解雇の実習生、続々帰国 日立の計画通らず在留資格失う - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000237.html
https://megalodon.jp/2018-1119-1547-58/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000237.html

日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)のフィリピン人技能実習生が実習期間を残し、相次ぎ解雇されている。日立の実習計画が認可されず、在留資格がなくなったことが理由。元実習生は、関係機関の柔軟な対応がないまま帰国に追い込まれており、現行制度を問題視する声が上がる。
これまでに解雇されたのは九十九人。十八日には二十人がフィリピンに戻った。ある元実習生は「日立は一流の企業だと思っていた。できれば実習を続けたかった」と嘆く。
笠戸事業所では鉄道の車両を製造。九十九人は三年間で、配電盤や制御盤など電気機器を組み立てる技術を習得する予定だった。
だが法務省と監督機関の外国人技能実習機構が七月、目的の技能を学べない作業に従事させられている疑いがあるとして事業所を検査。日立が機構に出した実習計画が認可されない状況が続いている。九十九人は実習期間が一〜二年ほど残っていたが、「技能実習」の在留資格の期限が更新できず、日立が解雇した。
広島市の労組「スクラムユニオン・ひろしま」によると、電線を束ねたり、窓枠を運んだりする雑務ばかりだったと証言する実習生がいるという。
だが日立は「実習計画に沿って適切に実習した」と強調。「計画が認められれば、また働いてもらいたい」としている。実習が中止になれば、元実習生に残りの期間の賃金補償をする。
国士舘大鈴木江理子教授(労働社会学)は「本人の責任ではなく実習が続けられなくなった場合、現行制度では実習生を保護する規定が不十分だ」と指摘した。

◆「もっと働きたかった」20代男性、2年残し比へ

「もっと日本で働きたかった」。笠戸事業所で技能実習生として働き、約二年を残し解雇されたフィリピン人の二十代男性が十八日に帰国した。
実家はコメ農家で、十代後半で父が亡くなってからは、一家の大黒柱として働き家計を支えた。妹の学費も払い続けた。
「給料はフィリピンの三倍。日本で働きたい」と、訓練学校に入学。日本語から箸の持ち方まで勉強し、配電盤の仕事をするつもりで来日した。だが割り当てられたのは、本来の実習とは思えない新幹線の天井などの組み立て。疑問に感じる日々が続いた。
職場の日本人の同僚と仕事帰りに一緒にビールを飲み、日本料理を振る舞ってもらったこともある。帰国が決まると、同僚は「寂しいが自分にはどうしようもない。また戻ってきて」と告げたという。
支援した労組「スクラムユニオン・ひろしま」によると、実習生の基本賃金は月約十三万五千円で残業代が加わる。男性は月給の七割を母に送金。「お金はいつもなかった。目玉焼きやゆで卵をおかずにして食べた」という。「本当はもっと日本で仕事を続けたい」と繰り返した。

<外国人技能実習制度> 外国人を企業などが受け入れ、習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらう制度。1993年に創設され、期間は最長5年間。対象となる職種は16日時点で農業、建設、食品製造、介護など80に上る。6月末時点での実習生は約28万人でベトナム、中国、フィリピンの順に多い。時間外労働や賃金不払いなどの問題点が指摘されている。

給食完食、強要やめて=相次ぐ不登校、訴訟も−支援団体に1000人相談 - 時事ドットコム(2018年11月19日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018111900119&g=soc
http://archive.today/2018.11.19-064017/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018111900119&g=soc

小中学校で教員に給食の完食を指導されたことがきっかけで不登校や体調不良になったなどの相談が昨年5月〜今年9月、支援団体に延べ1000人以上から寄せられていたことが19日、分かった。完食指導が訴訟に発展した例もあり、支援団体は「給食は本来、楽しく食べて、食事の大切さを学ぶ場。強制は絶対にやめて」と訴えている。
支援団体は一般社団法人「日本会食恐怖症克服支援協会」(東京都渋谷区)。昨年5月に協会を設立した山口健太代表によると、相談は無料通信アプリ「LINE(ライン)」などを通じ、最大で1日20人から寄せられ、9月末までに生徒や保護者ら延べ1000人に上った。生徒や保護者らが集まって悩みを共有する場も毎月設け、東京や大阪、愛知など6都府県で計17回開いた。
相談内容は「完食指導に我慢できず、小学3年から不登校になり、対人恐怖症になった」「幼稚園登園を渋るようになった」「野球部での食事指導で、1年間吐き続けた」などさまざま。転校を余儀なくされた例もあった。
給食指導をめぐっては、当時通っていた小学校で教諭に牛乳を無理やり飲まされ心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、不登校になったとして、今年4月に男子中学生と両親が静岡県長泉町に慰謝料を求める訴訟を起こしている。
同協会への相談者は、過去の完食指導がきっかけで人前で食事ができなくなった20、30代が全体の8割を占め、うち7割が女性という。
指導の背景には食品ロス削減の観点もあるが、山口代表は「残飯ゼロは理想だが、問題は進め方だ。子どもはそれぞれ食べられる量が違う上、『食べろ』と言われるとますます食べられなくなる」と強調。「食べなければ、好き嫌いをなくすきっかけすらなくなる。適切な量を楽しく食べる環境をつくってほしい」と話している。

第三者委のいじめ調査 被害者への誠実な説明を - 毎日新聞(2018年11月19日)

https://mainichi.jp/articles/20181119/ddm/005/070/048000c
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子供が自殺を図るまで追い詰められたいじめは、なぜ起きたのか。原因を解明し、再発防止につなげるはずの第三者委員会が機能していない事例が相次いでいる。
調査に取り組む姿勢と、家族への説明が極めて不十分だ。家族の不信感が募るのは当然である。
大津市で中学2年の男子生徒が自殺した事件を機に2013年、いじめ防止対策推進法ができた。
同法に基づき、子供の心身に重大な被害があったり、長期間の不登校になったりした場合は「重大事態」として、教育委員会や学校は民間の識者などで構成する第三者委員会を設置する。文部科学省ガイドラインは第三者委が被害者に寄り添い、解明した事実を丁寧に説明するよう求めている。
山梨県北杜市で昨年11月、自殺を図った中1の女子生徒(14)のケースでは、学校側は「重大事態」と認めず、第三者委を置かなかった。家族の要望を受けてようやく設置したが、第三者委のメンバーや選定理由について「公平性・中立性は確保されている」として開示を拒んだ。
埼玉県川口市では中3の男子生徒(15)が3回自殺を図り、不登校になった。市教委は第三者委の内容だけでなく、設置したことさえ生徒側に伝えていなかった。
教委や学校が原因究明に消極的なうえ、第三者委が被害者側と信頼関係を築いていないことが、こうした姿勢に表れている。いじめを早く発見し、被害拡大を防ぐ法律の趣旨に反するのは明らかだ。責任追及を避ける保身と見られても仕方がない。
神戸市では当時14歳の女子生徒が自殺した問題で、学校は同級生らに聞き取りしたメモを教委幹部の指示で隠蔽(いんぺい)し、第三者委はメモが「破棄された」とする報告書を作成していた。被害者側にすれば学校や第三者委が一体に見えるだろう。これでは報告書を信じられるはずがない。
文科省は第三者委の問題点を検証し、対策を講じるべきだ。
北杜市の女子生徒は原発事故で故郷の福島県南相馬市を離れ、いじめに遭った。毎日新聞の取材に「もっとつらい人もいるんだと思って耐えてきた」と語った。
彼女たちの叫びを、教育界は受けとめているだろうか。

<税を追う>歯止めなき防衛費(6)対外有償軍事援助 米優位 もの言えぬ日本 - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000116.html
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いつ電話してもつながらず、留守電に要件を吹き込んでも連絡がない。らちが明かずワシントン郊外の米国防総省から一キロ先の米軍のオフィスに乗り込んだ。中に入ると、あちこちで電話が鳴っていた。それでもスタッフらは構わずに目の前の業務を続けていた。
これは二十年ほど前、米国駐在だった防衛省職員が目にした「対外有償軍事援助」(FMS)を巡る米側の対応だ。米国から兵器を輸入する際、FMSでは米政府が窓口になる。
職員は「米軍の担当者は高飛車というか、売ってやっているという、上から目線を感じた」。防衛装備庁有償援助調達室の森伊知朗室長は「今も状況はほとんど変わらない」と語る。
FMSは米国に有利な取引で、価格や納期は米側が主導権を握る。昨年十月、会計検査院が装備庁に注文を付けたFMS取引の不備は、米国にもの言えぬ日本の立場を物語るものだ。
パーツ番号が合わない、数量が異なる、空欄のままになっている…。検査院が調べたところ、早期警戒機など二〇一四〜一五年度の六十四契約(総額六百七十一億円)すべてで、米側から届いた納品書と精算書の記載に食い違いがあった。検査院の担当者は「官の会計処理としてありえない」とあきれる。
しかも、食い違いは常態化していた。原因は米側にあるというのに、森室長は「こういうものだと思って米政府には改善を求めてこなかった」と釈明する。
契約金額は高額で、一歩間違えば日本に大きな損失が出る。米側に請求ミスがあっても、一年以内に通知しなければ補償してもらえない。にもかかわらず、確認を求めても回答は遅い。
検査院によると、米政府から「あまりに問い合わせが多いので、もっと絞ってくれ」と言われた職員までいたという。
食い違いを米側に問いただすのは最終手段で、米軍サイトで照合したり、書類の別の記載で類推したりしていたという。結果的にチェックは甘くなる。検査院は「十分に疑義を解明しないまま、装備庁は精算していた」と指摘する。
「日本は足元を見られている」。そう語る元航空幕僚長田母神俊雄氏も、かつてFMS取引の理不尽さを味わった一人だ。
空幕装備部長だった約二十年前のこと。「リンク16」と呼ばれる米軍の情報共有システムの導入を決めた途端、米国は価格を一億三千万円から二億五千万円に引き上げてきたという。
「米軍幹部に直接、『信義にもとる』と抗議すると一カ月後、元の価格に戻った」と田母神氏。「なぜ価格が上がったのか、なぜ元に戻ったのか説明もない。FMSって常に米国の勝手なんですよ」。今も米国の言い値であることに変わりはなく、FMSへの依存度を強める日本の将来に危機感を抱く。
昨年十二月、検査院に背中を押されるように装備庁は、米政府に納品書と請求書の食い違いがないように求めた。だが米側の対応は鈍い。今年一〜八月の六十六契約のうち、食い違いは実に七割超の五十契約(総額二千百八十億円)で見つかっている。

ソ連兵「性接待」被害を刻む 旧満州黒川開拓団 岐阜・白川町「乙女の碑」 - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000115.html
https://megalodon.jp/2018-1119-0940-28/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111902000115.html

満州中国東北部)に開拓団として渡り現地で亡くなった女性を悼む岐阜県白川町の「乙女の碑」で十八日、新たな碑文の除幕式が行われた。終戦後、団の安全の見返りに旧ソ連兵への「性接待」を強いたことを明記した。
性接待は、一九四五年九月から十一月ごろにかけて、旧黒川村(現白川町)などから渡った黒川開拓団であった。新たな碑文には数え年で十八歳以上の未婚女性十五人にソ連兵への性接待を強い、このうち四人が性病などで死亡したことを記した。
団は四六年に日本へ引き揚げた。碑文は、当事者の佐藤ハルエさん(93)の「私らの犠牲で帰ってこれたということは覚えていて欲しい」との言葉を紹介。「史実を正しく伝えるとともに、平和の大切さを伝えていきます」と結んだ。
乙女の碑は八二年、旧満州黒川開拓団・黒川分村遺族会が設置した。ただ当時は女性や家族からの反対があり、性接待の説明は一切なかった。今回、遺族会が女性らの理解を得た。
除幕式では遺族会の藤井宏之会長が「犠牲になった女性におわび申し上げる。悲劇を繰り返さぬよう責務を果たしていく」と述べ、佐藤さんが「碑を大切にしてほしい」と訴えた。
長野県阿智村にある満蒙開拓平和記念館の寺沢秀文館長は「開拓団の負の歴史が語られることは少なく、新たな碑文には価値がある」と話した。

満蒙開拓団「性接待」の碑文完成 敗戦直後の悲劇伝える - 朝日新聞(2018年11月18日)

https://www.asahi.com/articles/ASLCL2R5DLCLOIPE002.html
http://archive.today/2018.11.19-004205/https://www.asahi.com/articles/ASLCL2R5DLCLOIPE002.html

敗戦直後の中国東北部(旧満州)にいた開拓団の仲間を守るため旧ソ連兵らを「性接待」し、現地で亡くなった4人の女性を悼む岐阜県白川町の「乙女の碑」に当時の経緯を伝える碑文ができ、18日に除幕された。生き残った女性や遺族ら約60人が集まり、悲劇を語り継ごうと誓った。
性接待は岐阜県の旧黒川村(現白川町)などから吉林省陶頼昭に入植した黒川開拓団で1945年9〜11月にあった出来事。現地住民による略奪暴行から保護してもらう見返りに、旧ソ連兵に17〜21歳の未婚女性約15人が差し出された。戦後伏せられ、82年に慰霊のために乙女の碑が建立されたが、建立の理由を説明する碑文はなかった。
碑文を記した説明板は縦1・2メートル、横1・7メートルのステンレス製。関東軍が先に撤退し、開拓団が取り残された史実から、「生きるか死ぬか」「女性たちは(中略)『嫌だ』とは言えず」と生々しい言葉で、当時の経緯がつづられている。全体で4千字を超える異例の長さで、「引き揚げ後も、恐怖は脳裏に焼きつき、そのうえ中傷もされた」と戦後の状況にも触れている。
「黒川分村遺族会長」の藤井宏之さん(66)は女性たちの犠牲や、戦後も公に感謝を伝えてこなかったことについて何度も言葉に詰まりながら、「罪深く申し訳ない気持ちでいっぱいです。助けられた親の息子として責任を果たしたい」とあいさつした。数少ない健在の当事者の女性の一人、岐阜県郡上市の佐藤ハルエさん(93)は「仲間も供養を喜んでいる」と話した。元開拓団員の男性がハーモニカで「故郷」を吹いて、慰めた。

就労外国人 日本語教育 政府の態勢は心もとない - 毎日新聞(2018年11月19日)

https://mainichi.jp/articles/20181119/ddm/005/070/049000c
http://archive.today/2018.11.19-004342/https://mainichi.jp/articles/20181119/ddm/005/070/049000c

外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、最も重視しなければならないのが日本語教育だ。日常会話など基本的な日本語能力を身につけなければ、日本社会で生活するのは難しい。
ところが、入管法改正案は、日本語教育を法律事項として規定していない。今後その取り組みについて法務省令で定めようとしているが、政府の態勢は心もとない。
一定の技能があれば業務に就ける「特定技能1号」は、日常会話以上の日本語能力が求められる。ただし、3年以上の経験を経た技能実習生は無試験で移行できる。政府は、1号には多くの技能実習生が移行すると見込んでいる。
技能実習の過程で日本語を習得させればいい。そうすれば日本語教育にかけるコストも最小限に抑えられる−−。そんな本音がのぞくような政府の対応だ。
技術移転を名目としながら、実際には低賃金、長時間の労働を強いる技能実習制度の問題は大きい。
その技能実習制度の下での日本語講習が充実しているとはとても言えない。日本語学校から教師を派遣してもらう都合がつかなければ、受け入れに当たる業界の監理団体の職員が教えることがあるという。
国土交通省が建設分野の実習生に聞き取りした調査では、日本語のコミュニケーション能力が問題視され、現場に入れなかった例もあった。
1号の資格を得れば、5年間という長期の在留が認められる。やはり専門的な教育機関の活用が欠かせない。その中核になるのが、全国に700校近くある日本語学校だろう。
技能実習生や留学生が増えるのと軌を一にして、日本語学校は急増中だ。ただし、日本語教師は総じて給料が安く離職率が高い。全体として不足していると言われている。
政府は、日本語教師の資格を公的に認定することで、教師の質の向上や定着を図る方針だ。だが、それだけでは十分ではない。
外国人に対する日本語教育は、これまで地方自治体や、地域で日本語教室を開くNPO任せで、こうしたところへの支援は乏しかった。
政府は必要な財政措置を取り、日本語教育を下支えする体制を構築すべきだ。受け入れの拡大は、それとセットで行う必要がある。

外国人実習生 人権侵害を続けるな - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111902000153.html
https://megalodon.jp/2018-1119-0944-14/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111902000153.html

一緒に働く仲間としての待遇だとはとても思えない。外国人技能実習生が残業代支払いを求めた訴訟で明らかになった労働実態は人権侵害の典型例だろう。いつまでこんな受け入れを続けるのか。
働く仲間として迎えられないのなら、技能実習制度は廃止の議論をすべきではないか。
確認しておきたい。
技能実習制度は、外国人を日本の企業や農家などに受け入れ学んだ技能を母国で役立ててもらうことを目的とする。現在、実習生は約二十七万人いる。
ただし、労働法制上は雇用される労働者と認めて保護している。労働時間規制を受けるし最低賃金も守らねばならない。労働災害に遭えば補償も受けられる。
だが、多くは安価な労働力として単純な作業に就いているのが実態である。
以前から、低賃金や長時間労働、暴行・脅迫、十分な安全教育がないことによる労災などが問題になっている。人権侵害が国際社会からも問題視されている。
実習生として五年前、茨城県内の大葉農家で働いていた中国人女性の訴えは氷山の一角だろう。日中の勤務後、夜間に大葉を十枚ずつゴムで束ねる作業を一束二円でやらされていた。九日の水戸地裁の判決はこれだと時給四百円にしかならず残業代の未払いがあるとしてその支払いを命じた。
農家からのセクハラ行為への損害賠償請求は棄却された。女性の訴えではセクハラ被害も日常的で悪質である。女性のショックは計り知れない。
実習生は転職が難しい。しかも多くは来日を仲介する業者に保証金や手数料を払っている。職場放棄すれば保証金が没収されるなどするため、人権侵害に遭っても声を上げづらい。女性も約七十万円を払っていたという。やむにやまれず職場を離れる人は今年半年で四千人を超えた。制度の欠点だ。
政府は昨年、人権侵害への罰則や監督の強化を盛り込んだ技能実習適正化法を施行した。だが、この欠点は改善されていないのではないか。監督も十分に行き届いていないようだ。
政府は新たな在留資格を設ける方針だが、実習制度を温存したままでは理解に苦しむ。
制度を廃止し、その上で外国人をどう受け入れていくのか、社会保障や教育、住宅政策なども含め中長期的な視点で検討すべきだ。来年四月からの新制度スタートはあまりに急ぎすぎている。

(失踪実習生誤データ)国会審議の前提崩れた - 沖縄タイムス(2018年11月19日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/346545
https://megalodon.jp/2018-1119-0945-26/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/346545

外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案を巡り、衆院法務委員会の審議入りが延期となった。
失踪した外国人技能実習生を対象に、法務省が実施した調査結果に重大な誤りがあったからだ。またしても政権に都合の悪い情報を隠そうとしたのではないかとの疑念が消えない。
失踪後に同法違反容疑で摘発された技能実習生2870人に対し昨年調査し、概要を今国会で示していた。
当初、全体の約87%が「より高い賃金を求めて」失踪したと説明していたが、実際は約67%が「低賃金」が動機だったと訂正したのである。
失踪動機の選択肢にあった「低賃金」「契約賃金以下」「最低賃金以下」の3項目のいずれかにチェックを入れた人を、選択肢にはなかった「より高い賃金を求めて」という新たに作った項目に一括して集計したという。
法務省は「担当者の理解不足」と強調するが、にわかには信じがたい。「改ざん」といわれても仕方がない。
訂正後の集計では、月額給与10万円以下が半数以上を占めた。安い労働力として技能実習生が使われている実態が浮き彫りになった。
失踪動機として「指導が厳しい」が5・4%から12・6%に、「暴力を受けた」も3・0%から4・9%に増えた。暴力やハラスメントといった劣悪な労働実態を隠蔽(いんぺい)する意図も見え隠れする。
法務省は誤データを作成するに至る経緯を徹底検証し、公表する義務がある。

    ■    ■

法案を議論する前提となるデータの誤りは今年2月、働き方改革関連法案でもあった。安倍晋三首相は「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方に比べれば一般労働者より短い」と答弁していたが、厚生労働省のデータに疑義があることが判明。裁量制の拡大は働き方改革関連法案から削除された。
森友学園へ国有地が大幅に値引きされて売却された取引を巡っても財務省が決裁文書を改ざんしていたことが明らかになった。
公文書をないがしろにするのは安倍政権のあしき特徴である。技能実習生のデータも本来なら、解決を図るべき多くの課題を示しているのに、逆に隠そうとしているとしかみえない。
外国人労働者の受け入れ拡大は社会を大きく変えることにもつながる法改正である。人手不足が深刻だからといって産業界の求めに応じ、結論ありきで進めてはならない。

    ■    ■

政府は、外国人労働者の受け入れ見込み数と業種をようやく提示した。同法が改正されれば、2019年度から導入される新たな在留資格で、5年目までに累計で14業種、最大34万5150人を受け入れる。ただ数字は業界の推計を積み上げたもので積算根拠が不明確である。求められる技能などの受け入れ要件も固まっていない。
新制度で受け入れを見込む外国人のうち初年度は5〜6割が技能実習生からの移行を想定している。
問題の多い技能実習制度の見直しをせず、新制度を導入するのは混乱を招くだけだ。

(私説・論説室から)特定秘密の現状は? - 東京新聞(2018年11月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018111902000151.html
https://megalodon.jp/2018-1119-0947-57/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2018111902000151.html

学校法人加計学園森友学園陸上自衛隊の日報問題で行政文書が極めてずさんな管理下にあることが判明した。では、その中身さえ明らかにされない「特定秘密」の扱いはどうであろうか。
ヒントは衆議院情報監視審査会が提出した年次報告書にある。二〇一六年中に廃棄された特定秘密文書は約四十四万件ある。保存期間が一年未満の文書だ。多くは原本や写しがあるというが、問題は件数の異常な多さだ。
特定秘密の定義は「安全保障の情報のうち特に秘匿することが必要であるもの」だ。日弁連は興味深い見解を示している。
<一年間に約四十四万件もの特定秘密文書が廃棄されている実態は、特定秘密指定の外延が過度に広範に及んでいるのではないかという疑念さえ抱かしめかねないものである>
つまり本来、特定秘密に当たらない情報まで秘密指定している疑いがあるというのだ。法案審議の段階で、役所の恣意(しい)的な秘密指定が横行するのではと指摘された点だ。
役人の公文書改ざんまで明らかになった今日、秘密保護法の在り方も再考すべきではないか。誰が、どんな目的で、どのように特定秘密を利用していたか−。それが確認できる制度でなくてはならない。少なくとも保存期間は一年以上で、明確な基準もいる。検証可能な制度にしないと、国民の「知る権利」に背くことにもなる。 (桐山桂一)

核廃絶と日本 「橋渡し」とは言えない - 朝日新聞(2018年11月19日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13775147.html
http://archive.today/2018.11.19-000419/https://www.asahi.com/articles/DA3S13775147.html

意見が異なる二つのグループを橋渡しするとは、双方から信頼され、接点を設けながら打開策を探ることだろう。
日本は、核兵器禁止を求めるグループと、核保有国を中心に核の抑止力に頼るグループの橋渡し役を自任する。しかしその現実は、成果をあげられていないどころか、唯一の戦争被爆国として得てきた信用がますます揺らぎかねない状況だ。
今月初め、軍縮を協議する国連総会第1委員会で、核を巡る二つの決議案が採決された。
一つは、昨年7月に国連で採択された核兵器禁止条約の署名・批准を求める決議案。120カ国超の賛成で採択されたが、日本は米国、ロシアをはじめとする核保有国などとともに反対した。条約には当初から一貫して距離を置いている。
条約を推進する国から、再び日本への落胆と批判が漏れた。広島と長崎の被爆者も条約締結を待望しており、「裏切られた」との声が改めて広がった。
もう一つは、日本政府が主導した核兵器廃絶の決議案だ。160カ国の賛成を得て25年連続で採択されたが、昨年に続いて核禁条約に触れず、条約推進国には棄権が目立った。
保有国も、昨年は賛成した米と仏が棄権した。今年の決議が昨年より核軍縮のトーンを強めたことが影響したようだ。
「橋渡し」は迷走しているのではないか。そんな危機感が強まっている。
広島市長が会長を務める平和首長会議は今月上旬、大半の市区町村が名を連ねる国内加盟都市会議を岐阜県で開いた。会場では「橋渡し役をどういう形で実現してくれるのか」と不安が聞かれ、安倍首相宛ての要望に核禁条約の締結を盛り込んだ。
日本政府が主催する「賢人会議」は、国内と核保有国、非保有国の有識者とともに、「橋渡し」の道を考えるのが狙いだ。
今月中旬に第3回会合が長崎市であった。「原子雲の下にいた人間がどうなったか、そこをふまえて安全保障を議論してもらいたい」(田上富久・長崎市長)との声が寄せられていたが、被爆者やNGOは会議に不満を募らせ、賢人会議の有識者との面会では「橋渡しはただ傍観することではない」といった発言も飛び出した。
日本政府は、被爆国としての原点に立ち返るべきだ。
被爆者の声を受け止め、核兵器の非人道性を訴える。米ロ両国が核兵器を重視・強化する姿勢を見せているだけに、「核なき世界」への責任と役割の大きさを自覚しなければならない。

B52墜落から50年 命脅かす駐留許されない - 琉球新報(2018年11月19日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-836085.html
http://archive.today/2018.11.19-005012/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-836085.html

1968年11月19日に米軍のB52戦略爆撃機が離陸に失敗し、嘉手納基地に墜落してから、きょうで50年を迎えた。その後も米軍機は墜落を繰り返している。県民の生命を危険にさらす環境は50年前も今も変わっていない。基地ある限り、同じ状況が続くのか。それを県民が引き受け続けるのはあまりに理不尽だ。
7日前には南大東島の南西約140キロ沖にFA18戦闘攻撃機が墜落している。沖縄では72年の日本復帰から46年間で50機の米軍機が墜落した。年1回以上の頻度で、米軍機が空から落ちている。極めて異常ではないか。
50年前に事故を起こしたB52は68年2月から嘉手納基地で常駐を開始した。当時、米国が戦争をしていたベトナムで絨毯(じゅうたん)爆撃を繰り返しており、多くの住民の命を奪った。このためベトナムでは「死の鳥」と呼ばれていた。
事故当日も6機がベトナム出撃のため嘉手納基地を60秒間隔で離陸し、墜落したのは5機目の機体だった。20トンの爆弾を搭載していたため、墜落後、これらの爆弾も激しく爆発を繰り返した。
沖縄から飛び立った爆撃機が当時、これらの爆弾をベトナムの人々に投下し続けた。あまりにも非人道的で残虐な行為だ。沖縄戦で肉親を奪われた住民は、やりきれない思いで出撃を見つめるほかなかった。
地響きと爆風にさらされた近隣の住民は嘉手納基地がベトナム戦争の報復で攻撃を受けたと思った人もいた。住民4人が負傷し、民家159戸が被害を受けた。
墜落事故は戦後の沖縄で連綿と続いた。59年にうるま市(旧石川市)の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落し、児童11人を含む18人が死亡した。61年にうるま市(旧具志川村)の川崎で米軍ジェット機が墜落し、住民2人が命を落とした。
住民の死傷者こそ出なかったが、2004年には沖縄国際大学に米海兵隊のCH53D型ヘリが墜落し、16年には名護市安部の海岸に垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した。
墜落が起こるたび、米高官や軍幹部らは事故を過小評価する発言を繰り返してきた。B52墜落の後、国務省日本部長は「自動車や旅客機にも事故はある」と述べた。沖国大の墜落では在日米軍司令官が「人のいない所に持って行った。素晴らしい功績があった」と操縦士をたたえた。
今年1月にも在沖米海兵隊政務外交部長が相次ぐ米軍機の事故について「車も故障する」と言った。米軍にとって、墜落事故など想定内の出来事なのかもしれない。しかし地上で暮らす県民はたまったものではない。
これ以上、米軍駐留によって県民の暮らしと命が危険にさらされ、脅かされることは許されない。B52墜落から50年を機に、日米両政府はそのことを肝に銘じるべきだ。