KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

宇佐美寛『大学の授業』

大学の授業

大学の授業

 私は学生に言う。「勉強しに来たのは私ではない。君たちだ。私は楽をして君たちが緊張し勉強しているという状態がいい。私がはりきって、客をひきつける講釈師になるという努力をするつもりは毛頭無い。私はあまりしゃべりたくない。私はのんびりして君たちが勉強するという状態になればなるほど授業は要らなくなる。授業などしない方がいいのだ。授業が無くても自分で勉強するという状態の方が、学生は自立していて幸福なのだ。授業をするのは、授業を不要にするためだ。授業を受けることによって、授業に頼らず学ぶ力を育てるのだ。」
 私は、講義をする気が無い。学生を相手に長時間話すなどしたくないし、してもいない。

1999年の出版なのに、今までこの本に気がつかなかったことが悔やまれた。『大学授業の病理---FD批判』(2004)と『授業研究の病理』(2005)と併せて、三部作になっている。その主張は、「授業では社会で常識とされる規律と礼儀をも教えるべきである」と「5分以上の講義をやめよ」に集約されるだろう。

5分以上の講義をしない授業がどのような実践となるのかは、この本に詳細に書かれている。学生からの感想も収録されている。それは徹底している。筋金入りだ。もし教員が、「学生は未熟である」と言い切れるなら、この実践に続くことができるだろう。しかし、そうでないなら別の道を探す必要があるだろう。

それでも5分以上の講義をしないことには賛成だ。その点では一致している。