている。行政機関全体の不正でしかも長年続けられてきたからには、政府任せにせず国会もチェック機能を果たしてほしい。
この問題を取り上げた本欄(八月十八日付)で大分県杵築(きつき)市の永松悟市長から聞いた話を紹介した。永松市長は精密機器メーカーの下請け企業で働く二人の知的障害者のことも紹介してくれた。
−二人は新入社員の教育係を務める。多くの失敗を経験しているからこそ、新人が失敗しても丁寧に繰り返し教えてくれるのだそうだ。現場の管理職も必要な人材だと断言しているという。
障害者だけでなく育児・介護中の人、高齢者など誰もが能力を生かしやりがいを感じられる職場にできるはずだ。政府は不正の再発防止は当然、その環境整備こそが重要課題だと肝に銘じるべきだ。

障害者水増し 究明先送り 雇用の半数 不正算入 - 東京新聞(2018年8月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082902000134.html
https://megalodon.jp/2018-0829-1035-16/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082902000175.html

中央省庁が雇用する障害者数を水増ししていた問題で、政府は二十八日、国の行政機関の八割に当たる二十七機関が、昨年六月時点の障害者雇用率を水増ししていたとの再調査結果を公表した。昨年十二月に発表した雇用障害者約六千九百人のうち計三千四百六十人が、不正な水増しだったと判明。平均雇用率は2・49%から1・19%に半減し、当時の法定雇用率2・3%を下回った。政府は、弁護士ら第三者を交えたチームによる検証や再発防止策の取りまとめを、十月に先送りする。 (井上靖史)
再調査結果は、厚生労働省がこの日午前の関係閣僚会議で説明した。調査対象は、職員数が少なく、障害者の雇用義務が発生しない復興庁を除く国の三十三機関。最も水増しが多かったのは国税庁で一〇二二・五人(重度ではない短時間勤務者は〇・五人として計算)、次いで国土交通省の六〇三・五人、法務省の五三九・五人だった。十七機関で、実際の雇用率が1%未満に下落した。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で「障害者雇用の場の拡大を民間に率先する立場として重く受けとめており、深くおわびする」と謝罪。同日午後には首相官邸で、加藤勝信厚労相を議長とする中央省庁の担当者を集めた連絡会議を開き、経緯の検証と障害者雇用策の検討を始めた。
会議では、法定率を下回った機関に年内の達成か、できなければ来年末までの雇用計画を示すことを目指すと確認。さらに今後、水増しが起きた経緯の検証や、チェック機能の強化、障害者を正規職員として採用していく方法の検討などを議論し、十月中に公表する方向性を決めた。
今回の事態が発覚した端緒は五月十一日、財務省が雇用率に算入できる障害者の定義について、厚労省に問い合わせたのがきっかけだった。
雇用率を満たしていない可能性に気付いた厚労省が六月、国の三十三機関に昨年六月時点の再調査を依頼した。

障害者水増し 糖尿病、緑内障、腎臓がんも算入 チェックなく長年放置 - 東京新聞(2018年8月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082902000133.html
https://megalodon.jp/2018-0829-1041-30/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082902000133.html

障害者雇用を率先して進めるはずの中央省庁の多くで、お手盛りの運用が浮き彫りになった。
一九七六年の制度発足当初から厚生労働省は、雇用率に算入するのは、障害者手帳を持っているか、指定医の診断書で障害を認められた人に限っていた。だが、各省庁の運用の実態はずさんだった。「健康診断結果を基に本人に確認せず算入していた」(国土交通省)、「聴力を確認せずカウントした」(防衛省)、「人事関係の書類に本人が書いた健康状態や病名を基に判断していた」(法務省
雇用水増しの理由について、各省庁はこの日、所管する厚労省が示す障害者の範囲を「拡大解釈していた」と釈明した。
厚労省は毎年、各省庁や地方自治体に六月一日時点の障害者雇用率の報告を求めている。その際の通知に「原則として、障害者手帳の交付を受けている者」と記載したことで、「必ずしも手帳の確認は必要ない」という別の解釈を招いた。所管する厚労省は「各省庁の誤り」とみなす一方、「分かりにくいという話もあり、例外があるように読める余地があった」として、本年度の通知から「原則として」の文言を外した。
水増しのあった省庁は「制度が始まった頃から誤って運用していた可能性がある」「前任から引き継いできた」などと説明しており、水増しは長年続いていたとみられる。
厚労省は二〇〇五年にもガイドラインで「対象の障害者の手帳で確認」と周知していた。なぜ、誤った運用が放置されてきたのか。厚労省は「性善説に立ってチェック機能がなかった」との見解を示す。
障害者雇用促進法で、民間企業には三年ごとに調査があり、定められた雇用率に届かない企業はペナルティーとして納付金を支払わなければならない。一方で、省庁や地方自治体には調査も納付金の支払い義務もない。政府は今後、問題の検証やチェック機能の強化を図るという。
問題は意図的な水増しがあったかどうかだ。千人以上を水増ししていた国税庁では糖尿病の人、文部科学省では障害者手帳のない緑内障や腎臓がんの人を算入。国税庁幹部は「漫然とやっていた」と話す。
理解不足を強調する各省庁。厚労省は「第三者委員会の検証に委ねる」とし、明言を避けた。総務省の担当者は「数が多い方がいいというのは、たぶんあった」と本音をのぞかせた。
日本盲人会連合会長の竹下義樹弁護士は「病人まで障害者としている。悪意を持った数字合わせであり、雇用率をごまかす意図があったとしか思えない」と水増しの故意性を批判した。 (中沢誠、福岡範行)

防衛白書 地上イージスありきだ - 東京新聞(2018年8月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082902000174.html
https://megalodon.jp/2018-0829-1043-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018082902000174.html

今年の防衛白書は、北朝鮮の脅威は米朝首脳会談後も変わらないと記した。脅威をことさら強調することで、安倍政権が推し進めている地上イージス導入を正当化しようとしているのではないか。
六月のシンガポールでの米朝首脳会談後、菅義偉官房長官が「日本にいつミサイルが向かってくるか分からない、安全保障上の極めて厳しい状況はかつてより緩和された」と述べた政府の公式見解と明らかに矛盾する。
二〇一八年版防衛白書がきのう閣議に報告された。特に注目すべきは、北朝鮮に関する記述である。
昨年の白書で、北朝鮮が発射した弾道ミサイルを「大陸間弾道ミサイルICBM)級」と分析した上で「新たな段階の脅威になっている」としていた認識を、今年は「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」とさらに強めた。
米朝首脳会談後、非核化実現に向けた動きは停滞しているとはいえ、かつては敵意をあらわにしていた米朝首脳同士が、完全な非核化に向けた意思を文書の形で、明確に約束した意義は大きい。
だからこそ日本政府も会談後、ミサイル飛来の可能性は低いと判断して迎撃部隊を撤収し、住民避難訓練も中止したのではないか。
にもかかわらず白書はなぜ「米朝首脳会談後も北朝鮮の核・ミサイルの脅威についての基本的認識に変化はない」と強弁したのか。
それは、脅威を認めなければ、地上配備型迎撃システム(イージス・アショア)を導入する根拠を失うからにほかならない。
政府は米国から購入する地上イージスシステム二基を秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場に配備して日本全土をカバーする計画で、地元との調整に入っている。
しかし、導入経費は三十年間の維持・運営費を合わせて二基で約四千六百六十四億円。ミサイル発射装置や用地取得費を含めればさらに膨れ上がる。強力な電磁波による健康被害も心配され、攻撃対象になる可能性も否定できない。緊張緩和の流れの中、白書の説明はとても納得できるものではない。
地元の懸念を顧みず、地上イージス導入を急ぐ背景に、日本など同盟国に対して米国製武器の購入と軍事費の増額を求めるトランプ米政権への配慮があるとしたら見過ごせない。
高額の防衛装備品を購入するために、地域情勢を政府に都合よく変えることなど許されない。情勢認識を正し、地上イージスは導入を見合わせるべきである。

防衛白書 国民の理解求めるなら - 朝日新聞(2018年8月29日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13654891.html
http://archive.today/2018.08.29-014416/https://www.asahi.com/articles/DA3S13654891.html

2018年版の防衛白書がまとまった。資料編を含め600ページ近い大部だが、日本の防衛政策や防衛省自衛隊の現状について、広く国民の理解を得るという目的に照らすと、不十分な点を指摘せざるをえない。
まず、南スーダンPKOやイラクに派遣された自衛隊の日報をめぐる記述だ。防衛省自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質と文民統制の機能不全が厳しく批判された2年越しの問題だが、前年の白書では一行も触れられなかった。
今年は項目を設け、特別防衛監察などの結果と再発防止策をひととおり紹介してはいる。しかし、南スーダンの首都ジュバの状況を、日報では「戦闘」としながら、国会答弁などで「衝突」と言い換えた経緯などについては全く説明がない。
行政文書を適切に管理し、国民からの情報公開請求に応じることは政府の重要な責務であり、防衛省自衛隊も例外ではない――。白書はそう言い切った。今後の請求に対し、どこまで真摯(しんし)に対応するか、行動で示して欲しい。
次に北朝鮮の脅威に対する評価である。
白書は、6月の米朝首脳会談で、北朝鮮金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が朝鮮半島の「完全な非核化」を文書で約束した意義は大きいと認めた。一方で、核・ミサイルの脅威について「基本的な認識に変化はない」とし、緊張緩和の流れや影響について、ほとんど分析していない。
確かに、非核化をめぐる米朝交渉に進展がなく、国際原子力機関IAEA)が北朝鮮の核開発の継続に懸念を示すなど、今後の展開は不透明だ。
しかし、北朝鮮がこれまで繰り返してきた核実験とミサイル発射を凍結したことは大きな変化に違いない。関連技術蓄積への一定の歯止めにもなろう。
いま肝要なのは、北朝鮮の意図を慎重に見極めながら、対話が後戻りしないよう働きかけることで、脅威を過度に強調することではない。
驚いたのは、昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約に白書が一言も触れていないことだ。「軍備管理・軍縮・不拡散への取組」という項目を立てながらである。政権がこの条約に背を向けているとはいえ、核をめぐるこの重要な動きを、無視するなど論外だ。
白書は、防衛省自衛隊の活動には、国民一人ひとりの「理解と支持」が不可欠という。ならば、従来の立場に固執せず、情勢の変化を柔軟に受けとめ、不都合な事実にも正面から向き合う。そんな覚悟が必要だ。

辺野古埋め立て承認:知事選の告示前に撤回へ 沖縄県、早ければ31日にも - 沖縄タイムス(2018年8月29日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/305888
https://megalodon.jp/2018-0829-1013-49/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/305888

名護市辺野古の新基地建設を巡り、県が知事選告示日の9月13日までに埋め立て承認を撤回する検討に入ったことが28日、分かった。早ければ31日にも撤回に踏み切る。公有水面埋立法に基づく埋め立て承認が撤回されれば沖縄防衛局は新基地建設の法的根拠を失い、工事が停止する。一方、撤回の執行停止を裁判所に求めるなど国が対抗措置を取ることが予想され、工事の停止は一定期間にとどまる可能性がある。
複数の関係者が明らかにした。早ければ31日だが、9月3日の案もある。8月28日には県の弁護団が県庁の三役室を訪れたことが確認されており、撤回に向けた協議をしたとみられる。
県幹部は、行政手続きの一つとして知事選の日程に関わらず準備が整えば撤回すると強調していた。知事選前の撤回が選挙戦に影響するのは必至だ。29日に翁長雄志前知事の後継として知事選出馬を表明する玉城デニー氏と県側が時期を協議し、撤回の日程が変動する可能性もある。
8日に死去した翁長氏は生前、防衛局が県に通知していた17日の埋め立て土砂投入の前に承認を撤回する考えだった。死去を受け知事の職務代理者となった富川盛武副知事は、撤回の権限をこれまで辺野古問題を担当してきた謝花喜一郎副知事に委任している。
国は天候などを理由に17日の埋め立て土砂の投入を見送り、県の撤回もずれ込んでいた。県は9日に防衛局の意見や反論を聞く聴聞を実施し、21日に報告書が完成。約1週間で報告書の内容を精査した。行政手続きが整ったことから、生前に撤回方針を表明していた翁長氏の遺志を継ぎ、撤回に踏み切る。
県は撤回の理由として、大浦湾側の軟弱地盤で護岸を建設した場合に倒壊の危険性があり活断層の存在も指摘されていることや、新基地完成後に周辺の建物の高さが米国の基準に抵触することなどを指摘。
公有水面埋立法で定める承認の要件である「国土利用上適正かつ合理的」「災害防止、環境保全に十分配慮する」との項目を満たしていないとしている。

石破氏のモリカケ蒸し返しに安倍氏激怒、竹下派飛び上がる - NEWSポストセブン(2018年8月29日)

https://www.news-postseven.com/archives/20180829_747967.html

自民党総裁選は、恫喝あり、ネガキャンあり、さらには直前のルール変更ありの“仁義なき戦い”の様相を呈している。
安倍晋三首相は夏休み中、静養先の山中湖畔の別荘に大臣や党幹部を次々に招いて勢力を誇示してみせた。ゴルフも3回、とくに小泉純一郎氏、森喜朗氏、麻生太郎氏という3人の首相経験者とラウンドした“総理コンペ”では、政権に批判的とされる小泉氏を含めて「元総理たちはオレを支持している」とアピールした。
いまや勝利は明らかなように見える安倍首相だが、その目は笑っていない。
「石破(茂)本人と石破についた議員は徹底して干し上げる」
自民党内には安倍首相自身が語ったとされる言葉が大きな波紋を広げている。安倍側近が語る。
「総理は石破氏が総裁選で森友・加計学園問題を蒸し返そうとしていることに腸が煮えくり返っている。石破氏に味方した者も許さないつもりだ」
飛び上がったのは竹下派の議員たちだった。派閥会長の竹下亘氏が石破支持を正式表明し、自民党5大派閥の中で唯一、石破氏の援軍になると見られていたが、8月21日に開かれた安倍支持派閥の合同選対会議には、なんとその竹下派の事務総長が参加した。
同じ日には同派最高幹部の吉田博美参院幹事長が「(石破氏の安倍首相への)個人攻撃は非常に嫌悪感がある」と露骨に非難してみせた。石破陣営の切り崩しが始まったのだ。
安倍首相は議員の造反と党員票を不安視している。安倍支持を決めた派閥の中には、お友達優遇人事でいつまで経っても大臣になれない不満組の議員がかなりの人数にのぼる。総裁選の投票は無記名で行なわれるため、本番では思わぬ数の造反票が出る可能性がある。そうなれば首相は総裁選後に党内に一定の「反安倍勢力」を抱えることになり、いつ足をすくわれるかわからない。
そこで安倍陣営は面従腹背の造反者をあぶり出す準備をしている。
「総裁選の党員票は各県連ごとに開票するから、どの議員の選挙区に住む党員が石破氏に多く入れたかわかる。たとえ本人が安倍総理に投票したと言っても、地元から大量に石破票が出ていれば党員票集めをサボっていたのは明らかで、造反と見なされる」(細田派議員)
党員票での圧勝も至上命題だ。前回、石破氏と争った2012年の総裁選で党員票で完敗した安倍首相は、今回こそ党員票でも圧倒して見せなければ示しがつかない。そこで自民党執行部(総裁選挙管理委員会)は土壇場になって党員投票のルールを“安倍有利”に変更した。
党則では、総裁選の投票資格があるのは党費を連続2年納めた党員約90万人だが、今回は「18歳以上、20歳未満の党員にも選挙権を与えるため」という口実で特例として入党1年目(党費納付1回)の党員約16万人全員に投票権を与えることを決めた。
自民党は安倍政権下で党員拡大運動を展開してきた。新規党員の獲得者数がダントツに多かったのは安倍支持を決めている二階派。投票資格の拡大は、そのまま安倍総理の得票アップにつながる」(同前)という計算がある。
安倍首相がなりふり構わず党内の締め付けを強めていることこそ、党員や議員の批判票に怯える焦りの裏返しといっていい。

週刊ポスト2018年9月7日号