『おやすみなさい おつきさま』 マーガレット・ワイズ・ブラウン作/クレメント・ハード絵

おやすみなさいおつきさま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

おやすみなさいおつきさま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

  • 作者: マーガレット・ワイズ・ブラウン,クレメント・ハード,せたていじ
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 1979/09
  • メディア: 単行本
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エマ・ドナヒューの『部屋』(感想)を読んでいたら、しばらくぶりに、この絵本を読みたくなった。


うさぎの坊やが、ベッドの上から、目に入るものたちひとつひとつに、順番に「お休み」を言う。
ブラシ、おかゆのおわん、テーブル、いす、まど・・・
部屋そのものにも、窓の外の夜空にも、「そこここできこえるおとたち」にも。
おやすみを告げるごとに、あたりはだんだん暗くなる。坊やの重たいまぶたのように。
周囲が暗くなってくれば、逆に、「もの」も「夜空」も生気をおびて輝きを増してくる。
物言わぬものたち、でもどれもみな坊やにとってはかけがえのない存在なのだろう。大切に「おやすみ」を告げたい友達ちなのだろう。
「おやすみ」は、ともだちを夜の中に残して(朝まで待っていてもらって)安心して眠りに落ちていくための呪文のような言葉なのだろうな。
だから、ぼうやはひとつ「おやすみ」を言うごとに安心して、少しずつ眠りに入っていく。とろとろ・・・
その逆に、おやすみを告げられたものたちは、目覚めていくのだ。
ものたちが静かに立ちあがり、坊やのまわりで彼の眠りを見守っているような気がする。


昔、おやすみ前にこの絵本を読んでもらった子どもは、ぐるりと自分の周りを見まわしながら、うれしそうに「おやすみ、おへや」といった。
「おやすみ、絵本」「おやすみ、クッション」「おやすみ、テイッシュ」・・・
ゲームのように次々・・・一つ「おやすみ」を言うたびに、目は輝きを増し、到底眠りに落ちるどころではなかったことなども懐かしい。
古い絵本は、年月を重ね、我が家の思い出を挟み込んで、大切な一冊に変わっています。