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ぱせりの本の森

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設定をあれこれいじったせいだと思います。
さいわい管理画面には、残っているのですが、本当に申し訳ありません。

2012-10-29

図工準備室の窓から

図工準備室の窓から: 窓をあければ子どもたちがいた

図工準備室の窓から: 窓をあければ子どもたちがいた


>図工の先生になっていなければ、小学校を舞台にした物語は書かなかったと思う。

五つの小学校に勤めた。その小学校と周辺のあれこれが、その時どきの物語の背景になっている。


岡田淳さんの本が好きだ。

異世界に飛び込んで、不思議な冒険をする物語もおもしろかったが、

それよりも、異世界の不思議がほんのちょっとだけ、子どもの日常に紛れ込む物語が特に好きだった。

『びりっかすの神さま』は初めて読んで、その後岡田淳さんの本を続けて読むことになったきっかけの本。

『雨やどりはすべり台の下で』は、今まで読んだ岡田淳さんの本の中で一番好きな本。

『ふしぎの時間割』や『フングリコングリ』からは学校の良い匂いがする。

こういう不思議が入り込んで、それを楽しいと思える教室だったらいいな、と思う。

久しぶりに岡田淳さんの本を続けて読んでみたくなった。まだ読んでいない本もたくさんあるのだ^^


いつだったか、どの本でだったか、岡田淳さんって、作家だけれど小学校の図工の先生なんだって、と知って、合点がいったような気がした。

そうか、だから、リアルな小学生が書けるのね、と思った。

でもね、

逆だったみたい。

岡田淳さんって、小学校の図工の先生だけれど、作家なんだ・・・


まず、口絵ページに、図工の先生である岡田淳さんの「作品」の写真が載っています。

ああ、物語が生まれそう、と思った。

いや、すでに、この作品の中に物語がある。始まっている。いつでも動き出す。そういう作品たち。

――いいなあ、わたしも岡田先生のもとで、図工をしたかった!(この本を読んでいる間、何度そう思ったことか)


なかでも、ため息が出るのは、図工準備室の写真である。

なんという素敵な雑然。物語、それも魔法の罹った物語が、ここでは日々進行しているにちがいない。

耳をすませば、あそこの隅っこから、そこの奥から、その陰から、ほら。話し声がする。忍び笑いが聞こえる。

この準備室についてのお話も、本のなかにちゃんとある。

「こんな部屋がほしい」「ここに住みたい」という子どももいるそう。同感! 

そして、ここで魔法にかかってみたいものだ。どんどん小さくなって、迷子になってみたい。


作家でもある図工の先生、岡田先生のエッセイは、この写真の図工準備室そのものだ。

一応系統だってはいるけれど、いろいろなものが混ざっている。素敵な雑然がまるごと本になっている。

一つ事を語っているのに、その向こうに何かあるのを、常に感じている。

じわっと体中が熱くなったり、思わず吹き出していたり、ほとんどはただわくわくと楽しかった。

その楽しさの向こうにはさらなる物語の広がりが見えた。少しだけ魔法がかかっていた。

いったい、どのくらいの広さがあるのだろう。

エッセイだから、魔法もない、不思議もない、はずなのに、やっぱりこの本は魔法と不思議の本だった。


だけど、一方で思うのだ。

それは、『阪神・淡路大震災のこと』という章を読んで思ったのだ。

>つらい話をして、残ったひとが今後しあわせに生きるというのなら、涙の流し甲斐もあるというものだが、ただ悲しいだけなら、そういう話はほかのひとに任せよう。ぼくはそれ以外の話をしよう。そう心に決めた。

「それ以外の話」

それは、災害の中の小学校の、子どもたちの、小さな小さな良き話である。

それを読みながら、胸がいっぱいになってくる。

「それ以外の話」に徹する岡田淳さんの言葉の外に、きっとたくさんの痛みが重なってある。ないはずはない。それを感じるから。

そう思うから、この章の結び、「ぼくは、よかった、と思った。」という言葉は、暗闇の中の灯のようにしんと静かに温かい。


岡田淳さんの三十八年の図工の先生としての日々は、伸びやかでなんと楽しい、と思う。

子どもたちの声、同僚たちの言葉、笑い顔、恩師への思い・・・アーサー・ランサムやドリトル先生だって出てくるのだ。

だけど、これも「それ以外の話」なのだろう。

この外側に、きっと書かれることのなかった痛みや苦しみがたくさんあったはず。流したくなかった涙だってあっただろう。

それを準備室の見えない戸棚に岡田先生は仕舞った。

仕舞ったことが、この魔法のスイッチなのだろう。

そして、それが隠れているけれどもあるにちがいない、との思いが、魔法をかけがえのない光に替える。

開けて広げてしまったらきっと魔法は終わる。(でも、ある。)

図工準備室の入口の床には、岡田先生の字で「…はいったらおしりぺんぺんです」と書いたボール紙が置いてあるから、

わたしは、準備室の窓にへばりついて覗きこんでいるのです。


さて、そろそろ今夜の献立に必要なものを買いに行く。

なくてはならない必要なものは、豚肉に野菜に白滝、それからもちろん!ちょっと照れるけれど、「愛と勇気」^^です。

ひなたひなた 2012/10/30 16:20 岡田淳さんのエッセイ。初めてな気がします。
講演会には二度行ったけど、言葉は全部書き留められませんもの。
活字で図工室のことを読めるなんてうれしい♪
紹介してくださってありがとう。

ぱせりぱせり 2012/10/30 21:25 ひなたさん、先日本屋さんでこの本と目があってしまったんです^^
買う予定だった他の本を置いて、この本を大切に持って帰ってきました。
読みながら、ひなたさんのお顔が何度も浮かびました。(寄ってくださってありがとう^^)
それにしても、なんと講演会二度も! うう、羨ましい〜〜。

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