藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2005-07-28 『少年時代』の原作・柏原兵三『長い道』 このエントリーを含むブックマーク

 当ブログ7月26日の記事で、藤子不二雄A先生の『少年時代』をとりあげた。そこで書いたとおり、『少年時代』は、芥川賞作家・柏原兵三氏の自伝的小説『長い道』を原作にしたマンガである。

 私は、『少年時代』を初めて読んで何年かしてから、原作の『長い道』も読んでみた。すると、『少年時代』で味わった、ただでさえ深い感動がさらに膨れ上がり、極上の時間をすごすことができた。

 だから、『少年時代』を読んで感銘を受けた方には、機会があれば『長い道』にも触れていただきたいと思うのだが、残念なことに、『長い道』の単行本はどの版も絶版・品切れになっていて、新刊書店で入手できないのである。近隣の図書館で読むことができれば幸いだが、図書館にもないとなると、古書店やネットなどで根気よく探して購入する、ということになるだろうか。


 小説『長い道』の単行本は、昭和44年のオリジナル版刊行以来、これまでに何種類か世に出ていて、なかでも、映画『少年時代』の公開にともなって発売された中公文庫版『長い道』(平成元年発行)が、もっとも見つけやすく安価に入手できるものなので、『長い道』の単行本を買って読んでみたい方には、これを探してみることをお薦めしたい。中公文庫版『長い道』の巻末には、柏原兵三氏のご子息である光太郎氏のエッセイが掲載されていて、その点も興味を惹かれる。新刊として発売された当時は、牘撚茵崗年時代」原作瓩筏されたオビがついていた。


 中公文庫版以外では、やはり講談社から出版されたオリジナルの単行本に、オリジナルという意味で価値を感じるが、藤子ファンである私の目から見れば、昭和58年、桂書房という富山県の出版社から刊行された単行本のほうに、より大きな魅力を感じるのだった。

 この桂書房版『長い道』は、柏原兵三文学碑建立記念のハードカバー本で*1、なんといっても特徴的なのは、藤子A先生の描いた画がこの本の挿絵として使われていることだ。

 といってもその挿絵は、藤子A先生がこのために特別に描き下ろした画稿ではなく、マンガ『少年時代』のなかから既存の図版をいくつか抜粋してきたものなので、挿絵を目当てにこの単行本を買う必要はない。あくまでも、小説『長い道』を読むために単行本を購入するとすれば、小説に目を通しながら藤子A先生の絵も見られるので桂書房版がいちばん魅力的かな… という程度のことである。(と言いながら、私は藤子A先生の挿絵を目当てにこの単行本を買ってしまったのだが…)

 

『長い道』の単行本には、そのほか、埼玉福祉会が出した大活字本シリーズ(上巻下巻)や、潮出版社の柏原兵三作品集(第4巻)というものがあるようだが、私は現物を見たことがない。



 小説『長い道』の単行本を紹介したついでに、藤子A先生が、この『長い道』とよく似たところがあると感じ、ぜひマンガ化してみたいと思っていた小説『蝿の王』についてもちょっと触れておきたい。作者はイギリスの小説家ウィリアム・ゴールディング。1983年にノーベル文学賞を受賞している。

蝿の王』は、孤島に不時着した少年たちの内部対立や凄惨な闘争を描いた作品で、読後感はかなり重い。この作品を漂流ものの系譜として見るなら、ダニエル・デフォーの『ロビンソン漂流記』やジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』などと対比しながら読むと興味深いだろうし、隔離された場所で少年たちが殺し合いをする物語という意味では、楳図かずおのマンガ『漂流教室』や高見広春の小説『バトル・ロワイヤル』に近い要素が感じられるので、それらを一緒に読んでみるとおもしろいかもしれない。

 そして、『ロビンソン漂流記』や『十五少年漂流記』とくれば、藤子・F・不二雄先生の作品を忘れるわけにはいかない。『ドビンソン漂流記』『宇宙船製造法』『モジャ公』『21エモン』『ドラえもん』(のなかのいくつかのエピソード)、『大長編ドラえもん』などなど、藤子・F先生のマンガには、いま挙げた小説と関連づけて読むことのできるものがたくさんあるのだ。

*1:藤子不二雄A先生は、柏原兵三文学碑建立発起人会に名前を連ねている。

一円イチゴ一円イチゴ 2005/08/01 22:53 「宇宙船製造法」で思い出したのですが、koikesanさんは萩尾望都氏の「11人いる!!」は読まれましたか?
あの作品もやはり、孤立したロケット内という、閉鎖された空間内での、少年(青年かな)たちの葛藤や対立を描いた作品のひとつに数えられるのではと、ふと思いつきましたので書き込んでみました。

koikesankoikesan 2005/08/02 21:09 『11人いる!』は、外部から隔絶された宇宙船の中で、登場人物たちが葛藤し、疑い合い、いさかいを起こし、ある人物を殺そうという話にもなったりして、まさに、私が上の記事で書いた作品群と並べて数えられる作品ですね。
『11人いる!』は、ひとりひとりの登場人物の性格や心理が見事に描かれていて、優れた心理劇として堪能できますし、意外な種明かしがあったりするのでミステリーのおもしろさも味わえますね。もちろん本格的なSFマンガでもあります。
隔絶された宇宙船の中での心理劇、そして、意外な種明かしがあるという意味で、藤子・F先生の『イヤなイヤなイヤな奴』も思い出されます。
私は、萩尾望都氏のマンガは大好きで代表的なものは読んできました。しかし最近となると『残酷な神が支配する』は全巻読んだものの、最新作の『バルバラ異界』は未読です。そのうち読みはじめたいと思っていますが。