kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「高額所得への課税や法人税課税を含む税制改革」に関するおすすめのエントリ

以下の記事中からリンクを張った3件のエントリをおすすめします。

見出しに惑わされないように気をつけよう… 消費税論議は税制論議の一部 | 労働組合ってなにするところ?

以下引用。

新聞記事を読む時は大抵、まずは見出しを見て興味を持って、続いて内容を読むという順序になりますので、見出しから受ける印象はとても重要です。今回のような場合、見出しから受けた印象が記事本文を読むことで修正されればいいのですが、やはり”議論の焦点は消費税だ”という印象を持って記事と向かい合わざるを得ないと思います。

4年間は引き上げないことが公約されている消費税の見直し議論を、予定よりも前倒しして開始するということは警戒すべき動向かもしれませんが、その他に所得税法人税環境税についても議論されるということですので、その議論の内容を見てから批判するかどうかを決めても遅くはありません。

むしろ、こうした見出しによって、”税金の見直しと言えば消費税の見直しだ”という先入観が植え付けられてしまうことの方が警戒すべき事態なのではないかと思います。

”財政危機を解決するためには消費税見直し”とか、”社会保障の充実のためには消費税見直し”とかいった言説がよく見受けられますが、”どうして様々ある税の中でも消費税でなくてはならないのか”ということを説得力のある論理で説明した言説を、私はまだ読んだことがありません。むしろ、”景気がよくなってもあまり税収が上がらない消費税の見直しは財政再建にふさわしくない”、”低所得者にとって負担の重い消費税は社会保障の財源にはふさわしくない” といった説明の方が説得力があると思います。

日本の税制度には、消費税の他にもいろいろな種類のものがあるのですから、税制の見直しと言えば消費税の見直し、とは言い切れないはずです。消費税を何%上げれば問題が解決するか、と言った単純なことを考えるのではなく、様々な角度から税の問題を考えるべきだと思います。

なお、今回この問題に気がついたきっかけは、「きまぐれな日々」様の下記エントリーでした。この場でお礼を言わせていただきます。ありがとうございました。

「きまぐれな日々」

議論を本格化させるのは「消費税」ではなく税制全体の見直し
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1044.html

管理人のみどりさんから丁寧なお礼の言葉をいただいた。こちらこそ、記事を紹介していただいたことを深く感謝します。

ところで、私が今回のマスコミ報道を最初から「怪しい」と思ったのは、政府税調の専門家委員会の委員長に神野直彦教授が就任したことに注目し、ブログのエントリを上げなきゃいけないと思いながら、その頃いつも「取り調べの可視化」の件ばかりに記事が終始してしまって書けなかったうちに、2月14日のマスコミ報道があったからだった。私が最初からマスコミ報道を疑ってかかったのは、そういう理由による。

『広島瀬戸内新聞ニュース』の主宰者・さとうしゅういちさんは東大経済学部在学中に神野教授に学んだとのことで、『JanJan』に下記記事を書いている。
http://www.janjannews.jp/archives/2664819.html

こう書いても、リンクを張っただけでは、読者の皆さまになかなか読みに行っていただけないので、以下に一部引用する。

新自由主義を一貫して批判した神野委員長
 
 現行の政府税制調査会は、与党議員と専門家委員会で構成されています。同時並行で議論を進めていくことになりますが、専門家委員会の委員長は関西学院大学教授の神野直彦さんです。彼が、委員の人選も任され、大沢真理さんら社会保障の専門家らが起用されています。
 
 わたしは東京大学経済学部3年生だった1997年度に財政学を当時は東大教授だった神野さんに習っており、彼の考え方はだいたいわかっているつもりですし、今も変わっていないと思います。
 彼の著書は以下です。
 
 Amazon.co.jp: 神野 直彦 - 和書: 本
 http://www.amazon.co.jp/s?ie=UTF8&rh=i%3Astripbooks%2Cp_27%3A%E7%A5%9E%E9%87%8E%20%E7%9B%B4%E5%BD%A6&field-author=%E7%A5%9E%E9%87%8E%20%E7%9B%B4%E5%BD%A6&page=1
 
 日本の財政については、1990年代当時でも、「国民の負担率は実はどんどん下がってしまっている。その原因が所得税の累進性の緩和などである」ということを明快に教えてくださいました。また、「財政危機は、社会の危機の鏡に過ぎない」というお考え方で、まさに今の状況にぴったりきます。
 基本的に、レーガンサッチャー、中曽根をはじめとするネオコンないしネオリベラルに対する批判と、それへの対案を軸とした論考を多く出されています。
 
 とくに、産業が重厚長大型から、知識集約型に変化せざるをえない先進国では、セーフティネット(神野さんは「トランポリン」という言葉をむしろ好んでおられますが)を張ったほうが、大胆な挑戦もしやすく、かえって経済に活力も沸くと説いておられます。
 
 政府税調で議論されるとすれば、このような「神野的な文脈」での社会保障と一体となった税制改正ではないでしょうか?
 
 自民党の消費税引き上げは、単に「法人税所得税を大手企業やお金持ち相手に減税してしまった上、経済が崩壊して税収が足りなくなったから、もっとよこせ」と、庶民から苛斂誅求するずさんな文脈のものです。それとは大違いの議論になると思います。

(中略)

 菅さんが、神野さんを税調委員に任命し、委員の人選も任せたわけです。今後の議論の方向性としては、おそらくは以下になるのではないでしょうか?
 
 1.まず、所得税法人税の課税ベースを拡大する。
 その上で、
 2.「大きな政府」にするのか、「小さな政府」にするのか、選択肢を示す。それぞれの政府のあり方とセットで消費税や環境税のあり方も示す。

付記すると、「小さな政府」を選択する場合、税制は直接税中心であるべきだというのが、著作から読み取れる神野教授の主張であり、「大きな政府」を選択する場合に限り、補完的に消費税率引き上げが視野に入ってくると予想される。つまり、自民党が主張するような、「小さな政府でありながら、財政再建を消費税率引き上げで行う」などという結論が出される可能性は最初からあり得ない。

おすすめの3件目は、ご存知村野瀬玲奈さんのエントリ。
菅直人財務相、「所得税最高税率引き上げ」に言及。 (追記2まであり) - 村野瀬玲奈の秘書課広報室

ここでは、『きまぐれな日々』の記事が、チクリとやられている(笑)。その部分以降を引用する。

「きまぐれな日々」の記事、『福島瑞穂菅直人に「喝」! 税制改革をもっとPRせんかい』の中に、『主要4紙では読売だけが、「消費税に限らない、税制全体」の論議であることを明示』と書いてあるのですが、読売新聞への評価としてそれはたいへん甘いです。笑

こちらの記事などで扱ったとおりです。

■消費税上げをめぐる読売新聞の世論誘導調査 (2) (不定期連載 『その調査、おかしくない?』)
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1613.html

読売新聞も全力で消費税値上げを目指していると言っていいと私は思っています。その問題の世論調査がそのことをはっきりと示しています。(この読売の世論調査のでたらめぶりを説明する記事の続きも書かないと。汗)

何を言いたいかというと、要するに、たとえ政治家が「税制全体」の改革に言及しても、マスメディア全体に、税制改革といえば消費税値上げのことばかり強調する傾向がはっきりとあるということです。

なぜなんでしょうか。私が思いついた理由は次のような感じです。

その一。報道機関も「法人」なので、「税制全体の改革」について報道して、法人税値上げへの動きが高まるのはいやだから。

その二。消費税を上げて法人税率を下げることを強く主張する経団連の幹事企業のような大企業(キヤノンとか、トヨタとか...)が報道機関のスポンサー(広告主)なので、「高額所得者課税や法人税増税を含む税制改革」という見出しで報道してしまうと、法人税値上げに道を開きかねず、スポンサーが逃げてしまうから。トヨタ奥田碩相談役(当時)が広告の引き上げをちらつかせてマスメディアに暗に圧力をかけたことを覚えている方もいるでしょう。

トヨタ奥田碩相談役(当時)の発言についてのニュース記事を当時集めておいてよかった! こちらをもう一度どうぞ。

■大スポンサーによるマスコミへの暗黙の脅しが成り立つ日本には報道の自由はないんでしょうか。
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-1005.html

放送法では、一応報道の原則がうたわれていますけど、こういう奥田発言を聞くと、形骸化、空洞化していることがよくわかります。

(引用ここまで)

要するに、税制全体の公平性や公正性を強調するのは自分にとって都合がわるいという「経営判断」が報道機関にははたらいているということです。

この読みはどうでしょうか。ある程度この想像は当たっていると思います。

それならば、一般市民ブログでは、「高額所得への課税や法人税課税を含む」税制全体の改革を求めていこうと思うのです。そのために、所得税最高税率を今までの水準にもどそうという考えを菅直人財務大臣が示したことを消費税にふれずに報じている次の記事を肯定的な評価とともに記憶と記録にとどめたいと思うわけです。

時事通信 - Yahoo!ニュース
最高税率上げ検討=所得税改革で−菅財務相
2010年2月19日11時52分配信 時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100219-00000085-jij-pol

 菅直人副総理兼財務相は19日の衆院財務金融委員会で、所得税の在り方について「日本ではこの10年間で最高税率が下がってきた。その見直しも含めて政府税制調査会で検討したい」と述べ、高額所得者に対する課税強化のため最高税率の引き上げを検討する方針を示した。共産党佐々木憲昭氏への答弁。

 所得税最高税率引き上げに対しては、鳩山由紀夫首相が共産党志位和夫委員長との会談で前向きな考えを表明。菅財務相も同委員会で「現在の所得税では(所得の)再配分機能が低下している」との問題意識を示した。1986年には70%だった所得税最高税率は段階的に引き下げられ、現在40%となっている。

(引用ここまで)

この時事通信のような報道は貴重です。

これからは、「消費税を含む税制改革」と言わずに、「高額所得への課税や法人税課税を含む税制全体の改革」ということを一般ブロガーのみなさんには提案します。

税制改革とは消費税だけではなく、「高額所得への課税や法人税課税などもある」ということを言うための記事でした。


基本的にこの提案に賛成する。

毎回「高額所得への課税や法人税課税を含む」という枕詞をつけるかどうかはともかく*1、「消費税を含む税制改革」という表現は、当ブログや『きまぐれな日々』ではもちろん用いていない。「消費税を含む」という枕詞を用いるだけで、マスコミの議題設定に乗ってしまうも同然だ。この表現だけは使わないようにしたい。

*1:昔の「朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)」のように、記事の最初に言及するスタイルが良いと思う。