これから紹介する記事に、強く共感した。
「安倍首相はお金もあるし、子どももいないから未来の景気なんてどうでもいい」 - 斗比主閲子の姑日記(2016年3月18日)
こんなブックマークコメントを見かけました(引用者註:NHKニュース「麻生財務相「消費税 予定どおり10%に」についた「はてなブックマーク」http://b.hatena.ne.jp/entry/topisyu.hatenablog.com/entry/ad_hominem_abusive からの引用)。
すごく根本的に、この人たちは未来の景気なんてどうでも良いのよ。死ぬまで十分な金はもう持ってるし、安倍さんは子供とかもいないし。
私は消費税増税を来年4月に行うのは得策ではないと考えている立場です。理由は何とでも言えますけど、別に経済の専門家でもないので、私の意見はあまり意味はないでしょう。数年前からクルーグマンとスティグリッツが主張しているので、そうなんだろうと思っているのは大きい。
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かつて、安倍首相は2014年にクルーグマンと会談したことで、2015年10月に消費税を10%に増税することを延期したという話がありました。
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今回、消費税増税に反対しているスティグリッツをわざわざ日本に招聘したのも、同様に来年4月に予定されている消費税の増税を延期することを想定してのものかと考えています。一方で、IMFは日本の財政健全化のために消費税は増税すべきだというスタンスなのもご承知のとおりです。
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財務省はこういうこともあり消費税増税をするべきだというスタンスでしたし、財務大臣である麻生さんが予定通り来年4月に消費税増税を主張することには違和感はありません。私が、そういう考え・ポジジョンであることをまずはお伝えします。
その上で、先ほど紹介した、すごく根本的に、この人たちは未来の景気なんてどうでも良いのよ。死ぬまで十分な金はもう持ってるし、安倍さんは子供とかもいないし。
についてコメントします。
まず、個人が何をどう思おうと、それをどう表現しようと、脅迫等でなければ自由ですよね。だから、こういうことを書いてはいけないとは思っていません。現状の政治に不満があるからこそ出た発言だろうとも思う。
でも、これを言っちゃうのはかなり筋悪だと思います。特に、"安倍さんは子供とかもいないし"というところ。要するに、「子どもがいないこともあって安倍首相は未来の景気はどうでもいいと考えている」と言いたいということですよね。
筋悪だというのは、本人に子どもがいないことを理由に、だからダメだと言っちゃっても、本人としてはどうしようもないからです。この説明が分かりにくい人は、
- 本人は『子どもがいない』から『未来の景気』はどうでもいい
というのの、『子どもがいない』の部分を本人がどうしようもないと思われるものに置き換えて、それに合わせて『未来の景気』の部分も修正してみると理解しやすいと思います。
いかがでしょうか。理不尽ですよね。このやり方での批判がまっとうだとしちゃうと、そういう属性の人しかある政策には関与できないこと、それ以外の属性を持つ人の政治参加を排除することに繋がってしまいます。
だから、筋悪だと申し上げました。
ただ、綺麗事ではなくて実態として、自分が属したり、詳しいものに対して、人間が親近感を湧くというか、支援するというのはあるのはありますよね。だからこそ族議員と呼ばれる人もいるし、政治家や官僚へのロビー活動というのはどこの国でも行われます。
でも、批判する方法の一つとして子どもの有無を使うのは本当に筋悪だと思います。先ほどの話に加えて、特に今の日本だとヤバい。日本は生涯未婚率が高くなっていき、不妊治療をしている人も増加していますから、子どもを持たないではなく、持てない人がかなりいます。そういう人が見たらどう思うか。
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そして、ご存じの方も多いように、安倍昭恵夫人はかつて不妊治療をしていたことも語っています。
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今回この方のコメントを紹介したのはこの方個人にどうこう言いたいというより、ネットでちょっと検索しても同じようなことを主張している人をそれなりに見かけたのと、このコメントにたくさんのスターがついて人気コメントになっていたからです。一般人から政治家に対してなら言ってもいいと思っている人がいらっしゃるのは分かるのですが、 政治家が政治家に対してこれを言っちゃうと炎上待ったなしですし、
相馬ヱミ子議員を戒告処分 「未婚の市長とは議論できない」大館市議会女性都議への「早く結婚しろよ」「子供もいないのに」「産めないのか」ヤジは差別発言 - 斗比主閲子の姑日記
一般人が一般人に対して言ったら嫌われるか、避けられます。仮に、個人の運営する組織にお金が入るように政治活動をしている人がいたなら、それは露骨な利益誘導だとして、贈収賄に限りなく近いと批判されてしかるべきでしょう。ただ、本人がどうしようもないことでもって、その人を否定するのは、たとえ相手が政治家であっても、好ましいものではないと自分は考えています。
「間然するところがない正論」とはこのことだ。本当にその通り。
蛇足をつけ加えると、現在の非正規雇用の人たちには、「収入が少なくて結婚できない」という人が少なくない。
そして、安倍晋三が政権に返り咲いて以来、雇用者数は増えている。正規雇用者は(年末のわずかな時期を除いて大部分が)民主党の野田政権だった2012年に比べて横バイで、増えているのは非正規雇用者だが、それでも今年1月で37か月連続、つまり第2次安倍内閣が発足した実質的に最初の月である2013年1月以来、37か月連続で増えている(総務省統計局の「労働力調査」参照 http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm)。
たとえば、安倍政権になって雇ってもらえるようになったけれども、収入が少なくて結婚できない、という非正規雇用の若い人が、
すごく根本的に、この人たちは未来の景気なんてどうでも良いのよ。死ぬまで十分な金はもう持ってるし、安倍さんは子供とかもいないし。
というブコメを見てどう思うだろうか。
何言ってんだこいつ、と強く反発し、雇ってもらえるようになった時の総理大臣なのに、「子供*1とかもいないし」などと批判される安倍晋三に同情し、選挙では自民党に投票したくなるのが人情ではないか。
こんなことを言っているから「リベラル」や保守的な人たちに限らず、安倍政権批判派はダメなのだ。こんなことを言う「リベラル」に限って、累進課税で税金を「搾取される」とばかりに「苛政は虎より猛なり」などとぼやいて「隠れティーパーティー」ではないかと疑われる内田樹を信奉していたりするのではないか、などと勘繰りたくなる。
また、こんなコメントを批判せず傍観している(見て見ぬ振りをしている)「反安倍」や「リベラル」もダメだと思う。「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」という言葉をかみしめ、仲間内から出た「トンデモ」な意見こそ厳しく批判する姿勢が「反安倍」や「リベラル」には求められるはずだ。
その意味で、このブコメをエントリに取り上げて正面から批判したブログ主を高く評価したい。