ハリ・セルダンになりたくて

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2009-08-31

[] 新ケインズ派DSGEからみた経済政策に関する教訓

いや、誰も矢野の意見など聞いてないことは知ってるんですがw

European Economic Associationなどに参加させていただいて、DSGEとベイズ統計学の最新情報を仕入れてきたのですが、今のところ、矢野の理解する「新ケインズ派DSGEからみた経済政策に関する教訓」は以下のようにまとめることができます。

  1. 景気対策の中心は中央銀行による金融政策である
  2. 中央銀行は政策金利がゼロ金利になっても将来の期待に働きかけることで景気回復へ貢献できる
  3. デフレ期待は投資を抑制するし、産業の発展を妨げる*1(投資に摩擦がある場合のトービンのqによる)
  4. 流動性制約下の家計が一定の割合いる場合には財政政策もそれなりに効果がある
  5. 資産価格を取り入れたフィナンシャル・アクセラレーターDSGEにおいてもインフレ率安定が最重点政策であることは変わらない

何か変なところがあったら、コメントでご意見をいただけると幸いです。

*1:「ちょっとそれは言い過ぎ」とE田さんからご指摘がありました。ありがとうございます。

kumakuma1967kumakuma1967 2009/08/31 09:40 変な所発見
> 誰も矢野の意見など聞いてない

koiti_yanokoiti_yano 2009/08/31 19:53 いや、そこは正しいかと・・・

Yasuyuki-IidaYasuyuki-Iida 2009/09/01 01:48 2.5.は特に重要な知識なのに比較的普及度が低い.1.3.がわかっていないならもう完全に時代遅れなので無視して可.4.はNKの苦肉の策ではある.

makotomakoto 2009/09/01 09:33 3の投資の調整コストとデフレ期待の関係がよく分からないのですが・・・。
投資の調整コストがなければインフレ期待は投資行動に影響を与えないと?

koiti_yanokoiti_yano 2009/09/01 21:29 makotoさん
するどいご意見をありがとうございます。ここで述べたことは標準的なNew Keynesian DSGEから言えることをまとめただけでそれ以外のことを言うものではまったくありませんので、その点は誤解なきようにお願いします。

まあ少し無理をして考えてみると、価格粘着性がある場合には、投資の調整コストがなくても消費のオイラー方程式を通じて投資に影響する可能性はあると思います。ただし、閉鎖経済でGDPが消費と投資と政府支出に分けられる場合を考えると、政府支出のルール設定によって投資がどう変わるかなどいろいろ変わってきますので、どのように変化するのかはある程度モデルに依存するように思います。経路はその他にもあるかもしれません。makotoさんのご意見はどのようなモデル分析を想定されていますか?

makotomakoto 2009/09/02 11:00 yanoさん
丁重な返信ありがとうございます。
ええと、私のコメントは単純な質問でして、もしよかったらご教授頂ければと思った次第です。

私が第一に想定したのは、ごく標準的なNew IS-LMモデルに資本を入れただけ(調整コストなし)のモデルです。

直観的には、まずデフレ期待により名目金利が下がって、名目金利が下がれば、MIUの仮定の下では貨幣需要が増えて、資本の保有を減らそうとするから投資が減ることになるのかな?と思いました。
でも、労働が内生ならば、デフレは貨幣資産への減税になるわけですから、正の資産効果によって労働供給は減り、実質金利一定となる定常状態ではむしろ資本は増えるのかな?とも思いました。労働と資本に関して一次同次の生産関数を仮定していれば、労働供給が減った分、資本が増えなければなりませんから。

ここら辺まだ頭が整理できていません。
もうちょっと自分で考えてみたいと思います。
ただ、ここまでの議論では、いずれにしろ投資の調整コストは関係ないですよね。

投資の調整コストや消費のハビットは、基本的にカリブレーションの際に現実のデータと動きが合うようにスムージングするものであると思っていたのですが、定性的な変化をもたらすとしたらどのような理由によるものなのか興味ありまして、質問させていただいたというわけです。

よろしければ、参考になりそうな論文など紹介していただければ幸いです。
もちろん、yanoさんは忙しいでしょうし、私も急ぐわけではないので、都合のよいときにまたブログでこのような形で取り上げて頂ければ十分です。

今後もブログ楽しみにしています。
それでは失礼します。

koiti_yanokoiti_yano 2009/09/04 07:16 makotoさん
ご意見をありがとうございます。
投資の調整コストは、ラグランジュ乗数がトービンのqに相当するという結果を導くので単なるスムージングではないのように思います。元々は林文夫先生の業績だったかと記憶しています。消費のハビットはおっしゃる通り現実のデータとの整合性をあわせるためのものだと理解しています。
それと貨幣需要の話は非常に興味深いです。後で矢野も少し考えてみたいと思います。

Rhythm_NationRhythm_Nation 2009/09/17 04:34 時代遅れなのかもしれませんがw、1が「新ケインズ派DSGEからみた経済政策に関する教訓」というのはフェアじゃない気がします。

捨ててしまうだけの財政支出をlump-sum taxでファイナンスするなら初めから財政政策は効かないことを仮定しているようなものですし、比例税か国債でファイナンスするとなると逆に最適な政策ルールはそれほど自明な問題ではないと思うので、金融政策の優位性はニューケインジアンモデルからすぐには言えないと思うのですが。

koiti_yanokoiti_yano 2009/09/18 06:20 Rhythm_Nationさん
矢野の同僚であるYasuharu Iwataさんの"Fiscal Policy in an Estimated DSGE Model of the Japanese Economy: Do Non-Ricardian Households Explain All?"はすでに読まれましたか? http://www.esri.go.jp/en/archive/e_dis/abstract/e_dis216-e.html
すでに非リカーディアン家計や財政政策ルールを考慮に入れた財政政策が様々な面から論じられています。Iwata氏は矢野の同僚ですからいろいろ議論をしましたが、それらを踏まえて考えても「その1」は変わらないと思います。