ハリ・セルダンになりたくて

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2009-11-09

[] インフレとデフレと景気に関するよくある質問集

[お知らせ]
「DSGEとベイズ統計学」解説論文査読者募集中!
http://d.hatena.ne.jp/koiti_yano/20091112/p1

[お詫び]
本日の朝このエントリーを更新した時に冒頭に不適切な表現があり、皆様には不快な思いをさせてしまい大変に申し訳ございませんでした。robinsさん、yagenaさん適切なアドバイスをいただき本当にありがとうございます。今後はこのようなことのないように社会人としての節度を守り、応用統計学者としての職務を全うする所存です。皆様今後ともよろしくお願いいたします。

[お断り]
当blogに書かれていることは矢野浩一個人の意見であり、矢野が属するいかなる団体とも関係ありません。

[はじめに]
インフレとデフレと景気に関しては非常に社会的影響が大きいこともあり、世間の話題に上ることも少なくないのですが、それらに関するよくある質問集(FAQ)を書くことにしました。

[インフレとデフレ、どっちが悪いの?]
これについて論じる時には(1)ハイパーインフレ、(2)高インフレ、(3)マイルドインフレ(低インフレ)、(4)デフレの4パターンに分ける必要があります。

ハイパーインフレと高インフレ、デフレは明確に悪いことです。

年率で2%から3%程度(論者によっては2%から4%程度)のマイルドインフレはむしろ望ましいことです。

[はぁ?デフレってむしろうれしいんですけど?]
それはよくある誤解です。世界各国どこでも「賃金の下方硬直性」と呼ばれる現象があることが知られています。これは平たく言えば「賃金は下がりにくい」ということなので、一見すると「うれしいこと」のように感じる人がいるのは不思議なことではありません。

しかし、経済は個人や企業が複雑に関係しており、単純ではありません。特にデフレになっても賃金が下がりにくいせいで、企業業績が急激に悪化することが知られており、その結果として新しい投資が抑制されたり、企業がリストラを行って職を失う人が出たりします。

さらにもっとも打撃を受けるのは新卒採用の学生さんと現在失業している人たちです(新しい人を雇わない、というのが一番簡単な人件費抑制策なので)。

デフレは「就職氷河期」や失業率増加などの現象を激化させています。

[マイルドインフレが望ましいって根拠があるの?]
ローレンス・サマーズ(現在、オバマ政権の国家経済会議委員長)が1991年に論じた「サマーズバンド」と言われる議論があります。

これは「2%から3%程度のマイルドインフレを目標に置き、普段から名目金利をある程度のプラスにおかないと、急激な景気悪化圧力(たとえば去年のリーマンショック)に中央銀行が利下げで対応できなくなる」というものです。

2%から3%程度のマイルドなインフレが望ましいというのは世界のマクロ経済学者の間ではほぼ合意事項です。

再度補足しますが、ハイパーインフレと高インフレ、デフレは明確に悪いことです。

[インフレターゲットなんてバカしか提言してないよね?]
そんなことはありません。インフレターゲットは1990年にニュージーランドで始めて採用されたのですが、それから20年近くが経過し、すでに多くの国(英国やカナダなどの先進国も含む)で採用されている実績のある政策です。

[インフレなんて起こせないよね?]
グレッグ・マンキュー教授が書いたベストセラー教科書「マンキュー経済学」には「経済学の10大原理」というものが掲載されています。

その第9原理が「(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」なのですが、この原理は中長期においては世界中どこでも成り立つことよく知られています。日本でも中長期に渡って考えれば、その関係は成り立ちます。

ただし、日本に関しては注意すべき点が一つだけあります。現在の日本経済は「流動性の罠」と呼ばれる状態に陥っており、現在の紙幣発行を増やしてもインフレにはなりませんが、「将来の紙幣発行を増やす」ということを人々に信じてもらえればデフレから脱却することができます。

参考:経済学の10大原理(1)人々はトレードオフに直面している、(2)あるものの費用はそれを得るために放棄したものの価値である、(3)合理的な人々は限界原理に基づいて考える、(4)人々はさまざまなインセンティブに反応する、(5)交易はすべての人々をより豊かにする、(6)通常、市場は経済活動を組織する良策である、(7)政府は市場のもたらす成果を改善できることもある、(8)一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している、(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する、(10)社会は、インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している、というのが10大原理です。

[「将来の紙幣発行を増やすと信じてもらう」って何?あんたバカ?]
安定的に2%〜3%程度のマイルドインフレが実現するまで、市場に出回っている長期国債を日銀が買う量をどんどんと増やして行けばOKです。

たとえば、2年の残存期間がある長期国債を日銀が大量に買い付ければ、「今後、2年間は日銀は金融緩和を続けます(つまり今後の2年間は紙幣発行量を減らしません)」ということを多くの人に信用させることができます。というのは日銀が利上げをしてしまうと国債の価格が下がって(利上げをすると国債価格は下落するという関係にある)「日銀のバランスシートを毀損してしまう」からです。

日銀が「バランスシートを毀損してしまう」ことを恐れていることはよく知られており、仮に日銀が2年の残存期間がある長期国債を大量に買い付ければ、「今後、2年間は日銀は金融緩和を続けます(つまり今後の2年間は紙幣発行量を減らしません)」ということを信じてもらえます。

日本がデフレから脱却できない理由は簡単で(1)現在、日銀が買っている長期国債の量が少なすぎる、(2)今までに日銀が何度も失敗しているので、そもそも信頼度が低いという二つが原因です。

補足:日銀のこれまでの失敗としては、たとえば政府の反対を押し切って2000年にゼロ金利政策を解除した後、急激な景気悪化でゼロ金利+量的緩和政策に慌てて復帰したという事実や、2006年に「物価が安定的にプラスになった」と主張して量的緩和政策とゼロ金利政策を解除したら物価がプラスになったのは消費者物価指数の誤差だったことが後日判明したこと、などが挙げられます。

[マイルドインフレってどうやって実現するの?無理だよね?]
テイラールールと呼ばれる金融政策を実行する時のルールがあることが知られています。インフレが発生したら、そのテイラールールに従ってマイルドインフレを実現し、維持します。

[デフレから脱却すると何か良いことあるの?]
繰り返しになりますが、グレゴリー・マンキュー教授(バーバード大学)の非常に標準的な教科書である「マンキュー経済学」に書いてある「経済学の10大原理」の第9原理と第10原理を書き出すと以下のようになります。

(9)政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
(10)社会は、インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している

(9)は非常に単純ですよね。政府がお札を一杯刷りすぎると、インフレになるってことです。

(10)はちょっと難しいですが、「短期的にはインフレ率が上昇すると失業率は減少する」、逆に言うと「短期的にはインフレ率が下落する、もしくは、デフレになると失業率は上昇する」ということを言っています。

つまり、組み合わせるとこうなります:「政府が紙幣を印刷しすぎると、インフレになって、短期的には失業率が減少する」ということです。

もちろん、「インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している」というのはあくまでも「短期」の話なので、長期にはこの効果は消えてしまう訳ですし、「潜在成長率が高まる」なんてことを思っている訳でもありません(そんなことは主張したこともないし、夢にも思ったことはないです)。

さらにいうと、庶民を苦しめる「高インフレ」になってしまわないように過剰に紙幣を印刷し続けないように気をつけなければ行けませんので、「インフレターゲット(年率で2%から3%程度のマイルドインフレを目標とする)*1」、つまり目標とすべきインフレ率に上限と下限をつけましょう、と言っているだけです。

[え〜と、そんなバカなこと言ってる人いないんですけど?]
このような提案は現代マクロ経済学の代表的研究者によって既に何度も繰り返し提案されています。

たとえばクルーグマン教授(プリンストン大学教授、ノーベル経済学賞受賞者)、グレゴリー・マンキュー教授(ハーバード大学教授)、ケネス・ロゴフ教授(ハーバード大学教授)、フレデリック・ミシュキン教授(コロンビア大学教授)などが代表的ですが、これらの論者に限った意見ではなくてマクロ経済学者の間では非常に一般的な意見です

それらについてはすでに多くの先行研究がありますので、先日の二つのエントリー(これこれ)を参照してください。

[インタゲなんかするとハイパーインフレになるんじゃないの?]
ハイパーインフレになるには少なくとも二つの条件が必要です。(1)中央銀行が紙幣を過剰に発行している、(2)国の経済や産業が壊滅的な打撃を受けている、の二つです。

たとえば、最近のジンバブエでは、(1)紙幣(お金)が過剰に発行された、(2)独裁者ムガベ大統領がかつての支配層であった白人を強制的に追い出した結果、国の産業が壊滅的な打撃を受けている、という二つの条件が重なったからハイパーインフレが起こったので、日本ではこのようなことは起こりません。

ちなみに歴史的に見てハイパーインフレが起こったのは、第1次大戦後のドイツ(第1次大戦敗戦で国の産業が崩壊)、第2次大戦後のハンガリー(大戦で枢軸国側につき敗北)、アルゼンチン(長年にわたり軍事政権が支配)などと(2)の条件を満たしています。

日本でも第2次大戦直後にハイパーインフレが発生していますが、これも第2次大戦で国の経済や産業が崩壊していたためで、(2)の条件を満たしています。

[金融政策で生産性向上なんてできないよね?]
誰も生産性が向上するなんて言ってませんよ。完全なる誤解です。

[日銀はインフレターゲットを設定しているの?]
していません。日銀は2006年3月から「中長期的な物価安定の理解」というものを発表していますが、それを始めた時に当時の福井総裁が明確に「これはインフレターゲットとは違う」と述べています。そのため、インフレターゲットを設定しているとは言えません。

[あんたってマネタリスト?]
マネタリストではありません。ニューケインジアン(新ケインズ学派)には属していると思います。

新ケインズ学派とは、新古典派の実物景気モデルに、ケインズから始まるケインズ経済学の知見を取り入れた新しいケインズ経済学派です。

[やっぱ、あんたじゃ信用できん。この件に関して他に誰かいい人いないの?]
たとえば以下のロゴフ教授の提言はいかがでしょうか?

米国の大物経済学者が警鐘! 「世界経済危機の第二波が近づいている」
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/?page=4
http://diamond.jp/series/dol_report/10022/?page=5

それ以外では英国銀行[イギリスの中央銀行]が発表した資料を日本有志が訳したものがあります。

解説!量的緩和
http://mathdays.web.fc2.com/qe-pamphlet_boe.pdf

[まだ、あんたを信用はしてないけど、勉強はしてみたい気になった]
去年の矢野の経済学入門の講義録が以下に公開していますので、参考になさってください。
2008年度:経済学〔現代経済理解へのガイド〕
http://koitiyano.hp.infoseek.co.jp/rikai/

さらに昨年の反省を踏まえて、今年はさらに改善した講義を行っています。まだ途中ですが、12月下旬にすべての講義(試験を除く)が終わるように進めています。こちらもご参考まで。
2009年度:経済学(土曜2限)
http://sites.google.com/site/keizaigaku2009/

*1:論者によっては年率で2%から4%程度のマイルドインフレを目標とする

たぬきたぬき 2009/11/09 23:45 過去にハイパーインフレが起きた時に(2)が起きていたという事実は、
(2)が起きなければハイパーインフレが起きないという因果関係の論拠にならない。

長々といらないことばかり書かれていて反リフレ派の一番大事な部分を論破できてませんね。
お疲れ様でした。

やすゆきやすゆき 2009/11/10 00:22 google経由でなくダイレクトにその記事にリンクを張って、ついでにトラックバックでも送って差し上げたらいかがでしょう(笑)

白赤白赤 2009/11/10 05:02 論点がずれてません?
どのようにしたらマイルドなインフレを起こせるのですか?

プロボーラープロボーラー 2009/11/10 05:57 いいねえ、戦う感じ(笑)。拙者も微力ながら、華の都から応援してますよ。一点だけ。日銀の信頼度が低いというとこだけど、これは高いんじゃないか?市場参加者は、日銀は絶対にデフレを脱却させないと固く信じて売買しているのではなかろうか(笑)。日銀は信用供給の胴元だから、なんとでもできるよな。

池田はともかく池田はともかく 2009/11/10 06:10 池田のキワモノでしょうが、池尾先生も池田と同じ過ちを犯しているのでしょうか?相手が池尾氏でも「でたらめな知識を披露」といえますか?

あとニューケインジアンというのはちょっと肌に合いません。より「市場原理主義」的な教科書はないんですかね。マンキューでOk?

一学生一学生 2009/11/10 06:44 デフレ時にインタゲでマイルドインフレを起こすことができるという確証が得られないのですよね…
是非その点について詳述お願いします、、、

通りすがり通りすがり 2009/11/10 07:28 講義資料をひとつひとつダウンロードするのがダルイのでzipで固めたものがあると幸せです

素人ですが素人ですが 2009/11/10 07:48 将来においてテイラールール以上の金融緩和を約束することでゼロ金利制約下でも景気刺激の効果を得るというのがEggertson and Woodfordの主張ではないですか?
その場合、将来においてハイパーインフレとまではいかなくともマイルドではすまないインフレになるのではないですか?

原論文を読んだわけではないので、間違ってたらすいません。

野次馬野次馬 2009/11/10 07:58 たぬきさん
この記事では、歴史的に(1)と(2)の両方の要件を満たした場合に限り
ハイパーインフレは発生しているんだよって言っているわけだから、
あなたが、(1)のみでハイパーインフレが過去に起こった事例を
紹介すれば良いんではないでしょか?
まさか反リフレ派の主張が机上の空論に基づいているなんてことは無いんでしょう?

たぬきたぬき 2009/11/10 08:10 野次馬さん、
それは相関関係であって因果関係であることは立証されないんですよ。
リフレ派も反リフレ派も思想であって机上の空論かもしれない
私はどちらの立場にも属さない実務家ですが、こういった議論を両方ともバカにして見ています。

野次馬野次馬 2009/11/10 08:38 たぬきさん
私はあなたと違ってリフレ派を支持してしまうので、
考えが偏ってしまっているかも知れませんが、
ハイパーインフレの件が相関関係だという話で行けば、
少なくとも因果関係の必要条件のひとつを満たしています。

となれば、相関関係すら提示できずにインタゲの話をすると、
すぐに悪性インフレとかハイパーインフレを持ち出す反リフレ派の主張よりは、
マシではないかと思うのです。
更に言えば、リフレ派はデフレの問題点を理解したうえで、
それを乗り越える仮説を提示してますが、反リフレ派はリフレを批判するだけで、
デフレを解消するための手段の提示は無いんですよね。

エフエルエフエル 2009/11/10 09:00 たぬきさんの仰る通りで、「条件」なんて他にもいくらでも見つけることができます。

矢野氏・池田氏両者に言えることだと思いますが、学者の人たちの売り言葉に買い言葉的な乱暴さはどうにかならないものでしょうか。乱暴な議論になりがちで生産的とは言い難く、その上不快に感じます。

素人にはむずかしい素人にはむずかしい 2009/11/10 09:14 食欲が無いのに無理に食べさせても 体壊すだけなのでは?
外へ出て少しずつ運動して 少しずつ食べるように 規則正しい生活をしようと
するのは 経済も同じなのでは無いでしょうか
なんか経済学って 効率の良い運動の仕方を求めすぎているのだと思う
で ドーピングに走り 自滅

SeuSeu 2009/11/10 09:23 お気楽な立場でいいですね>実務家。自分は何の責任も負わないで、他人の主張をバカにできる。そこまで言うなら、効果抜群の日本経済の処方箋をご自分でお書きになれば良いのに。

おけいはんおけいはん 2009/11/10 09:54 某blogと両方読んでみたけど…

・たぶん池田もマイルドインフレが良いのはわかってる
・「だれそれが言ってるから」「常識だから」って説明が多すぎる。理論で説明してくれ。
・長期国債大量に買い、日銀が信用されるだけで、銀行貸し出しが増えるの?ここら辺の理屈がわかんない。

んで、結局何が言いたいのかわかりにくいんだけど、
インフレターゲットを導入して、日銀が長期国債買いまくり、日銀が信用されさえすれば、デフレ脱却できるって言いたいの?

わかりにくすぎ・・・

masayangmasayang 2009/11/10 10:03 疑問1 Velocityが低かったら、いくら紙幣を増刷しようがインフレにはならないのでは? 

疑問2 デフレは症状であって、病気の根源は別のところ(=過去のリフレーション政策)にあるのでは?

疑問3 経済学者の言うことが正しいのであれば、なんで経済学者は貧相なのが多いの?

通りすがりの学生通りすがりの学生 2009/11/10 10:33 池田ブログに批判めいたコメントしたら認証してもらえません笑

各国のインフレーターゲットは高すぎるインフレを抑えるためですから同列に扱っていいのかとは思います。
ただ、バーナンキの背理法を池田某は馬鹿にしていますが、論理的には正しい。
また、勝間氏の言うとおり中央銀行が無能ならFRBを中央銀行としてドルペッグしこて中央銀行の独立性を捨て、固定相場制を手に入れるのは正しい。
または、おっしゃる通り銀行券ルールを撤廃して国債を買いますか、政策金利を長期金利にしてもいいと思うのですがいかかでしょうか?

リフレ学生リフレ学生 2009/11/10 10:35 池田ブログに批判めいたコメントしたら認証してもらえません笑

各国のインフレーターゲットは高すぎるインフレを抑えるためですから同列に扱っていいのかとは思います。
ただ、バーナンキの背理法を池田某は馬鹿にしていますが、論理的には正しい。
また、勝間氏の言うとおり中央銀行が無能ならFRBを中央銀行としてドルペッグしこて中央銀行の独立性を捨て、固定相場制を手に入れるのは正しい。
または、おっしゃる通り銀行券ルールを撤廃して国債を買いますか、政策金利を長期金利にしてもいいと思うのですがいかかでしょうか?

ちなみにtwitterで池尾和人にぶつけてみたら、ポスト冷戦の体系がどうのこうのと逃げられましたw

こんごうこんごう 2009/11/10 10:50 >たぬきさん

http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20091107#c1257764044

経路としては上記コメントの理屈ですがこれじゃダメってことですか?

うすっぺらいマクロ経済学の理解うすっぺらいマクロ経済学の理解 2009/11/10 11:16 http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51611082.html
一読する事を進める。

きつねきつね 2009/11/10 11:20 たぬきさん、
よくわからないので教えてほしいのですが、このような場合、因果関係の立証ってどうやったらいいのでしょう。
あと、マクロ経済学で因果関係が立証されている事例もあればぜひ。
よろしくお願いします。

狐 2009/11/10 11:37 金融政策だけ論じても結局生産性が向上してGDPが成長しなければ意味がないと思いますが。

一般読者一般読者 2009/11/10 12:10
>矢野 様
>つまり、組み合わせるとこうなります:「政府が紙幣を印刷しすぎると、インフレになって、短期的には失業率が減少する」ということです。
>もちろん、「インフレと失業率の短期的なトレードオフに直面している」というのはあくまでも「短期」の話なので、長期にはこの効果は消えてしまう訳ですし、

素人なのですが、この点については、一般(専門外の人間)には余り知られていなかったようにも思われるのですが、素人考えなのですが、確かに、インフレ率が+2%から+5%になった場合には長期にはインフレ率+5%が織り込まれてリフレの効果は消失してしまうかもしれませんが、インフレ率が−1%から+2%であれば賃金の下方硬直性の問題から解放されるとの効果は長期にも失われないということはないのでしょうか?

また、この場合、「短期」「長期」は現在の日本では具体的に何年くらいと考えればよろしんでしょうか?

「長期」を、普通に?価格調整がされるまでと考えるなら、数年?
あるいは、今回のような場合は、価格が調整されても、デフレの間に退蔵された貯蓄が需要に回っている間は、均衡に達しない「短期」と考えるべきなのでしょうか?、、、ならば、数年〜10年?、、、根拠はないですけど

リフレの「効果」がいつまで続くかの問題は、その間に、、「潜在成長率が高まる」必要な「構造改革」を円滑に進められるであろうとの視点からも大事な事のようにも思われるのですが、、、

以上、素人考えのですが、お時間のあるときにでもご教示願えれば幸いです。

計量政治屋計量政治屋 2009/11/10 12:59 >たぬきさん
失礼になるかもしれませんが,実務家さんがそのような発想ではちょっと困るような.私のような研究屋ならともかく.

世の中のほとんどの問題はまず実験なんて出来ないんで,多くの場合観測データ(つまり相関関係)だけから判断をしなきゃならないわけですよ(あとモデルも使いますが).

例えばタバコの人体に対する有害性に関する研究なんて,ずいぶん長期にわたり相関関係のデータしかなかったわけです.でもタバコ政策をそのままにしておくよりは,健康被害が起きているとみなして規制するべきいう意志判断をすべきという合意はかなり早期に生まれたわけですよ.

そりゃあなたが神様で俺はそんな風に世界を設計してないぞと分かってらっしゃるとか,あるいは相関している二つの現象の共通の原因となる因子がわかっていて,その因子が日本の事例では他国と違うぞ,とか示してくださるのであればともかく,少なくとも現在目の前に存在する選択肢のうちどれを選択すべきか,という意志判断に関する材料としては矢野さんの上げられたハイパーインフレの前提条件の例は十分すぎると思いますが−"真理"という意味ではなく,とりあえずいまここにある問題に対する意思決定の材料としては,という意味でですが.

またどうせ相関しか分からんよ,とシニカルに構えるのはご自由ですが,何もわからないから何もしないという判断は特にあまり望ましいとはいえない現状をそのままに放置する,ということと同義なので.そりゃ理論家的にはありかもしれませんが,実務的な意志判断としては問題じゃありません?

knerkner 2009/11/10 15:34 >私はどちらの立場にも属さない実務家ですが、こういった議論を両方ともバカにして見ています。

 そういう不可知論に立った態度は、有機水銀が水俣病の原因かどうか分からないといって、有機水銀を垂れ流し続けて被害を拡大させてしまったのと大して違いがないですね。

見た感じ見た感じ 2009/11/10 18:35 >(2)国の経済や産業が壊滅的な打撃を受けている
これは、商品が少なければ値段が上がるということを言い換えただけだから、相関とか何とか言わなくても、直感的に正しそうでしょ。あまりに愚問だとバカにされるよ。

koiti_yanokoiti_yano 2009/11/10 22:28 コメントを下さった皆様に御礼を申し上げます。全員にお返事を差し上げることはちょっと難しい状況なので、大変に申し訳ありませんが、ここでまとめて皆様に感謝させていただきます。

nyny 2009/11/10 22:42 池田ブログはお金を刷るだけじゃ根本的な解決はありえない、という趣旨なんですが。
お金を刷ってマイルドインフレになったとして、根本的な問題は解決するんですか?
ぜひそこを書いて欲しいです。

学生ですが…学生ですが… 2009/11/10 23:07 僭越ながら、国債市場への影響について議論していただければ幸いに存じます。

ヌルヌル 2009/11/10 23:36 >nyさん
根本的な解決以前に、根本的問題を正確に理解する必要があるでしょう。
koti_yanoさんも書いていらっしゃるように、インフレによる生産性向上はそもそも目論んでいません。つまり生産性に問題があると捉えていないのです。問題は一言で言えば「失業」です。
そして失業率とインフレ率が短期的にはトレードオフの関係にあるということは既に明らかにされています。

WATERMANWATERMAN 2009/11/11 00:47 そもそも論なんですが、池田信夫氏をはじめとした構造改革を主張する人は、ごく短期ではなく長期にわたってデフレが続くという状態をどのように理解しているのかという事があるでしょう。
リーマンショックのような衝撃によって一時的に信用収縮が起きたわけではない、長期にわたってデフレ状態が続くというのは、そもそも論としてマネーサプライが全く足りていないのではないかという考えになるのが自然ではないかと思うのです。
構造改革派はデフレを生産性の低下と結びつけますけども、生産性が足りない場合に起こるのは普通インフレであってデフレではありませんし、消費意欲を喚起する商品が現れないというイノベーション不足に原因を求めるのも、日本以外の先進国では慢性デフレになっていないのですからおかしな話です。

maedamaeda 2009/11/11 03:02 内容の正しさに関する議論は矢野さんらにおまかせして、とりあえず池田氏のデフレFAQが事実とあわない点だけを http://www31.atwiki.jp/anti_deflation/pages/14.html にまとめてみました。

akiraakira 2009/11/11 06:13 たぬきさんが余りにひどいから、なんか書こうと思ったら計量政治屋さんが大体書きたかったことを書いてくれていた。

「因果関係は相関関係ではない」というのはステートメントとしては正しいけど、批判の論拠としてはちょっとねぇ。実験でも因果的な効果を特定するというのは、相当に困難ですが、これがさらに観察だったとすると、ものすごく大変です。それでも何とかしようと、研究者たちはいろいろ知恵を絞っているので、「因果関係は相関関係ではない」ってのは、あなたみたいにカジュアルな批判をするときに使っていい表現じゃないですよ。

一般読者一般読者 2009/11/11 09:22 >ny さん
>お金を刷ってマイルドインフレになったとして、根本的な問題は解決するんですか?

素人考えで失礼させて頂きたいのですが、
デフレのときよりマイルドなインフレのときの方が、新規の事業、産業を興し易いってことはないでしょうか?( 例えば、マイルドなインフレのときであれば、実質金利がマイナスになる場合もあるでしょうし、手持ち資産の名目の担保価値が下がらなければ融資も受け易くなるでしょうし、消費の方も貯蓄より消費に回る可能性は高くなり新規事業に対する需要が期待されるのでは?)

民間で新規事業、産業が興しやすければ、結果として「構造改革」がやりやすくなるのでは?

デフレ経済とインフレ経済とでは、どちらの方が、民間で新規事業、新産業が興り易いのかとの議論になると思われるのですが、、、

なお、日本の根本的な「構造」問題については、クルーグマンは、日本の労働者人口の減少、および生産性の向上が1980年代までのように他の先進国からの技術を移入して図れなくなったことを指摘していなかったでしょうか?

これらの構造問題については、短期には、(能力ある)女性の社会進出を促進するための社会インフラ整備とか、能力ある人材が適材適所で働けるような労働者の移動をたやすくするための社会制度の整備とか、いろいろ考えられるのではないでしょうか?( また、こうした社会インフラ、社会制度を整備するうえでも、マイルドなインフレの下の方が、新産業を興し易いのと同様に、整備がスムーズにいくということはないでしょうか?)

また、これら構造問題に対する長期的な構造改革には、少子化対策、教育対策、研究開発対策が考えられなければならないように思われるのですが、、、

また、日本が直面している構造問題としては、さらに、最近、クルーグマンが指摘をしていた中国の近隣窮乏化政策も挙げられるのではないでしょうか?、、、日本も中国に雇用を不公正に吸収されているってことはないでしょうか?

たぬきたぬき 2009/11/11 09:40 コメントありがとうございます。
神がいるかいないかの話を興奮して議論してもあまり生産的でないし、デフレの本当の原因を究明することなく、小手先の金融政策で何とかしよう考えているあなたたちの方が気楽だと思うのですが。

たぬきたぬき 2009/11/11 09:40 コメントありがとうございます。
神がいるかいないかの話を興奮して議論してもあまり生産的でないし、デフレの本当の原因を究明することなく、小手先の金融政策で何とかしよう考えているあなたたちの方が気楽だと思うのですが。

akiraakira 2009/11/12 02:42 放っておくと池田先生がやったような勝利宣言されてしまいかねないので、一応レスします。「本当の原因」というと聞こえは良いのですが、因果関係を特定するのはそれほど簡単ではないので、因果関係が特定されていない、というのは反論になっていないですよ、と言っているだけです。

小手先の金融政策でなんとかしようと考えている、というのは、飯田先生も書いておられるように「リフレ派」に対する単なる誤解ではないでしょうか。成長率を上げる政策はそれはそれで必要だろう、というのは皆さん同意するところだと思いますし。

aa 2009/11/12 17:19 この手のインフレターゲット論を見るたびにいつも思うのですが、
「マイルドなインフレ=通貨供給量の漸増が正しい」という発想は、単純に「人口増加によって起きる需要増加とのバランスを取る」ということなのではないですか?

だから、人口減少下では当然「デフレターゲット」の政策を進めるのが正しいと自分は思うのですが。

.. 2009/11/12 21:44 >小手先の金融政策でなんとかしようと考えている、というのは、飯田先生も書いておられるように「リフレ派」に対する単なる誤解ではないでしょうか。成長率を上げる政策はそれはそれで必要だろう、というのは皆さん同意するところだと思いますし。

そうですよね。でも、池尾先生は金融政策に拘泥すると成長率を上げる政策が疎かにされる、だからダメだ。とおっしゃってましたよね・・・

ケインズ政策の害が怖いなら、租税乗数を利用した減税政策100%の総需要政策だってあります。利上げと共に増税すればディスインフレを確実に実行できます。大衆は愚かだから増税なんかムリムリ!と思うなら、自動的に増(減)税するような仕組みを予め用意しておくことを池尾先生や池田氏が提唱すればいいんです。

CruCru 2009/11/13 00:46 ど素人であるワタクシメの素朴なインフレの利点の理解をひとつだけ:
とりあえず、インフレになれば現金死蔵してるのが損になりますね。
いまは、預金あずけてるだけで実質デフレ金利つきますし、借金は早く返さないと実質夫妻増え続けますから。
この流れが逆転するだけで消費(&投資)刺激になりますね。
(貨幣自体がババ抜きのババみたいになって(=持ってるだけで損なので)流通速度が上がる=消費刺激←http://d.hatena.ne.jp/himaginary/20091106/era_of_neo_chartalism
のコメント欄に私が書いた内容)

細かくてすいません細かくてすいません 2009/11/13 11:49 大変有益なエントリ、ありがとうございます。

特に「権威ある」英国銀行が出した資料は、特定の方面には極めて有効ですので、この和訳は素晴らしいと思います。

これについて2点あります。
1つは、お手数なんですが、ソースのURLをご教示願えますでしょうか。
和訳だけだと納得しない人が一部にいるので、和訳とソースの両方を表示して頂けると助かります。
2つ目はお願いではなく報告ですが、手元の環境では、和訳pdfの一部が文字化けしているようです。
ハイフン '-' が表示されるべきと思われるところで、手元では '?' や '??' が表示されます。
場所は 7, 8, 10, 11 の各ページです。
本質的問題でないことは承知していますが、念のためご報告します。

uskmcuskmc 2009/11/14 11:33 たぬきさんに共感。

風邪の可能性が示唆されるから、とお座なりに咳止めを飲めといくら言われても、原因が肺炎なら抗生剤だし、インフルエンザならNAインヒビターを飲む方が良い。

一時的に楽なるとしても、咳止めを飲んでも熱は下がらないし、解熱剤を飲んでも咳は止まらない。

まえやままえやま 2009/11/14 18:23 もし、マイナス金利が実現すれば、政府にしても法人、個人にしても借金の負担が軽くなるので市場がうまく回りだすのではないでしょうか。私にはわからないことは多いのですが、以前深尾光洋が盛んに言い立てていたシルビオ・ゲゼルのスタンプデューティ(現金自体に課税)が実施できるならば、マイナス金利は実現できる。しかし実施は難しいだろう。それから深尾光洋にしてもフェルドシュタインにしても消費税を一時的に0や1%に下げてから、数ヶ月ごとに少しづつ引き上げて、恒常的な駆け込み重要を作り出す案を主張していましたね。深尾光洋は所得分配の副作用を気にして、あまりよくない案であるという趣旨の意見を『金融政策論議の争点』に書いていました。しかし私は年金や失業手当などを二倍に引き上げるなどの対策を講じるならば、消費税の一時引き下げから段階的に上昇させる案が最も実施し易いと思います。年金の支給額を増額させることが可能ならば、最終的には消費税を10数パーセントから20パーセントに引き上げても大丈夫だと思う。現金にスタンプを貼るよりはるかに安上がりに出来る。

マイナス金利と失業率がどうこうという問題は簡単にくっつけるべき問題でもないかもしれませんね。

WillyWilly 2009/11/15 05:55 池田信夫氏などが巧妙なのは正しい経済理論を並べつつも、現状に対する対策についてはほとんど正反対のことを言っている点だと思います。非常に政治的な臭いを感じますね。

現状、需給ギャップはどう考えても大きく供給超過ですし、インフレ率も低すぎ、失業率も高すぎでしょう。だから当然、金融緩和や財政政策でこれらを解消しなければいけないのに、「金融緩和はこれ以上やることがない」、「財政政策は過去にやったけどダメだった」という極めて根拠が薄弱な、しかし一般人受けする言い回しで否定している。

金融政策は、時間軸方向には長期金利をゼロに誘導するまで糊代がありますし、信用プレミアム方向には信用力の低い個人・法人のプレミアムをゼロにするまで糊代があるわけです。これらにゼロ制約があることを考えても、現在はこれらの手段を積極的に使って、デフレ/需給ギャップを解消する必要があるでしょう。

財政政策に関しても、無限に財政赤字を増やすことには弊害があるとしても、これ以上財政赤字を増やせないということには全く根拠がありません。もしこれ以上増やしたらハイパーインフレが起きるという状況ならば、既に長期金利は上昇しているはずだし円は暴落しているはずです。財政再建論者は、自分達は世界の債券トレーダーや為替トレーダーのコンセンサスより賢いという大胆なことを過去十数年間主張してきて一度も当たっていない。とても滑稽に見えます。現時点で一番バランス感覚に優れているのは債券市場参加者でしょう。

今の民主党政権は財務省に擦り寄って資源配分を変えようととしているので、財務の省益である緊縮財政は飲まざるを得ない。それは分かります。しかし、なんで民間人がそんなものに乗っかって一緒にプロパガンダをしているのか。あらゆる人が同じ方向に向かっている姿に戦慄を覚えます。矢野さんの言っていることは、標準的な経済学の議論に則った非常にまともなものだと思います。応援しています。

まぐまぐ 2009/11/15 08:12 構造改革派は日本という木を見て世界(森)を見ていない。日本だけを見れば、構造要因で説明できそうな気がする。しかし世界を見れば、95〜08年にかけて上位60カ国が普通に成長して、日本一国だけが、何故成長できなかったのか説明できていない。
http://www.iti.or.jp/stat/4-001.pdf
リフレ派はデフレであると指摘できるが、構造改革派は日本固有の構造を指摘できていない。他の国々に構造問題がないはずがないのだけれど、それとは全く異質な構造問題を具体的に指摘して欲しい。
参照 ウィキペディア「国内総生産」中の国内総生産(実質GDPと名目GDP、GDPデフレーター)の経年変化

リフレ厨リフレ厨 2009/12/12 09:09 uskmcさん、NAインヒビターはウィルスを直接叩きませんし(治すのは自然治癒力(免疫))、抗生物質もある程度は叩きますが、治すのは最終的には自然治癒力によりますよ。(もちろん原因療法が大事と言うのはわかりますが)
 リフレというのは直接的には原因療法にはなりませんが、医療で例えるなら癌患者に対して抗がん剤を大量投与して直接叩いて、副作用で全体の体調が悪くなるのを防ぐ為に、漢方薬による免疫・体質改善療法や自己免疫物質を体外で増殖させて自己再投与するような療法に例えられると思います。
  抗がん剤や抗生物質は破壊された細胞を修復しませんよね。
だから自己再生能力や免疫能力を再生させる必要があるのです。
それがリフレ政策だと私は思っております。

たぬきさんは私から見れば実務者とはいえないですね。
因果関係がはっきりして無くても蓋然性が高ければ実務上対策はしますよね。それと同じです。(上の方で煙草対策のこともかかれてましたが。)

リフレした後で構造改革をされたらいかがでしょうか?それが
最小の痛みで最大の効果を得られると思います。

箕浦敏実箕浦敏実 2010/01/09 18:43 将来において生産に従事しない高齢者の割合が増加すれば、消費需要が生産力を上まわり、いずれにしろインフレが起きるとおもいます。しかし、国民が将来に対する不安がある限り、今デフレをとめることは金融緩和だけでは難しいとおもいます。国も負債が増えても、そのお金で将来において役立つことに投資しておくことが必要です。このつけは、将来いおいて国債の保持者が払う事になりますが。 円が循環する限り、国債は売れるはずです。

もちろん、いちばんいのは、生産性をあげて経済活動を活発にすることですが、エレクトロニクス製品等に関する日本の競争力はずっと落ちてきています。