なつかしい時間

なつかしい時間 (岩波新書)

なつかしい時間 (岩波新書)


全部で51章もある。どれも大切な一章です。読書の事、言葉の事、風景の事・・・
ほんとはもっとゆっくり(たとえば一日一章くらいづつ)考えながら読むのが相応しい本なのだろう。
各章には、たくさんの過去の本からの引用があり、読書案内としても魅力的。
こんなに急いで読んでしまったことが申し訳ないです。

ことに読書について。読むことも読まないことも含めて「習慣」を読書ということ、
そして役に立つこと(実用的)ではないこと、「わからぬ。それでも気持ちがいい」という言葉がとても気持ちがいい。
ああ。わたしは長田弘さんの「読書」みたいに読書したいんだ。
だから、やっぱり、こんなに急いで読んでしまったことが、この本に申し訳ない。
また読もう。ゆっくり読もう。
今度読むあちこちのつまみ食いの読書も、さらにその先の全部読む読書も、みんな含めて、この本を読む喜びだと思おう。

>ふとしたきっかけで出会った古い本から、今は忘れられている言葉の孕んでいた明るさ、鮮やかさが、その時代の息づかいとともに、あらためて思いがけない仕方で手わたされることも少なくありません。ほら、忘れ物だよというふうに。
>読書というのは、振り子です。たとえ古い本であっても、過去に、過ぎた時代のほうに深く振られたぶんだけ、未来に深く揺れてゆくのが、読書のちからです。(「古い本を読もう」)
>読書とは本を読むことではない、とわたしは思っています。読書は本を読むことではなく、本に親しむ習慣のことであるからです。
>そこに本があるというのは、自分の心をうつす鏡を手にすることでもある。
>「わからぬ。それでも気持ちがいい」。そのような、包容力を育てるものとしての読書の在り方が、今は忘れられたままになっていないかということを考えます(「本に親しむという習慣」)


気になる本
ホイットマン 詩集『草の葉』
チェーホフ『三人姉妹』
クルィーロフ『寓話』
中野重吉『梨の花』