車道外側線と道交法の関係


1 路側帯について


自転車は道路の右側部分の路側帯を通行することができるかという設問については、’07/2/14付「自転車の路側帯通行」にて論考したとおり。
道交法令に明文規定はありません。警察行政が解釈の根拠とする文献は肯定説を採っています。


その後、広島市「自転車の通行位置について」に接す。
道路管理者の立場から、自転車の通行位置について網羅的にわかりやすく説明していて、概ね妥当と思います。
この中で路側帯における自転車の対面通行が示されています。行政解釈として定着しているようです。


2.車道外側線について


2.1 道路管理者


ところで、歩道のある道路で、車道の端に歩道に沿って白実線が引かれている場合があります。
この白実線と歩道の間の部分は路側帯ではありません。道交法 第2条第1項第3号の4から明らかです。
これを路側帯と勘違いすると、ここを自転車が対面通行できるという帰結に到り、自転車の車道右側通行という状態を惹起することになりかねません。きわめて危険です。


上掲広島市の頁は、この白実線を車道外側線とし、「路側帯での通行方法とは異なる。」と説明しています。

3 歩道がある道路
(略)
(4)  車道端に外側線(白実線)がある場合
('08/5/27印刷)
歩道のある道路で車道端に白実線の路面標示がある場合、この白実線は「車道外側線」といい、自動車運転者の視線誘導及び側方余裕を保つために設けられた車道の一部であることから、自転車通行に際しては、車道の中央から左側部分の左側端に寄って通行しなければならない。
 ※ 2の(1)の路側帯での通行方法とは異なる。

この文は車道外側線の概念と道交法上の自転車の通行方法を列記したにすぎず、両者の関係については何もいっていないに等しいようです。
併設の図では、道路の左側部分の車道外側線と歩道の間を自転車が通行するように描かれています。これによらない通行は正しくないようにみえます。


広島市の頁は米田裕さんの”FrogBlog”2008.05.18「納得のいかない交通法規」でも紹介されました。
車道外側線と道交法の関係などについてわたくしも少々確認しておこうと思い、翌5/19(月)、広島市に電話したところ、大略次の趣旨の回答を得ました。


車道外側線は道交法の道路標示ではないので、道交法上の規制の意味はない。」
「つまり、自転車が通行しなければならないところまたは通行してはならないところなどを示す意味はない。」


では、併設の図は適切なのか。自転車の車道左側端通行の一例を示しているにすぎないのか。
この点は明らかにできませんでした。もっと追及しておけばよかったかもしれません。


2.2 警察行政 


警察庁は所管部課が電話照会に応じないので、都道府県の警察本部の代表として警視庁に電話しました。5/26(月)のこと。
車道外側線の解釈について広島市と同趣旨の回答でした。
印象的だったのは、車道外側線を「法定外表示」と明言していたこと。警察行政にとって道路行政の概念は法定外ということなのかもしれません。


併せて、警視庁の頁「自転車は車と同類です」に掲げられていた下図について、誤解を招きやすいので改善すべしとの意見を伝えました。
('08/5/26印刷)
警視庁 トップ / 交通安全 / 自転車は車と同類です
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/cycle/cycle01.htm


つまり、図の左端に「建物」と表記されているけれど、これを見落として歩道と誤解すると、車道外側線と歩道の間で自転車が対面通行できるようにみえてしまいます。


ところが翌朝、改めて当該頁をみたところ。

URLが変更になりました


5秒後にページが移動します。
変わらない場合は、下記のURLをクリックしてください。


自転車の交通安全
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/roadplan/bicycle/anzen.htm

新頁は全面改訂のようで、上掲図は消えていました。
まさか、わたくしの意見をうけて一夜にして改訂したとか?


2.3 国土交通省


広島市への照会で明確にならなかったことに関して、昨5/28(水)、国土交通省に電話し、大略次の趣旨の回答を得ました。
警察庁とも協議した結果とのことです。


車道外側線と歩道の間も車道である。ゆえに、自転車は道路の左側部分の車道外側線と歩道の間を通行することができる。」
「道交法の車道左側端の概念と車道外側線は関係がない。ゆえに、自転車が道路の左側部分の車道外側線の右側を通行しても、ただちに左側端通行義務違反となるわけではない。」


3 その後


国交省に電話した折、広島市の頁を紹介したところ、その後、国交省から広島市へ連絡が入ったようです。
広島市へはわたくしから改めて電話し、当該頁、とりわけ車道外側線に関する図について、適切に修正するようお願いしておきました。


4 文献


5/19(月)の広島市との電話の中で、車道外側線の詳細などについて下掲書の紹介を受け、即日入手しました。
概観したところでは、ただちに有益な情報はなさそうです。
法令以外に何らかの論拠を必要とする際には参考になるかもしれません。


社団法人交通工学研究会「改訂 路面標示設置の手引」丸善、初版1991年、第4版2004年。
ISBN:9784905990055 (490599005X)

広島市の対応

掲示板「自転車社会学会」にて、広島市「自転車の通行位置について」から車道外側線に関する記述が削除されたことを知る。
なるほど。上掲「3 歩道がある道路 (4)車道端に外側線(白実線)がある場合」の図・文ともに削除されています。
またしてもわたくしの電話で一夜にして変わったのかな?


21時を過ぎてたけど、ためしに市に電話してみたら、先週来お世話になってる担当官殿が直接電話をとってくださいました。
国交省からも電話があった由。
「(2)歩道上に『普通自転車の歩道通行可』標識がない場合」があれば十分と判断されたそうです。


とはいえ、歩道と車道外側線の間を路側帯と誤解する例は多いので、うまくくふうして表現してほしい旨お伝えしておきました。