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2018-11-18

[][](書く人)性暴力、罪の意識どこに 『彼女は頭が悪いから』 作家・姫野カオルコさん - 東京新聞(2018年11月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2018111802000177.html

https://megalodon.jp/2018-1118-1006-42/www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2018111802000177.html

今夏の発売以来、着実に読者を増やし続けている。読みながら、気持ちがどんどん重くなる。でも、最後までやめられない。

本書は、二〇一六年に、東大生五人が逮捕された強制わいせつ事件に着想を得て書かれた。「裸にした女性に熱いカップラーメンをかけた」「肛門を割り箸でつついた」…。ニュースを聞いた姫野さんは「これまでの集団レイプ事件とは『何かが違う』と感じた」という。自分なりに報道を調べ、取材した記者に話を聞き、裁判を傍聴した。

「当初、小説の題材にするつもりはなかった。関係者は司法の場で裁かれ、有罪となり終結した。この本は現実の事件とは無関係です。でも、いろいろなことを考えさせられたんです」

主人公は、平凡な家庭に生まれた女子大生の美咲と、官僚の父を持つ東大生のつばさ。偶然知り合い、後に被害者と加害者になる。

物語は、二人が中学生の時からスタート。「事件」が起きるまでの生活や心の内、周囲の人々の動きを丁寧につづる。数年がかりの日常描写はまどろっこしくさえある。だがそのおかげで、「エリート学生の性犯罪」という陳腐なイメージは粉々に打ち砕かれる。

この種の事件が起きると、ネットでは「のこのこついていった女が悪い」と誹謗(ひぼう)中傷が吹き荒れる。本書でも、同じことが起きる。読者はつい、被害者の美咲に感情移入してしまう。だが姫野さんは「加害者の嫌な部分は、私の中に存在する」と断言する。「執筆中は登場人物が勝手に動く感覚があるのですが、結局は私が書いている。誰もが加害者の部分を持つのでは」

東大生のつばさは「受験技術に益のないことが気になるようでは負ける」ため、「心はぴかぴかしてつるつる」している。他人の痛みは感じない。だから、号泣する被害者を笑いながら侮辱して、たたいたり蹴ったりしていても、どこにも罪の意識はない。

そんな加害者たちに眉をひそめながら、自分自身はどうなのか、とふと振り返る。不確かなネット情報で、他人をジャッジしていないか。同じ価値観の仲間で固まり、そうではない人への想像力を欠いていないか。この本は、根深くはびこる学歴主義や貧富の格差、女性差別の闇をえぐり出す。加害者を生むのは、自分も構成員の、この社会の意識なのだ。

文芸春秋・一八九〇円。 (出田阿生)

彼女は頭が悪いから

彼女は頭が悪いから

2018-11-15

[][] 翁長前知事の遺志引き継ぐ 沖縄の問題読み解く 支援教授らブックレット:東京 - 東京新聞(2018年11月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201811/CK2018111502000128.html

https://megalodon.jp/2018-1115-0919-11/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201811/CK2018111502000128.html

今年8月に急逝した翁長雄志・前沖縄県知事の思いを引き継ごうと、大学教授らがブックレット「翁長知事の遺志を継ぐ 辺野古に基地はつくらせない」(自治体研究社)を出版した。翁長前知事の足跡をたどりつつ、日米地位協定や辺野古基地の埋め立て承認など、沖縄を巡る問題を読み解いている。 (石原真樹)

本は、二〇一五年から辺野古基地問題で法律面から沖縄を支援してきた白藤博行・専修大教授(行政法)が企画した。白藤教授は「翁長氏がもう少し生きていたら、本格的に沖縄の未来が見えたのでは」と悼みつつ、出版の意図を「遺志とは具体的に何を指すのか、明らかにしておくべきだと思った」と語る。

大学教授ら十四人が文章を寄せた。白藤教授と共に編著者を務めた宮本憲一・滋賀大元学長は、安全保障体制についても地方自治権が確立されるべきだとして、翁長前知事の提案で全国知事会が七月に日米地位協定の見直しを提言したことの重要性を説く。

紙野健二・名古屋大名誉教授は、辺野古の埋め立て承認撤回について、埋め立て区域に軟弱な部分があることが今になって明らかになったため、県が主張する撤回は合理的と指摘する。

基地建設が辺野古の自然や生態系に与える影響や、沖縄は脱基地経済に向かっていること、尖閣諸島での戦闘に米軍は加わらないため、辺野古基地建設と尖閣防衛は関係がないことなどを、各専門家が解説する。翁長前知事による今年六月の沖縄慰霊の日の平和宣言なども収録している。A5判、八十ページ。六百円(税抜き)。

翁長知事の遺志を継ぐ 辺野古に基地はつくらせない

翁長知事の遺志を継ぐ 辺野古に基地はつくらせない

2018-11-12

[](書評)「身体(からだ)を売る彼女たち」の事情 坂爪真吾著 - 東京新聞(2018年11月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018111102000206.html

https://megalodon.jp/2018-1112-0906-11/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018111102000206.html

◆公助より風俗選ぶ理由は

[評]秋山千佳(ジャーナリスト

生活保護は、嫌です」

幼子を抱えてデリバリーヘルス(デリヘル)店の面接に来た二十二歳の女性が、きっぱりと言う。追い詰められた状況の彼女はなぜ、公助より風俗の道を選ぶのか――。

風俗で働く女性のための無料の生活・法律相談「風テラス」を行う著者は、相談の場で向き合った彼女を例に、「一見すると非合理に思える選択は、合理的選択の積み重ねによって生まれることが多い」とする。そして「身体を売る彼女たち」について、買う男が悪い、売る女が悪いといった二項対立では水掛け論に終始するだけで、「現場の不幸は一ミリも減らせない」と断じる。

本書で繰り返し語られるのは、風俗業界やそこで働く人たちの実態の見えにくさだ。著者はその不透明さを、女性のみならず、店舗を運営する男性などにも複層的にアプローチして可視化していく。

デリヘルは、貧困やDVなど「多重化した困難を抱える人たちが共に助け合い、支え合う『共助』の世界」と著者は言う。例えば、居場所としての機能。似た境遇や生育歴の人が集まる居心地の良さだけでなく、(健全経営店に限られるだろうが)スタッフの気遣いは驚くほど細やかだ。その魅力にかなわない現状の福祉の課題も浮かび上がる。

一方で、そうした「共助」の世界だからこそ、悪意ある「搾取」以上に悲惨な負の側面があることも指摘する。性感染症や性被害のリスクが高いが、当事者が過度な自己責任思考にとらわれているがゆえに、苦境に立たされても「助けて」と言えない。ストーカーされることもサービスの一部だと考える女性までいる。さらにネットにまつわるトラブルや、職業の秘密を暴露される被害など、消せない過去に苦しむ人もいる。

当事者に届く支援のあり方

を探ってきた著者は訴える。「風紀の維持や性道徳の観点だけで語られがちだった性風俗の問題を、『働いている人の安心と安全をどう守るか』という権利擁護の観点へ」と。現場を踏まえた言葉が、読むほどに胸に落ちる。

ちくま新書・950円)

1981年生まれ。東京大卒。ホワイトハンズ代表理事。著書『男子の貞操』など。

◆もう1冊 

坂爪真吾著『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書

2018-11-05

[](書評)国語教育の危機 紅野(こうの)謙介著 - 東京新聞(2018年11月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018110402000195.html

http://web.archive.org/web/20181105001238/http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018110402000195.html

◆改革の「押しつけ」を憤る

[評]高原到(批評家)

国力の基盤は教育にある。教育の根幹には、コトバによる物事の理解がある。急激な人口減少によって、あらゆる分野で難問が出来すると見こまれる日本の未来において、「国語教育」の重要性を否定する者はあるまい。だが現状はすこぶる暗い。情報学者の新井紀子によれば、教科内容の理解どころかそもそも教科書が読めない子どもたちが増えている。PISA(国際的な学習到達度調査)において、日本の十五歳児の「読解力」ランキングも急降下中だ。窮状を打破するという名目で登場したのが、二〇二一年から「センター試験」に代わって実施される、「大学入学共通テスト」である。

改革の目玉の一つが、「国語」への記述式問題の導入だ。しかし本書が暴露するのは、サンプルとして発表された問題例の、目を覆いたくなるばかりのお粗末さだ。(1)無署名の「資料」、それも「契約書」や「校則」といった規範(ルール)の参照や適用が中心で、「公共性の押しつけ」という権力性が露(あら)わなこと。(2)複数の「資料」を総合的に把握するという方針ばかりが一人歩きし、肝心の問題の精度がずさん極まりないこと。(3)膨大な答案を短期間に処理するという無理が採点方法に歪(ひず)みをもたらしていること。

この三重苦にあえぐ記述式問題は、「国語」を救うどころか、むしろ破壊するというのが、「国語教育」に長年のあいだ真摯(しんし)に関わってきた著者の切実な主張である。

著者の慨嘆を継いで、さらに書きくわえよう。このままいけば、二○二一年以降、記述式問題は各方面から集中砲火をくらって迷走をくりかえすにちがいない。苦しむのは誰か? むろん受験生だ。未整理な採点基準に翻弄(ほんろう)されもするだろう彼らは、「センター試験」時代には可能だった、正確な自己採点に基づく出願校の選択という、主体性を発揮するわずかな機会すら強奪される。教師・生徒を問わず、すべての「国語」教育関係者は、著者とともに怒り、叫ぶべきである。「必要なのはこれではない!」と。

ちくま新書・950円)

1956年生まれ。日本大教授。著書『書物の近代』『検閲と文学』など。

◆もう1冊

鳥飼玖美子(くみこ)著『英語教育の危機』(ちくま新書)。英語教育「改革」を批判。

2018-11-04

[][](東京エンタメ堂書店)質高い「わかりやすさ」 岩波ジュニア新書 山本慎一編集長 - 東京新聞(2018年10月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/entamedo/list/CK2018102902000182.html

https://megalodon.jp/2018-1104-1019-53/www.tokyo-np.co.jp/article/book/entamedo/list/CK2018102902000182.html

岩波ジュニア新書は、中学生や高校生をおもな読者とする、他にあまりない個性的な新書です。

学校の勉強を深めるための副読本、広く社会を知り基礎的な知識を身につけるための入門書、そして友人関係や恋愛の悩みに応えたり、将来の進路を考えたりするうえで役立つ生き方案内として中高生に親しまれています。

来年創刊四十年を迎えますが、これまでに茨木のり子著『詩のこころを読む』や川北稔著『砂糖の世界史』などのロングセラーを数多く出版してきました。

特に教育現場でよく読まれていて、学校の授業で使われたり、課題図書に指定されたりすることが多く、入試問題に採用されることも頻繁にあります。

主体的な学びやアクティブラーニングの重要性が高まるなかで、生徒が自ら学んで考えるための教材として役立てられています。

ジュニア新書をつくるうえで心がけているのは「わかりやすさ」です。中高生向けだからといって大人の本より質やレベルを落とすわけでは決してありません。

専門用語を使ったり難解な言い回しをしたりすることなく、最も重要なことを的確に伝えるように工夫を凝らしています。書き手が著名な作家や大学教授であっても、「わかりやすさ」のために、納得のいくまで何度も書き直しをお願いすることもあります。

内容が濃く、しかも読みやすいので「大人の学び直し」に最適、という評価もいただいています。

テーマや書き手は、「若い世代にいま伝えるべきことは何か」を、徹底的に議論して決めます。大人の意見を一方的に押し付けるのではなく、中高生が本を読みながら自分で考えることができるようにしています。

既に選挙権年齢が十八歳に引き下げられ、二〇二二年四月には成人年齢も引き下げられます。ジュニア新書には、環境問題や人権・平和、国際情勢、科学技術などさまざまなテーマの本があるので、若い世代がこれらの本を読んで、広く世の中に目を向けていってほしいと思っています。

編集部に中高生から感想が寄せられることも多く、学校図書館でジュニア新書を読んでいる生徒に出会うこともよくあります。ジュニア新書を読んでくれる中高生がたくさんいるので心強いですね。


◇お薦めの3冊

◆「正解」ない課題に対し

<1>名古谷隆彦著『質問する、問い返す』(929円) 主体的・対話的な学びに注目が集まるなか、教育現場への豊富な取材をもとにさまざまな事例を取り上げます。「正解」のない課題に向き合う、これからの「学び」のあり方について多角的に検討します。「学ぶ」ということはどういうことなのかを改めて考えさせられる本です。


◆激動の30年、テーマ解説

<2>後藤謙次著『10代に語る平成史』(972円) テレビの報道番組のコメンテーターとして活躍する政治ジャーナリストによる1冊。消費税の導入、バブル経済の終焉(しゅうえん)と失われた20年、テロとの戦い、沖縄の苦難、日韓・日朝関係、自然災害など、テーマごとにわかりやすく解説します。激動の30年が1冊でわかるコンパクトな現代史入門です。

◆10代向け「生活力」養成本

<3>南野忠晴著『正しいパンツのたたみ方』(907円) あなたは二つ折り派? それとも三つ折り派? 悩ましいパンツ問題を皮切りに、ご飯の作り方、お金とのつき合い方、時間の使い方や働き方など、自立した生活に必要な知識をアドバイスします。家庭科の授業から生まれた、10代のためのユニークな「生活力」養成ガイドです。

正しいパンツのたたみ方――新しい家庭科勉強法 (岩波ジュニア新書)

正しいパンツのたたみ方――新しい家庭科勉強法 (岩波ジュニア新書)

◆筆者の横顔

<やまもと・しんいち> 1963年生まれ、55歳。学校図書館を訪ねる機会がよくあります。機能的で使いやすく、しかも居心地が良いように工夫されている所が多くて興味深いですね。中高生の皆さんと学校図書館で会うのを楽しみにしています。