しもべ妖精と女性のこと

kodomono2017-02-11


※すみませんつらつらと長文です。お時間ある方だけどうぞ。



ハリー・ポッターに、しもべ妖精(House−elf)というキャラクターがいます。
ウィキペディアには、

「小さく醜い人型の魔法生物(独自の魔法を操り、その魔力は魔法使いより強力らしいが、敵対的に使われることは稀。また、杖を使わない)。-中略-
特定の魔法使いを自身の「主人」とし、その主人や家族に生涯仕え、日常の家事や雑用などの労働奉仕を行う(これは屋敷しもべ妖精にとって「本能行動」に当たる)。」

とあり、簡単に言うと、「魔法使いに仕える奴隷」です。
その扱いに憤慨した、主人公の女友達ハーマイオニーは、
しもべ妖精解放運動を始めますが、周りの反応は冷淡です。
そして、主人公ハリーによって、悪いご主人から解放されたしもべ妖精ドビーは、
古い因習にとらわれた仲間たちの理解をも得られず苦労します。
最後には感動的なエピソードを産むこのくだりは、映画では残念ながらカットされています。

「その魔力は魔法使いより強力」とある通り、しもべ妖精は、実は最強キャラ。
主人公を邪魔もし、窮地から救いもします。
どうしてこんなに有能なのに、奴隷扱いされているのでしょう?
「本能行動」に当たる、なんて書いてあるけれど、本当に彼らの本能なのでしょうか?
もしかしたら、その有能さゆえに、隷属させられていたのかもしれません。

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さて、朝のテレビ番組アサイチで、
現在の女性の立場や働く環境について語り合う、
「オンナ×働く」という特集を見た時のこと。

視聴者からのご意見を募り、紹介したコーナーで、
「男たち、正直になって、都合のいい奴隷が欲しいって言いなよ。」
と言うご意見が読み上げられ、スタジオが一瞬凍りつきました。
で、一瞬の間ののち、イノッチが慌てふためいたように、
「そ、そんなこと思ってないよ!!」
と、その場をおさめました。
私も、奴隷という強烈な言葉にちょっと言葉を失いました。

でも、考えてみたら…例えば、ピラミッドを作った奴隷たちは、
常にムチ打たれながら重〜〜い巨石を運んでいるイメージだったのが、
実は休暇ももらえる、例えるなら会社員的身分だったと言います。
ひどすぎる扱いでは、よい働きはしてくれないし、逃亡や反乱も絶えないでしょう。

どちらも主従関係にあるという「刷り込み」によって、
関係が成り立っていたのではないかと思います。
刷り込み、思いこみ、因習…言い方はいろいろありますが、
有能なしもべ妖精も、そんなもので、縛られていただけでは?と思ったのです。

「奴隷」というと言葉が強烈ですけれど、
たとえば、「お手伝いさん」などと言い換えてみれば、
スタジオを凍りつかせたご意見もなんとなく納得できませんか?
「都合のいいお手伝いさん」
私も、それならぜひとも欲しいです。

私の周りには、家事育児(さらには仕事まで!)、すべて引き受けている女性がたくさんいます。
「誰が食わせてやってるんだ」というような禁句を、平気で言われる友人もいます。
イクメン、カジメンと言われるような夫がいる友人もいますが、それは「お手伝い」のことが多く、そんなご夫婦にも、
「女性=家事育児」という刷り込みがあります。

「女性=家事育児」は本能じゃないか?という意見もあるかもしれませんが、
番組では他にも、編集者の女性が、
「夫が資格をとるため主夫をしている期間があり、その間は、新橋へ飲みに行くことが増え、
「誰が食わせてやってるんだ」という禁句がのど元まできて抑えた経験があった」と言っていました。

これって、家事育児が「女性の本能」ではない
逆に夫の帰宅拒否症や、上の禁句を平気でいうのも
「男性の本能」ではない、
という証拠ではないでしょうか?

先ほどの編集者女性が、自分が出張に行くと、
「いいダンナさんね」と必ず言われて、反射的に
「ありがとうございます。」と、言ってしまうけれど、
逆に夫が出張に行って、
「いい奥さんね」と言われることは考えられない。
とも言っていました。まったくその通りです。

これは、何世代にもわたって、
「女性=家事育児」刷り込み社会だったからだと思います。
「女性=家事育児」という刷り込みは、
戦いや力仕事が多分にあった時代には、合理的だったのかもしれません。
でも現代社会は違います。力仕事は機械や発明に頼ることができます。

現代の、「女性=家事育児」刷り込み社会で苦しむ女友達は、
「子育て後は、女友達とシェアハウスで暮らしたい」などと言います。
熟年離婚が増えてもいます。
もっというと、結婚も出産も控える女性が増えています。

別の番組で、上沼恵美子さんが、生まれ変わったら、子供を産まない人生を歩むと言っていました。
もちろん子供を愛しているけれど、今生の自分は、どれも中途半端になってしまい、
それだけ、子育ては、大変なのだと。

先日紹介した本「アレックスと私」の、
エリート研究者ペパーバーグ博士も、母親のように、
キャリアをストップさせる生き方(=出産)はしないと書いていました。

これでは面白くないし、子どもは減る一方…寂しいことですよね。

それもこれも、ひとえに、男性にも、女性にも、
「女性=家事育児」という刷り込みがあるからです。

男性、女性だから、ではなく、個人個人に得意分野があるだけ。
男性も、女性も、「女性=家事育児」刷り込みから逃れて、
自然に、家事育児(さらには介護)をわかちあう「社会」にしないと、
男性は生涯独身か熟年離婚、女性は活躍しきれず、子どもは減るばかり…
そう思います。

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ハリー・ポッター本編で、ハーマイオニー奴隷解放活動は、
理解のありそうな主人公ハリーや友人(ぼぼ男性!)からも理解を得られず、
ドビー以外のしもべ妖精からも反発を受けていました。しかし、
作者が語るところによると、後日ハーマイオニーは、省庁で働き、
しもべ妖精などの待遇改善に尽力するそうです。

ハーマイオニー、すばらしい!