5月の読書

5月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2161

明るい夜に出かけて明るい夜に出かけて感想
タイトルの「明るい夜」ってなんだろう。「明るさを求める気持ちは、すでに、きっと暗い。でも、その暗さを心に抱える人を俺は少し信じる。そんな蛾のようなヤツらなら、通じる言葉がある気がする」ネットの時代なのだなあ、と今更に思う。けれども、あたりまえだけれど、人は変わらない。若者たちは、あがきながら、迷いながら、自分の道を探して彷徨う、緩やかに繋がっていく。
読了日:05月30日 著者:佐藤 多佳子
ソロ (エクス・リブリス)ソロ (エクス・リブリス)感想
第一楽章・第二楽章、二つの楽章を合わせて主人公の『ソロ』演奏なのだ。二つの楽章を繋ぐ(ガラクタのような、きらめくような)言葉を中心に、二つの物語がぐるぐる回り始める。不思議な気持ち。どちらの物語が本物でどちらの物語が夢なのか。いいや、どちらか、なんてことはないのだね。
読了日:05月23日 著者:ラーナー・ダスグプタ
失われた手稿譜 (ヴィヴァルディをめぐる物語)失われた手稿譜 (ヴィヴァルディをめぐる物語)感想
読みながら感じていたのは、手稿譜にもし心があったなら、もし、口がきけたなら、自分の運命をなんと語るだろう、ということだった。このような旅をし続けなければならない彼(彼女)があわれだった。その声を聞いてみたい。ページを開いたときに、目に入るものが、美しい音楽に変わる瞬間を味わってみたい。そういう博識と感性があったらなあ。
読了日:05月19日 著者:フェデリーコ・マリア・サルデッリ
モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語感想
山間の行商の村から、本の行商人たちはイタリアのあちこちに散っている。本屋を営んでいる末裔が多い。村を離れた(離れざるを得なかった)人びとの村への愛情の深さに驚くけれど、それは、やはりこの村が行商の村であり、彼らが行商人たちの子孫だからだろうかと思う。行商人たちにとって、村はいつでも旅だつ場所、そして、かならず帰るべき場所なのだろう。
読了日:05月16日 著者:内田 洋子
おらおらでひとりいぐもおらおらでひとりいぐも感想
柔毛突起(!)をぞろぞろ引き連れた桃子さんの言葉を読んでいるうちに、なんだか見えるものの色が変わってきたような。どこかの暗い奥のほうから、沸き上がってくる笑いが、何かに自分を綱ぐ細い綱を、ぶちぶち切っていくようだ。土のなかから湧き出でるみずみずしい力に満ちた言葉、あっけらかんとした明るさを湛えた言葉、桃子さんの東北弁にはそんなイメージがある。
読了日:05月11日 著者:若竹千佐子
ケイゾウさんは四月がきらいです。 (福音館創作童話シリーズ)ケイゾウさんは四月がきらいです。 (福音館創作童話シリーズ)感想
にわとりのケイゾウさんとうさぎのみみこ、どちらもかわいくなーいが、セットになるとなんだかいい。先生の怒鳴り声が聞こえないと淋しくなるってくらいの子どもたちののびやかさもいいい。幼稚園の一年がめぐり、ケイゾウさん、四月がきらいだけれど、三月もきらいだって。それから…。私は、ももこ先生とケイゾウさんとみみこのいる、この幼稚園がすっかり好きになっちゃった。
読了日:05月09日 著者:市川 宣子
その犬の歩むところ (文春文庫)その犬の歩むところ (文春文庫)感想
犬が旅をする。犬と、出会った人とはよく似ている。長い・短い半生のなかで、決して忘れることのできない深い喪失を体験し、生き延びてきた。失われることなく、研ぎ澄まされた「善良さ」が際立つ。人の善良さを正しく嗅ぎ分ける犬。高潔なものに触れたように感じている。犬の足下に、徐々に描きだされていくアメリカ。アメリカと犬とがじゃれあっている印象。
読了日:05月06日 著者:ボストン テラン
私たちの星で私たちの星で感想
「渡り鳥は、地上を広く見渡すことはできるけれども、地下深く流れる水脈を見出すことはないでしょう」(カリーマ)に対して、「この「渡り鳥」は、地上を広く見渡して、「ここ、ここ、この辺に水脈がありそう!」といつも教えてくれているではありませんか」(香歩) この往復書簡もきっとそうなのだ。頭上高くを飛びながら、たくさんの水脈を教えてくれたのだと思う。
読了日:05月02日 著者:梨木 香歩,師岡カリーマ・エルサムニー

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