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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

経団連会長・中西宏明、原発に関する発言を180度転換(呆)

下記は私の大嫌いな『日刊ゲンダイ』の憶測記事だが、私もこの記事に近いことを思ったので引用する。日刊ゲンダイでさえ時にはまともなことを書くから困ったものだ。

【原発】経団連会長が転換 「原発どんどん再稼働」に飛び交う憶測|日刊ゲンダイDIGITAL

経団連会長が転換 「原発どんどん再稼働」に飛び交う憶測
公開日:2019/01/16 14:50

 何があったのか――。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長=72)の発言に臆測が飛んでいる。15日の記者会見で、原発について「再稼働をどんどんやるべきだと思う」と語り、原発の「新設」や「増設」も認めるべきだと発言した。さらに、「自治体が再稼働にイエスと言わない。これで動かせない」「公開で討論しないといけない」と、原発推進を全面的に打ち出した。

 臆測が飛んでいるのは、ほんの数週間前、正反対の発言をしていたからだ。年初の報道各社とのインタビューでは、3.11以降、東日本の原発が1基も再稼働していないことを例にあげてこう語っていた。

「国民が反対するものはつくれない。反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理につくることは民主国家ではない」

「国民が反対するものはつくれない」と口にしていたのに、「どんどん再稼働すべきだ」とは、ここまで意見を変えるのは普通じゃない。そのため「なにがあったのか」といわれているのだ。

「安倍官邸から怒られたのではないか、という見方が流れています。原発推進は安倍政権の基本政策なのに、『国民が反対するものはつくれない』と異を唱えた。安倍官邸から激怒されておかしくありません。世論調査では反対が多数ですからね。それで慌てて官邸に聞こえるように“原発推進”を叫んだのではないか、とみられています」(財界関係者)

■安倍官邸に怒られたか?

 しかし、「どんどん再稼働すべきだ」などと乱暴な発言は、逆効果になるのではないか。ただでさえ、国民の多くは「原発反対」なのに、「新設」や「増設」まで持ち出されたら、身構えるだけだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

「好意的に見れば、国民に一石を投じようとしたのかも知れません。コソコソと再稼働を進めるのではなくて、正面から“原発賛成か”“原発反対か”を公開討論すればいいと考えたのかも知れない。ひょっとして原発村の住民である本人は、“原発賛成”の方が多いと思っているのかも。しかし、これは自爆行為ですよ。恐らく、正面から賛否を問うたら“原発反対”“自然エネルギー推進”が多いはずです」

 やっぱり、国民投票で白黒つけた方がいいのではないか。

(『日刊ゲンダイDIGITAL』より)


記事自体には『日刊ゲンダイ』らしいいい加減さが結構あり、たとえば「ほんの数週間前」というのは、実際には11日前だ。中西宏明は1月4日の発言と正反対のことを15日に言ったのである。

中西の当初の発言を東京新聞から引用する。

東京新聞:「原発 国民反対なら無理」 経団連会長、政権と同調姿勢転換:経済(TOKYO Web)

原発 国民反対なら無理」 経団連会長、政権と同調姿勢転換

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は年初に際しての報道各社とのインタビューで、今後の原発政策について「東日本大震災から八年がたとうとしているが東日本の原発は再稼働していない。国民が反対するものはつくれない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダー(設備納入業者)が無理につくることは民主国家ではない」と指摘。「真剣に一般公開の討論をするべきだと思う」として、国民の意見を踏まえたエネルギー政策を再構築すべきだとの見方を示した。

 原発再稼働を進める安倍政権に対して、従来、経団連は「原子力は最も重要な基幹エネルギー」(榊原定征前会長)として同調していた。

 しかし、政府と民間が進めてきた原発の輸出戦略は、コスト高や安全不安で相次いで頓挫。中西氏が会長を務める日立製作所が進める英国での原発建設計画も、コストの上昇から採算が合わなくなり、暗礁に乗り上げている。

 原発の経済合理性が失われる中、原発を推進するには、国民の同意が必要だとの主張を示したものだ。

 一方で、再生可能エネルギーについても「日本には適地が少なく極めて不安定。太陽光も風力も季節性がある。次世代送電網も新しい投資が行われていない」として、課題が多いとの見方を示した。 (中沢幸彦)

東京新聞 2019年1月5日 朝刊)


また、『日刊ゲンダイ』に引用された五十嵐仁氏のコメントも、言っては悪いがいかにも皮相的だ。別に中西は確信せる「原発信者」でもなんでもなく、日立は過去に原発事業を、利益を見込める上に、仮に都合の悪いことが起きても「国が何とかしてくれる」事業だと判断したから原発事業にのめり込んだ。それだけのことだ。

ところが2011年の東電原発事故以来、原発への逆風はいっこうに止まず、日立自体の損益も毀損するし、他者を見ても、たとえば東芝原発事業のせいで社の経営が大きく傾いたのに、国はろくに助けてくれなかった(としか中西の目には映っていないだろう)。東芝の二の舞になってたまるか。そんな積もり積もった憤懣が、経団連会長としての「年初に際しての報道各社とのインタビュー」という、発言にけっこう重みがあると思われる場での思い切った発言になったに違いない。もちろん、「国民が反対するものは」云々は口実に過ぎず、「自社の損益が第一」であることは、大企業の会長である以上当たり前だ。

中西の「15日の記者会見」の記事も引用する。こちらは朝日新聞から。

https://www.asahi.com/articles/ASM1H5TSGM1HULFA01L.html

原子力を人類のために」経団連会長、原発再稼働を訴え
加藤裕則 2019年1月16日13時32分

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は15日、原発の再稼働が進まない状況について、「私はどんどん進めるべきだと思っている。原子力というエネルギーを人類のために使うべきだ」との見解を示した。そのうえで「原子力に関する議論が不足している」と述べ、政界や学界などを巻き込んだ討論会の開催を訴えた。

 同日の定例会見で記者の質問に答えた。中西会長は「安全性の議論を尽くした原発も多いが、自治体が同意しないので動かせない。次のステップにどうやって進めるのか。電力会社だけの責任では済まされない」と語った。

 エネルギーのあり方について中西会長は「長期的にみた場合、再生可能エネルギーでまかなえるとは思っていない。現在、電力源の8割を化石燃料に頼っていることも問題だ」と訴えた。新増設についても「私の世代はいいが、次の世代では原発がなくなってしまう。そのとき日本の電力事情がどうなるのか。大変危ない橋を渡っている」と述べた。

 また、日立が手がける英国の原発新設計画も中断する方向になっていることに対し「民間の出資が出てこないので、難しい状況になっている」と説明した。(加藤裕則)

朝日新聞デジタルより)


この発言が、官邸または経産省からの強いクレームを受けてのものであることは疑う余地がない。その点は日刊ゲンダイの書く通りだ。上記の中西の発言からは、どことなく投げやりささえ感じられる。中西のふがいなさには開いた口がふさがらない。但し、何も国民投票をする必要などない。安倍政権の原発売り込みがすべて頓挫した現実を見れば、原発事業の将来がないことは明らかだし、企業がわざわざ採算が合わなくて社の存続を危うくするような事業を推進するはずなどないから、放っておいても原発事業は廃れる。

但し、現在の「経産省政権」である安倍政権のように、誰が見ても将来性のない原発に多額の税金を投入しようなどという馬鹿げた政策をとる政権には、一刻も早く退場願わなければならない。

それはそうなのだが、原発問題は立地自治体を除いて、いくら野党が選挙で争点にしようとしても票にはならないし*1、その一方で、いくら政権が原発存続または推進にしゃかりきになっても、原発の再興などできない。原発事故のリスクや放射性廃棄物を処理できない問題がある以上、それが技術的にも経済的にも当然の結論なのだ。人が事業を動かすんじゃない、社会に働く力が事業を動かすのだ。そのことが理解できていない人が多すぎると最近強く思う。

私は、下記『広島瀬戸内新聞ニュース』の簡潔な記事に共感する。

https://hiroseto.exblog.jp/27926922/(2019年1月18日)

官邸に怒られて180度転換?中西経団連会長

経団連中西会長は「国民が反対する原発は難しい」発言をした。
そこで官邸(経産省官僚?)から怒られたらしい。
その結果としての「どんどん再稼動」発言と見るのが自然だ。
駄目でも「原発輸出再稼動を」突き進む国。
国に損をさせられてもついていく会長。
戦争をやめられなかった第二次世界大戦中の日本にそっくりである。

(『広島瀬戸内新聞ニュース』より)

*1:過去に脱原発で票を得ようとして惨敗した例として、2012年の衆院選での日本未来の党小沢一郎)や、2014年の東京知事選での細川護煕小泉純一郎)の例がすぐに思い浮かぶ。