秒速5センチメートル

監督・脚本:新海誠
声優:水橋研二/近藤好美/花村怜美/尾上綾華
制作:2007年日本
http://5cm.yahoo.co.jp/index.html

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

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噂で聞いていた以上に優しく甘美で切なくて、素晴らしかったです。


空の移ろいや舞い散る桜、しんしんと降り続く雪など、ゆっくりと流れる時間をそのまま切り取ったような風景がとても心地よい。その中で静かに大人になってゆく主人公2人の、近づいたり離れたりする心の距離は、やはり同じようにゆっくりと、でも確実にすれ違ってしまったことが悲しいけれど、結果ではなくてそこに辿り着くまでの1秒1秒を大切に観たいと思う作品。


色がとにかく綺麗で、画が精密。特に駅に関しては、どこもかしこも記憶している配置そのままだったので、実際そこを歩いているようなリアリティがあって、それもスッと作品の世界に入ってキャラクターを近く感じられる効果になっているのだと思う。
でも当たり前だけれどこれはアニメーション。中途半端に「CGです!」というものがあまり好きではないのだけれど、あくまで「色が綺麗なアニメ」というスタンスが良い。
特徴的だと思ったのは空の描き方。殆どの場面で、地上から見える水色の空の端には、決して肉眼では見る事のできない虹色の銀河が広がる宇宙が繋がっていた。実際には見られない美しい風景を、このアニメーションで見せてくれる。


特典映像の監督インタビューでは、それぞれの質問に対してとても丁寧に説明している監督に好感がもてました。私も月光の囁きでの水橋さんの声が、妙に印象に残っています。水橋さんは本当に素晴らしい役者さんなのに、いまいち大きな役が来ないのが不思議でなりません。この映画は水橋さんの声でなければ成り立たなかったと思うほど、彼の瑞々しく優しい声が重要な役目を担っていました。
あとインタビュー中に、にゃおんと言いながらぶらりと猫がやってきたのがほほえましかったです。

強いて言うなら、やはり個人的には3本の短編としてではなく1本の映画の方がもっとこの世界観にすっぽりとはまり込めたような気がしましたが、あとからもう一度観たいと思った時に、やはりショートストーリーの方が観やすいのかもしれません。