『いえでをしたくなったので』 リーゼル・モーク・スコーペン/ドリス・バーン

いえでをしたくなったので (海外秀作絵本)

いえでをしたくなったので (海外秀作絵本)


むかし、わたしも(家が嫌になったわけではなかったけれど)「いえで」に憧れたことがあったような気がする。
わが子の好きな絵本のひとつが『フランシスのいえで』(ラッセル・ホーバン&リリアン・ホーバン)だったし、あの子も、「いえで」をしてみたかったのかもしれない。


この絵本の四人きょうだいが「いえで」をしようと決心した理由は・・・
散らかった部屋(だれがこんなにしたんだ?)の真ん中で怒って顔を背け合って立っている両親の絵をみれば、わかる。
帰ってくる時には、いつでも両手を広げて待っている両親の姿を、子どもたちも予想しているはず。そうして安心して、「いえで」するのだろう。


どこへ? 目的地が素敵なのだ。
樹の上、池の上に組んだいかだ、どうくつ、浜辺のおしろ。
どこも、子どもたちの好きな場所。
まるで秘密基地のよう。コンパクトで居心地がよさそうで、あちこち、ジックリ観察したり探検したりしたい小さな仕掛け(?)もいろいろある。
そのうえ、周りじゅうは、樹だの葉っぱだの、水だの砂だの石ころだので、先住の生き物たちもいる。冒険を始めるのにもってこいの場所。
つぎつぎに何かしら問題が起こって、引っ越しを繰り返すことになるのだけれど、それもとても楽しそうだ。


いえでをするときに子どもたちが詰めた荷物の種類の数と、最後に家に持ちかえった荷物の数は同じ。
だけど、いえでして、新しい住処にいくたびに、中身がひとつずつ変わっていた。
家から持ちだした荷物が減り、その部分に、新しい場所で得た良いもの(宝物?)が増えていたのだ。


子どもたちが家の外へ出ていく。遠く、近く。
そこで、大きな冒険や小さな冒険をして、きっと何かしら宝物(ほんとは目に見えないかもしれない)を身につけて帰ってくるんだな、と思えば、なんて頼もしいのだろう。
こんな「いえで」ができるこの子たちが羨ましいな、こんな「いえで」を見守る両親が素敵だな、と思う。