アリブランディを探して

アリブランディを探して (STAMP BOOKS)

アリブランディを探して (STAMP BOOKS)


17歳の少女ジョシー・アリブランディの自分探しの物語。
ジョシーが背負っている背景はかなり濃い。ざっと並べてみれば・・・
オーストラリアでは少数派であるイタリア系移民の一族である。(そのための差別)
彼女の母は16歳で妊娠、17歳でジョシーを生み、母は一人でジョシーを育ててきた。(そのための差別)
高校は伝統校。模範生として奨学金を受けているが、学校は大人の社会を縮小した格差社会でもあった。(そのための差別)
祖母・母・ジョシー、三代の世代間にある確執…ことに一族の伝統を大切にする祖母とはうまくいかない。
高校生最後の年、来年の大学入学統一試験のための準備の年でもある。


そして、ジョシーがこの一年間に出会った人々も濃い。
突然目の前に現れた父親は法廷弁護士。恋の相手は、女の子たちの憧れの的。(相当かっこいい)
すごく個性的な友人たち。そして、ジョシーの一族のなんという美人揃いであることか。


いろいろな意味で盛り沢山という感じにくらくらしますが(そして、正直に言えば、ちょいとベタで先が読めないこともないのです)
しかし、それでも、登場人物たちの姿が細やかに描かれていて、なんといきいきしているのだろう。引き込まれます。
わたしは、父と子の面食らうような出会いと拒否から始まり、徐々に大切な存在になっていく過程の描き方が好きでした。
それから、印象的な校長のシスター・ルイーズ。彼女はいわゆる「慈愛に充ち溢れた」という見かけではありません。最初から最後まで厳格で、自分の感情は一切見せませんでした。けれども首尾一貫した姿勢は教育者として信頼できるのです。
またジョシーのおばあちゃん、黒い服に身を包んで、ひたすらに自分の中の一番大切なものを守り続けて生きてきた人生に圧倒されてしまう。


オーストラリアのイタリア系の人々の独特の文化と絆の深さを知ることは新鮮でした。
一族の文化や慣習を煩わしく思いながらも、捨て去ることもできないジョシーの葛藤などリアルだった。
オーストラリア人であり、オーストラリア人でもなく、イタリア人でありイタリア人でもなく・・・
何かと噂になりやすい環境にいる主人公、噂に反発したりつっぱったりするだけでせいいっぱい。
私はいったい何者なのだろう。本当の自分はいったいどこにいるのだろう。


17歳たちは(それよりも前から)感じています。
どんな夢を持っても、どんな努力をしても、いずれは親と同じような階級(?)に属し、親と似たような職業につき、親と似たような人生を送るのだ、ということ。
そして、それに甘んじている。むしろ自ら進んでその枠の中に自分を追いこもうとしている。
それが人生だと・・・なんだろう、この身もふたもない寒々とした諦めムードは。
それはほんとうなのだろうか。それでいいのだろうか。ではどうしたらいいのだろうか。
何よりも、自分はいったいどうしたいのか。どのように生きたいのか。


様々なことが起こり、様々なことに気が付き、様々なことを考えた、なんといろいろなものがぎっしりと詰まった一年間だっただろう。
けれども、彼女の体験することは、(見かけは派手であるけれど)決して特殊なことではないのだと思う。
17歳。将来の重大な選択を目の前にして揺れ動く。否応なしに自分と向かいあわなければならないときなのだ。
そして、恋をし、友人関係に悩む。
ジョシーの日々を読みながら、ちらりと懐かしいような気持ちになったりする。


彼女は本当の自分をみつけたのだろうか。
(それは、自分の周りの人たちに対して感じていた「この人はこういう人」という思いこみを捨てさることにも繋がります。)
次のステージを期待させる爽やかなラストシーンが気持ちよい。