<原発のない国へ 全域停電に学ぶ> (2)稚内 再生エネ生かせず - 東京新聞(2018年11月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110502000121.html
http://archive.today/2018.11.05-003847/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110502000121.html

「非難ごうごうだよ。こんなにたくさん発電施設があるのに、何の役にも立たねえのかよ、って」
日本最北端の北海道・宗谷岬近くのガソリンスタンドの社長、安田龍平さん(56)が、九月六日未明に北海道地震で発生した全域停電を振り返った。周辺に数多くの風車が立ち並ぶというのに、知り合いのリース業者からディーゼル発電機を借り、普段より一時間遅れで開店にこぎ着けた。
岬のある稚内(わっかない)市は海に突き出た地形から、年間を通じて風に恵まれる。市は再生可能エネルギーを中心とした「環境都市」を宣言し、風力発電所の建設を推進している。
市内には八十四基(出力計約十万六千キロワット)の風車が立ち並び、発電能力は市内の電力需要を上回る。それでも、まる二日間、市内のほとんどで停電が続いた。
たくさんの風車は、停電で安全装置が働き、発電を停止。再開しようにも、北海道電力の送電網が、風力などの再生エネは出力が不安定だとして受け入れられない状態だった。「なぜ停電が続くのか」。市役所には、苦情に近い問い合わせが何件も寄せられた。

その中で、ほぼいつも通りの営業を続けたレジャー施設があった。東京ドームが十四個入る約六十五ヘクタールの広大な敷地に、ロッジやキャンプ場、パークゴルフ場などがある「道立宗谷ふれあい公園」。隣接地に、市が保有する大型蓄電池付き大規模太陽光発電所(メガソーラー)があり、直に送電線をつなぎ、ふだんから電力を受けていた。
メガソーラーはつくった電力を蓄電池にため、主に北海道電へ送っている。停電で保護機能が働き、いったんは送電を停止したが、市は朝のうちに、北海道電の送電網から切り離す「自立運転」に切り替え、再開。園の電力は全面復旧し、太陽光による電力のみで通常営業を続けた。
職員の田渕百合子さん(31)は「ひょっとすると対策本部をそちらに設置するかも、と市から言われました」と明かす。園内には二十六人の宿泊者がいたが、停電を知らない人もいたという。「停電でほかの宿泊先からこちらに来た人もいた。携帯電話の充電場所も提供しました」
メガソーラーと直につないでいたのはこの公園ぐらいで、市内の多くの民家や施設には電力を供給しようにも手がない。
この経験から、市は災害時も停電を回避できるように、風車や太陽光が生みだす電力を市内に直接供給するルートをつくれないか模索する動きを急速に強めている。
風車群の電力は声問(こえとい)変電所に集め、北海道電に売っている。市環境エネルギー課の市川正和課長は「災害時は、この変電所から市内各地に送電できないか。実現すれば、北海道電に頼らずに自立した電源を確保できる」とみている。
実現のためには、天候によって左右される再生エネの電力を、大型蓄電池などを使い安定させて送電網と結ぶ必要がある。市川課長は機運の高まりを明かす。「国の実証事業として、容量を増強するための新たな送電線建設が始まり、かつてない規模の大型蓄電池も併設される。こうした動きもにらみ、自立電源の確保につなげたい」 (山川剛史)

大阪入管 6人部屋に17人 24時間 超収容者「監禁」と非難 - 東京新聞(2018年11月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110502000111.html
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法務省大阪入国管理局(大阪市住之江区)の外国人収容施設で六月、最大六人用とみられる居室に収容者十七人が入ったまま、職員が二十四時間以上施錠を継続したことが四日までの大阪入管などへの取材で分かった。
収容者らは「狭い部屋への監禁」と非難。大阪入管は一室に集まった収容者が「罵声を発したり扉をたたいたりしたため秩序維持の観点から事故発生を懸念、施錠を続けた」と説明している。
入管収容に詳しい仲尾育哉弁護士は「入管側に収容に関する一定の裁量があっても長時間十七人を閉じ込める必要性があったのか疑問。裁量範囲を逸脱した疑いが強い」と批判している。
政府は外国人受け入れ拡大を目指す一方、現在日本に暮らす非正規滞在者対策は強化。入管施設では長期収容者が増えトラブルも相次いでいる。
問題の部屋の広さを大阪入管は「保安上の理由」から明かさないが、当時部屋にいたナイジェリア人男性(53)によると二十平方メートル前後とみられ、二段ベッドが三台ある。
男性や大阪入管によると収容者十七人は六月十七日、他室訪問が許される午前十一時半までの自由時間が終わってもこの部屋に集まり、入管の不十分な医療や長期収容を議論。自室への帰室命令を拒んだ。職員は昼ごろ施錠、後には部屋への電気供給を照明を除き遮断。収容者がたたき扉が緩んだとして職員が畳で封鎖するなど混乱した。翌日正午すぎ解錠した。
施錠中の十八日朝に大阪府北部地震が発生。気象庁によると住之江区は震度4だった。男性は「換気不足で気分が悪くなる人もいて何度も解錠を求めた。地震後はパニックに陥った」と証言。大阪入管は事態を「収容者が立てこもった」と強調、「地震後も支障ないと判断し施錠を継続した。職員の態勢が整い、自室へ帰室させ事態を収束させた」とした。

<入管施設への収容> 在留資格がなく、強制退去を命じられた外国人は東京、大阪などの地方入国管理局や東日本入国管理センター(茨城県牛久市)、大村入国管理センター(長崎県大村市)など全国17カ所の収容施設に拘束される。難民申請者も多い。収容者数は8月末時点で1409人。

重すぎるランドセルよりも…リュック活躍 軽くて体への負担減 地域で採用も - 東京新聞(2018年11月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201811/CK2018110302000185.html
http://web.archive.org/web/20181103112941/http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201811/CK2018110302000185.html


子どもたちの体への負担が指摘されている「重すぎるランドセル問題」。教科書の重量化や、教材の増加などが主な要因だが、かばん自体を少しでも軽くする選択もあるのでは。ランドセルよりも軽いリュック型を採用している地域や学校もある。どんな良さがあるのだろう。 (小林由比)
埼玉県本庄市立藤田小学校。下校時刻になり、黄色いリュックを背にした児童たちが校舎から次々に出てきた。児童120人余りの小さな学校だが、ほとんどの児童がこのタイプのかばんを使っている。3年生の女児は「ランドセルを使ったことがないから違いは分からないけど…。使いやすいです」と話していた。
同校が「ランリック」というこの製品を採用したのは40年以上前。岡田正則校長は「地域で、すっかり慣れ親しまれています」と話す。重さは700グラム程度。本革で1400グラム、人工皮革だと1200グラムくらいのランドセルよりずいぶん軽い。
荷物を出せば薄くなるので、ロッカーなどにしまう際に場所を取らないのも利点という。岡田校長は「動きやすく子どもの負担を軽くできる。遠足などにも使っています」と話す。
全国を見渡すと、リュックがメインの地域もある。その一つ、北海道小樽市では市内のかばん店が1970年に発売した「ナップランド」が今も多くの児童に使われている。
「小樽は坂が多く、冬は雪も多いので通学が大変。市内の学校の先生から相談を受け、先代が作ったものです」と、「バッグのムラタ」の村田達哉社長が教えてくれた。当時はランドセルの多くが本革製で、より軽いかばんを求める声から生まれたものだった。
A4の教科書などが入るようにしたり、色の種類を増やしたりと、ランドセル同様、時代に合わせて改良しているが、今も「できるだけ余計なものを付けずにシンプルに軽くが基本」だ。全国からの問い合わせも増えているという。

文科省「通学かばん定めなし」
ランドセル工業会によると、ランドセルが日本で初めて使われたのは1887(明治20)年。今も大多数の児童にとっては、ランドセルが標準だ。最近は人気商品が売り切れる前に入手しようと、早ければ入学の1年近く前から準備する「ラン活」という言葉まで登場し、こだわりを持って選ぶ家庭も多い。ただ、文部科学省によると児童の通学かばんについて「定めはない」。
リュック型が広く使われている京都府宇治市教育委員会で働く瀬戸俊輔さんは、娘も隣の久御山(くみやま)町で「ランリック」を使う。「娘からは重くてつらいという話は聞かない。私自身は子どものころランドセルだったので最初は驚いたけれど、地域の保護者から『ランドセルでなくては』という声はあまりない。価格が(一般的な)ランドセルの3分の1くらいなのも保護者にはありがたい」と話す。

同一労働・賃金の指針案 基本給の差 是正は限定的 - 東京新聞(2018年11月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018110502000119.html
http://web.archive.org/web/20181105000929/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201811/CK2018110502000119.html


厚生労働省は、正社員と非正社員の不合理な待遇差を是正する「同一労働同一賃金」を巡り、問題となる格差の具体例を示すガイドライン案をまとめました。パブリックコメント(意見公募)を今月中旬まで実施した上で、年内に正式に公表する予定です。正社員と非正社員の格差は縮小されるのでしょうか。 (編集委員・上坂修子)

Q 正社員と非正社員の待遇差は大きいのですか。

A 非正社員の賃金水準は正社員の六割弱にとどまります。パートや有期契約の非正規で働く人は二千万人を超え、労働者全体の約四割まで増えているので、政府は格差を是正したいと考えています。

Q どのくらいまで格差を縮めたいの。

A 「欧州並み」の八割程度に縮める目標を打ち出し、不合理な待遇格差の禁止を盛り込んだ「働き方」関連法が先の通常国会で成立しました。大企業と派遣社員は二〇二〇年四月、中小企業は二一年四月に実施されます。その前に、どんな場合に違法となるかを示すのがガイドラインです。

Q 具体的な内容は。

A 有期契約社員やパート、アルバイトの場合、時間外労働手当や通勤手当、出張旅費などの手当は正社員と「同一の支給」を求めています。慶弔休暇の取得や食堂、休憩室の利用など福利厚生でも、同じ待遇にすべきだとしています。

Q 賃金の大きな比重を占める基本給については。

A (1)能力や職業経験(2)業績・成果(3)勤続年数−の要素ごとに評価し、評価が同じならば同水準、違いがある場合は違いに応じた支給としています。能力や職業経験に客観的な評価基準はないので、是正の効果は限定的だとの見方が強いですね。賞与に関しても、業績への貢献に応じた支給とし、違いを認めています。

Q 派遣社員に関してはどうですか。

A 有期契約やパートと同様の方式が原則です。派遣会社が労働者の過半数と労使協定を結べば、賃金などの待遇を決められる仕組みもあります。この場合、派遣社員の賃金が「同種の業務で働く一般労働者の平均額を下回らない」という条件が付いています。

高市氏の私案 国会の機能を弱めるな - 東京新聞(2018年11月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018110502000138.html
http://web.archive.org/web/20181105001120/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018110502000138.html

全国民を代表する国会の立法、国政の調査機能を強化するのならまだしも、高市早苗衆院議院運営委員長が目指す改革は、逆に国会を弱体化させかねない。考えを根本的に改めるべきではないか。
開いた口がふさがらない。高市氏が先月二十五日、自民党小泉進次郎厚生労働部会長ら国会改革を求める超党派議員に示した「私案」である。「議院運営委員長として実現を目指す事柄」と題する文書で政府提出法案の審議を優先し、議員提出法案の審議や一般質疑は「会期末前に残った時間」を充てるとの考えを示した。
「審議の充実」や「議員立法の増加」を掲げてはいるが、政府提出法案の審議に協力しなければ、野党提出法案を審議する時間がなくなるぞ、と脅すも同然である。
憲法は国会を唯一の立法機関と定める。政府提出法案の審議とともに、議員自らが必要な法律を制定する重い役割を課したものだ。
しかし、国会では政府の法案審議が優先され、議員立法、特に野党の法案が成立する例は極めて少ないのが実態だ。七月に閉会した通常国会では原発ゼロ基本法案や児童虐待防止法の改正案など野党の法案は審議すらされなかった。
議員立法の増加を目指すなら、政府提出法案よりも与野党に関係なく議員提出法案の審議を優先させるべきではないか。高市氏の私案は憲法の趣旨に逆行する。国会は政府の下請け機関でないことをあらためて自覚すべきだろう。
国会が持つもう一つの機能が、国政の調査だ。憲法は衆参両院に「国政に関する調査」を行い、証人の出頭や証言、記録提出を要求できる権限を与えている。
とはいえ国会がこの機能を十分に果たしているとは言い難い。改革するのなら、国政の調査や行政監視の機能を強化すべきだが、高市氏は、法案以外の課題全般を議論する一般質疑は会期末前の残り時間でやれと言う。そんなことで国会の役割を十分に果たすことは難しい。考え違いも甚だしい。
高市氏の「改革」の狙いは、野党の質問時間を減らし、追及を封じ込めることにあるのではないかと疑われても仕方がない。
野党側の反発で、高市氏は私案を撤回したが、「改革の気持ちは変わらない」とも述べている。今後、自らの立場を利用して強引に進めることがあってはならない。
円滑な運営に努めるべき議運委員長自らが本会議開会を四十五分遅らせる原因をつくった。その責任の重さも痛感すべきである。

(書評)国語教育の危機 紅野(こうの)謙介著 - 東京新聞(2018年11月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018110402000195.html
http://web.archive.org/web/20181105001238/http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018110402000195.html

◆改革の「押しつけ」を憤る
[評]高原到(批評家)
国力の基盤は教育にある。教育の根幹には、コトバによる物事の理解がある。急激な人口減少によって、あらゆる分野で難問が出来すると見こまれる日本の未来において、「国語教育」の重要性を否定する者はあるまい。だが現状はすこぶる暗い。情報学者の新井紀子によれば、教科内容の理解どころかそもそも教科書が読めない子どもたちが増えている。PISA(国際的な学習到達度調査)において、日本の十五歳児の「読解力」ランキングも急降下中だ。窮状を打破するという名目で登場したのが、二〇二一年から「センター試験」に代わって実施される、「大学入学共通テスト」である。
改革の目玉の一つが、「国語」への記述式問題の導入だ。しかし本書が暴露するのは、サンプルとして発表された問題例の、目を覆いたくなるばかりのお粗末さだ。(1)無署名の「資料」、それも「契約書」や「校則」といった規範(ルール)の参照や適用が中心で、「公共性の押しつけ」という権力性が露(あら)わなこと。(2)複数の「資料」を総合的に把握するという方針ばかりが一人歩きし、肝心の問題の精度がずさん極まりないこと。(3)膨大な答案を短期間に処理するという無理が採点方法に歪(ひず)みをもたらしていること。
この三重苦にあえぐ記述式問題は、「国語」を救うどころか、むしろ破壊するというのが、「国語教育」に長年のあいだ真摯(しんし)に関わってきた著者の切実な主張である。
著者の慨嘆を継いで、さらに書きくわえよう。このままいけば、二○二一年以降、記述式問題は各方面から集中砲火をくらって迷走をくりかえすにちがいない。苦しむのは誰か? むろん受験生だ。未整理な採点基準に翻弄(ほんろう)されもするだろう彼らは、「センター試験」時代には可能だった、正確な自己採点に基づく出願校の選択という、主体性を発揮するわずかな機会すら強奪される。教師・生徒を問わず、すべての「国語」教育関係者は、著者とともに怒り、叫ぶべきである。「必要なのはこれではない!」と。

ちくま新書・950円)

1956年生まれ。日本大教授。著書『書物の近代』『検閲と文学』など。

◆もう1冊
鳥飼玖美子(くみこ)著『英語教育の危機』(ちくま新書)。英語教育「改革」を批判。

いじめ根絶 語り合おう 元小学校長呼び掛け 18日、学芸大で:首都圏 - 東京新聞(2018年11月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201811/CK2018110302000165.html
http://web.archive.org/web/20181105001346/http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201811/CK2018110302000165.html

認知件数が過去最多となったいじめについて、専門家とともに一般の人が根絶策を考えようと「いじめ問題ワールドカフェ」が18日、東京学芸大学(東京都小金井市)で開かれる。いじめ根絶に取り組んだ元小学校長の仲野繁さん(64)が共同代表を務める一般社団法人「ヒューマンラブエイド」が主催する。 (井上靖史)
会場では五人ずつ十組のテーブルに分かれ、通報内容のより丁寧な処理など、いじめ解決に向けた新しい方法をテーマに自由に議論する。各テーブルでメンバーを二度、入れ替える。超党派国会議員の勉強会で、いじめ防止対策推進法などについて意見を求められた仲野さんが、集約した意見を参加者に報告するとともに、国会議員への提言も検討している。
仲野さんは「現実に起きているいじめに対し、専門家の意見が即していないこともある。一般の方の意見を聞くことが重要だ」と呼び掛けている。いじめ問題に詳しい弁護士や臨床心理士らが参加。教員を目指す大学生も加わる予定だ。
仲野さんは二〇一二年、足立区立辰沼小学校の校長として児童約二百人で組織する「レスキュー隊」が休み時間に教室を巡回することで、いじめをほぼ根絶する仕組みを築いた。「全校の四割の児童が交代で回り、いじめている子にとって数的にも不利だと見えるようにした」と話す。
十八日午後二時から。会場は小金井市貫井北町の大学講義棟のS201・202教室。五十人限定で参加費千円。希望者はメールに名前、連絡先と簡単な職業を記載して申し込む。アドレスは、info@humanloveaid.com。問い合わせは仲野さん=電090(5411)0612=へ。

<金口木舌>チャグムと沖縄 - 琉球新報(2018年11月5日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-829203.html
http://web.archive.org/web/20181105001500/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-829203.html

綾瀬はるかさんが主演したテレビドラマ「精霊の守り人」。架空の世界を舞台に精霊を巡る冒険や国と国の争い、不条理にあらがう人々を描く。3部作が今年2月まで放送された。原作は上橋菜穂子さんの小説

▼主人公の一人チャグムに対し、強国の王子は服従を迫る。強大な権力を誇示した後、穏やかな口調で告げた。「おれの翼の下に入ることを選べば、豊かな暮らしをあたえてみせる」
▼帰国の船でチャグムは想像する。「けっきょく手先となり、民は隣国を攻める長い戦に駆り出されるだけだ」。暗い未来を避けるため監視を逃れ海に飛び込み、国の危機を救う旅に出る
▼チャグムと沖縄が重なる。政府は「沖縄に寄り添う」と繰り返すが、実態は依存。名護市辺野古の海には耐用年数200年ともいわれる新基地の建設を強行する。基地と振興策のリンク論もはばからず、意に沿わない沖縄には兵糧攻めをにおわす
日本国憲法は3日で公布から72年。安倍晋三首相は自衛隊明記を主張し、改憲へのアクセルを踏む。今国会でも「今を生きる政治家の責任だ」と持論を展開した
▼「戦争が起きてしまったら、責任は政治家だけではなく、その時代に生きたすべての人にあると思う」は上橋さんの言葉。首相の語る責任の範囲に沖縄は入っているのか。未来への責任は沖縄にもある。だからこそ異を唱え、あらがう。