矢野の講義サイトへのリンク集
2009-11-09
■[マクロ経済学] インフレとデフレと景気に関するよくある質問集
[お知らせ]
「DSGEとベイズ統計学」解説論文査読者募集中!
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20091112/p1
[お詫び]
本日の朝このエントリーを更新した時に冒頭に不適切な表現があり、皆様には不快な思いをさせてしまい大変に申し訳ございませんでした。robinsさん、yagenaさん適切なアドバイスをいただき本当にありがとうございます。今後はこのようなことのないように社会人としての節度を守り、応用統計学者としての職務を全うする所存です。皆様今後ともよろしくお願いいたします。
[お断り]
当blogに書かれていることは矢野浩一個人の意見であり、矢野が属するいかなる団体とも関係ありません。
[はじめに]
インフレとデフレと景気に関しては非常に社会的影響が大きいこともあり、世間の話題に上ることも少なくないのですが、それらに関するよくある質問集(FAQ)を書くことにしました。
[インフレとデフレ、どっちが悪いの?]
これについて論じる時には(1)ハイパーインフレ、(2)高インフレ、(3)マイルドインフレ(低インフレ)、(4)デフレの4パターンに分ける必要があります。
ハイパーインフレと高インフレ、デフレは明確に悪いことです。
年率で2%から3%程度(論者によっては2%から4%程度)のマイルドインフレはむしろ望ましいことです。
[はぁ?デフレってむしろうれしいんですけど?]
それはよくある誤解です。世界各国どこでも「賃金の下方硬直性」と呼ばれる現象があることが知られています。これは平たく言えば「賃金は下がりにくい」ということなので、一見すると「うれしいこと」のように感じる人がいるのは不思議なことではありません。
しかし、経済は個人や企業が複雑に関係しており、単純ではありません。特にデフレになっても賃金が下がりにくいせいで、企業業績が急激に悪化することが知られており、その結果として新しい投資が抑制されたり、企業がリストラを行って職を失う人が出たりします。
さらにもっとも打撃を受けるのは新卒採用の学生さんと現在失業している人たちです(新しい人を雇わない、というのが一番簡単な人件費抑制策なので)。
デフレは「就職氷河期」や失業率増加などの現象を激化させています。
[マイルドインフレが望ましいって根拠があるの?]
ローレンス・サマーズ(現在、オバマ政権の国家経済会議委員長)が1991年に論じた「サマーズバンド」と言われる議論があります。
これは「2%から3%程度のマイルドインフレを目標に置き、普段から名目金利をある程度のプラスにおかないと、急激な景気悪化圧力(たとえば去年のリーマンショック)に中央銀行が利下げで対応できなくなる」というものです。
2%から3%程度のマイルドなインフレが望ましいというのは世界のマクロ経済学者の間ではほぼ合意事項です。
再度補足しますが、ハイパーインフレと高インフレ、デフレは明確に悪いことです。
[インフレターゲットなんてバカしか提言してないよね?]
そんなことはありません。インフレターゲットは1990年にニュージーランドで始めて採用されたのですが、それから20年近くが経過し、すでに多くの国(英国やカナダなどの先進国も含む)で採用されている実績のある政策です。
[インフレなんて起こせないよね?]
グレッグ・マンキュー教授が書いたベストセラー教科書「マンキュー経済学」には「経済学の10大原理」というものが掲載されています。
その第9原理が「(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」なのですが、この原理は中長期においては世界中どこでも成り立つことよく知られています。日本でも中長期に渡って考えれば、その関係は成り立ちます。
ただし、日本に関しては注意すべき点が一つだけあります。現在の日本経済は「流動性の罠」と呼ばれる状態に陥っており、現在の紙幣発行を増やしてもインフレにはなりませんが、「将来の紙幣発行を増やす」ということを人々に信じてもらえればデフレから脱却することができます。
参考:経済学の10大原理(1)人々はトレードオフに直面している、(2)あるものの費用はそれを得るために放棄したものの価値である、(3)合理的な人々は限界原理に基づいて考える、(4)人々はさまざまなインセンティブに反応する、(5)交易はすべての人々をより豊かにする、(6)通常、市場は経済活動を組織する良策である、(7)政府は市場のもたらす成果を改善できることもある、(8)一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している、(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する、(10)社会は、インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している、というのが10大原理です。
[「将来の紙幣発行を増やすと信じてもらう」って何?あんたバカ?]
安定的に2%〜3%程度のマイルドインフレが実現するまで、市場に出回っている長期国債を日銀が買う量をどんどんと増やして行けばOKです。
たとえば、2年の残存期間がある長期国債を日銀が大量に買い付ければ、「今後、2年間は日銀は金融緩和を続けます(つまり今後の2年間は紙幣発行量を減らしません)」ということを多くの人に信用させることができます。というのは日銀が利上げをしてしまうと国債の価格が下がって(利上げをすると国債価格は下落するという関係にある)「日銀のバランスシートを毀損してしまう」からです。
日銀が「バランスシートを毀損してしまう」ことを恐れていることはよく知られており、仮に日銀が2年の残存期間がある長期国債を大量に買い付ければ、「今後、2年間は日銀は金融緩和を続けます(つまり今後の2年間は紙幣発行量を減らしません)」ということを信じてもらえます。
日本がデフレから脱却できない理由は簡単で(1)現在、日銀が買っている長期国債の量が少なすぎる、(2)今までに日銀が何度も失敗しているので、そもそも信頼度が低いという二つが原因です。
補足:日銀のこれまでの失敗としては、たとえば政府の反対を押し切って2000年にゼロ金利政策を解除した後、急激な景気悪化でゼロ金利+量的緩和政策に慌てて復帰したという事実や、2006年に「物価が安定的にプラスになった」と主張して量的緩和政策とゼロ金利政策を解除したら物価がプラスになったのは消費者物価指数の誤差だったことが後日判明したこと、などが挙げられます。
[マイルドインフレってどうやって実現するの?無理だよね?]
テイラールールと呼ばれる金融政策を実行する時のルールがあることが知られています。インフレが発生したら、そのテイラールールに従ってマイルドインフレを実現し、維持します。
[デフレから脱却すると何か良いことあるの?]
繰り返しになりますが、グレゴリー・マンキュー教授(バーバード大学)の非常に標準的な教科書である「マンキュー経済学」に書いてある「経済学の10大原理」の第9原理と第10原理を書き出すと以下のようになります。
(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
(10)社会は、インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している
(9)は非常に単純ですよね。政府がお札を一杯刷りすぎると、インフレになるってことです。
(10)はちょっと難しいですが、「短期的にはインフレ率が上昇すると失業率は減少する」、逆に言うと「短期的にはインフレ率が下落する、もしくは、デフレになると失業率は上昇する」ということを言っています。
つまり、組み合わせるとこうなります:「政府が紙幣を印刷しすぎると、インフレになって、短期的には失業率が減少する」ということです。
もちろん、「インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している」というのはあくまでも「短期」の話なので、長期にはこの効果は消えてしまう訳ですし、「潜在成長率が高まる」なんてことを思っている訳でもありません(そんなことは主張したこともないし、夢にも思ったことはないです)。
さらにいうと、庶民を苦しめる「高インフレ」になってしまわないように過剰に紙幣を印刷し続けないように気をつけなければ行けませんので、「インフレターゲット(年率で2%から3%程度のマイルドインフレを目標とする)*1」、つまり目標とすべきインフレ率に上限と下限をつけましょう、と言っているだけです。
[え〜と、そんなバカなこと言ってる人いないんですけど?]
このような提案は現代マクロ経済学の代表的研究者によって既に何度も繰り返し提案されています。
たとえばクルーグマン教授(プリンストン大学教授、ノーベル経済学賞受賞者)、グレゴリー・マンキュー教授(ハーバード大学教授)、ケネス・ロゴフ教授(ハーバード大学教授)、フレデリック・ミシュキン教授(コロンビア大学教授)などが代表的ですが、これらの論者に限った意見ではなくてマクロ経済学者の間では非常に一般的な意見です。
それらについてはすでに多くの先行研究がありますので、先日の二つのエントリー(これとこれ)を参照してください。
[インタゲなんかするとハイパーインフレになるんじゃないの?]
ハイパーインフレになるには少なくとも二つの条件が必要です。(1)中央銀行が紙幣を過剰に発行している、(2)国の経済や産業が壊滅的な打撃を受けている、の二つです。
たとえば、最近のジンバブエでは、(1)紙幣(お金)が過剰に発行された、(2)独裁者ムガベ大統領がかつての支配層であった白人を強制的に追い出した結果、国の産業が壊滅的な打撃を受けている、という二つの条件が重なったからハイパーインフレが起こったので、日本ではこのようなことは起こりません。
ちなみに歴史的に見てハイパーインフレが起こったのは、第1次大戦後のドイツ(第1次大戦敗戦で国の産業が崩壊)、第2次大戦後のハンガリー(大戦で枢軸国側につき敗北)、アルゼンチン(長年にわたり軍事政権が支配)などと(2)の条件を満たしています。
日本でも第2次大戦直後にハイパーインフレが発生していますが、これも第2次大戦で国の経済や産業が崩壊していたためで、(2)の条件を満たしています。
[金融政策で生産性向上なんてできないよね?]
誰も生産性が向上するなんて言ってませんよ。完全なる誤解です。
[日銀はインフレターゲットを設定しているの?]
していません。日銀は2006年3月から「中長期的な物価安定の理解」というものを発表していますが、それを始めた時に当時の福井総裁が明確に「これはインフレターゲットとは違う」と述べています。そのため、インフレターゲットを設定しているとは言えません。
[あんたってマネタリスト?]
マネタリストではありません。ニューケインジアン(新ケインズ学派)には属していると思います。
新ケインズ学派とは、新古典派の実物景気モデルに、ケインズから始まるケインズ経済学の知見を取り入れた新しいケインズ経済学派です。
[やっぱ、あんたじゃ信用できん。この件に関して他に誰かいい人いないの?]
たとえば以下のロゴフ教授の提言はいかがでしょうか?
米国の大物経済学者が警鐘! 「世界経済危機の第二波が近づいている」
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/?page=4
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/?page=5
それ以外では英国銀行[イギリスの中央銀行]が発表した資料を日本有志が訳したものがあります。
解説!量的緩和
http://mathdays.web.fc2.com/qe-pamphlet_boe.pdf
[まだ、あんたを信用はしてないけど、勉強はしてみたい気になった]
去年の矢野の経済学入門の講義録が以下に公開していますので、参考になさってください。
2008年度:経済学〔現代経済理解へのガイド〕
http://koitiyano.hp.infoseek.co.jp/rikai/
さらに昨年の反省を踏まえて、今年はさらに改善した講義を行っています。まだ途中ですが、12月下旬にすべての講義(試験を除く)が終わるように進めています。こちらもご参考まで。
2009年度:経済学(土曜2限)
http://sites.google.com/site/keizaigaku2009/
*1:論者によっては年率で2%から4%程度のマイルドインフレを目標とする
- リアリズムと防衛を学ぶ - 勝間和代さんがデフレ脱却署名運動を開始
- Demilog - デフレに関するweb上の解説へのリンク集
- 捨身成仁日記 炎と激情の豆知識ブログ! - 当ブログはリフレ政策を...
- それは違うと思う 日本の国力で考える - インフレ論争
- カンダタ - イカレポンチたちの饗宴
- 鵜の目鷹の目 - 勝間和代氏の言ってることが全然分からない
- [発声練習] リフレ話に絡みたいときのチェックポイント
- windupbirdの日記 - リフレ論争
- 京大院生の読書日記 - リフレ論争
- 科学信仰 - ハイパーインフレと国債
- maddercloudの日記 - 政府、「デフレ」を宣言へ
- 平凡なメモ書き - 恨みの超インフレ
- 来るのか?日銀の量的緩和

(2)が起きなければハイパーインフレが起きないという因果関係の論拠にならない。
長々といらないことばかり書かれていて反リフレ派の一番大事な部分を論破できてませんね。
お疲れ様でした。
どのようにしたらマイルドなインフレを起こせるのですか?
あとニューケインジアンというのはちょっと肌に合いません。より「市場原理主義」的な教科書はないんですかね。マンキューでOk?
是非その点について詳述お願いします、、、
その場合、将来においてハイパーインフレとまではいかなくともマイルドではすまないインフレになるのではないですか?
原論文を読んだわけではないので、間違ってたらすいません。
この記事では、歴史的に(1)と(2)の両方の要件を満たした場合に限り
ハイパーインフレは発生しているんだよって言っているわけだから、
あなたが、(1)のみでハイパーインフレが過去に起こった事例を
紹介すれば良いんではないでしょか?
まさか反リフレ派の主張が机上の空論に基づいているなんてことは無いんでしょう?
それは相関関係であって因果関係であることは立証されないんですよ。
リフレ派も反リフレ派も思想であって机上の空論かもしれない
私はどちらの立場にも属さない実務家ですが、こういった議論を両方ともバカにして見ています。
私はあなたと違ってリフレ派を支持してしまうので、
考えが偏ってしまっているかも知れませんが、
ハイパーインフレの件が相関関係だという話で行けば、
少なくとも因果関係の必要条件のひとつを満たしています。
となれば、相関関係すら提示できずにインタゲの話をすると、
すぐに悪性インフレとかハイパーインフレを持ち出す反リフレ派の主張よりは、
マシではないかと思うのです。
更に言えば、リフレ派はデフレの問題点を理解したうえで、
それを乗り越える仮説を提示してますが、反リフレ派はリフレを批判するだけで、
デフレを解消するための手段の提示は無いんですよね。
矢野氏・池田氏両者に言えることだと思いますが、学者の人たちの売り言葉に買い言葉的な乱暴さはどうにかならないものでしょうか。乱暴な議論になりがちで生産的とは言い難く、その上不快に感じます。
外へ出て少しずつ運動して 少しずつ食べるように 規則正しい生活をしようと
するのは 経済も同じなのでは無いでしょうか
なんか経済学って 効率の良い運動の仕方を求めすぎているのだと思う
で ドーピングに走り 自滅
・たぶん池田もマイルドインフレが良いのはわかってる
・「だれそれが言ってるから」「常識だから」って説明が多すぎる。理論で説明してくれ。
・長期国債大量に買い、日銀が信用されるだけで、銀行貸し出しが増えるの?ここら辺の理屈がわかんない。
んで、結局何が言いたいのかわかりにくいんだけど、
インフレターゲットを導入して、日銀が長期国債買いまくり、日銀が信用されさえすれば、デフレ脱却できるって言いたいの?
わかりにくすぎ・・・
疑問2 デフレは症状であって、病気の根源は別のところ(=過去のリフレーション政策)にあるのでは?
疑問3 経済学者の言うことが正しいのであれば、なんで経済学者は貧相なのが多いの?
各国のインフレーターゲットは高すぎるインフレを抑えるためですから同列に扱っていいのかとは思います。
ただ、バーナンキの背理法を池田某は馬鹿にしていますが、論理的には正しい。
また、勝間氏の言うとおり中央銀行が無能ならFRBを中央銀行としてドルペッグしこて中央銀行の独立性を捨て、固定相場制を手に入れるのは正しい。
または、おっしゃる通り銀行券ルールを撤廃して国債を買いますか、政策金利を長期金利にしてもいいと思うのですがいかかでしょうか?
各国のインフレーターゲットは高すぎるインフレを抑えるためですから同列に扱っていいのかとは思います。
ただ、バーナンキの背理法を池田某は馬鹿にしていますが、論理的には正しい。
また、勝間氏の言うとおり中央銀行が無能ならFRBを中央銀行としてドルペッグしこて中央銀行の独立性を捨て、固定相場制を手に入れるのは正しい。
または、おっしゃる通り銀行券ルールを撤廃して国債を買いますか、政策金利を長期金利にしてもいいと思うのですがいかかでしょうか?
ちなみにtwitterで池尾和人にぶつけてみたら、ポスト冷戦の体系がどうのこうのと逃げられましたw
http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20091107#c1257764044
経路としては上記コメントの理屈ですがこれじゃダメってことですか?
一読する事を進める。
よくわからないので教えてほしいのですが、このような場合、因果関係の立証ってどうやったらいいのでしょう。
あと、マクロ経済学で因果関係が立証されている事例もあればぜひ。
よろしくお願いします。
>矢野 様
>つまり、組み合わせるとこうなります:「政府が紙幣を印刷しすぎると、インフレになって、短期的には失業率が減少する」ということです。
>もちろん、「インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している」というのはあくまでも「短期」の話なので、長期にはこの効果は消えてしまう訳ですし、
素人なのですが、この点については、一般(専門外の人間)には余り知られていなかったようにも思われるのですが、素人考えなのですが、確かに、インフレ率が+2%から+5%になった場合には長期にはインフレ率+5%が織り込まれてリフレの効果は消失してしまうかもしれませんが、インフレ率が−1%から+2%であれば賃金の下方硬直性の問題から解放されるとの効果は長期にも失われないということはないのでしょうか?
また、この場合、「短期」「長期」は現在の日本では具体的に何年くらいと考えればよろしんでしょうか?
「長期」を、普通に?価格調整がされるまでと考えるなら、数年?
あるいは、今回のような場合は、価格が調整されても、デフレの間に退蔵された貯蓄が需要に回っている間は、均衡に達しない「短期」と考えるべきなのでしょうか?、、、ならば、数年〜10年?、、、根拠はないですけど
リフレの「効果」がいつまで続くかの問題は、その間に、、「潜在成長率が高まる」必要な「構造改革」を円滑に進められるであろうとの視点からも大事な事のようにも思われるのですが、、、
以上、素人考えのですが、お時間のあるときにでもご教示願えれば幸いです。
失礼になるかもしれませんが,実務家さんがそのような発想ではちょっと困るような.私のような研究屋ならともかく.
世の中のほとんどの問題はまず実験なんて出来ないんで,多くの場合観測データ(つまり相関関係)だけから判断をしなきゃならないわけですよ(あとモデルも使いますが).
例えばタバコの人体に対する有害性に関する研究なんて,ずいぶん長期にわたり相関関係のデータしかなかったわけです.でもタバコ政策をそのままにしておくよりは,健康被害が起きているとみなして規制するべきいう意志判断をすべきという合意はかなり早期に生まれたわけですよ.
そりゃあなたが神様で俺はそんな風に世界を設計してないぞと分かってらっしゃるとか,あるいは相関している二つの現象の共通の原因となる因子がわかっていて,その因子が日本の事例では他国と違うぞ,とか示してくださるのであればともかく,少なくとも現在目の前に存在する選択肢のうちどれを選択すべきか,という意志判断に関する材料としては矢野さんの上げられたハイパーインフレの前提条件の例は十分すぎると思いますが−"真理"という意味ではなく,とりあえずいまここにある問題に対する意思決定の材料としては,という意味でですが.
またどうせ相関しか分からんよ,とシニカルに構えるのはご自由ですが,何もわからないから何もしないという判断は特にあまり望ましいとはいえない現状をそのままに放置する,ということと同義なので.そりゃ理論家的にはありかもしれませんが,実務的な意志判断としては問題じゃありません?
そういう不可知論に立った態度は、有機水銀が水俣病の原因かどうか分からないといって、有機水銀を垂れ流し続けて被害を拡大させてしまったのと大して違いがないですね。
これは、商品が少なければ値段が上がるということを言い換えただけだから、相関とか何とか言わなくても、直感的に正しそうでしょ。あまりに愚問だとバカにされるよ。
お金を刷ってマイルドインフレになったとして、根本的な問題は解決するんですか?
ぜひそこを書いて欲しいです。
根本的な解決以前に、根本的問題を正確に理解する必要があるでしょう。
koti_yanoさんも書いていらっしゃるように、インフレによる生産性向上はそもそも目論んでいません。つまり生産性に問題があると捉えていないのです。問題は一言で言えば「失業」です。
そして失業率とインフレ率が短期的にはトレードオフの関係にあるということは既に明らかにされています。
リーマンショックのような衝撃によって一時的に信用収縮が起きたわけではない、長期にわたってデフレ状態が続くというのは、そもそも論としてマネーサプライが全く足りていないのではないかという考えになるのが自然ではないかと思うのです。
構造改革派はデフレを生産性の低下と結びつけますけども、生産性が足りない場合に起こるのは普通インフレであってデフレではありませんし、消費意欲を喚起する商品が現れないというイノベーション不足に原因を求めるのも、日本以外の先進国では慢性デフレになっていないのですからおかしな話です。
「因果関係は相関関係ではない」というのはステートメントとしては正しいけど、批判の論拠としてはちょっとねぇ。実験でも因果的な効果を特定するというのは、相当に困難ですが、これがさらに観察だったとすると、ものすごく大変です。それでも何とかしようと、研究者たちはいろいろ知恵を絞っているので、「因果関係は相関関係ではない」ってのは、あなたみたいにカジュアルな批判をするときに使っていい表現じゃないですよ。
>お金を刷ってマイルドインフレになったとして、根本的な問題は解決するんですか?
素人考えで失礼させて頂きたいのですが、
デフレのときよりマイルドなインフレのときの方が、新規の事業、産業を興し易いってことはないでしょうか?( 例えば、マイルドなインフレのときであれば、実質金利がマイナスになる場合もあるでしょうし、手持ち資産の名目の担保価値が下がらなければ融資も受け易くなるでしょうし、消費の方も貯蓄より消費に回る可能性は高くなり新規事業に対する需要が期待されるのでは?)
民間で新規事業、産業が興しやすければ、結果として「構造改革」がやりやすくなるのでは?
デフレ経済とインフレ経済とでは、どちらの方が、民間で新規事業、新産業が興り易いのかとの議論になると思われるのですが、、、
なお、日本の根本的な「構造」問題については、クルーグマンは、日本の労働者人口の減少、および生産性の向上が1980年代までのように他の先進国からの技術を移入して図れなくなったことを指摘していなかったでしょうか?
これらの構造問題については、短期には、(能力ある)女性の社会進出を促進するための社会インフラ整備とか、能力ある人材が適材適所で働けるような労働者の移動をたやすくするための社会制度の整備とか、いろいろ考えられるのではないでしょうか?( また、こうした社会インフラ、社会制度を整備するうえでも、マイルドなインフレの下の方が、新産業を興し易いのと同様に、整備がスムーズにいくということはないでしょうか?)
また、これら構造問題に対する長期的な構造改革には、少子化対策、教育対策、研究開発対策が考えられなければならないように思われるのですが、、、
また、日本が直面している構造問題としては、さらに、最近、クルーグマンが指摘をしていた中国の近隣窮乏化政策も挙げられるのではないでしょうか?、、、日本も中国に雇用を不公正に吸収されているってことはないでしょうか?
神がいるかいないかの話を興奮して議論してもあまり生産的でないし、デフレの本当の原因を究明することなく、小手先の金融政策で何とかしよう考えているあなたたちの方が気楽だと思うのですが。
神がいるかいないかの話を興奮して議論してもあまり生産的でないし、デフレの本当の原因を究明することなく、小手先の金融政策で何とかしよう考えているあなたたちの方が気楽だと思うのですが。
小手先の金融政策でなんとかしようと考えている、というのは、飯田先生も書いておられるように「リフレ派」に対する単なる誤解ではないでしょうか。成長率を上げる政策はそれはそれで必要だろう、というのは皆さん同意するところだと思いますし。
「マイルドなインフレ=通貨供給量の漸増が正しい」という発想は、単純に「人口増加によって起きる需要増加とのバランスを取る」ということなのではないですか?
だから、人口減少下では当然「デフレターゲット」の政策を進めるのが正しいと自分は思うのですが。
そうですよね。でも、池尾先生は金融政策に拘泥すると成長率を上げる政策が疎かにされる、だからダメだ。とおっしゃってましたよね・・・
ケインズ政策の害が怖いなら、租税乗数を利用した減税政策100%の総需要政策だってあります。利上げと共に増税すればディスインフレを確実に実行できます。大衆は愚かだから増税なんかムリムリ!と思うなら、自動的に増(減)税するような仕組みを予め用意しておくことを池尾先生や池田氏が提唱すればいいんです。
とりあえず、インフレになれば現金死蔵してるのが損になりますね。
いまは、預金あずけてるだけで実質デフレ金利つきますし、借金は早く返さないと実質夫妻増え続けますから。
この流れが逆転するだけで消費(&投資)刺激になりますね。
(貨幣自体がババ抜きのババみたいになって(=持ってるだけで損なので)流通速度が上がる=消費刺激←http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20091106/era_of_neo_chartalism
のコメント欄に私が書いた内容)
特に「権威ある」英国銀行が出した資料は、特定の方面には極めて有効ですので、この和訳は素晴らしいと思います。
これについて2点あります。
1つは、お手数なんですが、ソースのURLをご教示願えますでしょうか。
和訳だけだと納得しない人が一部にいるので、和訳とソースの両方を表示して頂けると助かります。
2つ目はお願いではなく報告ですが、手元の環境では、和訳pdfの一部が文字化けしているようです。
ハイフン '-' が表示されるべきと思われるところで、手元では '?' や '??' が表示されます。
場所は 7, 8, 10, 11 の各ページです。
本質的問題でないことは承知していますが、念のためご報告します。
風邪の可能性が示唆されるから、とお座なりに咳止めを飲めといくら言われても、原因が肺炎なら抗生剤だし、インフルエンザならNAインヒビターを飲む方が良い。
一時的に楽なるとしても、咳止めを飲んでも熱は下がらないし、解熱剤を飲んでも咳は止まらない。
マイナス金利と失業率がどうこうという問題は簡単にくっつけるべき問題でもないかもしれませんね。
現状、需給ギャップはどう考えても大きく供給超過ですし、インフレ率も低すぎ、失業率も高すぎでしょう。だから当然、金融緩和や財政政策でこれらを解消しなければいけないのに、「金融緩和はこれ以上やることがない」、「財政政策は過去にやったけどダメだった」という極めて根拠が薄弱な、しかし一般人受けする言い回しで否定している。
金融政策は、時間軸方向には長期金利をゼロに誘導するまで糊代がありますし、信用プレミアム方向には信用力の低い個人・法人のプレミアムをゼロにするまで糊代があるわけです。これらにゼロ制約があることを考えても、現在はこれらの手段を積極的に使って、デフレ/需給ギャップを解消する必要があるでしょう。
財政政策に関しても、無限に財政赤字を増やすことには弊害があるとしても、これ以上財政赤字を増やせないということには全く根拠がありません。もしこれ以上増やしたらハイパーインフレが起きるという状況ならば、既に長期金利は上昇しているはずだし円は暴落しているはずです。財政再建論者は、自分達は世界の債券トレーダーや為替トレーダーのコンセンサスより賢いという大胆なことを過去十数年間主張してきて一度も当たっていない。とても滑稽に見えます。現時点で一番バランス感覚に優れているのは債券市場参加者でしょう。
今の民主党政権は財務省に擦り寄って資源配分を変えようととしているので、財務の省益である緊縮財政は飲まざるを得ない。それは分かります。しかし、なんで民間人がそんなものに乗っかって一緒にプロパガンダをしているのか。あらゆる人が同じ方向に向かっている姿に戦慄を覚えます。矢野さんの言っていることは、標準的な経済学の議論に則った非常にまともなものだと思います。応援しています。
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf
リフレ派はデフレであると指摘できるが、構造改革派は日本固有の構造を指摘できていない。他の国々に構造問題がないはずがないのだけれど、それとは全く異質な構造問題を具体的に指摘して欲しい。
参照 ウィキペディア「国内総生産」中の国内総生産(実質GDPと名目GDP、GDPデフレーター)の経年変化
リフレというのは直接的には原因療法にはなりませんが、医療で例えるなら癌患者に対して抗がん剤を大量投与して直接叩いて、副作用で全体の体調が悪くなるのを防ぐ為に、漢方薬による免疫・体質改善療法や自己免疫物質を体外で増殖させて自己再投与するような療法に例えられると思います。
抗がん剤や抗生物質は破壊された細胞を修復しませんよね。
だから自己再生能力や免疫能力を再生させる必要があるのです。
それがリフレ政策だと私は思っております。
たぬきさんは私から見れば実務者とはいえないですね。
因果関係がはっきりして無くても蓋然性が高ければ実務上対策はしますよね。それと同じです。(上の方で煙草対策のこともかかれてましたが。)
リフレした後で構造改革をされたらいかがでしょうか?それが
最小の痛みで最大の効果を得られると思います。
もちろん、いちばんいのは、生産性をあげて経済活動を活発にすることですが、エレクトロニクス製品等に関する日本の競争力はずっと落ちてきています。